ダフロン

2017年06月08日

筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。鎌倉の花は、秘密を抱く/谷春慶


 客の目を引く見事な書店ポップ、鎌倉の寺社を巡った御朱印帳、祖父が読みたいと望んだ特別な小説、少年が誰にも見せたくなかったメモ。気持ちに嘘はつけても、文字は偽れない。文字に秘められた想いを、清一郎は明らかにしていく。


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 文字は人の営みに寄り添う

 古都鎌倉を舞台に、文字と書、人の想いにまつわる事件を描く筆跡鑑定ミステリー。

 かっけー友達がいないことをサラっと言える清一郎さんマジかっけー。でも、人間強度元々低そう。
 毎度、清一郎へ厄介事の解決を依頼する美咲の手際もなれたものですが、今回は清一郎の側から美咲へ相談を持ちかけたりして、デレはじめてすっかり距離が縮まっていく二人の関係にニヤニヤしきり。
 大人げない清一郎をフォローしたり、世話を焼く美咲が、恋人というよりカーチャンに思えてきた。

 見に覚えのないことで嫌がらせの手紙を送られる清一郎ですが、美形は他人からやっかまれたり、騒動に巻き込まれれたりして大変だなー(他人事) 美形でなくとも自ら騒動を巻き起こして他人に迷惑をかける松岡のような人間もいるわけですが、奴はどうしてこうもアホなんだ……。キャラに似合わない純愛を経験しているのに、どうしてそこから経験値を得てないんだ。愛しの先輩も草葉の陰で激怒してそう。

 直筆の字や書ではなくとも、印刷された文庫本にも思いは宿る。確かに出版社によって読みやすい書体とか、行間とか、あるよなぁ。私のデフォは角川系ですね。次から小説の読み方も変わりそうです。
 同じ文字でも、誰が書いたか、誰が読んだかで物事の見方が変わって見えるというのが、趣深いところなんじゃないでしょうか。でもこの作品で面倒なのは事件の解明より恋愛事や人間関係なんだよなぁ。

 清一郎の人間嫌いの原因は、母親への罪悪感から自分に厳しく正しくあろうとして、その正しさを他人にも押し付けてしまうんでしょうね。清一郎にも不器用だけれども他人に優しいところがあるように、他人の悪いところばかりでなく良いところも見るようになって欲しい。
 最後の金子みすゞの詩で身悶えした。あれはもうどう見てもラブレターでしょう。
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2017年05月02日

自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ?/三河ごーすと


あらゆる分野のエリートだけを集めた名門校・獅子王学園。だがその実態は、ゲームの結果ですべてが評価される弱肉強食の学園。裏世界のゲームで常勝無敗の伝説を残しながらも、面倒のない普通の人生を歩みたい主人公・砕城紅蓮は、入学試験で手を抜き、目論見通り最低位のFランクに認定されるが……

 この世界はゲームで支配されている

 ゲームの強さですべてが決まる学園で最底ランクの主人公が下剋上を繰り広げていく学園頭脳バトル。

 さすおに。やはり劣等生のお兄様は格が違った。最下位が最強なのは常識じゃないですかやだー。
 裏のゲームで政治も経済も戦争すらも決まる世界で、最強に君臨していた主人公・砕城紅蓮が、エリート校に入学し、上のランクの生徒が下の生徒を虐げる階級社会をぶち壊していくところが痛快です。
 ゲームで人権を切り売りする世界観がとても狂ってて歪んでて背筋がゾクゾクしてきました。

 裏の世界の権力争いから離れたくて高校に編入したものの、そこは生徒同士がゲームでランク競争を繰り広げる特異なエリート校で、平凡を求めてあえて底辺に身をおく紅蓮の徹底ぶりが滑稽でおかしい。
 そんな兄・紅蓮を敬愛し、家でも学校でもダダ甘やかしながらも、兄を活躍させる舞台を整えるべく暗躍するブラコン妹の可憐の毒舌&腹黒さが、まさにこの兄にしてこの妹あり。この妹がヤバい。

 厄介事を避けるためにわざわざ最低のFランクで入学したのに、ゲームで他人を陥れ人としての人権や尊厳をもて弄ぶ生徒たちの所業を見過ごせずに首を突っ込み、鼻っ柱をへし折っていくから面白いんだ。
 ゲームは基本のルールこそあれ、イカサマやペテンは当然のことながら、超能力のような異能でもなんでもありの卑怯上等のダーティーな勝負だから先の展開が読めなくてドキドキハラハラして手に汗握る。

 リアルな若者と比較したら、野心と欲望で目をギラギラさせてるこの学校の生徒達は嫌いじゃないですね。若い力で社会を発展させてくれそう。ただし行き着く先はディストピアかもしれないのがアレだが。
 一応、トップらしく貫禄はある生徒会長だけど盛大にかませっぽいんだよなぁ。次回あたり本気を出した弟にあっさり負けるか、あるいは大穴で妹がラスボスかもしれない予感がビンビンなんだぜ。
posted by 愛咲優詩 at 00:00 | TrackBack(0) | MF文庫J | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月21日

キラプリおじさんと幼女先輩/岩沢藍


女児向けアイドルアーケードゲーム「キラプリ」に情熱を注ぐ、高校生・黒崎翔吾。親子連れに白い目を向けられながらも、彼が努力の末に勝ち取った地元トップランカーの座は、突如現れた小学生・新島千鶴に奪われてしまう。クリスマス限定アイテムを巡って巻き起こる、俺と幼女先輩の激レアラブコメ!

 俺より可愛い奴に会いに行く

 女児向けアーケードゲームに情熱をかける男子高校生と女子小学生のラブコメディ。

 うわ、幼女先輩つよい。女児向けアーケードゲームは可愛さで相手を殺すゲームだったのか。
 女児向けアーケードゲーム「キラプリ」ガチ勢である主人公・黒崎翔吾と女子小学生の新島千鶴がぶつかり合いながら、ゲームを通じて年齢の差を越えた友情を築いていく姿が微笑ましかったです。
 しかし女児向けゲームにルナティック級の難易度を設定するキラプリ制作スタッフは絶対頭おかしい。

 女児向けゲームをプレイするためにバイトしたり、ファッション誌を読んだり、生活をかけている翔吾の廃人っぷりが可笑しいです。どう見てもアブない奴ですが、ここまでやってるなら逆に尊敬するわ。
 そんな翔吾を小さな女の子がコテンパンに叩きのめすから面白いんだ。格下にプレイする権利はないとばかりに翔吾を鼻であしらうドS幼女な幼女先輩の毒舌の嵐がご褒美すぎます。俺も罵られたい。

 負けず嫌いで意地っ張りで生意気な千鶴ですが、お嬢様らしく変なところで世間知らずだったり、背伸びしていたり、まれに弱みを覗かせたり、年相応の女児っぽいところもあって本当に可愛いんです。
 初めはお互いにいがみ合って敵視していた二人が、己の可愛さを競い合ったり、映画館に行ったりするうちに、対等な相手として認め合い、力を合わせて困難を乗り越える展開に胸が熱くなりました。

 本気の趣味をバカにされ理解されない辛さや孤独は、オタクやゲーマーなら誰でも身に沁みて感じた経験があるんじゃないでしょうか。カラオケやパーティも結局は達成感や充実感を得るために参加するわけで、目的や行動が違うだけでゲームだってアイドルのライブだってみんな同じだと思うんですけどね。
 千鶴の境遇が明かされておらず、まだポテンシャルを隠しているようなので次回に期待です。
posted by 愛咲優詩 at 00:00 | TrackBack(0) | 電撃文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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