ダフロン

2015年10月17日

筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。/谷春慶

4800246067筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。 (宝島社文庫)
谷 春慶
宝島社 2015-10-06

by G-Tools

亡くなった祖父の思いを確認すべく、美咲は大学一の有名人、東雲清一郎を尋ねるが、噂に違わぬ変人で――。有名な書道家なのに文字を書かず、端正な顔から放たれるのはシビアな毒舌。挫けそうになる美咲だが、どうにか清一郎を説得。祖父から残された手紙を鑑定してもらうことになるが……。

 文字には書き手の魂が宿る

 書を書かない書道家にして筆跡鑑定人の主人公が文字から謎を読み解く人の死なないミステリ。

 平凡な女子大生・美咲が大学一の偏屈屋・東雲清一郎と関わったことで、文字にまつわる厄介事に巻き込まれていくのですが、筆跡鑑定から真実や想いが読み解かれていく登場人物たちの愛憎劇が興味深かったです。
 しかし、これが『モテモテな僕は世界まで救っちゃうんだぜ(泣)』と同作家とは思えない。こういうのも書けるのか。作者名調べないと絶対に気づかんぞというくらいの180度方向性の真逆なシリアス路線でびっくりした。

 東雲清一郎の毒舌クールっぷりがいいですね。優れた筆跡鑑定能力ゆえに好むと好まざるとにかかわらず、人の書いた文字から無意識に内面や本音を読み取ってしまうから、それなら人間嫌いになっても仕方がないか。
 美形なのに無愛想な彼ですが、実は方向音痴だったり、スマホが使えなかったり、意外と抜けている一面があったりするのも女性読者には萌えポイントなんじゃないでしょうか。うん、クールだけど人間臭いのがいい。

 謎のひとつひとつは対したことのないロジックで、読んでいて予想は容易なんですが、明確な証拠を得るため、犯人確定にいたるまでの筆跡鑑定が見所です。文字の特徴だけを手がかりに犯人像を追い詰めていく推理展開はなかなかどうして興奮します。名探偵の助手のように毎度事件に首をつっこんでくるくせに、危機感が抜けてて危なっかしい美咲を見かねて助けたり、次第に清一郎がデレていく姿にニヤニヤが止まらない。

 人が人を愛おしいと想う心、反対に憎らしいと思う心。人はなんと美しいのかと思えば、次の話では人の醜さをつきつけられて、見えてくる登場人物の心理描写の対比が鮮烈で際どくて、読んでいて心を揺さぶってくる。
 書いた字にはその人の内面が現れるとしたら、清一郎の書はどんなでしょうか、見てみたいですね。しかし、この話に出てくる書道家って、なんでみんな人格破綻者ばかりなのか。書道のせいなのねそうなのね。
posted by 愛咲優詩 at 00:00 | TrackBack(0) | このライトノベルがすごい!文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月16日

魔法少女育成計画 ACES/遠藤浅蜊

4800245869魔法少女育成計画 ACES (このライトノベルがすごい!文庫)
遠藤 浅蜊 マルイノ
宝島社 2015-09-10

by G-Tools

盟友リップルの行方を探しながら、「魔法少女狩り」としての活動を続けるスノーホワイトに、「魔法の国」の国の中枢たる「三賢人」の一人から呼び出しがかかる。指定された屋敷に赴いたスノーホワイトを待ち受けていたのは、高貴そうな雰囲気を身に纏った、幼い外見の少女だった。

PRtag.jpg

 悪魔は笑顔でやってくる

 本物の魔法の力を得た魔法少女による理不尽で無慈悲なマジカルサスペンスバトル。

 祝アニメ化! ずっと前から期待してた! はい、本当にアニメ化できるとはカケラも思ってませんでした
 魔法少女の重鎮「三賢人」から呼び出されたスノーホワイトが、「魔法の国」にとって重要な儀式の鍵となる少女の護衛を依頼され、様々な勢力の思惑がぶつかり合う陰謀劇に巻き込まれる。組織のパワーゲームのコマとして、使い捨ての道具のように不毛な争いで命を散らしていく魔法少女たちの悲鳴と慟哭が美味しい(ゲス

 この世界は仲間思いのイイ奴から死んでいく。殺し合い始まってんのに甘っちょろいこと言ってる子は、「あ、死にそう」って思ってしまう。ブルーベル・キャンディさん表紙は死亡フラグや、次あたりヤバイですよ!
 でも、役立たずは意外としぶとい。ツンデレ属性も生存率高い。そして仲間が死んでから後悔する、これよ! 親友を失って絶望するツンデレ! これが味わいたかったんだ! 今回も期待を裏切らない酷い展開だ!

 うるるや宇宙美のように魔法の概要だけ読むと、どうやって戦いに活かすのかわからないような能力でも、戦いが始まってみると思ってもみない戦いぶりを見せてくるから展開が読めなくて、良くも悪くも盛り上がる。
 政治という本人たちの意思とはかけ離れたところで人生を左右されるデリュージやシャドウゲールの姿が不条理だ。プフレのクールな酷薄さは好きなんだけど、綱渡りを進んで挑んでいくから危なっかしいんだよなぁ。

 「三賢人」はわかっていたけど悪い人だった。トップの人格からしてダメなんじゃん「魔法の国」。
 スノーホワイトとリップルの再会の後味の悪さときたら、なんのために魔法少女たちが命をかけていたのかと思ってるんだ! 彼女たちの苦労を台無しにするフレデリカさんマジゲスの極みいいぞもっとやれ!
 よく考えるとロクに事態が好転も悪化もせずに、人が死んだだけだった! リップルさんの悪堕ちに期待。

posted by 愛咲優詩 at 00:00 | TrackBack(0) | このライトノベルがすごい!文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年08月26日

スカイ・ワールド 11/瀬尾つかさ

4040706382スカイ・ワールド (11) (富士見ファンタジア文庫)
瀬尾 つかさ 武藤 此史
KADOKAWA/富士見書房 2015-08-20

by G-Tools

最終試練ゲート・オヴ・ファーに突入したジュンたちは、ついに第一軌道島『アイオーン』の地を踏み、サクヤの復活と地球への帰還という願いを叶えるべく、邁進していた。一方、リザードマンの帝国クネッティによるスカイワールド各地への侵攻が加速。さらに『神秘の座』の襲撃が全プレイヤーを震撼させる事態を巻き起こし

 帰還者たちの見上げる空

 オンラインMMORPG世界に閉じ込められた少年少女の仮想現実冒険ファンタジー。完結

 ついに終ってしまった……。好きなシリーズの完結は、いつも喜ばしいながらも実に悲しいものです。
 最終ボス・ラストガーディアンを突破し、ついに第一軌道島アイオーンに到達したジュンたちが、帰還を果たすため、全プレイヤーの力を借りてリザードマンと『神秘の座』、カリムに挑む最終決戦が燃えました。
 いや、ジュン達の戦いはこれからだ! 次回アップデート編突入で続けてもいいじゃないか!(バンバン

 世界各地に迫るクネッティの侵攻に抗うべく、最後の大規模戦闘に挑むジュン達、ギルドの垣根を越えたギルメン連合軍の息を合わせた戦い振りは、これぞMMORPGのレイドバトルの究極形!というべき熱戦でした。
 ジュン達のアイオーン到達を知って、リザードマンとの戦争に怯えていた各地のプレイヤーに再び闘志が蘇り、それぞれにできるやり方で帰還を目指して奮起する"祭り"の光景に胸が熱くなりますね。これもMMORPGだ!

 コノハの語ったSF超展開は、この作者ならこれくらいはするだろうという予想通り。ここまでがテンプレですわ。むしろ、この後、異世界からの侵入者や、上位存在とのバトルまでやるんじゃないかと期待していた。
 これまで散々振り回された因縁のある『神秘の座』のメンバーとヒロインたちとの決着に晴れ晴れとし、カリムとの決闘は、ゲーマーとしての格の違いを見せつけてジュンがきっちりと引導を渡してくれて清々しい。

 地球へと帰る者たちと、スカイワールドに残る者たちとの差は、一方が大人で社会人だからとか、子供でゲーマーだからとかではなく、自分の大切なものがなにか、自分の居場所がどこにあるかでしかないと思います。例えるなら日本で暮らすか、海外で暮らすか程度のものじゃないかと。現代では価値観や生き方は人それぞれ。
 ラストは感無量ですが、ああ、終って欲しくない…おわってぼじぐないよおおおおおおおおおお!!!!

posted by 愛咲優詩 at 00:00 | TrackBack(0) | 富士見ファンタジア文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。