ダフロン

2018年08月18日

錆喰いビスコ 2 血迫!超仙力ケルシンハ/瘤久保慎司


「錆喰い」由来の特殊体質を治すべく、大宗教国家・島根を訪れたビスコたち。しかし―そんな一行の前に野望の不死僧正・ケルシンハが立ちはだかる。不意打ちで胃を盗まれたビスコの余命は、僅か―五日!?宗教ひしめく島根の中枢“出雲六塔”に潜入した彼らは、はたして無事、元の身体を取り戻せるのか。


 人食いキノコ、神を破る

 まさに圧巻! 熱血マンガか映画を見ているかのような爽快感。脳内で快楽物質ドバドバでてすごい。
 錆喰いによるビスコの特異体質を治す手がかりを得て、宗教国家・島根の総本山「出雲六塔」にやってきた二人が、信仰によって世界を牛耳ろうと企む怪僧ケルシンハに立ち向かう大活劇に手に汗握る。
 文明が荒廃して人心も荒んだ殺伐とした世界で、どこまでもまっすぐで純粋な二人の姿が愛おしい。

 改めてミロの成長ぶりが目覚ましいですね。ビスコに女の子が近づくと不機嫌になる嫉妬ぶりにニヤニヤ。ビスコは相変わらずバカで乱暴なんだけれど、ミロを相棒として命を預けていて、いざとなれば心中する覚悟まで決めてるんだから、もうお前ら付き合っちゃえよ! お互いに足りないところを支えって、信頼しているけれど頼り切りにはならず、相棒に相応しくあるように高めあっている姿が眩しい。

 前巻の舞台だった忌浜がSFの世界なら、今回の出雲六塔は宗教と精神の世界。信仰を強調しながらも都市に住む人々の根底には人間の欲望や煩悩が渦巻いていて、弱者を踏みにじる特権者たちの歪んだ支配や不条理を、ビスコとミロの若いキノコ守りの二人が真正面からぶち壊していくところが痛快なんだ。
 悪役ケルシンハも狂ってはいるけれど、世紀末覇者の如き強烈な個性と迫力に魅せられました。

 すでに超大作クラスだった前巻からのスケールダウンを危惧していますがまったくの杞憂でした。引き続いて物語世界観を広げつつ、また別の切り口でストーリーを展開していったところがすごい。まったくの別物といっていいテーマをとり上げながら、新しい事実や謎を提示して想像を膨らませて、さらに勢いが加速していくんだから、こちとら乗り遅れないように必死ですよ。みんな『錆喰いビスコ』はいいぞ!
posted by 愛咲優詩 at 00:00| 電撃文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月06日

陰キャラな俺とイチャつきたいってマジかよ/佐倉唄


陰気な少年・九条静紀はひっそり学生生活を忍んでたが校内一陽キャラな女子・春日陽奈から突如告白される! 陽キャのノリに辟易して断るも「あたしを理想の陰キャに変えてください!」と陽奈からまさかの宣言が!?

 陰キャと陽キャはどこまでも平行線

 陽キャラなヒロインと陰キャラな主人公のすれ違い陰陽学園ラブコメディ

 最近のラノベ、陰キャと陽キャの対立構造を煽りすぎじゃね。なにが始まるんです? 陰陽大戦だ!
 陰キャラな少年・九条静紀が、学園一陽キャラな女子・春日陽奈に告白され、理想の陰キャラな彼女を目指して交際が始まるのですが、陰キャと陽キャの価値観の違いですれ違う二人がもどかしかった。
 陰キャラと陽キャラ、どっちがいいとか悪いとかじゃなく、どっちも同じくらい面倒くさいな。

 教室ではぼっちで趣味は読書という陰キャの静紀と、明るくて友達が多い陽キャな陽奈という正反対な二人なだけに水と油のように思ってる常識が合わなくて、次々と巻き起こす事故が目も当てられない。
 そんなことされたら繊細な陰キャラは死んじゃう!っていうリア充ムーブを完全な善意でやってくるからキツイ。仲良く一緒にお昼ご飯とか、同じイヤホンで一緒に音楽を聞くとか、えっちすぎますよ!

 それだけならまだマシで親切心から仲良しグループに加えようとしてきて、静紀にしてみればノリも合わない集団に放り込まれて疎外感を味わうだけで、もしこれが自分だったらと思うと背筋がゾッとする。
 陽奈さん、空気を読んでください。陽キャでしょ! けれど気を使われるとコミュ障な自分の不甲斐なさを突きつけられて、それはそれで辛いというダブルバインド。もうやめて陰キャのライフは0よ!

 陰キャのSAN値をゴリゴリ削っていくけれど、すべては一途な恋心からの行動だから無下にもできなくて余計にタチが悪いんですよね。積極的になるほど理想から遠ざかって空回りしていくのが痛々しい。
 それにしても静紀はデレるのが早くね! お前、あれだけ陰キャにこだわっていたのに、ツンデレかよぉ! しかし、やっぱり個人的には陽キャラガールよりもミステリアスな黒髪ロングかロリータ社長のほうが好きだなーと思いつつ。陽キャラは暑苦しい。
posted by 愛咲優詩 at 00:00| 富士見ファンタジア文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月29日

空飛ぶ卵の右舷砲/喜多川信


『大崩壊』から数十年。小型ヘリ<静かなる女王号>を操り、樹竜狩りを生業とするヤブサメ。彼は師であり相棒でもあるモズとともに仕事をこなしながら、日本各地を飛び回っていた。そんな中、二人は東京第一空団副長セキレイに、その腕を買われて旧都市・新宿での大規模探索作戦への同行を依頼される


 呻れ、回転翼! 鳴らせ、砲口! 空飛ぶ卵の竜殺し

 植物のモンスター樹竜に支配された未来の日本で小型ヘリを駆って戦う近未来アクションSF

 大自然によって文明が衰退した世界でもしたたかに生き抜く人間の力強さに圧倒されました。
 若くして凄腕のヘリパイロット・ヤブサメが、美人だけれど破天荒な師モズに振り回されながらも、小型の武装ヘリを操り過酷な依頼に挑み、機転と度胸でピンチをくぐり抜けていく様がスリル満点でした。
 怪奇な樹竜とヘリとの空戦の描写から伝わる作者の情熱と想像力に引き込まれます。

 小型ヘリ<静かなる女王号>の船長モズは、いい年してどこかに大人の節度を置き忘れ、ギャンブルや酒で借金まみれのダメ人間の典型なんだけど、荒廃世界でも楽しく生きる自由人な生き方に憧れる。
 常識人のヤブサメは苦労させられるのだが、そんなダメ師匠でも戦闘では天性のセンスを発揮して、そんな師弟が窮地をくぐり抜けて人知を超えた怪物である樹竜を打ち倒していく勇姿が興奮するんだ。

 海上都市を守る空挺兵団が計画する大規模作戦の協力を依頼され、民間でフリーランスの二人は最初は味方である兵団の堅物パイロットたちに疎まれてしまうんだけれども、小型ヘリで樹竜を駆逐するその常識はずれの戦闘力でもって次第に認められていくのが痛快で、いつの間にか官民の垣根を超えてお互いに連携が通じ合い、助け合う戦う光景が、まさにプロフェッショナルって感じで全員格好いいんだ。

 総じて完成度は高いんだけれど、審査員特別賞にとどまっているのは、やはり中高生向けとしてはハードボイルドを貫きすぎているストロングスタイルが良くいえば拘り、悪くいえば足かせになってる。
 ヒロインとのラブ要素とか、主人公の成長要素とか、あまり必要としないタイプのストーリーだから、少年向けラノベで重視される読者の親近感を得にくいのが残念に思います。それでも十分に面白いのでオススメです。
posted by 愛咲優詩 at 00:00| ガガガ文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする