ダフロン

2015年12月11日

建築士・音無薫子の設計ノート 謎(ワケ)あり物件、リノベーションします。/逢上央士

4800247489建築士・音無薫子の設計ノート 謎(ワケ)あり物件、リノベーションします。 (宝島社文庫)
逢上 央士
宝島社 2015-12-04

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建築を学ぶ今西中が、風変わりな喫茶店で出会った小柄な女性。彼女こそ今西がこれからインターンとして働く建築事務所の代表、音無薫子だった。天才的な観察眼と奇抜な発想で依頼に応える彼女の元には、ちょっとワケありの依頼人ばかりが訪れて

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 家に宿るは家族の想い

 依頼主の要望聞くが決して要望通りにしない女性建築士が家に秘められた謎を解き明かす建築ミステリー

 建築ミステリーとはなんぞやと思いましたが、読んでみると、謎解きのある立派なミステリーでした。
 建築学を学ぶ大学生の主人公・今西中が、インターンとして働くことになった建築事務所所長・音無薫子と共に、奇妙な依頼主が持ち込む謎あり物件のリノベーションに挑み、導き出してく建築計画が興味深かった。
 謎を紐解いて見えてくる、かつて家に住んでいた人々の想いや願いにホロリと涙するいい話でした。

 今西中が働くことになった音無建築事務所は、所長である音無薫子が切り盛りする超小規模ながらも奇妙な依頼ばかりやってきて、依頼主の服装や建物を見ただけで事情を察する音無薫子の観察眼が、まさに名探偵。
 要望は聞くけれども自分のプランに任せなさいと、やたら強気な彼女ですが、そこは「餅は餅屋」。素人では気づかないような驚く工夫やプランを提示して、最後にはしっかりと依頼主を満足させるから痛快です。

 劇的ビ○ォーなんたらで、カリスマ建築士たちが、何故やたら住みにくいデザインの建築ばかりするかわかった気がします。いえ、薫子さんはそんな建築は考えないんだけれど、ライバル建築事務所は地雷臭がする。
 ただ建築士の理想を押し付けるのではなく、家を建てた親や住む人の想いや願いを反映した、思いやり溢れる家造りが感動的でした。夢を思い出して建築士として一皮むけていく今西くんの成長もよかったです。

 作中に出てくる家に住みたいかと言われたらノーですね。100人いたら100通りの生き方、暮らし方のスタイルがあるものだから、誰でもにあった家はないのでしょう。私もそういう家に住みたいと思いました。
 この作品が、普通のミステリーとは違うのは、犯人探しやトリック・アリバイ崩しとは別の思考力が必要になって、そして絶対的な正解がないところでしょうか。読んでいて推理や考察を巡らせるのが面白かったです。
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2015年11月05日

龍ヶ嬢七々々の埋蔵金10/鳳乃一真

4047307645龍ヶ嬢七々々の埋蔵金10 (ファミ通文庫)
鳳乃 一真 のん
KADOKAWA/エンターブレイン 2015-10-30

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《ゲーム》の終盤で起こった、GREAT7や七重島総合警備保障ら大人の介入によって、コレクション保持者たちの間に不穏なムードが立ち上る中、七重島に重護が帰還。決意を新たにした重護が始めたのは、誰もが想像をもしない計画で……!?

 盗人からの挑戦状

 最強地縛霊少女(ただしニート)の"埋蔵金"をめぐる、奇想天外トレジャーハント・ロワイヤル。

 さすが重護汚い。いや、前回このヒモ野郎もげればいいのにと思ってたが、やっぱり主人公だったな!
 《ゲーム》で起きた大人たちの介入や、七々々コレクション強奪事件の発生でコレクション保持者たちが動揺するなか、GREAT7を相手に真っ向から勝負を挑み、澱んだ状況を一気に吹っ飛ばす重護の奇策が痛快でした。
 しかし、キャラクター増えましたね。人物紹介一覧がパッと見わけわかんないことになってるー。

 主人公不在でも七重島では状況が動いていて、《ゲーム》の影響で第七高コミュニティが勢力を増したり、混乱に乗じて唯我部長が暗躍したり、人それぞれに事態を受け止めて、これからを考えていく決意が印象深い。
 妹と元婚約者を連れて戻った重護は、いつにも増して女の子に囲まれて姦しいな! すっかり雪姫姉さんもデレてるし。これはユリシーズちゃんに刺されるのも時間の問題ですわ。いつの間にか勝ち組じゃないですか!

 重護が積極性を出して悪巧みしてると、どんなドッキリを見せてくれるのかとワクワク感がたまらない。そしてその期待を裏切らないんだから好きだよ。周囲を操るフィクサーとしての顔を隠さなくなってますね。
 一人の女を奪うために、恋のライバルに挑戦状を叩きつける男気がカッコイイ。無謀な挑戦だからこそ応援したくなる。かつては義賊なんて古臭いと拗ねていた重護が、ここにきて一回り大きく成長して見えました。

 一方、唯我部長は、どんどん暗黒面に堕ちていくなぁ。イケメンが敗北感に打ちひしがれて足掻く光景はどうしてこうもメシが旨いのか。名前からして一鶴派に入りそうな気がしていましたが、そのうち自滅しそうだ。
 七々々ちゃん殺害事件の犯人探しにも重護が先んじて一手をかけて、内心焦る壱級の今後の活躍にも期待だな。本編ではやられてばかりだが、重護に負けない好敵手でいて欲しい。さて、二学期編と新作も楽しみです。

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2015年10月17日

筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。/谷春慶

4800246067筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。 (宝島社文庫)
谷 春慶
宝島社 2015-10-06

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亡くなった祖父の思いを確認すべく、美咲は大学一の有名人、東雲清一郎を尋ねるが、噂に違わぬ変人で――。有名な書道家なのに文字を書かず、端正な顔から放たれるのはシビアな毒舌。挫けそうになる美咲だが、どうにか清一郎を説得。祖父から残された手紙を鑑定してもらうことになるが……。

 文字には書き手の魂が宿る

 書を書かない書道家にして筆跡鑑定人の主人公が文字から謎を読み解く人の死なないミステリ。

 平凡な女子大生・美咲が大学一の偏屈屋・東雲清一郎と関わったことで、文字にまつわる厄介事に巻き込まれていくのですが、筆跡鑑定から真実や想いが読み解かれていく登場人物たちの愛憎劇が興味深かったです。
 しかし、これが『モテモテな僕は世界まで救っちゃうんだぜ(泣)』と同作家とは思えない。こういうのも書けるのか。作者名調べないと絶対に気づかんぞというくらいの180度方向性の真逆なシリアス路線でびっくりした。

 東雲清一郎の毒舌クールっぷりがいいですね。優れた筆跡鑑定能力ゆえに好むと好まざるとにかかわらず、人の書いた文字から無意識に内面や本音を読み取ってしまうから、それなら人間嫌いになっても仕方がないか。
 美形なのに無愛想な彼ですが、実は方向音痴だったり、スマホが使えなかったり、意外と抜けている一面があったりするのも女性読者には萌えポイントなんじゃないでしょうか。うん、クールだけど人間臭いのがいい。

 謎のひとつひとつは対したことのないロジックで、読んでいて予想は容易なんですが、明確な証拠を得るため、犯人確定にいたるまでの筆跡鑑定が見所です。文字の特徴だけを手がかりに犯人像を追い詰めていく推理展開はなかなかどうして興奮します。名探偵の助手のように毎度事件に首をつっこんでくるくせに、危機感が抜けてて危なっかしい美咲を見かねて助けたり、次第に清一郎がデレていく姿にニヤニヤが止まらない。

 人が人を愛おしいと想う心、反対に憎らしいと思う心。人はなんと美しいのかと思えば、次の話では人の醜さをつきつけられて、見えてくる登場人物の心理描写の対比が鮮烈で際どくて、読んでいて心を揺さぶってくる。
 書いた字にはその人の内面が現れるとしたら、清一郎の書はどんなでしょうか、見てみたいですね。しかし、この話に出てくる書道家って、なんでみんな人格破綻者ばかりなのか。書道のせいなのねそうなのね。
posted by 愛咲優詩 at 00:00 | TrackBack(0) | このライトノベルがすごい!文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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