ダフロン

2019年02月12日

撃ち抜かれた戦場は、そこで消えていろ 弾丸魔法とゴースト・プログラム/上川景


“弾丸魔法”による凄絶な戦争が続く世界。戦火の中、亡霊を名乗る少女・エアより、被弾者の存在・功績を消滅させる“悪魔の弾丸”を入手した少年兵のレインは、世界を再編成する戦いに挑むことになり


 その銀の弾丸は世界を撃ち抜く

 悪魔の弾丸を手にした少年少女が戦争無き世界を目指して戦うミリタリックファンタジー。

 これは紛れもなく最高傑作級。まさかガチの才能がファンタジア大賞から出てしまったどうしよう?
 撃った相手を最初からいなかった世界へ再構築する"悪魔の弾丸"を手に入れた学徒兵・レインが、百年間続く東西戦争に終止符を打つために古の天才魔導士エアとともに人知れず世界を改変していく。戦術と戦略に魅せられ、それぞれの想いから戦いを止めるために戦いに向かう彼らの決意に胸を打たれました。

 この作品が素晴らしい点はいくつもあるが、なにより"悪魔の弾丸"というアイテムがこの物語を唯一無二たらしめている。敵の将官を撃てば最初から侵攻がなかったことになり、戦死者や犠牲者も生きている世界へと書き換わる。そんな魔法の弾丸を軍学校の学生でありながら卓越した魔術戦闘力と、クレバーな頭脳を備えたレインが手に入れたことで、戦況をひっくり返していくというストーリーに引き込まれる。

 レイン一人だけでなく、その弾丸を作り出した亡霊・エアという百年前から生き続ける魔女もレイン以上の凄腕魔導士で、そんな二人がタッグを組んで戦場を駆け抜ける姿に燃えずにはいられない!
 しかし、標的である敵将もまたエアの"悪魔の弾丸"ような超常の異能を備えた存在であり、自分の力を如何に使って相手の裏をかいて戦場を支配するかという駆け引きのある異能バトルに唸らされる。

 圧巻の臨場感と迫力満点で描かれる戦闘シーンや、怒涛の展開の連続に興奮を揺さぶられました。
 己の目的のためのいきずりの契約相手だった二人が、次第に相棒として信頼しあって戦いの中で紡いでいく絆に感動しましたね。恋人でも、戦友でもない、自分と同じ境遇の存在の共感とでもいうべきか。
 早くも今年一番の新作が決まってしまったなぁ。これだから新人賞を漁るのがやめられないんだ。
posted by 愛咲優詩 at 00:00| 富士見ファンタジア文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月10日

ハニトラは効かない。英雄だからね、俺/夏目坂一家


たったひとりで魔物との戦争を終結させた英雄・英赤雄介は青春を取り戻すため、学園に通うことになるのだが……。そこには彼を自国へと引き込むため、各国からハニートラップに長けた美少女たちが派遣されていて!?

 デートして、フラれろ!

 世界を救って英雄になった少年とハニートラップ要員として送り込まれた少女たちの学園ラブコメ。

 そうそう。ファンタジア大賞は、こういうのでいいんだよこういうので! 実家のような安心感!
 世界を侵略した魔王を一人で倒して英雄となった少年・英赤雄介と、彼を取り込もうと各国から送り込まれたハニートラップ要員の美少女たちとのイチャイチャ学園ハーレムライフがエロ楽しかった。
 男性読者は、とにかくハーレム出しときゃホイホイ釣られるんだって、審査員わかってるー!

 幼い頃の人体実験によって記憶を失い、戦場以外を知らない雄介が、ときおりトンチンカンな世間知らずを見せるのが可笑しいが、さばの味噌煮ぐらいで感動できるその境遇を想像して泣けてくる。
 雄介の幼馴染を自称する護衛・木葉ちゃん、巨乳黒髪ロングで健気でいい。それなのに一番ハニトラっぽい奴と雄介に警戒されてしまうガッカリ美少女っぷりがもう可愛いですね。幼馴染勝ちフラグか?

 アメリカ、イギリス、中国から送り込まれた本物のハニトラ要員も、それぞれお色気要員だったり、ロリだったり、ストーカーだったりと尖った個性の持ち主で、これまた残念ヒロインで役立たず可愛い。
 それにしても彼女らの個性というか、性癖がおっさん過ぎる。裏でラブコメを観察して大騒ぎしてる各国要人のおっさんズが国家元首とかで大丈夫なのかこの世界。雄介ー!お前だけが頼りだ!

 デートに誘って、わざとみっともない振りをして、女の子たちに諦めさせようとする雄介ですが、何故か、本人の願いとは別に好感度が上がってしまってというのもお約束で愉快ですね。
 いやぁ、本当に全編にわたって非常にバカバカしい。一切、カッコイイものを書こうとか見栄を張らず、とにかくエロとラブコメ全面に押し出してくるこの強気な作風嫌いじゃない。この作品はこれでいいぞ!
posted by 愛咲優詩 at 00:00| 富士見ファンタジア文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月03日

食べないお嬢と魔術学園の料理番/駿河ゲンゾウ


名門『クライエス魔術学園』は今や魔術よりも食堂の方が評判な学園。ところがただ一人、生徒会長レクティアはカイルの料理を口にせず…「食べたくないのよ、『人が作ったモノ』なんて!」幼い頃から狙われ続けたレクティアが信用するのは己のみ。しかし、彼女が最高峰魔術組織から抹殺対象になり

 いただきますは信頼の証

 魔術と包丁が交差する、新世代学園バトルファンタジー

 「食べないお嬢」じゃなくて、「ラーメン大好きレクティアさん」でいいんじゃないかなタイトル。
 客の笑顔が何より好きな料理バカの魔術学園の食堂で腕を振るう料理番の青年カイルが、生徒会長レクティアとぶつかり合いながら、彼女の心の傷を料理で救っていくストーリーに感動しました。
 他人の作った料理を食べるということは、お互いの信頼関係があってこそ。まったく納得しました。

 過去のトラウマから他人の作った料理を食べられない料理恐怖症ともいえるレクティアと、誰かに美味しい料理を食べさせるのが大好きなカイルとでは水と油で、互いの事情を知らない間は巡って衝突が絶えないんですが、レクティアの窮地を救ってからのデレっぷりは見事でした。これはいいチョロイン。
 エリートお嬢様キャラかと思ったら、ただの腹ペコキャラだった件。完全に餌付けされておる。

 魔法の使えないただの料理番かと思ったら実は……というのはよくある展開ですが、教官系としたら成長や教導パートが足りないし、異世界グルメものだったらもっと品数やキャラを出してリアクション芸を畳み掛けないとインパクトが弱いしで、一番重要なピース欠けていてどっちつかず。流行りのジャンルを合体させてみたけど、本来の良さを打ち消し合ってしまった感じ。作品が求めた味がわからぬ。

 キャラクターは魅力的ですが、ストーリーも世界観もシンプルだし、ちょっと単調に思えてしまう。
 もっとキャラクターや組織を増やして人間関係、勢力図を複雑にするとか、あるいは世界観をもっと『料理』というテーマに寄せて、「この世界の均衡は、美食倶楽部が支配している」とか、ありえない設定にするほうが個性が出そう。いかにもファンタジア大賞っぽいんですが、もっと冒険してもよかった。
posted by 愛咲優詩 at 00:00| 富士見ファンタジア文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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