ダフロン

2017年03月21日

キラプリおじさんと幼女先輩/岩沢藍


女児向けアイドルアーケードゲーム「キラプリ」に情熱を注ぐ、高校生・黒崎翔吾。親子連れに白い目を向けられながらも、彼が努力の末に勝ち取った地元トップランカーの座は、突如現れた小学生・新島千鶴に奪われてしまう。クリスマス限定アイテムを巡って巻き起こる、俺と幼女先輩の激レアラブコメ!

 俺より可愛い奴に会いに行く

 女児向けアーケードゲームに情熱をかける男子高校生と女子小学生のラブコメディ。

 うわ、幼女先輩つよい。女児向けアーケードゲームは可愛さで相手を殺すゲームだったのか。
 女児向けアーケードゲーム「キラプリ」ガチ勢である主人公・黒崎翔吾と女子小学生の新島千鶴がぶつかり合いながら、ゲームを通じて年齢の差を越えた友情を築いていく姿が微笑ましかったです。
 しかし女児向けゲームにルナティック級の難易度を設定するキラプリ制作スタッフは絶対頭おかしい。

 女児向けゲームをプレイするためにバイトしたり、ファッション誌を読んだり、生活をかけている翔吾の廃人っぷりが可笑しいです。どう見てもアブない奴ですが、ここまでやってるなら逆に尊敬するわ。
 そんな翔吾を小さな女の子がコテンパンに叩きのめすから面白いんだ。格下にプレイする権利はないとばかりに翔吾を鼻であしらうドS幼女な幼女先輩の毒舌の嵐がご褒美すぎます。俺も罵られたい。

 負けず嫌いで意地っ張りで生意気な千鶴ですが、お嬢様らしく変なところで世間知らずだったり、背伸びしていたり、まれに弱みを覗かせたり、年相応の女児っぽいところもあって本当に可愛いんです。
 初めはお互いにいがみ合って敵視していた二人が、己の可愛さを競い合ったり、映画館に行ったりするうちに、対等な相手として認め合い、力を合わせて困難を乗り越える展開に胸が熱くなりました。

 本気の趣味をバカにされ理解されない辛さや孤独は、オタクやゲーマーなら誰でも身に沁みて感じた経験があるんじゃないでしょうか。カラオケやパーティも結局は達成感や充実感を得るために参加するわけで、目的や行動が違うだけでゲームだってアイドルのライブだってみんな同じだと思うんですけどね。
 千鶴の境遇が明かされておらず、まだポテンシャルを隠しているようなので次回に期待です。
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2017年02月05日

建築士・音無薫子の設計ノート あなたの人生、リノベーションします。/逢上央士

4800267382建築士・音無薫子の設計ノート あなたの人生、リノベーションします。 (宝島社文庫)
逢上 央士
宝島社 2017-02-07

by G-Tools

産後クライシス(?)で妻子に出て行かれた男性、サモエドと暮らす老夫婦、自宅カフェ開業を考える二人の主婦……。音無建築事務所には、今日もさまざまなワケありクライアントが訪れる。天才的な観察眼を持つ音無薫子(おとなし・かおるこ)は、彼ら自身も気付いていない真の問題に、建築士として切り込んでいく。

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 あなたの人生の設計プラン教えます

 依頼主の要望を聞くが決して要望通りにしない女性建築士が家に秘められた謎を解き明かす建築ミステリー

 この作品に登場する依頼主に必要なのは建築士じゃなくて心理カウンセラーなんじゃないかなとオモタ。
 建築士である薫子さんと助手の今西くんが、さまざまな理由から家や過去に囚われた人々の心の問題を解き明かし、ユニークなリノベーションによって新しい自宅で新しい人生を歩み出していく光景が感動でした。
 家や部屋はそこに住む人の内面を映し出す鏡であり、人生を積み上げていく土台でもあるんですね。

 研修生だった今西くんが設計を任されるようになり、最初はやる気に満ちていたのに希望が曖昧だったり、意見がコロコロと変わる依頼主に振り回されて青息吐息な姿に社会人ってそんなものよと微笑ましくなった。
 依頼主も問題を問題として認識してないから困っちゃうんですよね。現実で遭遇したら間違いなくこじれる沼案件だ。薫子さんもそんな依頼主のアンタッチャブルな領域に踏み込んでいくから毎回ハラハラさせられる。

 いい意味で空気を読まない、妥協せずに自分が納得いくまで追求する薫子さんの仕事の流儀が潔くて気持ちがスカッとする。こういう上司は部下は大変だろうけど仕事に自信が持てるだろうなと羨ましくなったり。
 依頼主だけでなく、建築士もそれぞれ夢や理想を抱えて設計に携わっている。プロでも悩むこともあって完璧な存在じゃない、でも人間味が感じられてやりがいのある素晴らしい仕事なんだなって改めて思いました。

 マニュアルやラインにそっているいるだけでは作れない、まさに建築は人が住む芸術品ですね。
 今西くんや喜多村さんたち研修生が仕事の成功や失敗を通じて設計とは何かを学んでいく建築士としての成長ぶりが初々しくて、彼らに感化されて若い頃の情熱を蘇らせていく先輩たちの姿にも胸が熱くなる。
 いつだってやりなおせる、人生の設計を学べたような気がします。
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2016年09月12日

クロバンス戦記 ブラッディ・ビスカラ/高村透

4048923501クロバンス戦記 ブラッディ・ビスカラ (電撃文庫)
高村透 p19
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2016-09-10

by G-Tools

革命勢力「黄金の地平」の一員である少年ビスカラは、クロバンス王国を変えるために、多くの少女たちとともに命を省みず戦っていた。のちの歴史家は言う。「ビスカラは英雄だ」と。しかし、若きビスカラの前に広がっているのは、普通の人間では耐えられないような血塗られた道だった。

 最大多数の幸福のやむなき犠牲

 過去に遡る「リテイク」の力を得て、のちに英雄となる少年の血塗られた道を綴る悲壮なるファンタジー戦記。

 ハーレムものかと思いきや、ヒロインがどんどん死んでいくやつだわー。こういう救われないの好きです。
 時間を遡って失敗をやり直す「リテイク」の力を与えられた革命家の主人公ビスカラが、政府軍と戦い、貴族によって腐敗した現政権を打倒していくのですが、リテイクの代償として愛する人を犠牲にしなくてはならず、最大多数の幸福のために大切な人をその手で殺していく、理想と現実の間で懊悩する姿に胸が痛みました。

 ビスカラは新興貴族の生まれで、貴族や金持ちが通うエリートの高等学校で主席をとるほどの優等生ながら、素行不良で民主主義に傾倒して、反体制運動にも参加する問題児なんですが、『血の行進事件』という政府軍による市民虐殺を機に、美しき指導者ラスカリナと共に革命軍を立ち上げ国家に戦争を挑むことになる。
 病弱なのに性格は苛烈な絶世の美少女ラスカリナの民主論の信念や熱血的な言動に惹かれますね。

 もともと長引く戦争と内戦によって労働適齢期の男性人口が極端に減り、革命軍といっても貧困層の子供や女性たちばかりで、指導者ラスカリナを始めとして、ビスカラの周辺は女の子揃いなんですが、どの娘も理想に酔っていて現実が見えておらず、戦術もなしに本職の正規兵相手に玉砕特攻をしかけていくような視野の狭さが危なっかしく、士気は高いにも足元がグラグラで、いつ破綻してもおかしくない組織像がヒヤヒヤさせらる。

 幹部の中では唯一、政治や経済に通じ、理想を掲げながらも現実的な判断ができるビスカラにさまざまな負担がのしかかっていくのですが、実働部隊を率いる副長ベルナレットと派閥争いを繰り広げることになってしまい、ビスカラなしでは資金も資材も整わず運営が立ち行かない組織を支える要でありながら、強権を振るう者として同胞からもよく思われていない人間関係がなんとも報われません。

 政府軍と比べれば、力でも数でも装備でも劣る革命軍を率い、奇抜な戦術を駆使して奇跡的な勝利を繰り返し、一見すると革命軍が勢いに乗って絶好調のよう見えても、すべては「リテイク」によって知り得た相手の策を逆手に取っているだけで、戦のたびにその生け贄としてビスカラが大切に思う人がひとりずつ亡くなって、周囲が、勝ち戦の喜びに沸くなかで一人、誰にも知られずに苦悩を抱える姿がやるせない。

 ビスカラも革命が掲げる最大多数の幸福を実現するためのやむなき犠牲と理性では割り切りつつも、本当は殺したくなんてなくて、しかし、すでに払ってしまった命を無駄には出来ず、悲しみと罪悪感で自分を責めながら止まることも引くことも許されず、少女たちを手にかけていく、しかしビスカラのことを誰も責めずに粛々と死を受け入れる献身がまた切ない。稀代の戦術家としての栄光の道を歩むと共に、引き返せない孤独の道を歩んでいく展開が読んでいて辛かった。

 英雄とは孤独なものであると言われるが、誰しもが臨んでそうなるわけではないというのを思い知らされる一冊
posted by 愛咲優詩 at 02:23 | TrackBack(0) | 電撃文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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