ダフロン

2012年08月09日

グッドナイト×レイヴン/深沢仁

4800200938グッドナイト×レイヴン (このライトノベルがすごい! 文庫)
深沢 仁 serori
宝島社 2012-08-10

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怪しい男・ワタリヤにはめられ、謎のバイトを始めることになった鈴人。急造チームのメンバーは、女装癖のある美少年・遊、コミュ障でスピード凶の無口美少女・倉日。一回7万円の仕事内容は、あるアイテムを盗んでくること! 訳がわからないまま仕事を続ける鈴人だったが、ある日トラブルが発生し……。

 悪夢を盗むお仕事です

 コミュ障な3人の少年少女が謎のバイトに挑む放課後クライムノベル

 これはなにやら難しいなぁ。 妖しくも美しく、危うくも甘美な夜の雰囲気を楽しめる大人向け。
 高額報酬に釣られて犯罪まがいの怪しげなバイトに従事することになった3人の若者が、依頼の裏に隠された不可思議な出来事に巻き込まれていくサスペンス的展開に固唾を飲んで引きこまれました。
 優等生にも不良にもなりきれない高校生の日常にささやかな緊張感を与える非日常に顫えた。

 スリの常習犯で無気力な鈴人、女装癖のある遊、スピード依存症で無表情な倉日。それぞれ日常生活では周囲から浮いてしまうような、健全とは言い難い性格や悪癖を抱えた学生トリオが、依頼をこなしながら奇妙なバランスを保って段々とチームワークを築いていくところが微笑ましかった。
 普通に生きるのには不器用な彼らが仕事の間だけは日常の柵を捨てて活き活きしていました。

 指定された住居に忍び込んで"とある物"を盗んでくるだけという、簡単だけれど違法性のありそうな仕事を引き受けて、無難にこなしていく3人だけれども、次第に自分たちが何をやらされているのか好奇心が抑えきれなくなっていき、非合法どころか非現実な真相が明かされてもなお仕事を続けるのは、その頃には報酬以外で仲間との繋がりや充実感を得るようになっていたからじゃないのかなと思ったり。

 ただ、エンタメ性を考えると、どうも結末が不完全燃焼というか、一時的なトラブルを解決しただけというか、ストーリーの当初と比較して状況の変化やキャラの成長が感じられないのが物足りない。
 それと、もうちょっと恋愛要素があってもよかったんじゃないかな。倉日ちゃんにだけ他人の見ている悪夢を見る能力が備わっているのかも明かされないままで肩すかしな感。続編への伏線です?

2012年08月08日

クロス・エデン 2 魔法王国ミシュリーヌ編(後)/吉野匠

4796698329クロス・エデン2 魔法王国ミシュリーヌ編(後) (このライトノベルがすごい! 文庫)
吉野 匠 村上 ゆいち
宝島社 2012-08-10

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リアルワールドに魔法が飛び交い、剣の音が響く。オンラインRPG『クロスエデン』の世界が、現実を侵食し始めたのだ。野望を抱く魔導師・バルドールに命を狙われながら、浩介と仲間たちは少しずつ真相に近づいていく。王女セシルの運命は? そして浩介に秘められた力とは

 目覚めよ勇者の魂

 オンラインMMORPG『クロス・エデン』を舞台に現実と仮想が交錯するハイリンクファンタジー。

 天然系なお姫様やメンヘラなお嬢様より、純真一途な小学生女子ルートへ導く以外ありえないwww
 現実に現れたMMORPG『クロスエデン』のNPCたちの襲撃を退けつつ、魔導師バルドールとセシルの因縁を断ち切るために奔走する主人公コースケの勇者様っぷりがヒーローらしくて格好良かった。
 ジャンルはVRファンタジーだろうけど、やはりゲームっぽくないなー。現代伝奇でしょうこれは。

 敵バルドールの手下が現実世界までセシルを追いかけてきて、真剣や鎧で武装していたり、魔法を使ってきたりするくせに、コースケたちは普通の高校生が持てるだけの力しか無いというのがピンチですね。
 それでも常人離れした能力や冴子と魂を入れ替えたセシルの魔法でなんとか窮地を切り抜けていくんだけれども、居場所をすぐに突き止められて防戦一方ってのは精神的にキツイものがありますね。

 ヴェルナーとも合流して、ようやく反撃に転じるまで待ちわびてやきもきしてましたよ。そして意外すぎる援軍だった月渚ちゃん可愛ゆ! やっぱりお姫様やお嬢様より、キャラの見せ場で勝ってるでしょ!
 だが、事件を起こした理由がフラれた女を無理やり振り向かせるためとか、バルドールさん、ちょっと小物すぎんよ。まあ粘着質のストーカーには過ぎた魔力を持ってしまっているからこそ厄介なんですよね。

 しかし、コースケの前世があの人って……。彼が『魔法の時間』を使える理由も一応ついたしこれはこれでいいのか。けど、人造人間に自分と同じ力をもたせられるのなら自分を犠牲にする必要なくない?
 偽物ネタと魂の入れ替えネタを多用しすぎて文章全体がややこしい。まだ作者の初期の頃に執筆した作品というし、違和感のある部分は仕方がないのか。もうちょっとスマートにリメイクして欲しかった。

2012年07月08日

創世の大工衆/藍上ゆう

4796675248創世の大工衆(デミウルゴス) (このライトノベルがすごい! 文庫)
藍上 ゆう ぴょん吉
宝島社 2012-07-10

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かつて武力ではなく圧倒的な建築技術で戦乱から民を救った伝説の大工。時は流れ、亜人の国で奴隷工として暮らす少年の前に、ひとりの少女が現われる。高度な建築技術を持ちながら、性格に超難アリの彼女こそ、その伝説を継ぐ者だった。そんな二人の元に、この国の女王から依頼が舞い込むが。

 平和を築く職人魂

 かつて戦乱の世を治めた大工衆の伝説を受け継ぐ少女と一人の少年が織り成す建築ファンタジー。

 剣でも魔法でもなく、建築技術でもって世界を平和に導く! こ、これは新感覚のファンタジー!
 先祖が犯した罪により囚われの奴隷工として生きてきた主人公・カナトが、伝説の大工集団『創世の大工衆』の末裔である少女・シアに弟子入りし、彼女の仕事に付き従い建築技術を学ぶ傍ら、過去の偉人たちが遺した設計図の謎を紐解き、歴史の新たな1ページを築いていく光景が素晴らしかった。

 亜人の国クーラントで唯一の大工として、奴隷ながらも仕事に誇りを持っていたカナトが、『創世の大工衆』であるシアの高度な建築技術を目の当たりにし、なけなしのプライドまでヘシ折られる姿は哀れ無残。
 しかし、自分の未熟さを思い知って落ち込みはすれど、初めて目にした彼女の神がかった技術を前に、それ以上に心が沸き立ち、大工として純粋な憧れを抱く根っからの職人気質は見上げたもの。

 技術と経験はあれども、人付き合いが悪くキツい性格のシアに真っ向からぶつかっていくうちに、『創世の大工衆』の実像を知り、重圧を背負って悩み苦しむシアの本当の姿にもよく気づいたなと感心する。
 自分が見失いかけていた『創世の大工衆』が目指す世界平和の信念をカナトに感じて、彼女の頑なな心も徐々に溶けていく二人の職人の交流には、読んでいて熱いものが込み上げてきました。

 人々の幸福を願い、城壁や家、街並を建設することで平和と安息な暮らしをもたらす大工。でもその大工本人の幸せと平穏は誰が与えてやればいいのかという、ジレンマがもどかしくて、やるせなかった。
 ただの建物を越え、新しい歴史を作り上げた二人の功績は、伝説の『創世の大工衆』の偉業にも恥じない名建築だった。彼らには自分たちの幸せも含めた真の世界平和を創りあげて欲しいと願ってやまない。

2012年07月07日

クロス・エデン 1 魔法王国ミシュリーヌ編(前)/吉野匠

4796698302クロス・エデン1 魔法王国ミシュリーヌ編(前) (このライトノベルがすごい! 文庫)
吉野 匠 村上 ゆいち
宝島社 2012-07-10

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高性能AIを搭載し、NPCと自然な会話ができると評判の、オンラインRPG『クロス・エデン』。平凡な高校生である片山浩介も、このゲームにハマったひとりだった。ある時、浩介は、イベントで出会った囚われの姫君・セシルに恋をする。ゲームキャラとはいえ姫を見捨てられない浩介は、救出作戦を立てるが。

 世界を超越する楽園

 オンラインMMORPG『クロス・エデン』を舞台に現実と仮想が交錯するハイリンクファンタジー。

 大人気MMORPG『クロス・エデン』をプレイしていた主人公・コースケが、とあるイベントで囚われの姫君・セシルと出会い、不条理な運命に翻弄される彼女を助けるためにシナリオを無視し始めたことで、仮想と現実の境目が希薄になり、ついには現実世界に異変が起き始める展開にハラハラヒヤヒヤさせられました。
 流行りのVRファンタジーものに伝奇風のテイストを絡めることで、これまでの作品と差別化している。

 一見して凡庸なヘタレ高校生だが、実はとても熱い男気を秘めたコースケの雄々しさが好印象。
 イケメンで天才肌な親友・シュンの起こすトラブルの尻拭いばかりしているかと思えば、完璧超人の彼ですら一目置く優れた資質の片鱗を魅せることもあって、眠れる才能、未完の大器を感じる。
 学校では埋没してしまうコースケの魅力をゲーム世界の女の子だけは理解しているのもいいです。

 突発的に発生するラッキーイベントで、お姫様のセシルと知り合い、お互いに気持ちを通わせたのも束の間、政治的な思惑で処刑されることになってしまった彼女を救うため、本来のシナリオをねじ曲げてでも一国の兵隊を相手に立ち向かうコースケの無謀なまでの正義感と、酔狂にも彼に手を貸すシュンの心意気が小気味良い。
 処刑を阻止するだけだったのに、次々と重要人物が参戦してきて大混戦に陥る光景は壮大でした。

 どういう理屈か現実世界に実体化したセシルや他のNPCまでコースケの周辺に現れて、平凡な日常が崩れてプレイヤーの狂気が現れ始めるところは背筋が寒くなるなぁ。最近の若者のゲーム脳怖い。
 でも、一番可愛いヒロインはぶっちぎりで月渚ちゃんなんですが。なにこの子健気すぎるだろ。隣の家にこんな子いたらゲームなんかしてないわー。二次元美少女よりも三次元幼女を大切にしてあげてよ。

2012年06月06日

しずまれ! 俺の左腕/おかもと(仮)

4796698469しずまれ! 俺の左腕 (このライトノベルがすごい! 文庫)
おかもと(仮) NOCO
宝島社 2012-06-08

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善良なリア充である高校2年生の篠中紳士は、ある日謎の飛来物と衝突、異世界の魔王に憑依されてしまう! 紳士の左腕を乗っ取った魔王は、その恐るべき力を用いて……ネトゲ三昧!? 「くくく、携帯をよこせ! まとめサイトを見るのだ! 」「やめろ魔王! くっ、しずまれ僕の左腕……! 」

 世界で一人の反逆者

 異世界の魔王に憑依されリア充から邪気眼へとクラスチェンジした少年の笑いと感動の庶民派ラブコメ

 いやーバカだなーこの作品。あまりにもバカバカしくて、逆に感動したわ。なんだよイイ話じゃないか!
 異世界の魔王に取り憑かれてしまった主人公・紳士が、それまでのめちゃモテリア充から痛々しい邪気眼中二病へと転落して、傲岸不遜でわがままな魔王に振り回されつつも惹かれていって、次第に絆が芽生えていく姿に心を揺さぶられました。単なるバカ小説かと思えば、意外に熱くて泣けます(?)

 多くの友人と親友、幼馴染までいて、これでもかと順風満帆の薔薇色コースの高校生活を送っていた紳士が、不幸なとばっちりで一転して周囲から白い目で見られて避けられるようになるのが可笑しい。
 本人は自分に取り憑いた魔王が他人に危害を与えないように必死に防いでるつもりなのだけれど、それがまた周囲から見ると邪気眼をこじらせているようにしか見えなくて、笑いを誘うんですよね。

 友人たちに見放され失意のどん底にいる紳士を嘲笑う魔王だけれど、親友・喜多郎と幼馴染の巻名だけは変わってしまった紳士を心の底から心配してくれて、真の友情ってこういうものだよな。羨ましい。
 外見は綺麗なのに口も性格も悪く、人間を虫ケラ扱いする魔王だけれど、人間界の娯楽や動物好きだったり、普通の女の子らしい一面もあって、そんなギャップにときめいてしまう紳士がピュアボーイだなw

 魔王に対抗する勢力からの刺客によって魔王が捕らえられ、離れ離れになってしまう紳士だけれど、魔王への愛によって力を手に入れ、人類の敵であるはずの魔王を救いに行く紳士の姿に魅せられた。
 たった一人で全世界を敵に回すなんて。男にここまでされたらさすがの傲慢な魔王と言えどもデレるでしょうね。最後には、対等な存在として認めていたのがよかった。気軽に笑えて心温まるお話でした。

2012年06月05日

魔法少女育成計画/遠藤浅蜊

479668039X魔法少女育成計画 (このライトノベルがすごい! 文庫)
遠藤 浅蜊 マルイノ
宝島社 2012-06-08

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大人気ソーシャルゲーム『魔法少女育成計画』は、数万人に一人の割合で本物の魔法少女を作り出す奇跡のゲームだった。幸運にも魔法の力を得て、充実した日々を送る少女たち。しかしある日、運営から「増えすぎた魔法少女を半分に減らす」という一方的な通告が届き……

 理想と現実の殺戮場

 本物の魔法の力を得た十六人の魔法少女による理不尽で無慈悲な生き残りゲーム。

 こいつはすげぇ! 最っ高のクゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッッッル!!!
 大人気ゲーム『魔法少女育成計画』によって、変身能力と各一種類ずつの魔法を得た魔法少女たちが、一定数になるまで生き残りを賭けて助け合い、騙し合い、殺し合うおぞましい光景に慄きました。
 善意や優しさなど甘い感情をみせれば即座に命を失う、この不条理に満ちた惨劇! 嫌いじゃない!

 人助けをすると得られるマジカルキャンディーの少ない者から順に、一週間ごとに一人ずつ脱落(=死亡)させるという一方的な要求を突きつけられた十六人の魔法少女たちが、生き延びるために競争を開始するんだけれど、他の魔法少女からキャンディーを強奪する者が現れ始め、さらには相手を殺害してしまう者まで出現し、どんどん争いがエスカレートして陰惨さを増していくのが恐ろしいです。

 どいつもこいつも、人間だった頃からどこか頭のネジが一本飛んでて、サディストだったり、シリアルキラーだったりと、狂ってたり、歪んでたり、真人間とは程遠い澱んだ一面を秘めた奴らばかりなんですが、そんな彼女たちにも、友情や絆が芽生えるケースもあり、ただ力任せにぶつかり合うだけでなく、共闘したり、利用したり、取り引きと駆け引きを重ねる頭脳戦の様相を呈していく展開に息を呑みました。

 魔法少女それぞれが特徴的な魔法を使えて、戦闘向けだったり、そうでなかったりするんだけれども、すべてはお互いの相性次第で、戦ってみるまで勝敗はわからないという予測不能の面白さがある。
 どこぞの白い淫獣以上にマスコットアニマルが酷い畜生で、明確な悪意をもって魔法少女たちを唆して、嘲笑っていやがるのが胸クソ悪かった。後味は苦いけれど、これこそが人生の苦味なんだろう。

 読者の精神を全力でヘシ折りにいく、さすがこのラノ文庫は他とはやることが違うな!(; ・`д・´)

2012年05月02日

オカルトリック/大間九郎

4796697276オカルトリック (このライトノベルがすごい! 文庫)
大間 九郎 葛西 心
宝島社 2012-05-11

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狐憑きの少年・玉藻と、超絶美女でヒッキーな探偵・ねえさんの、奇妙でふざけた、そして真摯なオカルト事件簿。自然発火、物の怪憑き、チュパカブラ……次々に起こる事件を通して描き出されるものは何か? オカルト×トリック×カラクリ=人間の幸福って、どんな物語だよ!

 幸福とはひとりの中にはなく、ふたりの間にある

 引きこもり美女探偵と美少年助手のハッピーでファッキンなオカルト事件簿。

 いやー、登場人物みんないいカンジに病んでたり狂ってたりして、SAN値がゴリゴリ削れていくぞー。
 オカルト専門の探偵・葛乃葉とその助手・玉藻が、巷で起きるオカルト事件を捜査しつつ、自分たちと周囲の人間の幸せを追い求めていく姿が真に迫って、ときに血みどろで生々しい描写が胸を抉りました。
 そして今回も宝島社の方のご好意で発売日前にもかかわらず献本を頂いてしまいました。感謝!

 毎日、同じ部屋で寝起きして生活能力皆無な葛乃葉、通称"ねえさん"の世話を焼いて、探偵助手として一方的に尻に敷かれているのかと思えば、口八丁手八丁でご機嫌を取ったり、他の女の子と風呂に入ったり、丁寧な言葉使いに騙されけれど、案外マイペースでイイ性格をしている玉藻くんが面白い奴でした。
 ときに正義感が強すぎて暴走しちゃうところもあったりして、純粋すぎる行動原理が危うく思いますね。

 葛乃葉も人としていろいろダメな人間なんだけれど、そもそも人ですらなくて……と、二人の馴れ初めと正体が描かれるにつれて、切っても切れない絆の深さと愛情の重さに打ちのめされたり。
 オカルトな事件を通じて超能力者だったり、霊魂だったリ、地球外生命体だったりが関わってきても、その根幹にあるのは俗っぽい人間らしさで、騒動の黒幕たちの悪徳と醜悪さにゾッとさせられました。

 葛乃葉と玉藻くんは見事な依存関係だなぁと関心していたんだけれど、最後まで読んでメンヘラ女子高生イソラたんのヤバさをようやく理解して、こりゃ参ったわ。イソラたんかわいいよイソラたん。
 ガチすぎる内容が精神安定的にちょっと辛いかもですが、ハードでヘヴィな暗黒ライトノベル好き読者にはたまらないかも。訓練された読者ならイソラたんに癒しを得られるよ! ああ、イソラたん(;´Д`)ハァハァ

2011年10月05日

ドS魔女の×××/藍上ゆう

4796686339ドS魔女の××× (このライトノベルがすごい!文庫) (このライトノベルがすごい!文庫 あ)
藍上 ゆう 〆鯖 コハダ
宝島社 2011-10-08

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わたし、灰咲クレアは魔界に住む魔女。ある日、同居人のサキュバスからどんな願いも叶えられる魔法の存在を聞いたの。でも、その発動方法は「千人の処女を発情させる」ことなんだって。その条件を満たした空百合学園に潜入したのはいいのだけど。どうしてこんな大騒動になっちゃうのよ!

 目指せ! 処女千人斬り!

 人間嫌いの魔女が願いを叶えるため、千人の処女を発情させる魔法に挑むドタバタエロコメディ。

 ライトノベルでやれるギリギリのエロさという触れ込みでしたが、別の方向に天元突破しすぎー!
 「千人の処女を発情させる」ことを条件とする魔法を行うべく、乙女を求めて名門女学院に侵入した魔女・クレアが、そこで特殊な性癖を持った少女たちと出会い、最初は魔法の生贄としか見ていなかった彼女たちと絆を築き、人間の温もりを知っていく姿に心と下半身が熱くなりました。

 幼い頃に両親に捨てられ、サキュバスの女王に拾われたことで、人間嫌いで性的テクニックだけは凄いドS魔女に育ってしまったクレアのエロオヤジそのものの思考に最初は戸惑ったけど、わりとドジっ子でアドリブがきかなかったり、攻めるのは得意でも逆に攻められるのには弱いところが可愛かった。
 ときにパンツ穿いてる場面より穿いてない場面の方が多いんですけど。むしろヒロイン全員に言えるか

 女生徒全員に魅惑の魔術をかけてエロゾンビとして洗脳したはずが、どうしてか魔術の効いていない4人の美少女たちが現れ、彼女らに紛れ込み密かにあの手この手で落としにかかるものの、普通とは少し変わったフェチズムを持った彼女らに不意を打たれたり、思わぬ反撃にあって自分がイってしまいそうになったりと、女の子同士のエロいドタバタっぷりが大変美味しゅうございました。

 タイトルは「ドS魔女」ですが、そこまでドSなプレイはしていません。むしろドSな魔女もびっくりな変態嗜好を持ったお嬢様方に振り回される魔女っ子の痴態を眺めてニヤニヤするのが正しい楽しみ方です。
 これは良くも悪くもこのラノ文庫からじゃないと出せなかっただろうなぁ。これまで手を伸ばしていなかった読者層を狙いにきてかかっとる。文章だけでも十分過ぎるのに、〆鯖さん絵はヤバすぎると思うわー。

 公式サイトでドS魔女の試し読みと短編が公開されているそうです。気になった方はまずこちらをどうぞ。クレア×メアリーのカップリングが好きです。いや、メアリー×クレアも捨てがたい・・・・・・。

ドS魔女の××× 公式ページ
このライトノベルがすごい文庫 特別短編

2011年09月09日

僕と姉妹と幽霊の約束/喜多南

4796686312僕と姉妹と幽霊の約束 (このライトノベルがすごい!文庫) (このライトノベルがすごい!文庫 き 2-1)
喜多 南 みよしの
宝島社 2011-09-10

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ある日の放課後、彼は教室で同級生だった長谷川紫音の幽霊と出会う。紫音を成仏させるため彼女の心残りを解決しようとするクロ。だが、紫音はその提案を一蹴し、命令口調で「私を生き返らせなさい」と言い放つ。クロやクロの姉妹、他の幽霊たちも巻き込み様々な事件が巻き起こる。

 僕が愛した幽霊

 学校の地縛霊となってさ迷う幽霊少女と幽霊の見える霊感男子のせつない系学園ラブコメ。

 幽霊となって再会したクラスメイトの少女・紫音を成仏させるため、霊感体質の主人公・クロが彼女の心残りを解決しようと関係を深めるのですが、いつか別れがくるとわかっているだけにやるせなかった。
 主人公にベタ惚れな美人&美少女三姉妹がいて、さらに美少女の幽霊に取り憑かれるとかsneg?な設定ですが、ストーリーは驚くほどに切ない。悲しかったけど最後には救いを得られました。

 身体が弱くて生きているうちには味わえなかったことを、幽霊になって初めて体験することができて、むしろ活き活きと幽霊ライフを楽しんでいる紫音が可笑しいやら、痛ましいやら・・・・・・。
 紫音のワガママに振り回されても、生前の彼女に密かな片想いを抱いていたクロは強く出れず、ついつい流されて他の幽霊の事情に巻き込まれ、その解決に奔走するお人好しぶりが微笑ましい。

 それぞれ特別な霊能力を持ちながら、過去のトラウマから幽霊を避けていたクロの3人の姉妹たちも、紫音と関わっていくうちに次第に霊と向き合うようになっていく姿に心が和みますね。
 イケメンでモテるのに3人の姉妹の影響で女性恐怖症になってしまったクロですが、クロが傷つかないように常に気を配って支え合う姉妹たちの家族愛に、胸がいっぱいになりました。

 いきなり大切な人を失って悲嘆に暮れるクロの心情は察してあまりありますね。
 初めて恋した女の子と初めて出来た親友。どちらもかけがえのない存在だからこそ、その板挟みになって辛かったと思います。しかし、最後は正しい選択肢を選ぶことができて本当によかった。
 いくつかの事件を短篇形式で連ねたお話なのでサクッと読みやすかった。でも綺麗に終わってるだけに、続編は出なさそうな気がする・・・・・・。

2011年09月08日

美少女を嫌いなこれだけの理由/遠藤浅蜊

4796686290美少女を嫌いなこれだけの理由 (このライトノベルがすごい!文庫) (このライトノベルがすごい!文庫 え)
遠藤 浅蜊 黒兎
宝島社 2011-09-10

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完璧な外見と不思議な能力を持つ種族「美少女」が人間と共存する世界。普通の高校生・亜麻野雄介は、ある日唐突に2人の「美少女」の訪問を受け、彼女たちと同居する事になってしまった雄介。可愛くてミステリアス、身勝手で能天気、そんな老若男女の「美少女」たちに振り回される日々が始まった!

 これだから美少女は困る

 女性としての完璧な容姿を持つ異種族「美少女」と同居することになった少年の異種族間コメディ。

 メインヒロインが四十すぎのオッサン・・・だと・・・!? どどどどういうことだってばよ!!
 中年のオッサンや年老いた爺さんでも「美少女」という種族である限り、老若男女、見た目は年頃のとびきり可愛い女の子にしか見えないんですが、それだけに外見と中身のギャップが凄まじい。
 登場人物の大半が美少女ですが、本当の性別:女は半分もいねぇ!これはなんというTRAP!

 人間との共存共栄を目指している、まったく別の種族「美少女」の存在が理解に苦しみます。
 性別は男だけど、身体は人間の少女と区別がつかない「美少女」のサブさんが、男だらけの銭湯に入るのは風俗的に問題だと思う。まあでもなかったら主人公・亜麻野との同居なんてできないのですが。
 美少女の父親と人間の母親からでもハーフの子供が生まれるとか、身体の構造はどうなってるの!

 その容姿と特殊能力で、昔は希少価値の高かった「美少女」たちも、技術が発達し、人口が増えすぎた現代では仕事にあぶれるようになってしまい、仕事が取れなくなって困り果てたその状況を打開するため、『メイド喫茶』を建てて国からの助成金や振興費を踏んだくろうという彼らの思考が切実すぎる。
 彼らを邪魔に思うお役所からの嫌がらせが相次いだりと、美少女でも世知辛い世の中だなぁ・・・。

 理不尽で、不条理で、非常識な「美少女」たちですが、平凡な人間たちと比べると、個性豊かで、賑やかで、単に整った容姿をしているからというだけでなく、その存在自体が輝きとオーラを放っていて否応なしに惹きつけられてしまうんですよね。「美少女」だけでは生きづらく、人間だけではつまらない。人間たちが社会を作り、「美少女」たちが刺激を与える。そうした未来を見てみたいと思いました。

2011年09月07日

モテモテな僕は世界まで救っちゃうんだぜ(泣)/谷春慶

4796686274モテモテな僕は世界まで救っちゃうんだぜ(泣) (このライトノベルがすごい!文庫) (このライトノベルがすごい!文庫 た)
谷 春慶 奈月 ここ
宝島社 2011-09-10

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年齢問わず、時に種族の壁さえ乗り越えて、女と見れば口説きまくるビョーキ持ちの主人公・望月砕月。静かに生きていきたい本心とは裏腹に、制御不能なビョーキのせいでモテモテすぎて日常が修羅場! その上、謎の美少女まで口説いて世界を救うバク退治に巻き込まれ――

 僕はやっぱり治らない

 呼吸するように口説き、口説きながら世界の秩序を乱すバグと戦う少年のド修羅場系ラブコメ。

 女と見れば見境なく甘い言葉を囁き、口説きに走る主人公が人間のクズすぎる!(褒め言葉)
 学園一の美少女と美人に華麗に二股をかましておきながら、義妹や義母までフラグを立てて「初体験は3P希望!」と叫ぶ主人公・砕月の清々しいまでのゲスっぷりがひときわ異彩を放っていました。
 もうね、主人公の行くところ行くところ全部が修羅場なんですもん。修羅場スキーは必読です。

 女性を前にするとキメ顔で口説いてしまう厄介な悪癖によって、モテてモテてモテすぎてしまう砕月は即座に爆発しろ!と思うんですが、本心は普通の少年で、傷つけた女の子に罪悪感を感じていたりするのでややこしい。
 二股どころではない浮気癖に、なんでヒロインたちはこんなダメ男に惚れるんだろうと思うんだけど、ダメな男ほど母性本能がくすぐられるとかいう都市伝説のアレでしょうか、女心はわかりません。

 二股をかけた女の子に裏切ったことを謝りながら、またも口説き落とすその腕前は、某落とし神さんなんか目じゃないが、その方法は泣き落としと、赤ちゃんプレイというあたりがなんとも情けない・・・・・・。
 クズはクズだけど、女の子のために全身全霊を尽くす気持ちはどこまでも誠実なんですよね。悩める女性を救い上げる精神は素晴らしいんだけれど、誰にでもそうやって優しくするから救いようがない。

 どうして砕月がそんな面倒なビョーキになってしまったのかというところが、また切なくて同情を誘う。
 ラブコメですが、そこは尖った作風に定評のあるこのラノ文庫。ただの面白可笑しいラブコメじゃなくて、どこか壊れていたり、歪んでいたり、病んでいたりする現代の若者たちの愛憎劇に仕上がっている。
 読めばわかりますが、このタイトルはぴったりだわー。特に主人公の思いが(泣)に集約されているw

 いやぁ、まったくNice boat!と言わざるを得ない。ヒロインはみんな可愛いけど、静流先輩イチオシ。


PS
 ちなみに今回も宝島社さまから献本いただきました。
 このライトノベルがすごい!文庫編集部の方々、ありがとうございます。

2010年09月09日

伝説兄妹!/おかもと(仮)

4796678883伝説兄妹! (このライトノベルがすごい!文庫) (このライトノベルがすごい!文庫 お 3-1)
おかもと(仮) YAZA
宝島社 2010-09-10

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才能はなく、お金もなく、だが働きたくない。ないない尽くしのダメ大学生・柏木は、食糧を求めて入り込んだ山の中で、奇妙な遺跡を発見する。遺跡の中で出会った少女が持つ、凄まじい詩の才能を目の当たりにした彼は、彼女をデシ子と名づけ、妹として自分の家に住まわせ始めるが……。

 明日はみんなが幸せに

 ダメ大学生と純真少女が伝説的スケールで贈る、笑いと涙と感動の神話(in小樽)

 このライトノベルがズコー 、ハ,,、⌒⊂⌒~⊃。Д。)⊃ ありていに言って、アホ小説でした(褒め言葉)
 どうしようもないダメ人間の柏木が、遺跡の中で見つけたデシ子と一緒に暮らし始め、デシ子の才能に嫉妬したり、自分の矮小さに打ちひしがれたりする姿が、みっともないくらい人間臭くて可笑しかった。
 どんな人間でも一生に何度かは主人公になれる瞬間がある。そんなことを信じさせてくれました。

 記憶を無くし、他人を疑うことを知らないデシ子の純粋さをいいことに、その才能を金儲けに利用し、贈られる賛美を自分のものにして悦に浸る柏木のあまりにも自己中心的で利己的な振る舞いには、苛立ちを隠せなかったが、完全には悪人になりきれず、大金を手に入れて上機嫌になる度に罪悪感を増していき、次第に自己嫌悪から目を逸らせなくなっていく彼の矛盾は見ていて虚しくなったな……。

 そんな柏木の本性を見抜いた上で、それでも彼を慕うデシ子の想いに目頭が熱くなりましたが、デシ子との日常を取り戻すために体当たりで世界の危機に立ち向かう柏木の決意にも胸が熱くなる。
 デシ子を利用して世界を自分が望む世界に変えようとした透は、世界を愛しているからこそ、滅ぼすでもなく綺麗なまま留めておきたかったんでしょう。誰よりも善人すぎたからこその凶行だったのかな。
 柏木を見習えとは言えませんが、彼女も少し肩の力を抜いて生きていってくれたらと思います。

 ただやっぱりデシ子がいい子過ぎる反面、柏木がとてもDQNな奴に見えて仕方がない。
 せめてデシ子と出会ってから徐々に更生していく過程が見られればまだしも、かなり終盤まで成長が見られなかった。デシ子を暴発させたのも、彼の責任がないとは到底言えないしなぁ……。
 個性的ではあるが、読者に悪感情を持たれかねないキャラは、もうちょっと何とかして欲しかった。


 さて、これで受賞五冊を読み切りましたが、レーベルの印象としては、どれも尖んがりすぎ!
 完成度が一番高いのが『ランジーン×コード』、個人的な好みでなら『暴走少女と妄想少年』かな。
 もしこれからこのラノ文庫を購入するとしたら、安全牌は『暴走少女と妄想少年』。
 もの足りなければ『ランジーン×コード』か『僕たちは監視されている』を手にとってレジに行けばいいかと。
 そして人によっては非常に地雷になりかねないのが『ファンダ・メンダ・マウス』と『伝説兄妹!』……。この二冊については、少し周囲の様子を見たほうがいいかも知れません。
いや、凄いといえば凄い!のですが、問題作過ぎてあまり私としてはオススメできませぬ……。

2010年09月08日

暴走少女と妄想少年/木野裕喜

4796678905暴走少女と妄想少年 (このライトノベルがすごい!文庫) (このライトノベルがすごい!文庫 き 1-1)
木野 裕喜 コバシコ
宝島社 2010-09-10

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春。高校の入学式を迎えた沖田善一は、門の上から飛び降りてきた少女にいきなり鎖骨を折られてしまう。少女の名前は明華武瑠。才色兼備だが性格に激しく難アリの暴走少女。彼女の友達に(無理やり)なったことで、善一は彼女のさらなる友達作りの手伝いをさせられることに……。

 理想の友達のつくりかた

 暴走少女と妄想少年が「友達作り」に奔走する青春ラブコメディ!

 このライトノベルはすごいラノベらしいラノベだなぁ。王道も王道のボーイミーツガールでした。
 完璧超人だけれど性格は協調性に欠ける美少女・武瑠が、主人公・善一の努力で次第に周囲に人が集まってきて、友達の良さを知っていく。友達っていいなと素直に思える心温まる学園ラブコメ。
 一人で何でもできるけれど、一人ぼっちで猛獣のような少女が、少しずつ成長していく姿が清々しい。

 気にいらないことがあるとすぐに手が出て、女の子とは思えないほど口の悪い武瑠ですが、食べる事と自分の事しか考えていないようで、ほんのり他人を意識していているところを覗かせるのが可愛いんです。
 周囲と孤立してしまってるのは、武瑠のコミュニケーション能力にも問題があるが、周りの同級生も冷たい。
 確かに近寄り難いかもしれないが、ただ見ている分には非常に面白い子じゃんよ!

 人付き合いが不器用な武瑠をフォローしたり、いけないことをしたら時には叱りつけてやったり、妄想ばかりしている変態でも、友達の大切さを必死に伝えようとする善一はなんてイイ奴なんだろう。
 きっかけは武瑠への下心だったとしても、普通ならあんなボコボコになるまで付き合えないですよ。友達のために自分が何かをしてあげる、そういう本当の優しさのある人間が武瑠には必要だったんだろうなぁ。

 友達って、ずっと付き合っていくのは大変だし、ときには面倒くさいし、喧嘩も起きるかもしれないけど、「俺の友達は、こんなにすげぇ奴なんだぜ!」と誇れる相手がいるということは素晴らしいことですよね。
 マイペースな武瑠を始め、妄想ばかりの善一、おバカな白柳、BL好きな伊波さんといった個性的なメンツでの掛け合いも笑えて、最後にはラヴもあったり、ストーリー的にはベタで定番過ぎたかもしれませんが、それだけに誰にでもオススメできる、「一言で言えば私好み」な作品でした。

2010年09月07日

僕たちは監視されている/里田和登

4796678840僕たちは監視されている (このライトノベルがすごい!文庫) (このライトノベルがすごい!文庫 さ 1-1)
里田 和登 国道12号
宝島社 2010-09-10

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「IPI症候群<クローラ>」と呼ばれる原因不明の病気が蔓延する社会。「IPI配信者<コンテンツ>」のひとり小日向祭は、自活しながら日々騒がしい高校生活を送っていた。そこに、同じく<コンテンツ>であるテラノ・ユイガが転校してきて……。

 少女の秘密は蜜の味

 「IPI症候群」と呼ばれる患者の為に自らの秘密を切り売りする少女たちの愛と葛藤の物語。

 このライトノベルはすごい真っ直ぐだなぁ。ストレートに心を揺さ振ってきて眼を離せない。
 自分の生活をWEBで配信し、常に誰かに監視されているために清廉潔白であることを強いられる「IPI配信者<コンテンツ>」の生き方には気高いものを感じるが、そうして秘密を隠して自分らしく生きられないことに矛盾を抱え、葛藤し苦悩する少女たちの姿がとても切なく胸を締めつける。

 祭は自分たちを哀れではないと言うが、年端もいかない少女たちが誰にも守ってもらえず、自分のプライベートを売らなければ生きていけないというのは、それだけでとても不幸なことなんじゃないかな。
 ましてやそれによって自分自身が傷つき、誰かを傷つけてしまうとしたら、それは間違っている。
 潔癖で真っ直ぐな祭にしてみれば、秘密を抱え、他人を騙さなくてはいけない生活がどれほど辛いだろうか。

 日常を暴露してしまう祭やユイガたち「IPI配信者<コンテンツ>」に過剰に怯え壁を作るクラスメイトやWEB上で誹謗中傷を書き込む輩の身勝手な振る舞いには憤懣やる方ない思いにかられる。
 ユイガの場合にしても、周囲の理解を得るために苦難を強いられるべきのは、むしろ彼女の秘密を迫害の対象と見る社会や大人の方ですよ。他人の都合で振り回され、彼女たちの純真な心が傷ついて、悲鳴を上げる光景は、本当に残酷で見ていられなかった。

 祭が抱いたユイガへの想いは、おそらく友情とは違う特別な何かだったんじゃないかなぁ。ユイガとの絆を取り戻すために祭と一葉のした方法は、「ここでかよ!!」と度肝を抜かれた。祭さんマジパネェ!
 途中から「IPI症候群<クローラ>」の治療のためという建前はどうでもよくなって、ただのネットアイドルとどう違うのか分からなくなってきちゃったのは設定倒れでしたかね。
 祭と一葉の関係がとても気になりますが、その『秘密』はまた先のお楽しみでしょうか。続編出てー!おねがいです、これは続編出しましょう!

2010年09月06日

ファンダ・メンダ・マウス/大間九郎

4796678867ファンダ・メンダ・マウス (このライトノベルがすごい!文庫) (このライトノベルがすごい!文庫 お)
大間 九郎 ヤスダ スズヒト
宝島社 2010-09-10

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おれはマウス。しみったれた倉庫でくそったれな監視システム相手に終日ダラ〜っとすごす。家に帰ればネーネがべったり張りつく、そんな毎日。でも、おれは今の自分にかなり満足。人生がこれ以上でもこれ以下でも今いる自分になれないのならそんな物は願い下げだと、心の底から思っている。

 生きるということは愛すること

 横浜港湾を舞台に、ひと癖ある主人公を軸に展開するスピード感溢れるアクション。

 このライトノベルがくそったれ。というか、これラノベだろうか? ラノベって、奥が深いな……。
 プロローグの出だしからのくそったれ連呼にこれは正直ムリかも……と思わなくもなかったのですが、AIと夫婦喧嘩を繰り広げる主人公・マウスがちょっと可愛いとか思ってしまった。
 理性にも品格にも欠けたどうしようもない人間たちなのに彼らの間にはまごうことなき愛がありました。

 自堕落で無気力に暮らし、典型的なチンピラといったマウスですが、心の奥底で絶対に譲らないなにかを秘めて、誰かのために自分を犠牲にすることができる奴で、知性はないし行動も軽率だけれど、自分を慕って集まってくる者たちを思いやる気持ちが伝わってくる。
 いや、もう本当にただのごろつきで、変な萌え要素ばかり搭載している変態の上にシスコンで、人によっては好悪がはっきり分かれるにせよ主人公に必要な要素はしっかり持ち合わせているんですよねぇ。

 黒幕の狙いが『ブレインシステム』とわかったものの、たった一人の家族である姉・ネーネを人質に取られてここで手詰まりかと思いきや、仲間の力を借りて一気に巻き返す逆転劇には舌を巻きました。
 どこか狂ったマウスの仲間たちにも特殊な生まれの境遇に苦しんだり悩んだりといったドラマがあり、なんともいえない現実と人生の辛さ苦さを思い知らされるなぁ。

 ぶっちゃけると、いかにもOL層の女性が好きそうなケータイ小説のエッセンスが織り込まれているように感じた。リアル過ぎてむしろ現実ではありえないほどのリアルをまざまざと描いちゃうあたりが。
 ラノベとして捉えれば、暗黒ライトノベル枠ですが、しかし、もうちょいエロがあってもよかった。それとマコチンのマウスへの想いが、ネーネやミツルの愛情に見劣りしてしまい立ち位置がブレているような。
 設定上のツッコミどころも多々ありますが、まあデビュー作でそこまでは言うまい。

 作者さんはよく本を読む方らしいですが、普段どんな本を読んでるんだろうか。作者をdisる気はないんだが、初めて書いたというこの小説が何に影響を受けてこうなったのかがちょっと気になった。

2010年09月05日

ランジーン×コード/大泉貴

4796678824ランジーン×コード (このライトノベルがすごい!文庫) (このライトノベルがすごい!文庫 お)
大泉 貴 しばの番茶
宝島社 2010-09-10

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コトモノ――遺言詞によって脳が変質し、通常の人間とは異なる形で世界を認識するようになった者たち。全国各地でコトモノたちが立て続けに襲われるという事件が発生。武藤吾朗(ロゴ)は、事件の中で犯人の正体を知る。その正体とは、6年前に別れたはずの幼なじみ・真木成美だった。

 世界は言葉で満ちている

 遺言詞によって繁殖し人間の脳に巣食う特殊な意識生命体「コトモノ」をめぐる異能サスペンス!

 このライトノベルは確かにすごかった! レーベル名に偽りなし! 名前が微妙とか言ってすまんかった。
 「コトモノ」によって異能を得た不思議で奇妙な登場人物たちが恐ろしくも、社会に適応して生きていくには難しく、金儲けや研究のために利用され、もがき苦しむ不器用な彼らの姿が無性にいとおしい。
 世界の有り様までも改変してしまう「コトモノ」を巡る陰謀に立ち向かう迫真の物語に圧倒されました。

 鳥と会話できるコトモノ、透明人間になれるコトモノ、聴覚に優れるコトモノ、数学に強いコトモノなど、様々な異能を分け与えるコトモノたちが、まるで本物の生き物の様に独自の文化と言語、生態系を形成して一般社会の中でその存在と異能を隠すことなく生活しているのが興味深かった。
 新しいコトモノが登場する度に、コトモノをコレクションしていっているような妙な達成感がありますね。

 コトモノを金儲けに利用する企業、はぐれ者のコトモノたちの相互扶助会、そしてコトモノを裏で操る謎の組織と三者三様の思惑が入り乱れる中、最後まで諦めず己の遺志を貫き通し大切な仲間を自分の元へと引き戻す主人公が素晴らしかった。
 いわば吾郎と成美と由沙美は「コトモノ」で結ばれた家族なんでしょうね。誰かに利用されることなく三人が寄り添って暮らせる日常がいつか訪れるといいなぁ。

 次々と新展開を見せるストーリーの構成力といい、奇抜な発想によって作りこまれた世界観といい、完成度が高い上に、作中のキャラクターの叫びが読者の心に訴えかけてくるような感性度も高いです。
 ただシリアスに染まりきっているので、全体の1割ほど笑いや萌えがあっても悪くはないと思いますし、個人的好みとしては恋愛要素が欲しいところですね。物語に"緩み"がなくて読んでて疲れました……。

 大賞にふさわしい傑作でしたが、次回作はもうちょい力を抜くと丁度よくなるんじゃないかなぁ。


 ちなみに今回は宝島社から献本頂いて発売日前だというのに新刊五冊を受け取っていたのですが、ラノベサイト界隈では、あの人とか、この人がすでに感想を上げていたので、こちらも踏み切りました。私は無実。
 宝島社のこのライトノベルがすごい!文庫編集部の方々、ありがとうございました。

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