睦笠神社と神さまじゃない人たち (このライトノベルがすごい! 文庫) 深沢 仁 Nardack 宝島社 2013-08-10 by G-Tools |
高校一年生の冬基は、睦笠神社の神主である祖父と二人、神事をこなしつつ平穏な日々を送っていた。そんなある日、冬基は弱ったイタチを助けたのだが……。イタチは謎の美少女ライへと変化、神社に居座ってしまう。美少女の登場と共に息を潜めていた物の怪たちが暗躍を始め、奇妙な事件が起こり始める……。
朝焼けのぬくもりと 朧雲のやさしさと
神社の息子と天から落ちてきた美少女と物の怪たちのちょっと不思議なハートフルストーリー
いやー癒されたわーめっちゃ癒されたわー。心が和みすぎてヘニョヘニョになったわリラクゼ効果抜群。
ある雨の日、睦笠神社の宮司の孫・冬基が、天からやってきたというイタチ少女・ライを拾い、神仏や物の怪の世界に触れるようになり、物の怪絡みの騒動に巻き込まれていく物語が夢のようで陶然としました。
前作の2作品とは逆に作風のトゲトゲしさが抜けて、殻を剥いて煮た栗のようなまろやかなお手前でした。
幼き頃の事故により、動物や物の怪に好かれやすい朧の気を纏うようになった冬基の、よく言えば達観して大人びている、悪くいえば若さの枯れたキャラに呆れつつも、心優しく穏やかな雰囲気に惹かれますね。
妖怪とは知らずイタチの姿で拾われた当初は警戒心の激しかったライですが、感情が希薄で自分に無頓着な危なっかしい冬基のことが次第に放っておけなくなって、強引に神社に居座ってしまうところが微笑ましい。
睦笠神社の跡継ぎとして神事を淡々とこなす平穏な日々が続くのだけれど、時折訪れては元気と笑顔を振り巻いていく幼馴染の綾乃や物の怪絡みの騒動が巻き起こったりといった、ちょっとした刺激が丁度いい。
物語が進んでいく内に明かされていく幼い冬基の身に起きた痛ましい過去には、胸が締め付けられる。冬基を大切に思っていてくれる人たちが周囲に居るのに、冬基自身が自分を大切にしてないのでは、悲しいよ。
まあこの作品で一番萌えて好きなキャラは、祖父ちゃんだけどな。口下手だけれど孫のことを想って、妖怪に関わらせたくないと厳しいようでライとの居候を許してしまう甘々なツンデレジジイが可愛すぎて困る。
お人好しの甘さは祖父譲りか、物の怪をどんどん匿ってしまう冬基のせいで、ますます賑やかになっていく睦笠神社ですが、そうした物の怪との関わりで人並みの感情を取り戻していって欲しいですね。