客の目を引く見事な書店ポップ、鎌倉の寺社を巡った御朱印帳、祖父が読みたいと望んだ特別な小説、少年が誰にも見せたくなかったメモ。気持ちに嘘はつけても、文字は偽れない。文字に秘められた想いを、清一郎は明らかにしていく。
文字は人の営みに寄り添う
古都鎌倉を舞台に、文字と書、人の想いにまつわる事件を描く筆跡鑑定ミステリー。
かっけー友達がいないことをサラっと言える清一郎さんマジかっけー。でも、人間強度元々低そう。
毎度、清一郎へ厄介事の解決を依頼する美咲の手際もなれたものですが、今回は清一郎の側から美咲へ相談を持ちかけたりして、デレはじめてすっかり距離が縮まっていく二人の関係にニヤニヤしきり。
大人げない清一郎をフォローしたり、世話を焼く美咲が、恋人というよりカーチャンに思えてきた。
見に覚えのないことで嫌がらせの手紙を送られる清一郎ですが、美形は他人からやっかまれたり、騒動に巻き込まれれたりして大変だなー(他人事) 美形でなくとも自ら騒動を巻き起こして他人に迷惑をかける松岡のような人間もいるわけですが、奴はどうしてこうもアホなんだ……。キャラに似合わない純愛を経験しているのに、どうしてそこから経験値を得てないんだ。愛しの先輩も草葉の陰で激怒してそう。
直筆の字や書ではなくとも、印刷された文庫本にも思いは宿る。確かに出版社によって読みやすい書体とか、行間とか、あるよなぁ。私のデフォは角川系ですね。次から小説の読み方も変わりそうです。
同じ文字でも、誰が書いたか、誰が読んだかで物事の見方が変わって見えるというのが、趣深いところなんじゃないでしょうか。でもこの作品で面倒なのは事件の解明より恋愛事や人間関係なんだよなぁ。
清一郎の人間嫌いの原因は、母親への罪悪感から自分に厳しく正しくあろうとして、その正しさを他人にも押し付けてしまうんでしょうね。清一郎にも不器用だけれども他人に優しいところがあるように、他人の悪いところばかりでなく良いところも見るようになって欲しい。
最後の金子みすゞの詩で身悶えした。あれはもうどう見てもラブレターでしょう。