ダフロン

2009年07月03日

大正野球娘。3 帝都たこ焼き娘。/神楽坂淳

4198508313帝都たこ焼き娘。―大正野球娘。〈3〉 (トクマ・ノベルズEdge)
神楽坂 淳
徳間書店 2009-06

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巴からランデヴーしないかと誘われた小梅。どきどきしながら歩くその最中、乃枝によく似た女の子と出会う。女の子は乃枝の従姉妹で大阪から屋台対決をしに来たらしい!屋台での東西対決を挑まれ、受けて立つ決意をする桜花会。しかしお嬢様たちには庶民が使う「屋台」がどういうものか分からなくて。

 わたしたち、屋台はじめます

 男尊女卑の世の中で、新しい時代に向けて奮闘する乙女たちの大正浪漫活劇。
 
 今回は野球ではなく料理対決。美味しそうな話ばかりでお腹が空くじゃないかよ!
 屋台対決を申し込んできた大阪チームの「一銭洋食」に桜花会がどう対抗するのかと思っていたら、たこ焼き作っちゃったー! これは酷い歴史改変。明石の人が泣いた。
 まあ前回の野球のときも時代をフライングして金属バットと作っちゃってましたけどね。

 しかし、まあなんでしょうかこの小梅のモテモテっぷりは。晶子さんの本妻っぷりはさて置くとしても、巴にはランデヴーに誘われ、さらに大阪のネコ目娘にも気に入られ、胡蝶も巴お姉様から小梅に鞍替えしとモテ期到来しまくりで、あっちを立てればこちらが立たずといった女の子の友情に振り回される小梅の気苦労も増えているけれど、なんだかんだ小梅を中心に桜花会ガールズが結束し、各々が自分の能力を発揮して連携し合って生み出される展開にはワクワクしてきちゃいますね。

 三郎さんとの仲も良い塩梅に恋模様が進展して、未だに恥ずかしくてお互いに名前で呼び合えないところとか初々しくてツボだわー。こういう奥ゆかしい恋愛観に憧れます。
 言われなくともたこ焼き用プレートを用意しているとか、小梅のことをよく見てるなと感じますね。というか、何気なく取り出したが、たこ焼き用プレートなんかどこで買ってきたのやら。

 ぶっちゃけ、東京人なら「もんじゃ」で勝負すべきだと思うんですが、それだと屋台対決として成り立たないから「たこ焼きに」したのかなぁ。東京の名物で他に張りあえるような食べ物としたらなんだろう。東京ばな奈?
 最後まで料理の話題でしたが、作者はこの作品のタイトルを忘れていなかった。前哨戦では大阪チームに一矢報いた桜花会ですが、本番の試合ではこの健闘がみられるのでしょうか。

 ところで、TVアニメ版の『大正野球娘。』みました。冒頭の謎のミュージカル化に「なにこの練馬大根娘。・・・・・・」と一抹の不安が頭をよぎりましたが、まあキャラデザはいいし、音楽もいいし、声も可愛いし、絵とストーリーは地味ではあるけれど、まあまあ視聴に耐えれそうですね。小梅の頬の赤マルは余計パーツだけれど・・・・・。他の子は普通なのに、小梅だけだと変じゃんよー。
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2008年10月30日

サムライエイジ 乙女たちの初陣っ!/みかづき紅月

4199051872サムライエイジ乙女たちの初陣っ! (徳間デュアル文庫 み 3-2)
みかづき 紅月
徳間書店 2008-10

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もう一度狂戦士状態になってしまったら、今度こそ千は・・・・・・。ひとりで親友の千を守って戦う決意を固めた弥だったが、その決意も早々、必殺剣<桜花爛漫>が破られてしまい・・・・・・。

乙女心、満開!

全校生徒が刀を持ち歩き、力ですべて解決する学園で、男よりも男らしい少女二人が戦いの中で友情を育んでいく学園剣客アクション。

なーんか、すっかり弥も千のあしらいに慣れてきているじゃないですか。
本人が何を弁明しても、どうみたって弥は千の嫁だろう。その百合をよしとする。
相変わらず戦ってばかりですが、そうした中でも夢の女子高生ライフを満喫しようと、どこの団にも属さないとお互いに誓い合うも、ところがその甘さが今回は危機を招いてしまいます。
中間考査戦という全校生徒を巻き込んでのバトルロイヤルの開催により、他を圧倒する実力を持つ彼女らも、組織立って襲いかかって来る敵に防戦一方になってしまうというのは、これまた読者が盛り上がる展開を作ってくれるじゃないですか。

並居る強敵の中でも学園トップの団・<紅>を率いる耶麻先輩がいい味を出しているんですよね。
いかにも野蛮人な見た目通りに豪放磊落な兄貴キャラなんですが、デリカシーがないようでいて、なにくれと弥のために心配りをしてやっている優しいところもあったりする人間味溢れる性格がいい。
まあ見ているだけで暑っ苦しくて、相手をすると非常に疲れるお人だとは思いますが、このクドすぎる濃ゆい個性が、また周囲の人を惹きつけるカリスマってもんなんでしょうね。

お互いに一緒にいたいと思っているけれども、その覚悟の違いからすれ違っていってしまう弥と千ですが、どちらも自分のしたいことだけ一方的に考えて、相手の意思を無視してしまっているのは、それはさすがにエゴの押し付けってもんでしょうよ。
一人ぼっちで戦うことの虚しさは、弥だって分かっていたけれども、ようやく自分の背中を託すにたる存在と出会えた喜びで、肝心の千の想いを見失ってしまっていたのかな。
弥の呼び声に応えて窮地に駆けつける千の格好良さに痺れるわー。
二人して背中合わせで戦う姿は、まさに親友というよりも、戦友という言葉がぴたりとくる。

戦いが終わった後で、それまでの感情を引きずらない蘇芳学園の生徒たちの侠気もいいなぁ。
この物語に出てくる登場人物は、それぞれキャラは立ってるんですが、みんな「覚悟」の二文字を背中に張って、いつも真剣に全力で生きていて、誰よりも眩しく輝いてみせようと信念を抱いてぶつかり合う、その激しくも気高い生き様に魅せられるんですよ。
それでいて主人公は、誰よりも低い志でありながら、決して折れずに自らの乙女心を貫く姿を見せるんだから、男とか女とか関係なしに惚れ惚れしてしまう。

男心と乙女心が実に見事に調和した作品。
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2006年05月11日

微睡みのセフィロト/冲方丁

419905104X微睡みのセフィロト
冲方 丁
徳間書店 2002-04

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【超次元的能力をもつ感応者と人との間で、拡がっていく憎悪が生みだした、いびつな事件。そのきしみの中で、捜査官パットは、超感応少女ラファエルとともに、真相を追いはじめる。】

男ってそんなもんか


妻と娘を殺した感応者への憎悪。
そして精神ロックが起こす安寧の狭間で懊悩するパットの葛藤が濃ゆ。二百発撃たれても大丈ビなんて、さすが固ゆで卵!
そして人々の平和を願う感応少女、ラファエルの真摯な心根が切なく。母親の贖罪なのか、より崇高な存在に感じた。

サイボーグ兵なおっさんと超能力少女のSFハードボイルド。
「マルドゥック・スクランブル」の原作といわれる沖方の力作。
殻に入った頭部だけの捜査主任のおじいちゃんとか、
あくまでも理性的に狂った敵キャラなども独自キャラでしょう。

いつかどこかで・・・

世界政府準備委員会(リヴァイアサン)と十二の下部組織。
世界保安機構(マークエルフ)、世界連邦軍(マークドライ)・・・
ノヴィア・レポートとか、どこかで聞いた単語が出てきたお。
きっと沖方さんの好きなフレーズなんでしょう。使い回しかよ。

それでなくても専門用語のオンパレードでややこしいのに、
細かい説明はスッ飛ばして展開していくので、真剣に読み解いていかないと時代背景がわからなくなります。

この文章の重厚感こそがハードボイルドなのだけどね。
マルドゥックみたいに中途半端に途切れることもなく。
ストーリー構成が綺麗に一冊にまとまっているのはよかった。

超感応審査員沖方

ときに最近の沖方さん。
新設レーベルの審査員ばかりやっていて、このままじゃ世に出てくる作品が偏るんじゃないか、と危惧する声もありますが。
むしろ、私は沖方シックスセンスを信頼してます。

物語の構成力を重視する作家の中では、まず筆頭ですし。
近頃は、キャラばかり立てることにかまけて、シナリオがいい加減な作品が多いように思います。
レーベルの乱立でラノベ界全体の質を落とさないためにも、審査員としてシビアな評価を期待したい。

先生! それよか安井健太郎の抜擢の方が疑問です!

マルドゥック・スクランブル―The First Compression 圧縮マルドゥック・スクランブル―The First Compression 圧縮
冲方 丁

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ラグナロク(11) 獣の系譜ラグナロク 獣の系譜
安井 健太郎

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2006年03月20日

とく。/清涼院流水

4199051589とく。
清涼院 流水
徳間書店 2006-03

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【夜霧邸から脱出した特馬たち。だが、双月クレアとフレアが捕まってしまった! 瀕死の特馬の前に現れたのは最強の処刑人「Iミッキー」。あらゆる謎を鮮やかに「解く。」!とくま三部作完結!】

「『特馬』でいきます」


平凡な人間だったはずの出有特馬に秘められた出生。
刑殺との因縁が明らかになるにつれ遠のく日常。
刑殺に連れ去られた双月クレアとフレアを取り戻すため。
そしてもう二度と彼女たちを泣かせないために。
特馬は、決戦の街へと向かう! 敵は街の住民1万人!!

超越的展開!

って、ありえねえぇぇぇえええEEEEeeeeeee!!!!
一作目で、『一日一殺事件』。二作目で、『一晩千人殺し』。
そして今回は、『1万人の暗殺者との闇夜のバトル』・・・。
これミステリですよ? えーと・・・、どこからおかしくなった?
って、最初からオカシカッタナ ソウイヤ・・・。

強さの激高インフレ

今までのキャラが、とんでもないな・・・。
『人は根性さえあれば、超サイヤ人になれる』というのを大上段にやってくれやがったんだもん。ビルは壊すな人として
「それは絶対にない」という読者の死角から、テポドン級の仰天サプライズをブチ込むムチャクチャな展開。

さすがはあの西尾維新に悪影響を与えた御仁でござる。
奇抜かつ豪快、大味なのにページをめくる手がとまらない。
ああ、私の積み上げてきた価値観が崩れていく・・・。
だが、それが気持ちいいというか、

もっと私を壊して!!

死闘の中で不気味な収束をはじめる物語の闇。
特馬の過去と、言葉遊びに貫いた数々の伏線。
何故、特馬は母親に捨てられたのか。
何故、特馬は生まれてきたのか。
そして特馬が命を燃やして出した答えとは。

妙にハーレムエンド臭いエンディングはいいんだけど。
クレアと新悟には幸せになって欲しかったのが不満。
ここまで書いて、ふと我に返ったんだけど、
やっぱこれはミステリじゃねぇ!
posted by 愛咲優詩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 徳間文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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