ダフロン

2007年09月09日

さちの世界は死んでも廻る/三日月

4094510257さちの世界は死んでも廻る (ガガガ文庫 み 3-1)
三日月 maruku
小学館 2007-08-17

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【恋に恋する夢見がちな高校生、吉岡さち。あこがれの同級生、高田アツミに一歩ずつ近づけたと思った。それなのに、両想いになったばかりの相手を憎み、恨み、戦うことになってしまい・・・】

恋する乙女はバーサーカー


片思いの少年に告白してOKをもらった日に死んでしまい、
世界の理に反した既死者となって蘇った少女さち。
既死者を消滅させるためやってきた執行人と戦闘になるが、その正体は恋人になったばかりの少年アツミだった。
狩る者と狩られる者になってしまった恋人たちの物語です。

さちのキャラがどうにも定まらなくて掴みにくいな。
最初は天然ドジっ子属性でうまくキャラが立ってたのが、
既死者覚醒後、凶暴性剥き出しのバーサーカーモードだし、
デフォルトの性格も後半になると崩れてきているのがどうも。
暗いなー。無理にシリアスさせる必要もなかったのに。

アツミ君もどんだけ世間知らずの坊ちゃんなんだか。
単純さと天然っぷりは、さちより上なんじゃない?
告白されたからって、いままでそんなに知らなかった相手を、大事な己の使命を捨ててまで命懸けで守ろうとするかな?
さちの惚れっぽさも納得し難いが、アツミの行動原理も理解し難いところがあるのは否定できない。

中盤まではいかにも青春って感じですが、その後の愛憎サスペンスが爽やかさを濁すようで余計だったな。
ところどころ不自然なキャラの発言も読んでてひっかりました。「えー、お前らそれで本当にいいのかよ」みたいな。
まあ結末を高校生カップルの痴話喧嘩みたいなオチでまとめたのは、ラストが重くならずによかったと思います。
まあデビュー作ってことを考慮すると、ぼちぼち。
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2007年08月07日

Mのフォークロア キュクノスの迷宮/三上康明

4094510176Mのフォークロア キュクノスの迷宮
三上 康明
小学館 2007-07-18

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【オンラインRPG「QO」のプレイヤーが、集団昏睡を引き起こす事件が発生。妹が被害者となった鶴見圭吾は原因を究明すべく、民俗学者の間宮むつきとともに謎を追うが・・・】

終わってない物語・・・


「.hack」みたいなMMO集団昏睡事件が起きて、そのオンラインRPGを作ったゲームクリエイターが失踪して、それらの原因に怪しげな新興宗教なんかが絡んできて、ネトゲ廃人民俗学者が「事件を解く鍵は日本史だ」とか主張し始めるお話。

いかにもネトゲーマーな妹がカワイス。
ネトゲ仲間との約束の時間が迫っていると、両親兄弟に自分部屋まで晩ご飯もってきてとか頼む法則。あるある。
植物状態に陥った妹を目覚めさせるため、原因究明に動く兄貴・圭吾のシスコンっぷりは大いに結構なのだけれど、とる行動がいちいち直情傾向で幼稚なのは勘弁しておくれよ。

途中から圭吾の行動に制限を与え始める恋人・愛香もウザ。
嫉妬バリバリ。泣けばいいと思ってるんですかこの女は。
いい年してニートな父親に新興宗教にどっぷりな母親。
主人公の周囲に本当にまともな大人がいない。

序盤の滑り出しはよかったんですが、『劫光の道』とかいう宗教団体が現れてから、だんだん話がカオスになっていく。
結局、主人公の行動がさっぱり無意味だったんですが?
一連の事件の謎も最後まで曖昧なままで、なんだったんだ?
妹が復帰しただけで、両親の問題も片付いたわけでもなく、
事件を仕組んだ教祖様は別に捕まるわけでもなく、主人公と民俗学者のお姉さんが特別な関係になるわけでもなく・・・。

う〜ん、なんだか消化不良で読後に不毛感をもてあます。
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2007年07月13日

携帯電話俺/水市恵

4094510117携帯電話俺
水市 恵
小学館 2007-06-19

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【ある朝、目が覚めると藪沢大地は携帯電話になっていた。しかもその使用者も、自分(のニセモノ?)だった! いったい誰が何のためにこんなことを? もとのカラダに戻れるのだろうか?】

自分がもう一人、これが2in1です

朝起きたら身体が携帯電話になっていた大学生のお話。
自分とそっくりな使用者に持ち歩かれながら、元の身体に戻る方法を探しつつ、携帯電話の視点で自分自身の交友関係を客観的に見つめていくという青春・世にも奇妙な物語?

最初のうちは大学生が主役の恋ドラっぽい恋愛模様が描かれるのですが、後半にかけていきなり魔術がどうのこうのという話に転がっていって、なにがなにやら・・・。
まあ書きくだりから先の展開は簡単に読めるんですが、話の繋がりがまったくなく。前半はいったい何だったんだろうと・・・。

マリアとエリスの主張については、エリスに賛成かな。
もし人間の精神がデジタル化されれば、確かに便利は便利になるだろうけど、精神をコピーしたロボがいるなら、生きてるだけで余計な資源を浪費する元の人間は用済みじゃない?
あと優秀な人間が1人いれば、その他の人間は不要だよね。

そこら辺の危険性をマリアはちゃんと認識できてるのか。
「世界を変えるパラダイムシフトだー」とか言っておきながら、
「自分は技術を確立するだけで、使い道を考えるのは私じゃない」とか、それはあまりにも無責任すぎやしませんか・・・。
なんというか自分の才能を世に知らしめたいだけ、みたいな。

姉妹が対立する原因の肝心の問題が解決していない。
せめて作者なりの納得できる解答を提示すべきでしたね。
まず作品の物語構成から考え直すべきだと思いますが。
冴子とミエがそっくりだという要素は何の意味もないのか。
とくに粗があるというわけでもないのだけれど、物語を十分に練れていない読感を受けましたね。

とりあえず、「私たちの心の中に生きている」はオチにしてはイタいから止めてくれ。
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2007年07月12日

Re:ALIVE 1―戦争のシカタ/壱月龍一

4094510125Re:ALIVE 1―戦争のシカタ (1)
壱月 龍一
小学館 2007-06-19

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【拓真颯が最近気になっているのが、同級生の菜月カナデ。ある晩、菜月に公園に呼び出された颯は、親友に似た顔の男が、血まみれの女性の死体を抱えている姿を見る・・・】

縞パンはよいものです


どこかで起きていることは知ってるけれど、平凡な高校生の拓真颯には、まったく実感のない。TVの向こう側の戦争。
そんなことよりも学校へ通って、放課後に仲間とバンドの練習をする方が大事という彼の日常が、やがて他人事だったはずの<戦争>によって奪われていくというお話。

ただ本人たちは平穏な日常を過ごしたいだけなのに、
不条理に奪われていく主人公たちの境遇が不憫です。
とはいえ、完全に巻き込まれ型のストーリーで、話の展開に主人公たちの主体性を感じられなかったかな。
話に対して作っていたキャラが完全に宙に浮いていた。

登場人物たちはそれぞれ特殊能力を使用し、陣地の所有権を表す「FLAG」を体内に隠した人物とそれを守る「守護者」。
または「FLAG」を狙う攻撃側となって、様々な思惑に従って殺し合いを繰り広げるわけですが、それこそ嫌々ながらやってるので、戦闘シーンにも水を差されて素直に楽しめない。

軍事企業や幾つかの組織がFLAGを奪い合う理由とか、
それをわざわざ生きた人間に埋め込む必然性とか、
何故にこんなゲームじみた戦争が成立してるのかとか、
詳しい説明がぼかされてるので世界観が掴めない。
最初からシリーズものとして続けるつもりとはいえ、
一巻目で状況が読めない本は読者に優しくないと思う。

描けなかったことは続編で補完しますと言っているものの、
次を買うかは正直微妙。だが璃奈がまたパンチラを披露してくれるなら是非とも。縞パンはよいものです。
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2007年06月14日

人類は衰退しました/田中ロミオ

409451001X人類は衰退しました
田中 ロミオ
小学館 2007-05-24

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【人類がゆるやかな衰退を迎えて、はや数世紀。すでに地球は"妖精さん"のものだったりします。わたしは妖精さんと人との間を取り持つ"調停官"となり、さっそく挨拶に出向いたのですが・・・】

人類\(^o^)/オワタ


人類の発展が衰退期に入り、人口を減らしつつある人間たちは、かつての文明の名残でなんとなく生きている世界。
人に代わって繁栄しているのは体長十センチの"妖精さん"。
そんな人間と妖精さんの仲を取り持つ"調停官"の女の子と人懐っこくて無邪気な妖精さんのほのぼの物語です。

主人公、初っ端から仕事ってもんをナメてますね。
調停官を目指した理由が、農作業より楽そうだからって・・・。
外見は「深窓で、薄倖」の成績優秀なお嬢さんなのですが、
考えることときたら怠惰でズボラで、ちょっぴり腹黒い。
なんかもうこの時代の人は、闘争心とか、熱意とか、上昇志向が薄いんでしょうな。まさに現代日本人の典型か。

話のメインキャラクターである妖精さんは、お菓子が大好きで
その場のノリとニュアンスで生きてるほのぼの生物。
一晩で近未来的都市を建設したかと思えば、原始生活に戻ってペーパークラフトで進化の歴史を再現してしまったりと。
アホみたいなオーバーテクノロジーを遊びに使ってます。
内政干渉せずに観察しているべき主人公も、いつのまにか引き込まれてバカ騒ぎを加速させてしまったり、妖精さんに負けず劣らず、このお嬢さんもノリで生きてるんじゃなかろうか。

主人公と妖精さんの会話がまったり、ゆるゆるで笑えます。
軽快なテンポで進むシュールな言葉の掛け合いが最高。
単純だけど、妙を心得ている。この文章センスには脱帽。
妖精さんが人類の歴史をなぞって文明を発展させていく過程は、シヴィライゼーションを思い出しました。

一応は完結しておるっぽいですが、これは続いて欲しいな。
人間が主人公と祖父しか出てこないので、今度は人間サイドの事情も描かれるとよいですなぁ。

シヴィライゼーション4 完全日本語版シヴィライゼーション4 完全日本語版

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2007年06月13日

マージナル/神崎紫電

4094510036マージナル
神崎 紫電
小学館 2007-05-24

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【摩弥京也は、巷を騒がす連続殺人犯と偶然ネット上で知り合った。殺人犯に殺されたクラスメイト南雲小百合の葬式で彼女の妹・御笠と出会った京也は、事件を独自に調べ始める】

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これはあれだ、精神科にry

正常と異常の境界に立つ者『マージナル』を称する摩弥京也
殺人や拷問を愛好するアンダーグラウンド・サイトの管理人である彼と連続殺人犯とのサイコスリル・サスペンスです。
とあるサイトを見習って地雷フォーマットを作ってみた。
ファンの人は要注意、この感想が地雷でありんす。

主人公、摩弥京也。相当なサイコ野郎ですね。
連続殺人犯を追い詰めていく過程で、共に犯人を捜すヒロイン・御笠の殺害へと心が傾いていくあたりが、かなりキてます。
自分の特殊な性癖が社会からは理解されないと悟ってて、
そこまで自覚があるなら、とっとと精神科行きましょう。

連続殺人犯との駆け引きはいいですね。
ネットのサイトから仲間を募って、自身は表に出ず、盤上の駒を進めるように追い詰めていく京也に対し、殺人を犯しながら京也を罠へ誘い込むエクスター公との知能戦が見所です。
完全に鬱々とした話かと思いきや、一見クールな京也と御笠のボケボケな掛け合いには笑いました。

しかし、京也が言う境界の線引きがわからない。
直接手を下さなけれればいいとか、そういうレベルの話?
御笠殺害を指示した時点で、それは殺人教唆なんだが・・・。
それにいままであんなにも殺したいと渇望していながら、最後に他人任せにするのは、快楽殺人の心理としておかしい。
快楽殺人ってのは、独占欲の発露だから、自分の手でいたぶって殺すことに拘るものらしいですよ。

加えてエクスター公爵の動機は、自分を省みない社会への歪んだ自己顕示欲からの殺人のとみるべきで、自分の殺人に対する周囲の反応を最大限に気にするはずじゃない?
一時は憤ったとはいえ、ニュースを見ないなど考えられない。
ノートPC持ってるんだからインターネッツくらいするでしょう。
最後のドンデン返しのために都合のいい動きばかりしますね。

表面上はキャラクターを異常者っぽく描けてはいるんだけど、
細かいところをつつくとリアリティが希薄で、大雑把です。
まあまともに犯罪心理学を学んだわけでもない、私のにわかプロファイリングだから、いくらでも例外はあるんだろうけど、
それにしても例外的な動きが多いような気がします。

まあ、いろいろとあげつらってみましたが、結局自分に酔っている京也みたいな主人公が大嫌いなだけなんですけどね。
posted by 愛咲優詩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(2) | ガガガ文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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