Wandervogel (ガガガ文庫) 相磯 巴 ハラカズヒロ 小学館 2010-09-17 by G-Tools |
ここは剣と魔法のモンスターの世界。新たな開拓地を目指す「飛行船」兼「冒険者養成学校」に乗船した、消極的な僕と暴力的な姉。姉は騎士学科のエリート特待生、オマケの僕はいざという時の「捨て駒」要員――??どうして僕は冒険になんか来ちゃったんだろう――
その旅立ちは冒険か?
新天地を求めて旅立った、史上最も"流されやすい"勇者のRPG風コミカルファンタジー。
イラストと内容のハマリ具合がピッタシですね。本当に表紙通りのファンタジーでした。
空飛ぶ船に乗って新天地を目指す姉弟とその仲間たちが、周囲を巻き込んで大騒動を繰り広げるドタバタっぷりと危機的状況に瀕しててもユーモアを忘れないコミカルな掛け合いが面白かった。
ほのぼの系MMORPGがそのまま小説になったかのような世界観で気軽に物語に入っていけました。
能天気でブラコンの姉タマキと消極的で主体性のない弟ユウキのどこか常識とズレた倒錯感が笑える。
弟の事となると見境を無くすタマキの姿はまさにヤン姉というに相応しいし、力加減を知らない姉の過剰な愛情表現でボコボコになりながらも何故か喜んでるユウキは、Mなの?ドM弟なの?
下ネタ大好きな獣使いのアイや何事もお金で解決しようとする商人のリリア、一番LVは強いくせに何故か一番立場が低い侍のイサミ、厳しい様でお人好しの格闘家のゼノ。
実力はあれどどこか残念な仲間たちばかりがどんどん集まって行くのがなんだか楽しかった。
しかし、登場人物たちが旅に出る目的が曖昧なのは、ちょっと気にかかりましたね。
「冒険者は旅に出るもの」とは言え、タマキとユウキの姉弟は、とてもいい加減な出発だったし……。
バトルについても、めちゃめちゃ動機が軽いな。自分たちが世界の命運を担っている自覚もなさそうで、ボスについても雑魚モンスターがエンカウントしてきた程度の認識しかなさそうな……う〜ん。
冒険のワクワクよりも、むしろそこにたどり着くまでのパーティ間のドタバタがメインでしたね。
キャラはかなり好きなんだけど、設定自体は既存のRPGの枠を出ていないから、斬新性は薄いな。
出発するまでは、作中に存在するいろんな国の特色や冒険者を主体とした独特の文化を細かく描けていたのに、目的地に着いた途端にクエストが発生してモンスター退治一辺倒に進んでしまい、急に味気なくなってしまった。ページ数が少なくてやや駆け足になってしまったんでしょうかね。
まあ作風自体は嫌いじゃないどころか、RPG好きな私にクリティカルなので、次回作に期待。