ダフロン

2010年09月21日

Wandervogel/相磯巴

4094512314Wandervogel (ガガガ文庫)
相磯 巴 ハラカズヒロ
小学館 2010-09-17

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ここは剣と魔法のモンスターの世界。新たな開拓地を目指す「飛行船」兼「冒険者養成学校」に乗船した、消極的な僕と暴力的な姉。姉は騎士学科のエリート特待生、オマケの僕はいざという時の「捨て駒」要員――??どうして僕は冒険になんか来ちゃったんだろう――

 その旅立ちは冒険か?

 新天地を求めて旅立った、史上最も"流されやすい"勇者のRPG風コミカルファンタジー。

 イラストと内容のハマリ具合がピッタシですね。本当に表紙通りのファンタジーでした。
 空飛ぶ船に乗って新天地を目指す姉弟とその仲間たちが、周囲を巻き込んで大騒動を繰り広げるドタバタっぷりと危機的状況に瀕しててもユーモアを忘れないコミカルな掛け合いが面白かった。
 ほのぼの系MMORPGがそのまま小説になったかのような世界観で気軽に物語に入っていけました。

 能天気でブラコンの姉タマキと消極的で主体性のない弟ユウキのどこか常識とズレた倒錯感が笑える。
 弟の事となると見境を無くすタマキの姿はまさにヤン姉というに相応しいし、力加減を知らない姉の過剰な愛情表現でボコボコになりながらも何故か喜んでるユウキは、Mなの?ドM弟なの?
 下ネタ大好きな獣使いのアイや何事もお金で解決しようとする商人のリリア、一番LVは強いくせに何故か一番立場が低い侍のイサミ、厳しい様でお人好しの格闘家のゼノ。
 実力はあれどどこか残念な仲間たちばかりがどんどん集まって行くのがなんだか楽しかった。

 しかし、登場人物たちが旅に出る目的が曖昧なのは、ちょっと気にかかりましたね。
 「冒険者は旅に出るもの」とは言え、タマキとユウキの姉弟は、とてもいい加減な出発だったし……。
 バトルについても、めちゃめちゃ動機が軽いな。自分たちが世界の命運を担っている自覚もなさそうで、ボスについても雑魚モンスターがエンカウントしてきた程度の認識しかなさそうな……う〜ん。
 冒険のワクワクよりも、むしろそこにたどり着くまでのパーティ間のドタバタがメインでしたね。

 キャラはかなり好きなんだけど、設定自体は既存のRPGの枠を出ていないから、斬新性は薄いな。
 出発するまでは、作中に存在するいろんな国の特色や冒険者を主体とした独特の文化を細かく描けていたのに、目的地に着いた途端にクエストが発生してモンスター退治一辺倒に進んでしまい、急に味気なくなってしまった。ページ数が少なくてやや駆け足になってしまったんでしょうかね。
 まあ作風自体は嫌いじゃないどころか、RPG好きな私にクリティカルなので、次回作に期待。
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2010年09月20日

GJ部 3/新木伸

4094512292GJ部(グッジョぶ)3 (ガガガ文庫)
新木 伸 あるや
小学館 2010-09-17

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そろそろ衣替えです……。天使家の侍従(メイドさん?)年齢不詳の森さんに、個性的な京夜のクラスメートなどなど、新キャラも登場してますます広がるGJ部ワールド!あまり広がらない行動範囲……。今日もいつものように、昼休みや放課後を部室で過ごしつつ、冬ごもりの準備をぼちぼちと――。

 小さな素敵にあふれる日々

 個性豊かな4人の美少女たちとのゆるふわなひとときを描いた萌え四コマ的コメディ。

 たった4頁の短い話とはいえ、よくここまでネタが続くと作者の引き出しの広さに感心する。
 相変わらず下らない話題で駄べったり、お茶飲んでおやつを食べたり、キョロをからかったり、とダラけてばかりの日々を過ごすGJ部のですが、そうした何事もないぬる〜いストーリーに心なごみます。
 ヒロインたちとの関係もちょっとずつこれまでの時間を感じさせて、深まる秋を思わせる。

 各話ごとに素敵な一面を見せるヒロインたちが魅力的すぎて目移りしちゃいますね。
 ってか、キョロがいるのに女性陣はいろいろ無防備すぎます。男子禁制というのもその辺に理由が?
 始終、いじられキャラのキョロですが、ちょっと着飾ったり、雰囲気を変えただけで、あんなにいいリアクションをしてくれるのだから、女の子たちも女冥利に尽きるでしょうね。

 それにしてもカップ麺や駄菓子を前にした紫音さんは実に微笑ましいな。ますます「何この可愛い生き物」化が進む。そして腹黒な恵ちゃんに何故か胸の鼓動の高鳴りが抑えられない私(ゴゴゴゴ
 キョロのクラスメイトの新城君や天使家のメイド・森さんも面白そうなキャラクターでしたが、それよりキョロの妹をイラストだけでなく本編に出してください!(土下座)

 学園モノで秋といえば文化祭だなぁと期待していたら、……気づいたら終わっていたマジありえん。
 あり得ないといえば、さすがにそれはあり得ないだろうという非常識なウソでも、毎回簡単に騙されるキョロもたいがいだが、部長と紫音さんの仲良しっぷりはほのぼのとしました。
 春夏秋と続いたから、次の冬編で1年か。区切り的に次回でいきなり完結という可能性もなきにしもあらずだが、もうこれ本当に四コマ漫画にしたらいいんじゃないっスか。そしてそのままシリーズ続けようよ。

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2010年08月23日

シー・マスト・ダイ/石川あまね

4094512241シー・マスト・ダイ (ガガガ文庫)
石川 あまね 八重樫 南
小学館 2010-08-18

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ぼく達は呆然としていた。理科の実験中、教室の窓ガラスを破って重装備の兵士が飛び込んできたのだ。男子生徒の一人が兵士の言葉に逆らって脱出を図る。超能力者の彼なら逃げのびて助けを呼んでくれるかも!しかし、ぼくの期待もむなしく、銃が火を噴き、彼は動かなくなった―

 すべてはただ一人の幸せのために

 超能力が一般化した近未来日本、力ゆえに命を狙われる中学生の戦いを描くサイキックサスペンス

 超能力の使い方といい、ラストがすごい。ありそうでなかったタイプの学園SFです。
 中学校の教室がテロリストに占拠され、人質になったクラスメイトのヒロインを助けるために主人公が立ち上がるという、いったいどこの中学生の妄想かという導入部でしたが、ストーリーが進むにつれて徐々に明かされてくる陰謀の真実に引きこまれ、驚愕の結末に息をのみました。

 テロリストに逆らったクラスメイトが次々に撃ち殺されていく描写が、もし映画になったら間違いなくR-15指定になりそうなほど無残で、平凡な教室が殺戮の現場へと変わっていく情景に目をそむけたくなる。
 なまじテロリストよりも同級生の北島の方が、人の皮をかぶった悪魔のような人格破綻者で恐ろしい。
 校舎の中がテロリストに制圧されてるときに女子を密室に連れ込んでレイプって思考がやばい。

 疑わしきはすべて罰するという自衛隊の作戦は、いくらなんでも強引でしたね。騒ぎ立てられないように事故に見せかけるとか、もっと事件性の少ないスマートなやり方もあったろうに。
 そのリアリティの無さ、不自然さに「超越者の意思」みたいなものを感じずにはいられませんでした。
 国民の最大公約数の幸せの為に最小の犠牲を斬り捨てる自衛隊の決断が、実は最小の最大数の幸せのために国民を犠牲にする策略に利用されていたというところはいい皮肉が効いていました。

 人は誰でも幸せになるために、誰かを犠牲にしている。それをより顕著に具体化したような作品。
 無意識とはいえ、自分の幸せの為に事件を引き起こしている誠にまったくの罪がないとは決して言えないが、根っこにあるものがとても純粋な恋心なのだから、どうしてか許せてしまうなぁ。
 しかし、こういうものをポロっと出してしまうあたり、本当にガガガ文庫はブラック専門レーベルになってきたなぁ。小学館さん、この方向性のままでいいんですか?
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2010年08月22日

とある飛空士への恋歌 4/犬村小六

4094512268とある飛空士への恋歌 4 (ガガガ文庫)
犬村 小六 森沢 晴行
小学館 2010-08-18

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級友の死に苛まれていたカルエルとクレアは、想い出の湖畔で思いがけず再会する。お互いの気持ちを確かめるため、正体を明かしたカルエルだったが、クレアには別れを告げられてしまう。多くの仲間を失い、疲弊した飛空科生徒たちは、悩みと苦しみを抱えたまま、再び決戦の空へ向かうこととなる。

 大空に響け、恋の歌

 空飛ぶ島『イスラ』に乗り、遙か西の果ての新天地を目指す飛空士見習いの少年少女たちの物語。

 生と死の極限の世界で描かれる壮絶な愛の物語に、胸の震えがとまらない。
 友人の死を悼む間もなく、またしてもイスラに空襲の危機が迫り、愛する少女たちを守るため、恐怖をこらえて再び死と隣り合わせの空へ飛び立つ少年たちの純粋な決意に熱い涙があふれてくる。
 ああ、彼らはただ自由に空を飛びたいだけなのに、どうして空はこうまでに残酷なのだろう。

 死んでいった仲間たちの遺志を受け継いで、彼らの分まで幸せに生きることのなんと辛いことか。
 戦友を失った悲しみを寄り添い合って必死に乗り越えようとするカルエルとクレアですが、お互いに知ってしまった相手の真実の前に二人の愛が壊れていく姿は見ていられなかった。
 憎しみに染まったカルエルの目を覚まさせるイグナシオの行動は荒療治でしたが、彼に憎むことの不毛さを気づかせたアリエルたちアルバス家の人たちは、やっぱり素晴らしい家族だなぁ。

 後悔であり、意地であったり、それぞれの胸に飛来する思いは違いますが、誰かのために飛ぶことを決めたノリアキとベンジャミンも死んでいった仲間たちから大切な何かを受け継いでいたんだろうなぁ。
 経験も少なく技術も拙い弱者である彼らが、唯一、持つことができる『勇気』を武器に命をかけてルナ・バルコを導き、その尊い犠牲に勝利で応える一千人の兵員に胸が熱くなった。

 ラ・イール王家への復讐に燃えるイグナシオはもう一人の主人公ともいえるキャラでしたが、もう少し早く存在を読者に明かして欲しかったかも。どうみてもツンデレです、本当にありがとうございました。
 センテジュアル組にモテフラグが立ちましたが、クレアの身の行方に懸念感。次で恋歌も完結とのことですが、彼らの旅路は無事に幸せの未来にたどり着くことが出来るのか……。

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2010年07月21日

ラ・のべつまくなし 3/壱月龍一

4094512209ラ・のべつまくなし 3 (ガガガ文庫)
壱月 龍一 裕龍 ながれ
小学館 2010-07-17

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シリーズ最新作の不調に担当編集の変更が加わり、筆が止まってしまった矢文学(ブンガク)。同レーベルの作家陣との飲み会では自身の居場所に不安を抱き、親友・圭介は学祭の準備などで超多忙、明日葉も学校に行くようになり連絡が取れない。そこに、ほかの文芸出版社から執筆依頼が舞い込んで。

 光り輝くつぶやきの聖地に

 BL系腐女子に恋をしたラノベ作家の純愛系ラブコメディ。完結。

 真面目なブンガクが「ライトノベルとはなにか?」と答えのない問題に思い悩む姿が微笑ましい。
 売上げの不調やメディアミックス戦略などを切り出されスランプに陥ったブンガクが、一時は諦めかけた純文学の道への誘惑に戸惑いつつも、ファンの声に応えてライトノベルを志す姿に感動した。
 ライトノベル、純文学、そんなの人の勝手、本当の作家ならば、ファンのために頑張るべき。

 どうしてブンガクくんは、選択肢がライトノベルか、純文学かの二択しか考えられないのかなぁ。
 流されやすいくせに変なところでカタブツで融通の効かない不器用な性格がもどかしい。
 一人悩んでいたところに明日葉に秘密にしていた二次元アレルギー体質がバレてしまい、破局に陥るが、彼女を愛する一心でアレルギーを乗り越えることで再びよりを戻すことができてホッとした。
 二人とも純愛すぎてやきもきさせられますが、お互いの友人たちの温かい支援が素晴らしかった。

 そもそも文学って、どうやって正道や邪道のラインを引けるんですかね?
 ます『純文学の定義』って何? 調べてみたけど、どこもまったく違うことを言っていますよ。
 現代の純文学を明治時代の文豪が読めば「こんなチャラチャラしたものが文学と呼べるか」と激怒するだろうし、その明治時代の文豪の作品を平安時代の歌人が読めば投げ捨てる。そういうもんでしょ。
 その時代のニーズに合って、もっとも読者に支持されたものが正道なんじゃないんですか?

 そういった栄枯衰勢は、生物の淘汰にも似ていますね。出版氷河期で息も絶え絶えになっている純文学は変温動物、その衰退の陰で環境に適応しながら繁栄しているライトノベルは保温動物。
 またはライトノベルは『宇宙』です。出版界の夜空に輝く星々には、それぞれ純文学、ミステリ、SFといった名前がついていて大小様々だが、ライトノベルはそのすべてを包括し膨張し続ける空間である。
 もはや現代のライトノベルは、他と同じジャンルで捉えることはできないでしょう。

 いまでさえライトノベルから一般文芸に移る越境作家、他からライトノベルに来て再デビューする離島作家が珍しくもないんですから、そのうち純文学もライトノベルが取り込んでしまうんじゃないかな。
 まあ普段の私なんかは、そう意識したことはないですけどね。簡単なことを難しく書くのが純文学、難しいことを分かりやすく描くのがライトノベル程度の認識です。
 小説の価値とは、面白いか、つまらないか。作家の価値は、売れてるか、売れてないか。ですよ。

 最後にようやく結ばれた二人の門出に祝福を。いつもキャラクターと一緒になって考えさせられるシリーズでした。次回も、よろしくお願いします。
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2010年03月18日

GJ部/新木伸

409451192XGJ部(グッジョぶ) (ガガガ文庫)
新木 伸
小学館 2010-03-18

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生徒総数千人を超えるマンモス高校、その木造旧校舎の一室にある正体不明の部、GJ部に強制的に入部させられた四ノ宮京夜。いつもの放課後、いつもの昼休み。四ノ宮京夜が過ごすのは、個性的な四人の彼女たちとの、ゆるふわな時間。今日もいつもどおりです…。

 知力、体力、気合いときどきにやり?

 個性豊かな4人の美少女たちとのゆるふわなひとときを描いた萌え四コマ的コメディ。

 どこの生徒会か友達部かという日常系雑談コメディでしたが、終始ブレないノリがすごい。
 1話がたった4ページのショート・ショートが淡々と続いていく読み応えのサクサク感がパネェ。
 本当に短いけれど、こんなどうでもいい小さなネタひとつでよく話を作れるもんだなぁと感心した。
 作業の合間や電車内、注文したお茶が運ばれてくるまでのちょっとした数分間に読むのに最適です。

 話のひとつひとつでそれぞれのキャラの個性が際立っていてとても微笑ましくて可愛らしい。
 いつもパワフルで賑やかなちびっこ部長さんだけど少女マンガのラブシーンが恥ずかしくて見れないとか、頭の良いクールな美人といった紫音さんが常識知らずの箱入りお嬢様だったりと、意外なところで見えない欠点というか、トボケた一面を持っていてとても親しみやすい。なにこの面白い人たち。

 恵ちゃんは途中からあの天使の笑顔がもう小悪魔の微笑としか見れなくなった。酷い洗脳だ。
 最後まで読んでもキララだけはよくわからない子だったけど、それが魅力と言えるんだろうか。
 そして部内唯一の男子であるキョロは女の子に囲まれた中でいろいろ気を配って、本人は地味だが個性的なヒロインたちの存在で逆にその無個性が引き立つという理想的な主人公だったと思う。
 個々のエピソードの掘り下げは浅いけれども、不思議とキャラの全体像はしっかり掴めれていました。

 イラストも多く、凝った作になっていました。側面から見ると章ごとの索引がまるで辞典みたい。
 「ライトノベル史上初の萌え四コマ的小説」というだけあって、まさに四コマ漫画を読んでるかのよう。
 最近のライトノベルってほとんど単発か、3巻くらいでシリーズが完結するのが多いんですよね。
 出版社側の事情があるわけですが、読者のニーズが短期志向になっているというのもあるでしょう。
 完結まで何十巻も続くようなシリーズはちょっと買い辛いしね。

 それにぶっちゃけ、メディアミックスを考えたときに小さく区切れた短編の方が展開しやすいんですよ。
 最近の4コマ漫画のアニメ化が多いのは、製作者側は時間の尺の調整がつきやすいし、視聴者も気軽に見れるという合理性で成り立っている。
 漫画ですらそれなのだから、変化の激しいライトノベルもその流れに乗らないわけがない。
 ということで、この作品だけが特殊なのでなく、今後こういった四コマ的ライトノベルが出てくる可能性はかなり高いんじゃないかなと思ったり。続きを出せるなら、是非ともお願いしたい。
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2010年02月23日

羽月莉音の帝国/至道流星

409451189X羽月莉音の帝国 (ガガガ文庫)
至道 流星
小学館 2010-02-18

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来たれ、革命部へ!クーデターを敢行しちゃう部です!俺はそんな詐欺的な部に強制加入させられた。従姉の莉音に。俺たち部員は「創業に伴う初期投資」だかで借金300万円を背負わされ、返済のためにゴミ漁りからコスプレ写真集づくりまでを休みなく手伝わされる毎日!もう俺は限界!どうしてこうなった。

 プロジェクトX〜冒険者たち〜

 自分たちの国を建国するため、ベンチャービジネスに乗り出す高校生たちのサクセス起業ストーリー。

 これは興味深い。ラノベ形式のビジネス指南書みたいな感じで、起業の仕組みが面白く学べました。
 国を作るなんて大胆な目標に真っ向から挑戦して、始めは細々とした商売で小銭を稼ぎ、やがていままでにないビジネスモデルを打ち出して大金を稼ぎ出していく展開がすっごくワクワクした。
 現実的な可能性としても「もしかしたら……」と思わせてしまう勢い溢れる説得力がありましたね。

 ただし、途中、ビジネスを展開する過程で沙織にかかるファクターが大きすぎるとは思いました。
 どんだけ国民的美少女なんだよ沙織。いまだかつてここまで美人な幼馴染ヒロインがいただろうか。
 まあもしツンデレ貧乳美少女コスプレイヤーなんて二次元の存在が、リアルにいたらこのくらいの人気はむしろ当然かもしれない。おりおりかわいいよおりおり……。
 あだ名が広まってしまうことよりも、いつまでも想いが届かないのが哀れすぎる。

 巳継たちを振り回す莉音もただ無茶苦茶しているだけではなく、しっかりとした経済知識や企業計画を踏まえ、勝機を見出した上で大胆に勝負をかけるから、結果がどうなるのかと引き込まれる。
 国を建国するという目的の裏に、この世界に対する憤懣や救われない人々への揺ぎ無い想いがあって胸を打たれる。こういう上司だと部下は大変だろうけど、働き甲斐はあるでしょうね。

 この手の部活動ものの結末は、大抵終始空回りしてただ働きか、儲かるけれど最後には失敗して元の黙阿弥に戻るかの二択なんだけれども、そういうありがちなオチには留まらないようで好感が持てる。
 やることなすこと成功するご都合主義、各種手続きの省略、キャラのマンパワーに頼りがちなところなど細かい粗は目に付きますが、それを含めても十二分に痛快!爽快!なによりも夢とロマンがありました。

 ベンチャー企業の「venture」は、元は「リスクが高い」という暗喩を込めての『大胆、危険』という意味ですが、莉音の父親が冒険家なのもそれとかけているのかな。
 続編としては国際編、グローバルスタンダードですかね。もうわざわざ日本の中に国を作るよりも、破綻寸前の国をまるごと買い取った方がいいんではないだろうか。政治的軋轢も絡んでくるのかなあ。
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2010年02月22日

ラ・のべつまくなし 2/壱月龍一

4094511903ラ・のべつまくなし2 (ガガガ文庫)
壱月 龍一
小学館 2010-02-18

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ラノベ作家としてデビューし、ヒットを飛ばすことになった青年・矢文学。『かみたまっ』のイラストレーター双星は、双子の高校生・星峰海、陸の合同ペンネームだった。プロ意識の高い海は、ブンガクが『かみたまっ』のファンの女子高生とつきあっているという話を聞き、突然の絶縁宣言!!

 ライトノベルは絵師の努力と作家の情熱でできている

 BL系腐女子に恋をしたラノベ作家の純愛系ラブコメディ。

 念願叶って付き合い始めたブンガクと明日葉、どちらも奥手な二人の初々しい恋人ぶりが可愛い。
 純文学から移ってきたブンガクだから、ライトノベルについては不勉強でプロ意識が欠けていることは確かですが、ただいきなり担当を降りると言い始める海もプロとしてどうなのか。
 ともあれ、やはり油断するとどこからともなく漂ってくるBL臭。あからさまに腐女子読者を狙ってるなぁ。
 ライトノベルは商品であるから、作る側は「売れる」もの作らなきゃいけないのはその通りです。
 ただし、機械で自動で量産できる工業製品ではないのだから、小説作りのノウハウやテンプレをなぞっているだけではダメで、作者自身の情熱が作品に籠っていなきゃ読者のハートには響かない。
 一巻の売り上げはイラストの力が影響しますが、シリーズでヒットさせるのはやはり作者の力でしょう。
 作者は自分の書くものを作品だと思ってても別に構わない、それを商品として完成させるのが担当編集者やイラストレーターといったサポート役の人々の努力ですよ。

 ブンガクと明日葉の事情にしたって赤の他人がどうこう言える問題じゃないし、ましてやうまくいっている二人の間に入って強引に別れさせるのはやりすぎだなぁ。大人は誰か止めてやれよ。
 まあ一般論だったら作者とファンの距離は、それなりに離れているべきと私も思います。
 私なんて作品の酷評ばっかり書いてるから、作者さんの半分くらいはリアルで顔向けできないしね。

 客観的に見ると、海が一人で興奮していろいろ企むけどひたすら空回りしているだけなんじゃ。
 明日葉も多少は振り回されましたが、今後も陸くんハァハァできるんならプラス要素の方が大きそうだな。
 今回はブンガクだけでなく、明日葉や圭介たち周囲の人々の成長がメインでしたね。
 イラストレーターが登場したんだし、次に登場するとしたら書店員キャラかしら。
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2010年01月23日

人類は衰退しました 5/田中ロミオ

4094511830人類は衰退しました 5 (ガガガ文庫)
田中ロミオ
小学館 2010-01-19

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この仕事に就く前、多くの時間を過ごしたのが《学舎》と呼ばれる人類最後の教育機関です。寄宿舎で出会った友人たち。RYOBO230r。秘密の倶楽部・のばら会。妖精のお茶会。感傷に浸るにはまだ早いのに、なぜ思い出すの……?

 過去と現在が結びつくたった一つの「衰退」!

◆妖精さんの、ひみつのおちゃかい
 クスノキの里に戻る前の"わたし"の《学舎》時代を振り返った過去のお話。
 いやいや、主人公の過去がダークすぎるでしょう。どうしてこんなに性格が荒んじゃってたのよ。
 加えて在学当時の彼女は勤勉な優等生のイメージを受けるのに、それが何を間違えて今のような怠け者になっちゃったんだろうか。人は落ち始めたらドン底まで落ちるってこのことかしら。

 のばら会の裏の顔には背筋が凍りました。人類は衰退しても、女子の集団の陰険さは変わらないな。
 せっかく直りかけていた主人公の人間不信が余計にこじれちゃったんじゃないだろうか。
 ぼっち狼少女同士ようやく信頼できる仲間に巡り合えたのか、友人Yと和解してからは次第に彼女の角も取れて成長していく姿がよかった。
 いままでのようなシュールなギャクコメだと思いきや予想外にしんみりしたエピソ−ドでやられました。

 <巻き毛>ちゃんは裏があっても好きだなぁ。百合ヤンデレ、いいと思います!! 再登場に期待。

◆妖精さんの、いちにちいちじかん
 クスノキの里の日常が、ある日ゲームの世界に変貌してしまうお話。
 妖精さんはレトロなゲームがお好きと見える。ドット世代ならばニヤつかずにはいられない。
 壁が消える事件は、最初なにが起きているのかわからなかったけど気づいた瞬間に凸ブロック噴いたw
 ドラクエ、インベーダーゲーム、ぷよぷよ、倉庫番、ウィザードリィ、他にはなにかあったかな。
 あらゆるジャンルのゲームがごちゃ混ぜになった世界観に頭がおかしくなりそうw

 そんなフリーダムな現実世界で今日も妖精さんは究極召喚獣でした。核爆!(笑)
 描画レベルのこだわりっぷりは、ドット信者から3D世代に対する悪意を感じないでもない。
 まあポリゴンを使った初期のゲームは確かに酷かったもん。それでも我々は「立体スゲー!」と喜んでプレイしていたんですよ。サターン鉄拳とか、64マリオとかね。あの角角っぷりも、味があるんだぜ!
 衰退していくと見せかけ村にますます変人たちが増えていく。人類まだまだ捨てたもんじゃないっすよ。

 最後、助手さんが美味しい。そのフラグがいつか実るといいね。
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2009年10月24日

ラ・のべつまくなし/壱月龍一

4094511679ラ・のべつまくなし (ガガガ文庫)

小学館 2009-10-20

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純文学を志すも、ラノベ作家としてデビューしてしまった青年・矢文学。しかし原稿が書けない!気晴らしに、通い慣れた図書館に向かったブンガクは、そこで出会った少女・明日葉に一目惚れしてしまう。仲良くなろうとするものの、ブンガクは二次元アレルギー、そして明日葉は腐女子だった・・・・・・。

 一目惚れした彼女は、腐女子でした

 BL系腐女子に恋をしたラノベ作家の純愛系ラブコメディ。

 ちょっとだけ腐女子を見直しました。ブンガクと明日葉の初々しい恋模様が素敵。
 どこのレーベルでもこぞって出しはじめたラノベ作家ものですが、メタなネタは控え目であくまでも本筋はラノベ作家と腐女子の不器用な純愛ストーリーを貫いていました。
 腐女子と非オタの認識力の差から巻き起こる勘違い連発の鈍感カップルっぷりがたまらない。

 ブンガクくんの純文学至上主義は、自分の恥ずかしい過去から目を背けているだけだよなぁ。
 小説の価値は低俗か高尚かではなく、つまらないか面白いかそれのみによって判断すべきかと。
 そもそも現代で純文学と言われている本も、書かれた時代に遡ってみれば低俗な小説扱いされていた歴史があるわけで、何が正道で王道かなんて読者にとってなんの意味もないでしょうよ。

 真面目に悩んでいるブンガクをBL妄想で弄ぶ明日葉は、やはり人として腐っている。
 性格はいい子なんだけど、落ちるところまで落ちていてもはや手がつけられませんね。
 しかし、腐っても女の子。明日葉とのお付き合いを目指して二次元アレルギーを克服すべく努力するブンガクの健気さに泣ける。お前って奴は、無茶しやがって・・・・・・。

 親友との仲を誤解してブンガクの前から消えてしまった明日葉へ「ついったー」を通して呼びかける場面は素晴らしかった。自分が書いて楽しむことよりも誰かに小説を読んでもらいたいと思うこと。生来小説を書くことが好きなブンガクに唯一足りなかったものがそれだと思います。
 まだまだ二人にも障害は多いけれどお互いの情熱や勇気を交換し合えば乗り越えていけるでしょう。
 ところどころお約束でしたが、綺麗にまとまっていてわりと良作だった。続編もあるといいなぁ。
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2009年07月19日

今日もオカリナを吹く予定はない/原田源五郎

4094511474今日もオカリナを吹く予定はない (ガガガ文庫)
x6suke
小学館 2009-07-17

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ちっこくてかわいい女の子・井波に誘われるまま、オカルト大好き略して(?)オカリナ部に入部させられた俺。部の目的は、謎の敵「死角」を破壊すること!?うなる一升瓶、壊れる日常、そして飛びかうブルマ!!

 見る目がある人は、何かが違う

 人の寿命を奪う死角と戦う少年少女の非正統派学園異能力バトル。

 うーん、世界観といい、キャラといい、とてもヘンテコな作品だ。まさに怪作。
 一般人には見えず密かに人間の寿命を奪う怪物・死角を条件付きで見る能力を持った『見る目がある人』で結成されたオカリナ部に強引に入部させられた主人公・エビマヨが、ちびっこ女子・井波に振り回されるまま、仲間とともに死角とのバトルに突入していくのだけれども、中途半端にコミカルでとってもお気楽な空気が独特でした。

 武器が一升瓶というヒロインは、ウケ狙いにしてもちょっとばかり奇を衒いすぎて、やや外し気味。ナックルガードのついた一升瓶なんか持って歩いてたらその時点で不審人物確定だよ。
 いや、ちっこかわいい女の子は正義ですよ。かなり特殊な電波を受信してるけれど。まったく人の話を聞かないけれど。正直、関わりになりたくないけど。

 スペック的には、もう一人のヒロインの天然娘のりりんの方がハイクオリティで、当人もわりとエビマヨの言いなりなのに、なんでエビマヨはのりりんルートをスルーしてんだよ! もっとがっついていけよ! そこまでムッツリスケベ道を貫かなくていいだろうがっ!!
 それともブルマか! そんなに赤ブルマのロリがいいのか! 全力で同意だよコンチクショー!!!

 井波と因縁のあるデカ死角と遭遇し、流されるままだったエビマヨが戦う理由へ目覚めていくなど、ストーリーはとても王道なのに、それを描く文章センスが奇抜すぎる!
 しかし、死角の正体やエビマヨたちだけがなぜ死角を見れるのかなどの謎は意味不明で終わるので、私の嫌いな不条理系にオチてしまっているんですよねぇ。
 かといって、すべてを否定できるほど地雷とも言いきれない、釈然としない面白さがある・・・・・・ような気がする。なんだか、自分に自信が持てなくなってきたー!

 何度読んでも思わず頭を抱えて悩ませる。やはりとてもおかしな作品と言うしかない。
 多分、読まないとこの懊悩は伝わらない・・・・・・。読んだ後で後悔しない人だけ読めばいいと思います。
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2009年07月18日

とある飛空士への恋歌 2/犬村小六

4094511490とある飛空士への恋歌 2 (ガガガ文庫)
犬村小六
小学館 2009-07-17

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空の果てを目指し旅立った空飛ぶ島イスラで、カルエルたちの新生活がはじまった。各国から選抜された個性的なクラスメイトたちと、彼らとの和気藹々な寮生活。そして飛空訓練。意を決し、クレアにペアを申し出たカルエルだったが―。

 蒼い空は、どこまでも続いていく

 空飛ぶ島『イスラ』に乗り、遙か西の果ての新天地を目指す飛空士見習いの少年少女たちの物語。

 憎しみは一時忘れ、学校生活を満喫するカルエルのダメダメでヘタレた姿が可笑しい。
 風を操る魔女として周囲から虐げられて育ったクレアの悲惨な境遇も、カルエルに劣らず衝撃的な過去でしたが、お互いの正体なんて知りもしない二人のいちゃつきぶりには、すっかりあてられました。初々しいお惚気っぷりに大変ニヨニヨさせていただきました。ごちそうさまです。

 ごちそうさまといえば、アリエルの料理の反響の凄さは一体!?
 アリーメンやアルバスカレーの描写も美味しそうで、他にも餅や寿司、イチゴクリームパンなど、やたら身近な食べ物があふれているのは、作者の遊び心でしょうか。
 っていうか、クレアに対抗する恋のライバルとしてよりも、寮生みんなのお母さんキャラとしてすっかり定着しちゃってますね。カルエルも「君の料理を毎日食べたい」とか頻繁に言ってるけれど、それって聞き様によっては、違う意味にもとれるんじゃね。
 今のところ和やかな関係のカルエル、アリエル、クレアですが、これからどう波紋が広がっていくのか。

 学園のマドンナ二人を独占するカルエルですが、生意気な彼を快く思わない一部の貴族組の策略で、クレアと漂流イベントへ突入していく展開は、お約束のシナリオだなぁと思いましたが、まさかクレアがカルエルの正体まで看破してしまうとはなんとも悲劇的ですね。
 苦悩するクレアの横でノホホンと寝ているカルエルは、とても幸せな奴だよなぁ。
 貴族組も決して悪い奴らばかりではないようなので、クレアのように庶民組とも仲良くして欲しい。

 和気藹々とした学生組だけでも十分に賑やかですが、教師組のバンデラスやソニア、航海長のルイス・デ・アラルコンなども愉快な大人たちもいて、このまま楽しい大空の旅となりそうだったのに最後に驚愕の急展開が!?
 これは見事な引きと言っていいでしょうね。平穏な時間は過ぎ去り、行く手に大きな暗雲が迫ってきました。次巻が非常に気になります。
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2009年06月23日

その日彼は死なずにすむか?/小木君人

4094511423その日彼は死なずにすむか? (ガガガ文庫)
小木君人
小学館 2009-06-18

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僕は死んだ。何もいいことがない、17年の人生だった。でもマキエルと名乗るいきものが言うには、もういちど10歳からやり直し“奇跡の欠片”をあつめれば次は死なずにすむらしい。奇跡の欠片がなんなのかは教えてくれなかったけど、僕は生きよう、こんどは悔いを残さないために

 最高の人生を過ごすたったひとつの優しい方法

 17歳で死んでしまった少年が10歳の頃の自分に戻って人生をやり直す青春ジュブナイル。

 自分の初恋の頃を思い出してノスタルジックな気持ちにさせてくれる素敵なラブストーリーでした。
 一度死んで10歳に戻った主人公・鋼一が、そのまま10歳で通じる程に精神年齢が幼くて弱々しいのが引っ掛かりましたが、そういう意志薄弱な彼だからこそ、今度こそ悔いのないように生きようと勇気を出して新たに人間関係を築き上げていく姿に胸を打たれました。

 自分が助かるためには、"奇跡の欠片"という形のない、何なのかもわからないものを探す必要があるのだけれど、自分の事よりもかつての人生では救えなかった少女たちを今度こそ救うために動き始める彼の行動は、一見ヘタレだけれどもその裏に隠れた大きな強さと優しさを見せてくれる。

 海外からやってきて教室に馴染めずにいた美少女ソフィアと親しくなり、活発でプライドの高い彼女に振り回されつつもいままでより前向きに自分を捉えられるようになり、ソフィアの方も弱気だけれど心優しい鋼一に慈しみや愛おしさを抱くようになり、お互いに感化されながら成長していく二人がとっても微笑ましくて幸せな気分になれる。
 鋼一を連れ回すだけでなく、口下手な彼をちゃんと理解して気持ちを察してくれるいい娘なんだよなぁ。

 ソフィアだけなく、イジメを受けていた少女とも実、複雑な悩みを抱えた隣のお姉さん弥宵など、少女たちと交流を深めていくうちに鋼一の運命が変わっていき、彼のトラウマめいた人間不信の心が徐々に解けていく様子は、なんというか思わず「よくやった!お前は、頑張ったよ!本当によくやったよ!」と彼の背中をバシバシと叩いてやりたくなりましたね。
 本来、主体性が弱くて卑屈な主人公キャラって大嫌いなんですが、鋼一の場合は不思議とそこが可愛いく思えてきちゃうんですよねぇ。弱音を吐いても、いつも他人のために一生懸命で必死なのがよかった。

 もちろん、最後はハッピーエンドなんですけれど、そこに辿り着くまでが痛々しくて、どこか物悲しい。
 登場人物たちの小学生としての視点から心理描写を描くことで、それぞれの感情がより等身大に伝わってきて素晴らしかった。
 そしてキャラの中でも、マキエルは最高の友人の理想とも言うべき一番魅力的なキャラクターでした。私の少年時代にもマキエルが側にいてくれたら、どんなに楽しくてハッピーなものになっていただろうかと考えずにはいられませんね。

 いやぁ、これは良作ですぞ! 久しぶりに「俺はいま猛烈に感動している!」ってカンジになりました。
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2009年06月22日

時間商人 トキタと命の簒奪者たち/水市恵

4094511415時間商人 トキタと命の簒奪者たち (ガガガ文庫)
水市 恵
小学館 2009-06-18

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時間商人トキタは、とある都会の片隅で、不老不死の時間を売っている―。世間を騒然とさせ続けた無差別連続殺人事件の裏でも、トキタは粛々と営業を続けていた。彼はどんな顧客も諸手を挙げて迎え入れる。ある日、訪れた客はトキタに尋ねる。「死刑囚を不老不死にすると、どうなりますか?」。

 ビジネスライクな詐欺師たち

 第一話
 自殺志願者の少年が同じく自殺志願者の少女と出会って不老不死を願うお話。
 この展開と結末は読めました。というか、よく考えれば不審なことに気づくと思うのだけれど、テンパってる状態なら騙されるのも仕方がないのか?
 相手が精神的に弱っている時につけこむ、詐欺師の巧妙な手口ですね。私も見習いたいものです。
 しかし、トキタはビジネスというならば、もっと倫理観を気にかけて客の価値にも拘ったほうがいいよね。

 第二話
 不老不死には興味のなかった少女が、事件に巻き込まれていくお話。
 これも衝撃的な話でしたね。事件に遭遇した晶子の怖がりっぷりが、やや極端すぎる気もするが、誰でも一度は『いつか死ぬんだ』ってことが怖くてたまらなくなってパニクったこともあるだろうし、彼女の場合はそれがこの時だったということか。

 うーん、けれど彼氏や家族に送り迎えして周囲に守ってもらえば、不老不死を願うほどのことでもないような・・・・・・・。相手が冷静でないのはわかっていながら取引を進めるトキタもやはり詐欺師だよなぁ。

 第三話
 有名彫刻家の父親が虐待を受ける娘を助けようとする話。
 怖っ! なんという歪んだ家庭でしょうかね。これだから芸術家ってのは・・・・・・それは偏見か?
 しかし、こういう妹も、ヤンデレで可愛いと言えなくもない。兄貴がもう少しうまく妹をコントロールできていたら、こういう倒錯した関係もバレず、父親にも見つからなかっただろうし、周囲に被害が広がるようなこともなかっただろうに。ヤンデレ妹の兄というのも何んらかの資格が求められるものかしら。

 第四話
 二人の刑事が殺人犯を追い詰めるお話。
 私ですら犯行のやり方が拙くて、証拠隠滅も雑すぎると思ったのに、そんな犯人を捕まえるのに何年もかかってて日本の警察は無能なのかなぁ。
 トキタがどこかの時点で犯人と取引を止めていたらこんなに死人が出ることも・・・・・・、って、よく考えたら、犯人側も取引を続ける理由はなかったような。不死じゃなくなったら、また自分の体を傷つければいいだけだし。
 やはり、芸術よりも殺人がクセになってしまっていたんじゃないかしら。

 ヤンデレ妹が兄を不老不死にして守っているところに兄妹愛を感じて萌えなくもない。これまでいろんな人の寿命を奪って生きてきたのに、兄の時間は奪っていませんからね。かすかな情は抱いていたのではないかと。

 ラストでは、いままでのお話がこうやって繋がってくるのか! と毎度の事ながら感心してしまう。
 郷田の正体は話し口調からは全然気づかなかった。やはり文章だけ切り取ってみていると、先入観や錯覚がどうしても交ってしまうんだよなぁ。そして作者はその隙を突くのが上手い!
 ストーリーの周到さ、計算高さにかけては、ここピカイチの実力を見せる作家ですね。
 そして暗黒ライトノベル好きとしてもこの容赦のない腹黒さは大変に魅力的です。これはオススメ!
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2009年03月26日

曲矢さんのエア彼氏/中村九郎

4094511229曲矢さんのエア彼氏 (ガガガ文庫) (ガガガ文庫)
中村 九郎
小学館 2009-03-19

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ヒザを壊し、バスケをあきらめた俺が放り投げたバッグは―びしょ漏れの制服女に激突。俺は曲矢と出会ってしまった。普通の人間には見えない、空想がつくりだした“エア彼氏”をもつ電波女に…ってなんでエア彼氏が見えてんだ俺?

 貴様、さては見えているな!

 一般人には見ることも、声を聞くことも、触れることもできないエア恋人を召喚するエアリアルと呼ばれる少年少女たちの、妄想青春ストーリー?
 これはかつて何人もの読者を狂気の世界に突き落とした『ロクメンダイス、』の悪夢の再来だな。

 中村九郎の作品群は、いつもわけがわからん。というか、意味不明すぎて頭が痛い・・・。
 登場人物の会話は全然噛み合ってないし、行動原理もちぐはぐで唐突だし、話の展開までも不自然この上なく、読者を置いてけぼりに自分勝手に先走って、なにが楽しいの?
 ラノベであんまり言いたくはないけれど、世界観が非論理的で、読者への説得力が皆無。
 フィクションだからこそ、リアリティが重要だということを理解していない。そこが毎度毎度、この作者は読者を無視してるなと不快に感じるのですよ。

 最初は疑ってかかっていた主人公の木村カントまで、いつの間にかエア恋人を求めるあまり、エアの世界に浸って、人前でも平然とエア人間に話しかけるようになっていく、このノリにもついていけない。
 そして無意味すぎるエア小道具の豊富さ。携帯のエア発信、エア煙草、エアメイクにエアセックス。
 バトルシーンに至っては、エア騎馬、エア拳銃とか、エア爆発とかって、それどんなアクションですか!いくらなんでもシュールすぎますよ!

 別に私は電波ゆんゆん系が嫌いというわけでもない。『AURA 〜魔竜院光牙最後の闘い〜』、『電波女と青春男』みたいな作品は面白いと感じることができるんだが、あれはあくまで普通人の視点から描かれているから、電波キャラのイタい行動を客観的にとらえることができて、それが面白さに繋がってくるんでしょうよ。
 読者の視点まで、妄想にとり憑かれるようになったら、ひたすらにイタくて辛いだけです。

 どこまでが現実で、妄想なのか判断出来かねる。普通に読みにくいだけですので、ごっちゃごちゃにしないで頂きたい。こういうものを書くならば、最低限きっちりと書き分けて欲しい。
 文才は多少なりともあるんだから、もっと読み手に配慮したマトモな文章を書こうと思えば書けるだろうに。むしろそちらの方が売れるだろうに、そこまでこんな作風にこだわる理由がわからない。
 少なくとも私には、この本の楽しみが、何ひとつわからんし、伝わってこない。
 作家としては自分の作品にこだわりを持つのも大切だが、固定観念に囚われて自分の殻とじこもって出てこなくなるのも立派な弊害です。もっと他の書き方も試してみたらどうなんだろう?

 ちなみにこれはエア感想文っていうのを衝動的にやってみた。馬鹿にも見えています。


ロクメンダイス、 (富士見ミステリー文庫)ロクメンダイス、 (富士見ミステリー文庫)
中村 九郎

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AURA ~魔竜院光牙最後の闘い~ (ガガガ文庫)AURA ~魔竜院光牙最後の闘い~ (ガガガ文庫)
mebae

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電波女と青春男 (電撃文庫)電波女と青春男 (電撃文庫)
入間 人間

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2009年02月28日

とある飛空士への恋歌/犬村小六

4094511210とある飛空士への恋歌 (ガガガ文庫)
犬村小六
小学館 2009-02-19

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数万人もの市民に見送られ、旅立ちの時をむかえた空飛ぶ島、イスラ。華やかな目的とは裏腹に、これは故郷に戻れる保証のない、あてのない旅。式典を横目にカルエルは、6年前の「風の革命」によりすべてを失った元皇子。彼の目線は、イスラ管区長となった「風の革命」の旗印、ニナ・ヴィエントに憎しみを持ってむけられていた…。

夕陽に向かって旅立て

 空飛ぶ島『イスラ』に乗って、遙か西の果ての新天地を目指す飛空士見習いの少年少女たちの物語。
 前作『とある飛空士の追憶』は綺麗に完結していたので、さすがに今回の登場人物は別だろうなとは予想していましたが、まさかシリーズ化するとは思ってもみなかった。

 やはり大空の旅には、ロマンと男汁とその他もろもろの興奮が溢れるよ!
 大空に浮遊する島に乗って学園生活を過ごしながら新天地を目指すという、なんともファンタジックな世界観は、ラピュタ萌えにはたまらないものがありますね。まるで『魔法学園ルナ』じゃないか。
 小型戦闘機がびゅんびゅん飛び回るよりは、巨大飛空艇が悠然と雲間を行く姿が好きな私としては、願ったり叶ったり拝んだり崇めたり。
 
 ストーリーは、皇子として何不自由なく暮していた主人公カルエルが、革命で地位を追われ、養父となった飛行機整備士の元で、賑やかな三姉妹に囲まれて過ごす幼少期の話がメインです。
 この養父が、魅力的なんだよなぁ。いかにも『理想の親父』ってカンジで。娘さんたちも、突然やってきた義理の弟を歓迎し、皇子だという事実を知って驚きこそすれ笑って受け入れて。
 両親を亡くして落ち込むカルエルが立ち直ることができたのも、彼ら家族の温かみというものがあったからでしょうね。まあこう騒がしくては悲嘆に暮れる暇もなかったんだろうなと想像すると微笑ましい。

 飛空士見習いとして『イスラ』にやってきたカルエルは、高慢ちきでマザコンでナルシストなんだけれど、妙に抜けていてヘタレた少年に成長しているのが笑えます。
 幼い頃からカルエルが好きで、彼にくっついてきた義妹アリエルとの遠慮ないやり取りも楽しい。
 湖畔で出会ったちょっと天然はいった少女クレアとの今後の関係も気になるところ。
 雲海を二人乗りの自転車で駆けていく場面は、『ローマの休日』か『タイタニック』みたいでステキでした。

 『イスラ』にやってきた住民たちは、新天地を目指すという理想に満ち溢れているけれども、上層部の貴族たちは政治に負けて左遷された者たちの集まりということで、そのあたりの庶民と貴族の温度差なども懸念すべき事柄になっていきそうですね。
 作者としては今回は『ロミオとジュリエット』のつもりということですが、前作の例もあるし悲恋劇となってしまわないかが心配です。
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2008年10月26日

どろぼうの名人/中里十

4094510974どろぼうの名人 (ガガガ文庫 な 4-1) (ガガガ文庫 な 4-1)
中里十
小学館 2008-10-18

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美しい古書店店主・川井愛は私を欲しがり、姉は彼女に私を差し出した。川井愛との不思議な生活。飽きられないように、愛し続けられるように。私は、姉の命を守るために、姉にいわれたとおりにつとめを果たさなければならない。

少女はお姉さまに恋してる

ガチ百合。だが、非常に難解な文学作品を読んでいるような錯覚におちいる。あくまでも錯覚だけど。

大好きな姉の願いで、とある古書店の女主人の「妹」になって欲しいと頼まれた15歳の少女・初雪が、仮初めの"姉妹生活"を送っていくうちに、次第に相手の女性のことを愛するようになっていくというお話なんですが、これは読む人によってはかなりの地雷になりかねません。
私も好きか嫌いかと訊かれると、はっきりとは答えにくい。でも、友情に逃げない百合モノはいい。

初雪の独白形式で描かれる美しい年上の女性との同棲生活の様子は、ふわふわ、ぽわぽわした中にも打算や嫉妬が渦巻いていて、女心の複雑さというものを見せつけられる。
純朴な顔で川井親子の心をオトしていく初雪は、天然のようでなかなか計算高い。
実姉のいいなりかと思えば、その実姉の好意すらコントロールしているフシが多々あります。
熟女から幼女まで、美女・美少女を誘惑しておいて、しらっとしている悪女ぶりに惚れる。

というか、ツインテールっ娘が可愛すぎて悶えます。
離れて暮らす母親のそばに突然居座った初雪に対し、初対面でこそ冷たく接していたものの、訪れるたびに初雪とも会う機会が増え、いつの間にかメールを交換し合うような関係になり、想いを抱くようになってからは、あまりにも初々しいツンデレっぷりに鼻血噴いた。
ロリコンにとって、この小学5年生の存在は、もはや凶器を通り越して大量殺戮兵器。
やはり百合小説はローティーンの女の子同士でやるもんだと思う。

しかし、娘の態度はあんなにわかりやすかったのに、母親の方はいつまでもキャラが掴めなかった。
大人の余裕を描こうとしているのかもしれないけれど、むしろちょっと不気味さが先にたった。
世界観も妙な背景が設定されていて、わかりにくさに余計な拍車をかけていたかも。
キスは許される。けれどそれ以上の関係になったらさようならというのはとてもプラトニック。
けれど本音を言えば、さらにその先の展開があってもいいんじゃないかと。

作者を詳しく調べてみると、これまで同人で百合小説を書いていた人だそうですので、次回も百合でいいですが、もっとわかりやすいものを期待。

追伸:
むしろ本編よりも最後のあとがきの方が笑ったし、印象が強い。
たぶん、この本よりも『ドラえもん』や『アクエリ』の方が後世に残ってる可能性は高いと思うぞ!w
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2008年05月10日

人類は衰退しました 3/田中ロミオ

4094510613人類は衰退しました 3 (ガガガ文庫 た 1-3)
田中 ロミオ 山崎 透
小学館 2008-04-19

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電磁波のなく頃に

衰退中の人類の全ての記録を目指したヒト・モニュメント計画の影響でクスノキの里からいなくなってしまった妖精さん。
万能無比な妖精さんの手助けなしに遺跡の調査に赴いた"わたし"と"助手さん"が遭難してしまって・・・というお話。

妖精さん、マイクロ波に弱かったんだ・・・。
そんな精密機器のように繊細なパーツでできてるとは思えないのですが、むしろどんな状況下でも活動していそうな。
妖精さんも無敵ではないのかと思ってたら、水分をしぼって仮死状態にできるとか、クマムシの突然変異かなんかですかあんたたちは。どこまでも非常識なメルヘン生命体だなぁ。

都市迷宮に彷徨いこんだ"わたし"と"助手さん"の水筒の水も尽き、いよいよ極限まで追い詰められたという段階になって、妖精さんがひょっこり現れたときは、なんというかもう「キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!! 」ってカンジでしたね。
シリアスここまで、こっからずっとギャグのターン!みたいな。
妖精さんがいるだけで空気が一気に緊張感ゼロですよ。

P子さんとO太郎の事情を知って同情してしまった"わたし"のとった行動こそは短絡的だったかもしれませんが、情状酌量の余地はありませんかね。まあ人類も衰退したこの期に及んで、まだ堅苦しい大人たちには理解されないかな。
こういうときこそなんとかして欲しい妖精さんは電波で鬱ってるし、そうそういつも都合良くはいかないということですかね。

相変わらず、適当に生きてる妖精さんたちの姿にほのぼのとしつつ、そしてシュールなレアリスムも十ニ分に顕在。
助手さんの絵本の笑激の展開には笑かしてもらいましたw
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2007年12月21日

人類は衰退しました 2/田中ロミオ

4094510443人類は衰退しました 2
田中 ロミオ 山崎 透
小学館 2007-12-19

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本当は怖いシュールレアリスム

◆人間さんの、じゃくにくきょうしょく
妖精さんの不思議なスプーンで小さくなってしまうお話。
知能を薄力粉に変えるスプーンを使いすぎたため、身体が縮んでしまった"わたし"が、妖精さん視点で放浪するという感じなのですが、知能が落ちる=認識力が低下する→周囲が真っ暗になっていく、というところが何気にちょっと怖かった。

しかし、さすがに爺は知能の数値が高い。孫の約4倍かよw
孫も頭は悪くないと思うんですが、向学心や学習意欲といったものがカケラもないですからね。如何せん、俗物ですか。
お菓子作りとか模型作りとか、妙な凝り性は発揮してますが、
まあ人には向き不向きがあるということで・・・。


◆妖精さんの、じかんかつようじゅつ
妖精さんの不思議なバナナの皮で時間旅行してしまうお話。
時間旅行中の記憶を失えばタイムパラドックスは起きないという、いまのところSF小説の定説通りの設定が憎らしい。
けど、過去現在未来、永劫延々とお菓子を作らされているわけで、無限ル−プって怖くね? シュールなメルヘン空気に誤魔化されているが、考えようによってはやっぱ怖いって!

それにしても孫、まんまひきこもりのセリフw
しかし、それだけお菓子作りに熱意があるなら、いっそお菓子屋さんになればいいのに、なんで調停官なんてやってんの。
って、ああ、自称人見知りが客商売できるわきゃないでした。

初登場の助手さんですが、キャラが混乱してわからなす。
まあ妖精さんのイタズラのお陰で何事もなく(?)打ち解けれたようでよかったですね。
さもなきゃいつまで経っても接近遭遇しそうにない二人ですし
変な弟分ができたなぁ。

さて、無難に二巻も話題沸騰ですが、ガガガ文庫もまさかこんなに人気を博すとは思っても見なかったでしょうな。
この勢いで次回もよろしくです。とくに爺の活躍をば。
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2007年09月11日

イメイザーの美術/灰原とう

4094510249イメイザーの美術
灰原 とう 太郎
小学館 2007-08-17

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【弟の祐の世話にかこつけて、できたばかりのお絵かき教室『アトリエファミーユ』を訪れた真深。彼女はそこで、子どもはみな魔法使いなのだと言う不思議な少女、砂夜と出会い・・・】

子どもの世界は魔法がいっぱい


小学生の真深が近所にできた「お絵かき教室」で出会った少女・砂夜は、その不思議な魅力で真深を惹きつけていく。
無垢な子供が描いたラクガキや作ったガタクタは命を宿す。
それは子供だけが使える魔法なのだと砂夜は言う。
そんな子供たちの想像が生みだす魔法にまつわるお話です。

大人びた真深が、夢いっぱい元気いっぱいな砂夜と出会って、本来の子供らしさを見せていくところが可愛いですね。
弟の祐が、魔法で生徒を絵の中に消してしまい。その責任を感じた真深が、弟を救うために絵に飛び込んでいくシーンは、
お姉ちゃんとしての姉弟愛にあふれていて胸が熱くなります。

ラクガキからユニークな怪獣を生み出す『怪獣画伯』のまーくんの話は、子供を信じない大人と空想の怪獣を信じる純粋な子供たちとの対比がよかったですね。
子供にとってはラクガキでも自分の大切な友達で、まーくんとクッキーが親の勝手な都合で離れ離れになってしまう姿につい涙ぐんでしまいそうになりました。

だが、後半のロシェの話とクッキーと戦う砂夜の話は、それまでと雰囲気が正反対でそぐわないな。
折角、真深の性格も丸くなりはじめたのに出番ないし。
真深と砂夜をメインにしたほのぼのとした物語なのかと思っていたら、怪獣とバトったりなんかして、期待した展開とズレいっていってしまったのが、ちょっと肩すかしな感じ。

まあこういう子供を主体にした話は好きです。
続編あるなら、次こそは真深と砂夜でほのぼの百合路線を。
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