あそびの時間 (ガガガ文庫) 本岡 冬成 小学館 2012-09-19 by G-Tools |
小鳥遊優征(たかなし・ゆうせい)の夏休みは、ゲーセンバイトで始まった。進学するでもなく就職するでもなく、なにも決められずに夏を迎えてしまった彼は、特にゲームに興味があったわけではない。店長である春夏冬(あきない)さんの美しさと、そのコスプレ姿と、サービスのワンプレイ。それが決め手だった。
そこは旅人の帰る場所
ゲーセン嫌いの主人公とゲーム大好きヒロインのゲーセンコミュラブストーリー
誰も知らない隠し必殺技使うとか、そんなんチートや! チーターや! でも、可愛いから許す。
何事も真剣にやってこなかった主人公・小鳥遊優征が、些細なきっかけでゲームセンターの店員として働くようになり、そこを訪れる個性あふれるゲーマーたちに振り回されていく姿が可笑しかったです。
ゲームセンターと、そこに集まる常連客たちの和気藹々とした楽しそうな雰囲気に和みました。
コスプレ美人店長に釣られ、軽い気持ちでバイトになったものの、ゲームセンターに苦手意識を持っていてなかなか馴染めない小鳥遊を、それでも温かく受け入れる店員と常連客たちが素敵でした。
コスプレ好きの店長やら、オタクのイケメンやら、金髪のエセ外人やら、変わり者だらけなんですが、そういった変人たちを包み込むゲームセンター・ミドリの雰囲気がアットホームで優しい空間でした。
小鳥遊に一方的に因縁を持つヒロイン・ノラクロとの格ゲー対決は、素人と玄人の勝負とはいえ、素人だからこそ動きや考えが読めずに駆け引きが通じないというのは、ゲームの真理を突いていて頷けるところがあったなぁ。
負けこそすれ、相手から逃げずに正面から立ち向かい、真剣に何かに集中するという体験を通して、それまでの不真面目な自分を改め、過去に受けたトラウマから脱却していく姿が微笑ましかった。
ノラクロも彼女は彼女で悩みを抱えて、闇ゲームで味わえるスリルで解決しようとしたんだけれど、彼女の求めるものではないのは読んでて薄々気づいてた。ギャンブラーとゲーマーは似て非なるものだからな。
ゲームは真剣にならないと楽しくない、でも、真剣になりすぎても際限がなくなってしまう、ほどほどに楽しむ距離感が大切なんじゃないのか。ゲームセンターで繋がる人々の輪、私も入ってみたくなりました。