ダフロン

2015年06月02日

封神演戯/森田季節

4086310503封神演戯    (ダッシュエックス文庫)
森田 季節 むつみまさと
集英社 2015-05-22

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並行世界の歴史を管理する組織「崑崙」に所属する仙人・太公望。だが太公望は有休を取り続けてまったく仕事をしない“ニート”の仙人だった。ある並行世界の「殷」という国の歴史が、妖しい仙女妲己によって歪められていると知った「崑崙」は、「殷」を正しい歴史に導くため太公望を派遣する。

 太公望、美少女と戯れる

 ニートな太公望と美少女だらけの仙人が国家と歴史を揺るがし戯れる仙道戦記ファンタジー

 原作者が怒りそう。古典の『封神演義』をラノベ化してノリノリで遊んでいるのが伝わってきました。
 並行世界の歴史監視者である主人公・太公望が、師・元始天尊の命により、ある世界の「殷」という国家に寄生した仙女・妲己を討伐すべく、仲間の美少女仙人たちと国家や歴史を動かしていく展開が愉快でした。
 『封神演義』をラブコメ×戦記ファンタジーとして再構築した、まったく新しい『封神演義』でした。

 「崑崙」というれっきとしたお役所に所属しながら、数十年間も有休を使って自宅でニート生活を過ごしていた太公望の筋金入りの「働いたら負け精神」が天晴でした。基本ダラダラと引きこもってサボっているだけに思えるのだけれど、未来の展開を予測して敵味方を周囲を動かして最後にはしっかりと結果を手にする策士ぶりがぐう有能。こういう人がリーダーになったら部下は楽ができそうだけれど、理解されないでしょうね。

 熱血少女の四不象やツンデレ天才仙人の楊戩、宝貝人間の哪吒など、実力も可愛さもトップクラスの仙人を率いて歴史を変えていく壮大さにワクワクするのですが、妲己サイドの音楽による宇宙征服という突拍子もない構想にも惹かれるものを感じます。殷を滅ぼすために周の大師となって戦争を起すのですが、妲己討伐という目的のために人間の兵士を犠牲にする決断に常に疑問を抱く太公望の葛藤や苦悩が身にしみて感じました。

 おおまかなストーリーは原典の『封神演義』と同じですが、太公望が元地球の高校生だったり、敵も味方も仙人は美少女だらけであったり、改変されています。とくに太上老君がかわいい、毎日一緒にゲームしたい。
 太公望とは正反対にワーカーホリックで生真面目で不器用な聞仲も憎めなくて、ライバルとして今後の対決に期待できます。今回は登場してませんが『封神演義』のキャラでは申公豹が好きです。次回でオナシャス!
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2015年01月05日

紅 歪空の姫/片山憲太郎

4086310155紅 ~歪空の姫~ (ダッシュエックス文庫)
片山 憲太郎 山本ヤマト
集英社 2014-12-19

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大晦日を乗り越え、新たな年を迎えた揉め事処理屋の紅真九郎。崩月家で夕乃たちと穏やかな正月を過ごしていたが、そこで、冥理から奇妙な話を持ちかけられる。真九郎との見合いを望む少女が現れたというのだ。しかも、その少女は裏十三家の筆頭“歪空”の一人娘。断ると崩月家に迷惑が掛かると考えた真九郎は、その見合い話を受けることにする。しかし、二人の出会いは紫にまで影響を及ぼして…。

 可憐なる暴君の失恋

 世の中の理不尽に立ち向かう若き揉め事処理屋の少年のクライムサスペンス・アクション

 相変わらず真九郎くんは頭のおかしい女の子に好かれるフェロモン出てるな。これがロリコンの運命律か。
 正月を迎えた真九郎に舞い込んだ『歪空』の一人娘・魅空との見合い話が、それが後に揉め事処理屋の依頼が絡む冤罪事件へと繋がって、裏社会の武闘派を巻き込んだ一触即発の紛争へと発展してく展開が盛り上がる。
 数年ぶりの紅の世界観がマッポーすぎて安心した。これだよこれ、このサツバツした社会がいいんだ。

 覚悟が甘くてヌルくて、周囲に流されるままの真九郎ですが、それがごく普通の人間の感性であって、しかし、死闘を演じた惡宇商会とも好悪感情なくサッパリと和解できるのがやはり決定的に異常人なんでしょうね。
 裏十三家『歪空』の娘と見合いをすることになり事前調査でヤバさを聞き取っていたのに、お見合い会場に紫も連れて行くわ、フレンドリーに自己紹介するわ、真九郎の警戒心と緊張感が足らなすぎてハラハラする。

 久しぶりにやってきた揉め事処理屋としての依頼を通じて、冤罪事件を知り、首を突っ込んで真犯人を探し始める真九郎の優しさは好きなのですが、調査の手際が行き当たりばったりで、まるで成長していない……。
 事件の背景や情況証拠から歪空魅空に行き着くのですが、女子中学生とお風呂で尋問とかうらやまけしからん。真九郎くん、女子中学生とガチで殴りあって負けるとか……巻を重ねるごとに弱くなっている気がする。

 紫に励まされるか、幼女に危害が与えられないと本気出さない真九郎くんはよいロリコン。いつもいつも手遅れになってからじゃ遅いんだよ!とじれったくなりますが、そのもどかしさのフラストレーションを発散させてくれる展開をいつも最後に残しておいてくれるからこのシリーズを愛してやまない。 どうか今回だけじゃなくてもっとシリーズが続いてください!! 切彦ちゃん、もっと切彦ちゃん分をください! なんでもしまry

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2014年12月05日

文句の付けようがないラブコメ/鈴木大輔

408631004X文句の付けようがないラブコメ (ダッシュエックス文庫)
鈴木 大輔 肋兵器
集英社 2014-11-21

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“千年を生きる神”神鳴沢セカイは、銀髪赤眼の美少女。彼女の“生贄”として捧げられた高校生・桐島ユウキ。『生贄になる代わりに何でも言うことを聞いてやろう』と言われた彼はこう願い出た―「神鳴沢セカイさん。俺と結婚してください」。

 可笑しく悲しい恋人たちの悲喜劇

 千年を生きる神である少女と生贄に捧げられた少年のちょっと奇妙なラブコメストーリー

 安定の面白さ。ベタベタのラブコメでありながら読者の意表を尽く展開をぶっこんでくる意外性最高!
 神の生贄になるために生きてきた主人公・ユウキが、"千年を生きる神"・神鳴沢セカイに命を捧げる代わりに結婚を申し込んだことから奇妙な新婚生活が始まって、生まれていく愛の絆がときめきました。
 お気楽なラブコメディと報われない悲恋劇の融合で、二つの要素の矛盾がうまくまとまっていました。

 幼い頃から神の生贄として選ばれたせいで数々の苦難を経験したユウキは、そのせいか平凡そうに見えても、人生に達観した精神性を持っていて、神様であるセカイ相手にも媚びない丁々発止のやりとりが可笑しい。
 セカイも神様らしく尊大で横柄な人かと思えば、アドリブに弱くて世間知らずで、おまけに酒や葉巻に目がないダメ人間で、全知全能とは程遠い人間臭さが溢れていて、ハタで見ていて楽しい面白系ヒロインでした。

 セカイの暮らす洋館で逢引きを重ねるうちに、セカイの神としての威厳がボロボロ崩れて、年頃の女の子らしい可愛いさ、儚さ、弱さが見え隠れしてきて、人と神の壁を越えた関係を築いていく光景が微笑ましい。
 こんなユルユルなセカイが本当に神様なのかと、好奇心で覗いたユウキが知ってしまった世界の真実は残酷で、過酷な神の責務からセカイを解放するためにユウキの取った逃避行の結末は切なさが胸にこみ上げました。

 幾度と無く逃れられない運命に翻弄されながらも挫けずに必死に抗い、自分たちの愛を貫こうとする二人の姿が心に突き刺さる。作者のこれまでの作品と比べると、主人公とヒロインの救われなさが目立ちますね。
 今回は物語世界観の解説とユウキとセカイの周辺のキャラクターの顔をチラ見せした程度なので、深く掘り下げていくのは次回以降に期待しましょう。救われないからこそせめてもっとイチャイチャしてください。
posted by 愛咲優詩 at 00:00 | TrackBack(0) | ダッシュエックス文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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