“文学少女”見習いの、傷心。 (ファミ通文庫) 竹岡美穂 エンターブレイン 2009-12-26 by G-Tools |
「きみが大嫌いだ」―心葉にそう告げられてしまった菜乃。その日以来、心葉は本心を見せず、取り繕った笑みで菜乃に接するようになる。そんなのは嫌だ!と夏休み、菜乃はある行動に出るが…。傷心の夏が過ぎ、秋。文化祭に向け賑わう校内で、菜乃はまた新たな出逢いを体験する。
わたしたちは"想像"する
文学見習いの少女が事件に隠された真実を探し出す、もうひとつの”文学少女”の物語。
心葉先輩がドSすぎる……。しかし、後輩は後輩でドMなので相性はいいのか?
遠子先輩がいた頃は、"文学少女"に振り回されるのを嫌がっていたのに、いまでは「遠子先輩じゃないと嫌だ! "文学少女"じゃないと嫌だ!」とはワガママな言い分だなぁ。
遠く離れていてもこの依存っぷり……。すっかり心葉は調教されてしまってるんだな。
けれど、そんな理不尽な理由で一方的に敬遠されていたら、菜乃だって振り向いてもらうために無理をするしかないじゃないですかねぇ。女の子を追い詰めてそんなに楽しいか……、鬼畜だな……。
しかし、そんな後輩イジメにもめげない菜乃の能天気な明るさに救われる。頭は悪いし空気を読まないかもしれないが、健気で一生懸命な子は応援したくなってくるじゃないですか。
"怪物"騒動によって真っ直ぐで純粋な菜乃の心にドロドロと沁み出してきた想いが辛かった。
誰しもが人の心の奥底に眠らせている悪意に、一度は逃げ出してしまった菜乃が、恐れながらも勇気を持って立ち向かう場面に心が震えましたね。まるで少し前の心葉を見ているみたい。
むしろ心葉よりも復活が早くてタフのような、さすが雑草少女……。
"文学少女"シリーズは、この修羅場と愛憎劇の入り混じった青春分がたまりません。
物語は読者の望むように自由に読んだらいいと思うな。本来の作者の意図なんか、読者にとってはなんの価値もありませんから。むしろ読者が想像する余地のない物語のほうが問題じゃないかえ。
相変わらず琴吹さんは可愛いし、本編終了後のあの人たちのその後の姿も垣間見れてそれだけでも満足です。それにしても、もう季節が秋なのか……。ちょっと時間の流れが速いような。
最後の最後で予想外の急展開に。どうしてこうなった……。親友の裏切り(?)に菜乃はどんな想いを抱くのだろうか。次巻で心葉と菜乃がさらに成長してくれることを期待して。