ダフロン

2011年10月10日

ブラック・ブレット 2 vs神算鬼謀の狙撃兵/神崎紫電

4048708201ブラック・ブレット〈2〉vs神算鬼謀の狙撃兵 (電撃文庫)
神崎 紫電 鵜飼 沙樹
アスキーメディアワークス 2011-10-08

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蓮太郎がステージVの1体を倒したことで、東京エリア周辺ではガストレアの活動が一時的に沈静化していた。そんな折り、大阪エリアの統治者・斉武宗玄が、首脳会談のため東京に来訪する。彼を迎える護衛役として指名した蓮太郎に想像を絶するスナイパーが襲いかかる。

 その手に救える心

 人類を脅かす怪物と戦う少年少女の近未来ヒロイック・アクション。

 ちっこかわいい幼女が格好良く戦うライトノベルは神の領域!
 大阪エリアを統べる独裁者・斉武宗玄を迎えるにあたり、聖天子の護衛として雇われた蓮太郎が、聖天子を暗殺するために送り込まれたスナイパーとの戦いを繰り広げ、守りたいものを守るための力を求める姿が真に迫って、多くの想いを背負った彼の決意と覚悟の強さに打たれました。

 前回の事件で延殊の内部侵食率が危険域に近づいていても、それを本人伝えて不意に訪れた束の間の平和を壊したくなくて、再び学校に通えるように奔走するのも彼女に殺し合い以外の未来を与えたいと思うが故の蓮太郎の優しさなんだけれども、延殊は蓮太郎のために自分がより強くありたいと願っていて、お互いに相手のことを思いやってるのにすれ違う気持ちがままならなくてもどかしい。

 聖天子を狙った襲撃を妨害していくうちに新たな標的として認定されてしまい、木更や延殊が立て続けに倒されていくなか、それでも自分たちの敵であるティナを救おうと思う蓮太郎はお人好しで甘いと言わざるを得ないが、可能性があるならば最後まで諦めないのもひとつの強さだと思います。
 自分は安全なところにいながら幼い少女に殺人を強要させる汚い大人たちに猛烈な憤激を感じる。

 人を守るために自分を犠牲に何かを少しずつ失っていき、されども人から賛美を受けるどころか罵倒され差別され、それでも救うことをやめない彼らがいつの日か報われて欲しいと願わずにはいられない。
 お嬢様や新しいロリも増えて、ヒロイン数が一気に2倍になりましたね。聖天子ちゃんもフラグ立った?
 他のライバルに誘惑される蓮太郎を見て嫉妬しちゃうキサラ虫にもっときゅんきゅんしたいです。

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2011年09月26日

泳ぎません。/比嘉智康

4840142432泳ぎません。 (MF文庫J)
比嘉智康 はましま薫夫
メディアファクトリー 2011-09-21

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グラウンドから野球部のランニングの掛け声が聞こえてくる。「おーっ、ぱいおっ、ぱいおっ、ぱいおっ!」……なんで「おっぱい」って叫んで走るの?ここは学校のプール。たった3人だけの水泳部。別に大会とか目指してないから放課後は毎日こうやってプールでのんびりしてる。

 水面に輝く少女たち

 学校のプールサイドでスク水の美少女たちが繰り広げる日常系ガールズ・コメディ。

 本当に泳いでない! でも、美少女のスク水に釣られた俺には何の問題もなかった。
 たった3人だけの水泳部のヒロインたちが学校のプールで遊びながら、ガールズトークをしているだけなんですが、それぞれ個性的な彼女たちのおバカっぽいやり取りが思わず笑ってしまう。
 何かに頑張ったり、励んだりしない自然体の少女たちののんびりと毎日を楽しんでいる姿に和んだ。

 綺麗でキラキラしたものが大好きな女の子・八重、体育系女子の元気娘・依子、おっとり天然なお嬢様・日唯とタイプの異なる美少女の容赦無いトークが男心にグサグサと突き刺さります。
 ちょっと優しくしたらすぐに勘違いするとか、すぐに胸に目線がいくとか、仕方ないじゃない男だもの・・・・・・。いや、それは君たちが魅力的すぎるのが悪い!美しいものに感動して惹かれることの何が悪い!

 暇を持て余すあまり、罰ゲームやアイスを賭けてゲームをしたり、いまよりも可愛くなるために怪しげな美容トレーニングをするのですが、油断していると意外な方向からボケてくるので注意が必要です。
 可愛いのに揃って男嫌いの八重たちですが、変わり者の男子・神卵太郎が彼女たちの話題に少しづつ挙がり始め、ユニークな彼の言動が彼女たちの男子のイメージを次第に変えていくのがよかった。

 神卵太郎については、この作品には男っ気がないほうがいいという意見もありますが、単調でマンネリになってしまうかもしれないガールズトークに適度な刺激を与えていたと思います。
 このまま日常雑談系でゆるゆる、まったり続けて欲しいところだけど、これまでの作者の作品の傾向からすると、次第に殺伐とした雰囲気のストーリーになっていくんだろうなぁ。

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2011年09月15日

シースルー!?/天羽伊吹清

4048707485シースルー!? (電撃文庫 あ 31-1)
天羽 伊吹清 雛咲
アスキー・メディアワークス 2011-09-10

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速水柾は困っていた。クラスメイトのスーパーお嬢様・叶原七紘。口下手な柾にはとても手が届かない、天使。いや女神。彼女の服が……柾にだけ、ちょうど一枚分透けて見えるのだ!! 今、彼女はブレザーとスカートが透けて、ブラウス一枚。裾からはちらりと純白の……っ!

 その視線の先にあるもの

 好きな相手の衣服が透けて見える能力を授かってしまった少年の懊悩学園ラブコメ

 これはけしからんエロス。そりゃあ、常時パンモロ&ブラモロ状態なら、主人公も勃っちゃうわー。
 通りすがりの神社で恋愛祈願を祈ったら、何故か片想いの相手限定での透視能力を得てしまった主人公・柾が、罪悪感と煩悩の狭間でもがきながら、恋を成就させていく姿が涙ぐましくて可笑しかった。
 透視能力に始まり、次々と起こる不可思議な恋愛イベントの連続が飽きさせなかった。

 女子の服が透ける能力なんて、それこそ男子のロマンだけれど、変に真面目で誠実な柾にとっては、厄介事に巻き込まれたも同然で、周囲にバレないよう必死に取り繕うあまりにかえって挙動が不自然になってしまい、そんな自分への嫌悪でひたすらに落ち込んでいく姿が哀れで見ていられない。
 男の本能としては見たいけれど、男としては見てはいけない、そんな微妙な男心が同情を誘います。

 そんな透視騒動でドタバタしつつも、なんとか自分の想いを告白して憧れのヒロインと両想いになることができた柾でしたが、めでたしめでたしかと思いきや、そこからの事態のこじれっぷりがすごかった。
 柾に透視能力を与えた神様に身体を奪われたり、女子の身体に憑依して女子の水泳の授業に参加したりと、ラッキースケベな美味しい展開が目白押しでまさに神がかっていました。

 話の流れはひとまずよしとしても、ちょっと場面転換が掴みづらかったかな。会話文のテンポを重視したためか、登場人物がどこにいて、どういう状態にあるのかという情報がわかりにくかった。
 ヒロインたちも可愛いことは可愛いんですが、みんなお色気要員としてのキャラ立ちで終わってしまって、個々のキャラの魅力を引き出しきれていなかったように思います。

 まあ作者が「この作品のウリはお色気だ!」って断言して、確かに狙い通りにはなってるけれども。
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2011年09月14日

バベル/中田明

4048707450バベル (電撃文庫)
中田 明 ひと和
アスキー・メディアワークス 2011-09-10

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国家解体後、連邦制が導入された日本。犯罪者と異国人で溢れる関東州スピアシティでは、クリスマスの喧騒の裏で国を揺るがす2つの事件が起こっていた…。1つ。国宝「肺魚」の盗難。2つ。マフィアの娘「スーシャン」の誘拐。ともに事件解決へのタイムリミットは、聖なる夜が明けるまでのわずか24時間。

 善にも悪にも貴賎なし

 治安の悪化した日本を舞台に悪い人たちの長くて騒々しい1日を描いたブラックコメディ群像劇。

 善人側も悪人側も、どっちもあまりお友達にはなりたくないロクデナシばかりだ。民度低いな日本。
 悪徳が蔓延する都市・スピアシティで起きた二つの重大事件を巡って、マフィアと治安当局がめまぐるしく動きまわり、それぞれの思惑が絡みあって収束していくドラマティックな展開に圧倒されました。
 登場人物は多いですが、どいつもこいつも一癖や二癖もある食えないキャラクターで印象的でした。

 ユリは大財閥のお嬢様にしては面白半分にマフィアの騒動に首を突っ込みすぎていて、危険に踏み込んでいるという自覚が少々欠けているけれど、シュンペータとの探偵ぶりはなかなかいいコンビでした。
 雁首揃えて誘拐犯に踊らされっぱなしなマフィアの幹部たちを尻目に、事件の真相へと近づいていく二人にワクワクを感じなかったとはいえません。世話がかかるけれど脳天気なお嬢様が憎めない。

 一方、美術館で起きた肺魚盗難事件の捜査を任せられた女性捜査官リズの問題児っぷりと、民間の探偵でありながら有能なロギーが好対照。ロギーが一番まともで人間として魅力的だったかな。
 場当たりの強引な聞き込みでネタを掴むリズに対して、地道な観察で推理を組み立てていくロギーと、それぞれスタイルはバラバラなのに、最後にはうまいこと解決に向かっていくのが不思議でならない。

 ストーリーはよくできているけれど。どこか後味の悪さというか、苦々しさが読後に残るなぁ。
 登場人物みんな悪党ばかりというのは別に構わないんだけれど、悪なりに悪のプライドがあったり、ダークヒーロー的なカリスマ性があるとか、もっと好感を持てるようなキャラメイクが欲しかったですね。
 ときに誘拐事件の方って、ユリたちがいなくても事件解決したんじゃ・・・それは言ってはいけませんか
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2011年09月13日

はじめてのクソゲー/麻宮楓

4048708694はじめてのクソゲー (電撃文庫 あ 25-6)
麻宮 楓 ネムネム
アスキー・メディアワークス 2011-09-10

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目当ての国民的ゲームが売り切れたその日、何気なく目に入った一本のゲームソフト。それはありとあらゆるバグだらけのクソゲーだったけど、その出会いはまさに運命であり、人生の分岐点とも言え、長く険しい道のりの記念すべき第一歩だった──。

 正しいクソゲーの遊び方

 クソゲー好きな女の子と一緒にバグだらけのゲームのクリアを目指す少年のゲームライフコメディ

 クソゲー好きな女子とかマジ最高じゃないですかー! ゲームが嫌いな男子はいません!
 クソゲーとは知らずにバグだらけのRPGを衝動買いしてしまった主人公・遊真が、クソゲーをこよなく愛するヒロイン・雪緒のサポートを受けながらクソゲーをプレイしていくうちに、クソゲーならではの魅力と奥深さを味わって、それまで知らなかった未知の世界へ視野が開けていく感覚が爽快でした。

 それまでメジャーなタイトルのゲームばかりを遊んできた遊真が、初めてプレイすることになったクソゲーに怒りを覚える気持ちもわからなくないけれど、メジャータイトルでは絶対にあり得ない不条理なバグを攻略することに情熱を燃やす雪緒は、それこそまさしくコアゲーマーの魂を備えてますね。
 ゲームの楽しみ方がなにか間違ってるかもしれないが、ゲームの楽しみ方は人それぞれですし。

 バグによって引き起こされる地形ハマリや詰みルート分岐、ストーリーやゲームバランスを無視して出現する強敵に苦しみながらも、雪緒からのヒントを得て、詰んだかに思えた状況に予想外の突破口を切り開いてゲームを進めていく姿に思わず熱くなりました。工夫と発想が
 RPGのセオリーを無視してくるゲームに対し、セオリーにはない攻略法を見出すところが興味深い。

 バグがあったり、難易度が高すぎたりするゲームをクソゲーと言い切るのは簡単ですが、むしろゲーマーならそういうゲームにこそ燃えるべきなんでしょうね。メジャーゲームなんてぬるいぬるい。
 「自作の改造ポケモンを友人にプレイさせる」シリーズなんかはプレイヤーに知性を感じられて感動しますね。未だにこの動画はポケモントレーナーの伝説。あー、ぼくも雪緒ちゃんと一緒にクソゲーしたい。

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2011年09月12日

人見知り部は健全です/佐野しなの

4048707434人見知り部は健全です (電撃文庫 さ 12-3)
佐野 しなの 笹井 さじ
アスキー・メディアワークス 2011-09-10

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無表情すぎて友達レスな俺は、あがり症すぎて同じく友達レスな幼なじみの女子・明(あき)と共に、ふたりぼっちなお弁当を食べる毎日。そんな俺たちの前に、発言エロすぎな残念美人・乃花(のはな)先輩が現れる。ほぼ強制的に「人見知り部」なる謎の部に入部させられることになった俺たちだったが

 それはきっとあなただけの個性

 残念美人と青春不適合者たちの不健全系学園ラブコメ。

 またしても読者の心の傷口にうすしおを塗りこむがごとき作品。非リアのフリしてリア充とか爆発。
 周囲とのコミニュケーションに欠陥を抱える人たちが集まって傷を舐めあう「人見知り部」ですが、それぞれが悩み苦しみながら、欠点を克服しようと空回りでも変わろうと努力する姿に魅せられた。
 登場人物全員どこか不健全さを背負ったキャラクターたちでしたが、むしろそれが個性的でした。

 セクハラ発言満載の美人先輩・乃花は間違いなく変態だけど、それに合いの手をいれられる主人公の藍人も見た目が無表情でわかりにくいだけで実はかなりの変態なんじゃないか。
 自分たちの人見知りを治すためと題して、幼馴染の明をからかったり、コスプレさせたり、二人して弄んでいるようにしか思えんが。そんな二人にいつも振り回される明が表情豊かで小動物みたいで可愛い。

 端から見てると藍人と明の絡みはイチャついているバカップルにしか見えないのですが、そうしていても、いつまでも幼馴染に自分の好意が伝わらないことが藍人はもどかしくて、辛いんだろうな・・・・・・。
 自分の性癖が一般常識とかけ離れていることに悩む倫太郎や極度のあがり症で人に話しかけられない明、そんな健全とは少しズレた彼らが自然体でいられる「人見知り部」での光景がとても和みました。

 「人見知り部」でありながら、一人だけ自分の悪癖について悩みを持たず、マイペースに自分を貫いているかに思えた乃花でしたが、最後に明かされた結末はちょっとウルっときちゃったじゃないですか。
 見事に騙されたけどな! しかし、きっかけはなんであれ、いままでの関係から少しだけ変わることができた藍人と明がせめてもの救いかな。人見知りでもなんでも、彼らには青春を楽しんで欲しいと思う。

 この話のキャラの中では平和ちゃん(小学3年生)が一番好きでした。男はだっぴできますよ(下ネタ)
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2011年09月11日

神様のメモ帳 8/杉井光

4048708104神様のメモ帳 8 (電撃文庫 す 9-16)
杉井 光 岸田 メル
アスキー・メディアワークス 2011-09-10

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年末年始、四代目を悩ませていたのは頻発する雀荘荒らしだった。なぜか麻雀打ちとして駆り出された僕は、雀荘で奇妙な男と出逢う。雛村玄一郎――なんと四代目の父親!

 春に微笑む白い花

 都会の街中にたむろす愉快なニートたちが、持ち込まれた事件の解決に奔走する探偵モノ。

 モブ同然だった彩夏がヒロインに返り咲いた。いや、ヒロインというか、オカンだこれwww
 平坂組に持ち込まれた雀荘荒らしをきっかけに、鳴海のもとに次々と舞い込んでくる事件を追っていくうちに、別々の事件かに思えたそれぞれがひとつに繋がってくる怒涛の展開に引き込まれました。
 いくつかの家族の姿を通して、家族とは何だろうかと考えさせられました。

 繁華街でも、学校生活でも、すっかり鳴海の名前が周囲に知れわたっているのがすごいわー。
 もう高校中退しても立派に業界ゴロとしてやっていけるよ。むしろ校内の場面の方が違和感あるもん。
 さらにここにきて博打打ちの才能まで見せましたからね。ジゴロとしても、絵師としても無駄に才能に溢れていやがる。忙しくて構ってくれない鳴海に意地を張ってしまう寂しがり屋なアリスが可愛い。

 四代目と父親との間を取り持って、四代目からの信頼も高まったかと思えば、過去に自分たちを貶めた麻薬「エンジェルズ・フィックス」が事件に絡み始め、その捜査を巡って仲違いしてしまう鳴海と四代目の姿がつらかった。どちらが絶対に正しいとか、間違っているという問題でないだけにやるせない。
 しかし、誰に依頼されるわけでもなく、自分の意志で事件を追う鳴海の逞しい成長ぶりがよかった。

 結末は予想外でしたが、彩夏を悲しませる前に解決できたのでハッピーエンドでしょう。彩夏にとってはこれから乗り越える問題はたくさんあるでしょうが、鳴海が力になってくれるんじゃないかな。
 エピローグまで読むと、表紙のお花畑の意味がわかってニヤリ。これまで語り足らなかったエピソードをまとめたシリーズの集大成と言える巻でした。いよいよシリーズとしてもクライマックスなのかな?

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2011年08月15日

輪環の魔導師 9 神界の門/渡瀬草一郎

404870740X輪環の魔導師〈9〉神界の門 (電撃文庫)
渡瀬 草一郎 碧 風羽
アスキーメディアワークス 2011-08-10

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シャンヤルル僧院での混乱を経て、遂に開いた“神界の門”。その向こう側から訪れた異形の神の眷属によって、セロ達は窮地に陥る。魔族の主ウィスカは、部下達と共にその侵攻を食い止めるが、常軌を逸した敵の前に劣勢を強いられ―

 神が来りて笛を吹く

 伝説の魔導具を身に宿す少年と、彼を導く仲間たちの冒険を描く異世界ファンタジー。

 ここにきて謎とされていた世界観が明かされ、スケールが一気に広がりをみせてきました。
 開かれた神界の門からやってきた異形の神の眷属による侵略に、魔族側も賢人側も劣勢を強いられるなか、異界へと渡ったセロの出会いともたらした発見の数々に興奮と感動が沸き立った。
 とくに『パラサイトムーン』を既読の読者には、非常に盛り上がる嬉しい展開に。迷宮神群ktkr!

 異界に飲み込まれたセロとフィノがどんなおぞましい世界に飛ばされたかと思えば、にゃんこだらけの世界とか、頬がゆるみっぱなしだわぁ。グロキモいボルアルバと違ってトライハルトはいい趣味してるな。
 そこで偶然にも魔人ファンダールと再会できたのは行幸でしたが、セロにはショックな事実を知ることに・・・でも、これも彼が前に進むため、己の運命を見極めるために必要なことだったんじゃないかな。

 奇怪な眷属を相手に徹底抗戦を決めたシェリルたちでしたが、神の力の前に防戦一方に陥り、そこで難民たちを守るために立ち上がるラダーナとクリムトの姿が燃える。敵ながらこの二人はやはりイイ。
 異界から舞い戻ったセロとアルカインによる絶体絶命からの華華しい逆転劇に胸が昂りましたが、そうも喜んでばかりいられる状況じゃないですね。ファンダール、ルーファス、セロの三代にわたる親子の確執が気になる。

 魔族との戦いの裏で暗躍しているクラニオンも所詮は神々の操り人形かと思うとちょっと哀れですね。
 となるとフィノのヤンデレも迷宮神群から与えられた影響を受けている可能性もなきにしもあらず。
 だけどちょっと待ってください、次で最終巻だってー! そりゃないですよ! これあと1冊でまとめきれるのか? 南方や東方もまだ行ってないし、もっとセロとアルカインたちの冒険が見たいですよ。

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2011年08月14日

ソードアート・オンライン 8 アーリー・アンド・レイト/川原礫

4048704311ソードアート・オンライン〈8〉アーリー・アンド・レイト (電撃文庫) [文庫]
川原 礫 abec
アスキーメディアワークス 2011-04-08

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“SAO”中階層で、一人のプレイヤーが殺された。その殺害現場は、決してHPが減るはずのない“安全圏内”だった。これはプレイヤー・キルだと仮定するも、その殺害方法に全く見当がつかず…。奇怪な事件を、キリトとアスナが追う(『圏内事件』)。他2話。

 その想いの輪を輝かせて

 黒の剣士キリトが《SAO》、《ALO》にて体験した様々なエピソードを収録した短篇集。

◆園内事件
 PK(プレイヤーキル)が禁止されたエリアでの不可解な刺殺事件の謎を追っていくうちに、過去に埋もれたもう一つの殺人事件の真相に迫っていくミステリーに好奇心を刺激されました。
 ゲームシステムの穴を利用したトリックは、プレイヤーとしては当たり前であるが故に気づきにくい。
 ちょいちょい話に挿入されるアインクラッドの食事情や観光名所が妙に印象に残りましたね。こういうところも二時間サスペンスのお約束か?

 まだお互いに距離感が掴みきれていないキリトとアスナさんの姿が初々しかった。

◆キャリバー
 伝説の武器である聖剣エクスキャリバーを手に入れようとクエストに挑んだはずが、何故かALOの世界そのものを賭けた壮大な戦いに巻き込まれる事件誘発体質は主人公としての運命力か。
 そしてキリトさんの新たな超人技が炸裂。ある程度複雑なMMOではシステム外スキルってのは普通にありえて、あくまでもテクニックであってチートやバグではないんですが、どんだけやりこんでるねん。

 キリトさんも凄かったが、最後に見せ場を持っていかれましたね。シノンさん、マジかっけぇえええ!!

◆はじまりの日
 突如、デスゲームに巻き込まれ、生き残るためにはまず自分が強くなくてはいけないというのはわかるんだけど、他人と協力して味方を増やすというのも生き残るための一つの手段じゃないかな
 SAOの仕様で一番問題なのは、PTよりもソロの方が効率がいいという謎仕様なんですよね。一般的なMMOの多くは逆です。だから助け合いよりも裏切りや早い者勝ちといった、個人主義が蔓延してしまう。

 もしこの最初のパートナーに裏切られなければ、キリトも意固地にソロに拘ることもなかったのかなと思いました。

 次回からは第四部のスタートとのことなので、キリトたちの新しい冒険に期待が高まる。

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2011年08月13日

レトロゲームマスター渋沢/周防ツカサ

4048707329レトロゲームマスター渋沢 (電撃文庫)
周防 ツカサ 彩季 なお
アスキーメディアワークス 2011-08-10

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学級委員長・早坂ちひろは、不良生徒の渋沢を更生させるため、彼がサボりに使う旧宿直室、通称「隠れ家」にやってきた。だが、渋沢が持ち込んでいた旧式の家庭用ゲーム機の魅力にいつの間にかずっぽりハマった彼女は、今では放課後単にゲームをするために足しげく「隠れ家」へと通うように

 ゲームが繋ぐ遊びの絆

 優等生のヒロインと問題児の少年のゆるゆる青春ゲームラブコメ。

 ファミコン世代にはひたすら懐かしさを感じさせるゲームネタが溢れててノスタルジィに浸れました。
 不良生徒の主人公・渋沢と、彼の持ち込んだレトロゲームの魅力にハマってしまったヒロイン・ちひろのレトロゲーマーたちのゲーム談義が、元ネタが分かる経験者には「あるあるw」と、笑えます。
 しかし、平成生まれには通じない話だなぁ。あれ、登場人物も平成生まれのはずだが・・・・・・。

 ゲームに夢中になっているときのちひろさんが無防備で超エロ可愛いです。
 普段は真面目な委員長タイプの優等生なのに、ゲームをプレイしているときに突然喘ぎ声を上げたり、身悶えしたりと、リアクションがいちいち可愛い。成績は優秀なのに変に効率や完璧を考えすぎてゲームはド下手というのがまた可笑しい。なにこのかわいい生き物。連打ポーズが素晴らしいです。

 一方、渋沢くんはというと不良というよりも、お調子者の変態だな! ゲームに熱中している委員長にセクハラするわ、プレイ姿を盗撮するわ録音するわ、対戦ゲームでは裏技ハメ技を使ってフルボッコにして勝ち誇るわ、汚いなさすがレトロゲームマスターきたない。
 マゾゲー大好きな縛りプレイヤーの秋葉や高飛車お嬢様の西園寺やら、レトロゲームを通じてガールズゲーマーたちの友情の輪ができていく光景に和みました。

 可愛い女の子がファミコンのコントローラーをピコピコやってる姿がこんなに萌えるとは思わなかった。
 ファミコンのソフトはいまでも遊べますよね。シンプルな操作性で誰にでも気軽にゲームの世界に入っていける『遊び易さ』は最新鋭のゲーム機には無いものだと思いますし、難易度としても難しいソフトはトコトン難しいのでゲーム上級者もやりこみ要素が尽きることはない。いまこそファミコンに戻るべし!

 ちなみに"パネルをめくって敵を倒すゲーム"のタイトルは『Quinty』ですね。私が一番遊んだソフトはなんだろう。『マリオ3』って気もするが、一番熱中した記憶は『星のカービィ夢の泉の物語』かな。あれは夢があった。

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2011年08月11日

魔法科高校の劣等生 2 入学編 下/佐島勤

4048705989魔法科高校の劣等生 2 入学編 下 (電撃文庫 さ 14-2)
佐島 勤 石田 可奈
アスキー・メディアワークス 2011-08-10

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成績優秀、才色兼備な妹・深雪が、主席入学生の慣例として魔法科高校の生徒会にスカウトされた。そして兄・達也も、とあるトラブルを払いのけた事件をきっかけに、違反行為を取り締まる風紀委員にスカウトされる。

 人は自分だけの生き甲斐を求めて

 現代のエリート校である魔法科高校に入学した兄妹が繰り広げるマジカルバトルアクション。

 達也さんパーフェクトすぎる! なんだよこのイケメン、チートすぎっぞ!
 二科生でありながら風紀委員として一科生を上回る実力を見せつける達也ですが、その微妙な立場のせいで二科生の冷遇の改善を要求する『同盟』と学校側の対立に巻き込まれ、その騒動の渦中にありながら、またしても垣間見せる快刀乱麻の活躍ぶりにもう言葉もでない。

 もう達也は高校に入学したばかりの学生の域を超えてるよ。それは他の登場人物も一緒で、一科生とか、二科生とかあまり関係なく優秀すぎなんですが、こいつらいまさら学校で学ぶ必要あるのかい。
 同盟の背後にいる黒幕や企みをスバスバと見抜いていくのはカッコイイんですが、そうやって最初から『勝って当然、負けて不自然』な話の雰囲気を作ってしまうのはあまり好ましくないんじゃ・・・・・・。

 というか学生に負けるテロリスト集団って、どうなんだろう。あんだけ武器と人数揃えて負けるとか。ただの街の不良とかならわかるんだけど、バックに外国の支援がついているにしてはレベル低くてザコい。
 不思議なのは桐原と壬生の関係の突然の飛躍。いくら不器用にしても女の子相手にキレて殺傷力の高い魔法で襲いかかるような男に乗り換えるとかないわーわけわからないわー。

 真の才能を秘密にしながらも人前で使うことに抵抗はないんですね。深雪もあんな力が兄にあると知っているなら劣等生と蔑んだりするわけないな。それ以前にブラコンだからって理由もありそうな。
 面白いことは面白いが、期待値を越える程でもなかったという感じでした。もっと何かしら予測不能のアクシデントがバンバン起こってくれたらよかったんですけどね。すべてが達也の推理通りに予定調和でトントン拍子に解決してしまうと、それはそれであっさりしすぎて逆に面白味が薄れてしまう、と。

 1巻からわかっていたことだけど、俺TUEEE小説が嫌いな人には絶対オススメしない。反対に大好きな人には絶賛オススメします。私はそれほど気にしないので今後面白くなることを期待して、しばらくは読んでみようかな。といいつつ、すでに胸焼けがしてきた・・・・・・。
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2011年08月10日

ご主人様は山猫姫 8 北域覇王編/鷹見一幸

4048707418ご主人様は山猫姫〈8〉北域覇王編 (電撃文庫)
鷹見 一幸 春日 歩
アスキーメディアワークス 2011-08-10

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晴凛の活躍に目を留めたシムールのエオル王は、ついに決断する。シムールの未来を託し、晴凛と同盟を結ぼうというのだ。だが、シムールが帝国人と交わるのは前代未聞のこと。もし同盟締結となれば北域の覇権は決したといってもよいのだが、それをよく思わぬ勢力が暗躍を始め!?

 覇王への新たなる道

 帝国人でありながら遊牧民の姫君に仕え、戦いの中で英雄へと駆け上がるヒロイックストーリー。

 見習い英雄からいきなり覇王になっちゃったー! 晴凛もエオル王もカッコ良くて痺れた・・・・・・。
 北域王としての地盤固めも順調に進み、シムールの王エオルとも対等の同盟を組むことになった晴凛ですが、それを快く思わない勢力によってミーネの身に降りかかる惨事にヒヤリとさせられました。
 あれよあれよという間にシムールと北域の代表者となっていく晴凛の出世ぶりに驚くばかりです。

 徐々に女性としての自覚と成長の兆しが芽生え、ここにきて子作りの知識まで吹きこまれてしまったミーネですが、持ち前の明るさや物怖じしない人懐っこさといった美徳はそのままでいて欲しいですね。
 女性らしさではミーネに一歩先んじるシャールですが、こちらはこちらで奥手すぎるのでいい勝負か?
 お互いに己に欠けているものを自覚しつつ、いまの自分ができることで晴凛の力になろうとするミーネとシャールの献身が愛おしいのですが、まさかそれがあんなことになるとは・・・・・・。

 南は南で、反乱軍と政府軍が泥沼の戦いを続けあってて、それも金と欲にかられた商人と役人という無能な上官に現場が足を引っ張られるというもので、どっちもどっちで非常にしょうもないですねぇ。
 軍師として反乱軍を率いる沢樹も、やってることは伏龍のパクリじゃん。それで歴史に名を残せるって思ってるなら馬鹿だろ。それでいくら実績を上げてもオリジナルを考えた奴の評価が上がるだけだぜ?

 帝国に踊らされ自分の命を狙った相手を許す晴凛も王としては甘いですが。人としては正しい。
 人間だから間違えるし、大切な人を守る責任があればこそ目が曇ってしまうこともある。肝心なのはお互いを信じて間違えてもやり直すこと。人との助け合いを大事にしてここまでこれた晴凛だからそれがわかっていたのでしょうね。彼ならば帝国とシムールの人々が共存できる世界を作れると信じたい。

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2011年07月14日

トカゲの王 1/入間人間

4048706861トカゲの王 1 (電撃文庫 い 9-22)
入間 人間 ブリキ
アスキー・メディアワークス 2011-07-08

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俺に与えられた能力『リペイント』は、インチキめいたまがい物。でも、俺には世界を“塗り替える”資格がある。このインチキこそ、俺の力なんだ。どこまでもなにもかも騙し抜く。まず手始めに、俺自身も騙す。そして、目の前に立ちはだかる不気味な殺し屋どもから必ず逃げ延びてやる。

 我が名が最強である理由をここに証明する

 中二病を患ったウソつきが『最強』を目指す異能力バトル小説。

 入間イズム全開の狂った人間たちの残虐猟奇劇。相変わらず後味が苦いお話だなぁ。
 ラノベ主人公のような刺激溢れる世界に憧れる主人公・トカゲが、本当の異能者たちの殺し合いに遭遇し、生き延びるために試行錯誤と七転八倒を繰り返して次第に精神が壊れていく様が異様でした。
 入間人間が異能モノを書くとこうなるのか……異能あってもなくても、いつもと変わってねぇじゃん。

 なまじ瞳の色を変えるという微妙な能力『リペイント』を持ってしまったためにラノベ的世界観への憧れを捨てきれないトカゲくんの中二病っぷりが実に痛々しいね。深夜、密かに誰もいない廃ビルに忍びこんで修行まがいの夜遊びを繰り返している姿とか、カッコ良すぎて泣けてくるぜ……。
 その甲斐あって望んでいた殺し合いに巻き込まれるハメになるのだから運が良すぎて運が悪い。

 本物の殺し屋と能力者の争いのとばっちりを受け、ほぼ無能力に近い人間が高望みした報いはあまりに大きくて、主人公だからと容赦のない傷めつけられっぷりに引いた。というか、コレ普通死ぬだろ。
 現場で唯一、ヒロインの巣鴨だけはトカゲくんの味方なのかと思ったら、一番ヤバイ人だったー!
 パートの合間に仕掛けられたトリックには見事に騙された。こういうことをする作者だって分かっていたのに……くやしい。

 しかし、異能力バトルにおける騙し合いとか、駆け引きとかそんなのまったく無かったような……。
 主人公のトカゲくんがトチ狂って特攻してっただけじゃないですかね? 眼の色を変える程度の能力でどうやって戦えばいいんだよ、と言ってしまえばそうなんだけど。応用の効かせようがない彼の能力は異能バトル系主人公の中でぶっちぎりで最弱かもしれない。読者の期待した頭脳戦は次回からかな?

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2011年07月13日

ふらぐ・ぶれいかぁ フラグが立ったら折りましょう/黒宮竜之介

4048705911ふらぐ・ぶれいかぁ―フラグが立ったら折りましょう (電撃文庫 く 8-1)
黒宮 竜之介 はりかも
アスキー・メディアワークス 2011-07-08

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ここ十文字学園に立つ“伝説の木”は、木の下で告白した男女の間に恋愛フラグを立てるという力を秘めていた。そんな木を巡って火花を散らす2つの裏組織がある。一方はが「リア充、全滅しろ!」とフラグを折る《アルテミス》。対するは「非モテ、ひがむな!」とフラグを守る《アポロン》。

 末永くお幸せに、リア充爆発しろ!

 伝説の木の立つ学園で恋愛フラグを巡って恋とバトルが渦巻くフラグ粉砕型ラブコメ。

 他人のフラグをへし折っておいて自分たちだけはちゃっかりフラグを立てるのか、酷い奴らだなオイ。
 その木の下で告白したカップルに恋愛フラグを立てるという"伝説の木"の力を巡り、リア充派と非モテ派の抗争に巻き込まれた主人公・直樹が目覚めた異能で周囲のフラグをぶち壊しつつ、ヒロインたちとのフラグを乱立させていく展開がとても王道のラブコメで始終頬がゆるみっぱなし。

 "伝説の木"の作るフラグをぶち壊す能力を持つ直樹を取り合って、派閥もタイプも異なる美少女たちが繰り広げる修羅場が美味しかった。彼女らの魅力に惑わされまいとする直樹の妙に律儀な性格は好感。
 ただ他人の恋愛を邪魔していることについて、ただアルバイト感覚で「お金を貰っている仕事だから」ではなくて、真剣に本当に正しいと思っているのか、行動に自分の意志があるのか考えて欲しかった。

 桜子みたいな猪突猛進で真っ直ぐな人間にとっては、恋愛は誰の力も借りずに自分の努力と誠意で成し遂げてこそ価値があると言えるんだろうけれど、世の中、彼女のように強い人間ばかりじゃないですよねぇ。最初のキッカケがないとどうしても先へ踏み出せない人の方が多いんじゃないでしょうか。
 恋愛経験の差なのか、恋愛観において桜子は理想主義者、舞は現実主義者なんだろうなぁ。

 相手への想いが純真であれば、結ばれた過程はどうあれそれは純愛じゃないのかなと思ったり。
 だが、何とも思ってない相手に告白されて無理矢理くっつけられる場合もなきにしもあらずだけど。
 伝説は、あくまでも伝説だからよくて、変に本物の力を持っているから話がややこしくなるんだよなぁ。まあそうでないと面白くないですが。ラブコメと異能の組み合わせがユニークだった。次回作にも期待。
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2011年07月12日

あなたが泣くまで踏むのをやめない!/御影瑛路

4048706942あなたが泣くまで踏むのをやめない! (電撃文庫 み 8-8)
御影 瑛路 nyanya
アスキー・メディアワークス 2011-07-08

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俺は自分の部屋で、四つん這いになり、小学生女子(9歳、名前はアリス。ちなみに胸は皆無)の人間椅子になっていた。しかも、あろうことかお尻をペンペンされていた。ガツンと言うつもりが、むしろ俺がしつけられていた。何この現実?

 折手荘は末期です

 家出してきた捕食系ドS幼女と一緒に住むことになった高校生の物語。

 亭主関白系男子(パクメン)って、なんだよ。それは流行らないし流行らせない。
 主人公・寿也の住むアパートにやってきて一方的に脅したあげくに居ついてしまった家出美幼女アリスに振り回されつつ、どこか歪んだ家庭事情を知り、そこから彼女を救い出すべく奮闘する姿がよかった。
 作者のこれまでのシリーズとは、まるで違うラブコメかと思いきや登場人物がどこか狂ってるなぁ。

 毒舌美幼女に罵られて生足で踏まれたりとか、我々の業界ではご褒美です!と、いつもの私なら言ってるところなんだけど、この作品に限っては当の幼女ヒロインのアリスがあまりにもワガママで遠慮がなく、子供らしい可愛らしさよりも、子供らしい自己中心的主義が強調されて出てしまっていた。
 可愛さという点では、むしろ黛さんの方が心を揺さぶられるんですが……。このひと1匹家に欲しい。

 この娘の親はどんな教育をしてるんだと思えば、徐々に彼女を取り巻く環境が明かされていくにつれ、両親の人間性の破綻っぷりにドン引いた。親バカな父親はまだしも、母親の方は親失格ですね。
 お互いの心が通じ合ってなくて上っ面だけを装ったいびつな一家団欒の光景が大変気持ち悪かった。
 そうなると今度はアリスへの痛ましさが込み上げてきて、やはり素直に萌えの対象と見れないなぁ。

 他人がそこまでするのはおかしいって言うけど、身内でも他人でも関係なく困ってる人がいれば見過ごせないのが日本人じゃないのかなぁ。そのセリフは親としての役割をちゃんと果たしてる人だけが言えるかと。まあ一言でいうと、お前らの言葉には愛が感じられない!(キリッ
 もっと本音を見せて寿也に心を開くシーンなんかが序盤にあればアリスの印象も変わったかも。

 それにしてもこの作品、発売前から続編が出ることが決まってるのか……。アリスの家庭の話ならもうウンザリだけど、黛さんメインだったら読もうかな。

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2011年07月11日

回る回る運命の輪回る 僕と新米運命工作員/ 波乃歌

4048706896回る回る運命の輪回る―僕と新米運命工作員 (電撃文庫 な 15-1)
波乃 歌 pun2
アスキー・メディアワークス 2011-07-08

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どこにでもいる、平均よりちょっと下くらいの高校生、野島浩平。だが彼の前に現われた美少女工作員・ノアは、浩平が運命を狂わせる存在《イレギュラ》なのだと告げ、なぜか『弟子』として家に居ついてしまう。

 運命の歯車はひとつでは回せない

 運命を狂わせる少年と謎の美少女工作員のハートフルフェイトストーリー。

 設定や展開は地味だけど、こころがほんわかふんわかする良いボーイミーツガールでした。
 無意識に運命を覆す存在≪イレギュラ≫である主人公・浩平が、未来を予知し世界をより良い方向へ導く≪ソサエティ≫の美少女工作員ノアと出会い、監視という名目の同棲生活を過ごしていくうちに機械のようだったノアに人間味や感情が芽生えていき、お互いに惹かれ合っていく姿が微笑ましかった。

 物心つく以前から工作員として育ったが故に、世間知らずでちょっと一般的な感性とはズレたノアですが、真っ直ぐで素直なところが可愛い。どんくさいけれども友達思いな浩平が振り回される光景も和む。
 浩平の家に押しかけなし崩しに居候の座に居ついてしまったかと思えば、学校にまで紛れ込んできて騒動を起こしていく。けれどもそうした一般人の生活を垣間見て情緒を育んでいくのが素敵だった。

 ノアとの出会いをキッカケに、いままで疎遠になっていた幼馴染と向き合う決意をし、ありし日の友情を取り戻していく浩平と友人たちの関係も素晴らしくて胸がいっぱいになりましたね。
 自分を庇うためにたったひとりで出ていってしまったノアを追いかけて、凶悪な敵と立ち向かう浩平もなかなか格好良かった。彼自身、特別な能力を持っているけれども、どこまでも等身大でそこがいい。

 他の一般的な学園異能やラブコメと比べると、ことさら派手なアクションシーンや萌えなサービスシーンはないんだけれども、読み手に過度な刺激やプレッシャーを与えないのでリラックスして読めました。
 イマドキのエンターテイメント志向ばりばりな作品ばかりを読んだ後だと逆に新鮮に感じるかも。
 四次選考落ちのこの作者に何が足りないかというと、ずばり作品のインパクトなのですが、話の優しい雰囲気が壊れるからこの作風はこれでこそ価値があると思った。次回作が楽しみ。
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2011年07月10日

魔法科高校の劣等生 1 入学編 上/佐島勤

4048705970魔法科高校の劣等生 1 入学編 上 (電撃文庫 さ 14-1)
佐島 勤 石田 可奈
アスキー・メディアワークス 2011-07-08

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魔法が現実の技術となって、一世紀。この『魔法科高校』にも、一組の血の繋がった兄妹が入学した。どこか達観したような面持ちを見せる劣等生の兄と、彼に肉親以上の想いを抱える優等生の妹。二人がこのエリート校の門をくぐったときから、平穏だった学びの園で、波乱の日々が幕開いた。

 魔法学校に吹き荒れる新風

 現代のエリート校である魔法科高校に入学した兄妹が繰り広げるマジカルバトルアクション。

 建前では劣等生となっているけど、主人公がどうしようもないほどチートじゃねぇか……。
 現代のエリートである魔法師を育てる魔法科学校に補欠要員として入学した主人公の達也が、優等生の妹・深雪に慕われながら、選民思想にまみれたエリートたちを相手に無双する光景が痛快でした。
 典型的な俺TUEEE系小説だけど、それも含めてしっかりと世界観が組み上がっていて面白かった。

 高校生にしては不思議なほどストイックで冷静な大人びた達也のキャラがなかなかに好印象。
 血の繋がった妹でありながら家族愛以上に兄を慕う深雪のブラコンっぷりが相当なものでしたが、達也も優秀な妹に甘いところがなんともニヤニヤでした。お互いの距離感が近いのも自然体でいい。
 二人の家庭には複雑な事情があるようだけど、まあシルバーなんとかさんの正体は達也だろうな。

 正真正銘のエリートである一科生とそのスペアとして扱われる二科生との間で差別的な格差がありはするけれども、魔法科高校に入学できる時点で二科生であっても世間一般からすると秀才なんでしょうね。魔法への適性で優れているけれども視野が狭くどこか画一的な一科生と比べると、二科生たちの方がバラエティに富んだユニークな面子が揃っていて楽しそう。生徒会のメンバーもみんな魅力的。

 入学したばかりだというのに同級生やら上級生のヒロインたちへのフラグの乱立ぷりがヤバい。
 通常の評価基準では表われないところに真の実力が隠されてるというのはお約束ですが、魔方陣を見ただけで魔法を特定できるほど頭脳明晰で体術だけでエリートを圧倒できる戦闘力があって、どこが劣等生やねん。科学と融合し技術体系が整えられた魔法の設定がブ厚いのもよく練られていました。

 とりあえず、世界観の説明とキャラ紹介だけで1巻終わってしまったので、今後は人間ドラマに期待。
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2011年07月09日

ブラック・ブレット 神を目指した者たち/神崎紫電

4048705962ブラック・ブレット―神を目指した者たち (電撃文庫 か 19-1)
神崎 紫電 鵜飼 沙樹
アスキー・メディアワークス 2011-07-08

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東京エリアに住む少年・蓮太郎は、対ガストレアのスペシャリスト「民警」として、相棒の幼女・延珠とともに、日々、危険な任務を遂行していた。二人はある日、東京を壊滅させかねない極秘任務を受けるのだが……。

 これが彼らの生存戦略

 人類を脅かす怪物と戦う少年少女の近未来ヒロイック・アクション。

 主人公は高校生、ヒロインは小学生。それで六畳一間で同棲生活とは、ロリコンはじまったな!
 ガストレアと呼ばれるウイルス性変異生物の退治を仕事とする主人公・蓮太郎が、突如都市を襲った驚異に対して相棒の延珠と共に、ときに心を傷つけられ、ときに命をかけて戦い抜く姿が熱かった。
 息つく暇も与えない怒涛のストーリー展開とスリルと緊張感溢れる重厚なアクションが見所です。

 可愛くておませな延珠とあくまでも保護者の立場を崩さない蓮太郎の関係がいいですね。
 産まれながらにしてガストレアのウイルスを保持し、超人的な身体能力を持つ『呪われた子供たち』である延珠を私生活では家族のように見守り、仕事の場では相棒として信頼し、さりとて社会的背景により虐待を受ける彼女たちへの偏見や差別にはどうすることもできない蓮太郎の憤りがもどかしい。

 ひとりの狂人の行動に端を発する陰謀から、都市の滅亡を阻止する任務を与えられ、わざわざ自分に冷たい人々を助けるために延珠が傷つく必要なんてないんじゃないかと思うけれど、それが蓮太郎や延珠にとっては自分たちが『人間』であることを貫くために大切なことなんでしょうね。
 危険地帯で交錯する互いに同等の性能を備えた超人同士のタッグバトルは手に汗握る激闘でした。

 蓮太郎と延珠の活躍で非常事態を脱し、何事も無かったかのように日常に戻る都市だけれど、その平和のために一人の少女が犠牲となったことを誰も知らない世界の実情を見るとなんとも苦々しい。
 蓮太郎と延珠にも幸福な未来が待っているとは限らなく、秘密や悲しみを隠して微笑み合う彼らの姿が切ない。ガストレア発生の謎や天童家の事情については今後への伏線ですかね。続編に期待。

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2011年06月18日

俺ミーツリトルデビル!/峰守ひろかず

4048705482俺ミーツリトルデビル! (電撃文庫)
峰守 ひろかず 犬洞 あん
アスキーメディアワークス 2011-06-10

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妄想激しすぎな下野巧馬(高1男子)が、新米夢魔の宵町芽亜(中3女子)と、ふとしたことから契約することに。芽亜は契約相手の妄想を食べないと生きられないと言うが、なんと彼女は夢魔のくせして、えっちなことが大嫌いだった!

 悪魔少女と妄想少年

 女の子に目がない下心満載の高校生とえっちなことが苦手な半熟夢魔がおくる学園ラブコメ。

 ロリっ娘属性サキュバスとか最高やん。胸の大きさだけに囚われているうちはまだまだ未熟!
 えっちなことが苦手な夢魔・芽亜と契約してしまった妄想癖のある主人公・巧馬が、襲い来る魔物ハンターたちを退けつつ、芽亜のために思い出を作ったりして関係を深めていく姿に2828させてもらった。
 ぶっちゃけ、ありがちな感じのちょっとエロいラブコメになってしまって肝心の個性がみえないような?

 エロい妄想を糧にする夢魔なのにそうしたことが恥ずかしくてたまらない純朴な芽亜が可愛い。
 女好きで絶賛妄想垂れ流し中の巧馬と契約してしまったがために、彼からしか妄想を吸い取れなくなってしまい、妄想は食べたいが、妄想している巧馬は気持ち悪くて近づきがたいというジレンマに陥る姿が可笑しい。
 ふとしたエロスで暴走してトリップする巧馬の妄想は男として理解できなくもないけど、あからさますぎる。

 始めはお年頃の女の子の正常な反応として巧馬を嫌悪していた芽亜だけど、基本は無害で女性には優しい一面を知って、表面はツンツンしてるけど徐々に彼への態度を軟化させていく変化がよかった。
 妄想を吸われたあとの賢者モードの紳士っぷりはギャップがありすぎてお前誰だよってなりますね。普段どれだけ妄想にまみれて暮らしてるんですか、あらためて変態っぷりに慄いたわ。

 そんなキャラクターたちのせいか全体的にストーリーにシリアス味がなくてユルすぎかなぁ。
 まあこの作者でシリアスすぎても合わないと思いますが、実は知り合いがほぼ全員関係者って……ご都合主義だなー、まあいいけど。一方的に襲ってくる祓魔師のみなさんの盲目っぷりに呆れる。
 巧馬の変態行為に気を取られてしまったけど、やっぱりこの作品の個性ってどこなの?っていう……。

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2011年06月17日

ライアー・ライセンス/市原秋太

404870544Xライアー・ライセンス (電撃文庫)
市原 秋太 モフ
アスキーメディアワークス 2011-06-10

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現代の義賊「怪盗」の素質である“機能”を持つ者だけが入学可能な「森ノ宮学院」。その学院へ入り込んだ少年・杉崎渉。彼は代々、大怪盗を輩出する杉崎家の双子の弟として生まれながら怪盗の能力が発現されず、分家から蔑まれてきた。渉は能力者たちを見返すため怪盗になることを決意するが…。

 嘘つきは怪盗のはじまり

 怪盗を目指す少年少女が嘘と真実で交錯する学園ファントミックアクション。

 いままでありそうでなかった学園異能の王道中の王道といった感じですね。
 怪盗を育成する特殊な学園で、能力が発現できない落ちこぼれの主人公・渉がライバルである級友たちと衝突し合い、ときにはお互い切磋琢磨し、次第に仲間としての絆を築いていく姿にぐっときました。
 いくつもの多種多様な能力が飛び交う異能バトルと二転三転するストーリーが飽きさせなかった。

 一匹狼でヒネクレた性格の主人公・渉と一本気で真面目な性格のヒロイン・スバルの、例えるなら水と油のように相性の悪い二人が、ぶつかり合っていくうちにお互いを認め合っていく関係がよかった。
 主人公以上にカリスマ性のあるライバルや人徳のある先輩、ユニークな教師陣と、そして異能を秘めた数々の宝具……。世界観が読者の興味を惹きつける要素に満ちていました。

 しかし、『無能力者が嘘と機転で能力者を見返してやる』というテーマの話だったのに、いきなり渉本人がチート能力を手に入れちゃうのはどうなんだろう……まあ、ラノベではよくあるパターンだけど。
 怪盗だけど戦ってばかりで、あまり怪盗らしくはない。怪盗でなければいけない必然性をあまり感じない。作品の設定が設定倒れになってしまっているような……。ライアーライセンスって、結局なんぞ……

 やや説明不足な設定やわかりにくい描写の表現なんかが気になりますけど、まあ新人ならかろうじて許せるレベル。それはそれとして誤植誤字が多すぎると巷で話題沸騰中ですがこれは編集が悪いな。
 良くも悪くも学園異能のテンプレの域を出ていないので、今後、新しい学園異能の可能性を見つけるか、それともこのままただの学園異能で終わるのかは様子見かな。続きがちゃんと出ればの話だが。
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