ダフロン

2012年03月14日

アイドライジング! 4/広沢サカキ

4048863932アイドライジング!〈4〉 (電撃文庫)
広沢 サカキ CUTEG
アスキーメディアワークス 2012-03-10

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年末。短いシーズンオフを利用して、保養地である箱根の温泉宿に羽を伸ばしにやってきたモモとサイ。だが、突如モモが大晦日の特別試合に出ねばならなくなってしまう。いきなりの試合設定に訓練方法に悩むモモ。そんな彼女に手を差し伸べたのは、アイドライジング最強の“女王”マツリザキ・エリーで!?

 キラキラ輝く笑顔の魔法

 企業の技術の粋を凝らしたバトルドレスを着て戦う新人アイドルのサクセスストーリー。

 全裸のアイドルたちがいちゃいちゃぺろぺろうおおおおおおおおお!! いつもながらキマシタワー!
 1年の疲れを癒しに協会主催の保養地にやってきたのも束の間、新人賞を賭けての特別試合に出ることになったモモが、女王・エリーの指導を受けてアイドルとしてまた一歩成長していく姿が素敵です。
 今回はエリー編。期待の新人アイドルと最強の天才アイドルの接触で起こる化学反応が見所でした。

 桃色髪のキャラは淫乱という業界の定説通り、公衆浴場であられもない姿のアイドルたちにセクハラ三昧なモモちゃんがナイスだった! キジョウさんはそのままでいいよ! 需要はある! 問題ない!
 しかし、美少女好きなのに、タキさんや他の女性側から迫られるのは嫌がるのはどういうことなのか。タチだからですねわかります。モモちゃんもつくづくだけれど、タキさんはいつも上を行くな、変態的に。

 相性の悪い対戦相手にどう立ち向かうかで詰まってしまったモモに助言を与えるエリーと、モモのために自分を当て馬にするオリンさんは今回もマジ男前だった。この男らしさ……やだ、濡れちゃうらめぇ。
 自分の上司であるユウガクとエリーの確執を知ってしまい、エリーの怒りに触れて落ち込んでしまったモモでしたが、不意のアクシデントを乗り越えてアイドルとしてあるべき姿を見出すところがよかった。

 モモちゃんは追い詰められてこそ強さを発揮して、逆境で輝くキャラが魅力的なのだよなぁ。
 どんなに苦しくとも諦めずに一生懸命に頑張る姿についつい応援したくなってしまうんですよね。
 すれ違っていたユウガクとエリーの長年の溝がちょっとだけ埋まった父と娘の姿も微笑ましかった。
 そしてついに待望のパワーアップフラグきたきたー! 新たなバトルドレスの登場が楽しみで仕方がない。
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2012年03月11日

ご主人様は山猫姫 9 帝国崩壊編/鷹見一幸

4048865471ご主人様は山猫姫〈9〉帝国崩壊編 (電撃文庫)
鷹見 一幸 春日 歩
アスキーメディアワークス 2012-03-10

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混沌とする帝国の情勢を探るため、伏龍はアイリーンとともに帝都に潜入していた。ツテ、金と使えるものは何でも使い伏龍は華麗に暗躍。さらには「北域国の力で南域の乱を討つ」という世論を作るべく、建白書まで書き始めるのだった。だが、それが思わぬ激震を帝国中央にもたらすことになり!?

 龍に翼を得たる如し

 帝国人でありながら遊牧民の姫君に仕え、戦いの中で英雄へと駆け上がるヒロイックストーリー。

 軍師なのに軍を離れても大活躍する伏龍さんが男前すぎて、これは惚れるわ。アニキー!
 政府内部の情報を求めて帝都に潜入し、崩れかかった帝国の惨状を目の当たりにした伏龍とアイリーンが言葉の力で人々の心を揺るがし、政変に巻き込まれる中で見せる知恵と機転に唸らされました。
 ときにペンの力は、剣や槍を持った軍勢に勝る。ペンでしかできないことがあると教えてくれました。

 かつて無鉄砲だった頃に飛び出した帝都に里帰りし、練涯塾の旧友や老師と和解して、過去の後悔や負い目から解き放たれ、目の前のやるべきことを見据えた伏龍の爆発力が凄かった。
 南域の反乱や役人の汚職によって、荒廃してしまった帝都の中央政府の窮状には目を疑うばかりだけれど、下の役人の中には気概がある人物が少しはいそうなのがせめてもの救いかなぁ。

 政権争いに明け暮れて、まともな政治指導力を見失っていた苑山も、最後には己の愚を悟ったのに、ちょっと遅かった。余計なことにとらわれて大事の好機を逃してしまうのは、日本の政治家も一緒ですね。
 政変によって帝国というシステムが危機を迎えるなか、伏龍の元に結束する新たな仲間たちの姿がよかった。変な宗教からアイリーンも奪い返したし、イケメンでインテリで彼女持ちとかマジ勝ち組すなぁ。

 怪我をしたミーネに引け目を感じてしまっていた晴凛やシャールも溝を乗り越えたし、この三角関係はやたらと仲睦まじくて泥沼にならないけれど、なんか眺めていてほっこり和むんですよね(*´ω`*)
 それより味醂さんははやく光凛を押し倒したらいいよ、いやだわーこの大人たちもどかしいわー。
 ついに出陣した北域軍は、皇帝と帝都を救う救世主となれるのか。そろそろシリーズも佳境ですねぇ。

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2012年02月15日

明日から俺らがやってきた/高樹凛

4048862723明日から俺らがやってきた (電撃文庫)
高樹 凛 ぎん
アスキーメディアワークス 2012-02-10

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推薦入学して女の子にモテようか、それとも良い職に就くために上を目指して大学受験しようか──。青春もなく進路に悩む俺、高校3年生・桜井真人の前に未来から“俺”が時間を超えてやってきた! しかも二人も!! チャラ男とガリ勉の桜井真人……って本当に俺かよ!?

 最大の敵は、自分自身

 未来からきたちょっと大人になった自分を味方に受験戦争に立ち向かう未来系・青春ラブコメ!

 将来や進路に悩む受験生に絶対に読んで欲しい一冊。何かを始めるのに遅いなんてことはない!
 推薦か、受験か、進路に悩む主人公・真人の前に現れた未来の自分"推薦"と"受験"。二人の自分からのアドバイスや同級生の美少女に恋をして、第三の選択を歩む姿が素晴らしかった。
 夢や目標を見つけ、それまでの自分と見違えるほどに変わっていく成長ぶりに魅せられました。

 進路に悩む真人に対し親身な助言をしてくれたことをきっかけに、クールと評判の同級生・高瀬涼の隠れた一面を知り、恩返しに人間関係に不器用な彼女がクラスに溶け込めるように手助けをしていくうちに、次第に彼女のことが好きになっていって、彼女と同じ大学に通うため、彼女の隣に並べる自分を目指して、本気で受験勉強に打ち込むようになっていく真人の熱意と情熱に惹きつけられる。

 未来からやってきて現代の真人の進路にアレコレと注文をつけていた未来の真人たちも、現代の真人の選択を応援して、受験勉強のコツを教えたり、女心を教えたり、ここぞというときに助け舟を出してくれて、女の子のために頑張る過去の自分の姿に、選択を誤った未来の自分たちもまだまだこれからでも遅くないんじゃないかと思うようになっていって、お互いに良い影響を与え合う光景が眩しかった。

 最大の敵は自分自身、でも最大の味方もまた自分自身じゃないかな。
 ああすればよかった、こうすればよかったと過去を思い悩めば後悔は尽きないけれど、大切なのは未来の自分のために今の自分がなにをすべきか、迷わず目標へ突き進むことなんだと思いました。
 成長物語としても、青春物語としても、恋愛物語としても、読んでためになる作品でした。
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2012年02月14日

勇者には勝てない/来田志郎

4048862766勇者には勝てない (電撃文庫)
来田 志郎 refeia
アスキーメディアワークス 2012-02-10

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魔王に次ぐ力を持ち、異世界で人々を恐怖のどん底に突き落としていた三人の魔将たち。だが、勇者にあっさりと破れ去り、今は人間として生まれ変わって平凡な高校生活を送っていた。そんな彼らの前に、勇者の証“光の波動”を放つ転校生が現れる。これは土下座して許してもらうしかないと覚悟するが。

 勇者なあの娘と馬鹿三人

 光の勇者には勝てない宿命を背負う、しがない中ボストリオのファンタジック学園コメディ。

 勇者さま愛されすぎ! 敵も味方からもモテモテの人気者やん。さすが光の勇者さまやでぇ!
 異世界で勇者に敗れ、人間に転生し大人しく過ごしていた三魔将たちの前に勇者の生まれ変わり・菅田香澄が現れ、今までの平穏な日々を守るべく彼女のために必死に奔走する様子が可笑しかった。
 すっかりありふれた感のある魔王と勇者モノですが、振り回される中ボスたちの姿が哀愁を誘った。

 前世の勇者としての記憶を失って宿敵同士であったことなど知らずに普通の同級生として接してくるヒロインの香澄は、ちょっと天然なところはあれどプラチナ可愛い正統派美少女なんだけれども、魔族のトップスリーであったことを覚えている鉄次郎、源治、克昭の三人にとっては恐怖の対象でしかなく、ショックで前世の記憶を取り戻さないよう陰になり日向になり彼女を護衛する魔将たちの苦労ぶりが笑える。

 本来、三魔将たちが仕えていた魔王は、どういうわけか香澄の妹・茉那として転生して、記憶はあるはずなのに大変なお姉ちゃん大好きっ子になっていて……どんだけだよ! 勇者さんマジぱねっす!
 世界征服の野望など捨てて、何事もなくごく普通の高校生として過ごせるかと思った矢先、前世での勇者を知るを持つ予想外の人物にかき回されることになってと、終始、波乱尽くしでハラハラでした。

 最後の最後で絶対に敵わないはずの勇者の力に立ち向かっていった三魔将は、自分たちの身の安全や平凡な日常よりも、香澄を失いたくない一心からの行動だったんじゃないかと思います。
 過去は過去として水に流し、いまの自分と友人たちの絆を大切にしていつまでも仲良く過ごせよと、友達のために頑張った彼らのこれからの学園生活を応援したい。ほのぼのとして癒される話だった。
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2012年02月13日

ウィザード&ウォーリアー・ウィズ・マネー/三河ごーすと

4048862731ウィザード&ウォーリアー・ウィズ・マネー (電撃文庫)
三河 ごーすと 切符
アスキーメディアワークス 2012-02-10

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地下貧民街に生まれ幼い頃から暴力と略奪の中で孤独に生きてきたジェイファは一軒の豪邸に盗みに入る。しかし冬瀬陽月という少女に遭遇、捕縛されてしまう。豪邸の持ち主である冬瀬一郎は、彼を許すかわりに陽月と組み『ウィザード&ウォーリアー・ウィズ・マネー』という競技の選手になることを要求し。

 勝利を奪いとれ!

 これまで他人から奪われ続けてきた少年と少女が格差社会をのし上がるバトルエンターテイメント。

 大勢のファンと大金が行き交う一大エンターテイメント競技『ウィザード&ウォーリアー・ウィズ・マネー』に挑むことになった主人公・ジェイファとヒロイン・陽月の最初はいがみ合っていた二人が、次第に理解を深め、生まれや境遇の垣根を乗り越えて協力し合い勝利と栄光を掴んでいく光景にぐっときた。
 これは読んでいるうちに思わず手に力が入って胸が熱くなれるいいスポ根作品でした。

 魔術師と戦士の二人一組で相手ペアと戦う競技『WWWM』が面白い。戦士同士の格闘戦や派手な魔法の撃ち合いなどの中に駆け引きや読み合いもあり、エンターテイメントとして完成している。
 そして貧民街で暴力と盗みを繰り返しながら生きてきた少年・皿次(ジェイファ)と、中流家庭に生まれながら両親に捨てられた少女・陽月の組み合わせがお互いの魅力を相乗効果で引き出し合っていました。

 スポンサーの意向で嫌々ながらパートナーとなった二人でしたが、お互いの味わってきた不遇な境遇や壮絶な過去を知っていくちに、ただ粗暴なだけではない皿次の優しさ、冷たいだけでない陽月の人間味といった、お互いの美点に気づいて信頼を深め、支えあっていく姿に心温まりました。
 これまで奪われてばかりの似たもの同士だからこそ、最後の最後で勝利を掴むことができたんだろうなぁ。

 勝利で得る莫大なファイトマネーや周囲からの賞賛よりも、理解者を得たことで人として成長していく二人の絆や孤独に塞ぎ込んでいた暗闇から未来が開けていく光景が本当に素晴らしかった。
 まさに邪道な王道バトルといった感じで、適度に厨二心をくすぐるダーティな設定でもって熱いバトル展開を描いていったのがよかったと思います。これは続編にも期待。
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2012年02月12日

あなたの街の都市伝鬼!/聴猫芝居

4048862758あなたの街の都市伝鬼! (電撃文庫)
聴猫 芝居 うらび
アスキーメディアワークス 2012-02-10

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民俗学者を目指して都市伝説を調べている高校生・八坂出雲。「ムラサキカガミ」の研究をしながら誕生日を迎えた彼のもとに、伝説と同じ怪奇現象が発生!そして出現したのは『都市伝鬼』ムラサキカガミを名乗る少女だった。都市伝説を愛する出雲は、彼女たち都市伝鬼を一冊の本に編纂することになるが

 世にも可愛い都市伝説

 怪談好きな少年と少し怖くてとっても可愛い都市伝鬼たちで贈るほんわか怪奇譚

 都市伝説が可愛すぎて生きているのが辛い。うちにも出ないかなー(チラチラ
 巷に噂される都市伝説を本として編纂することを目標にする主人公・出雲の元に、本物の都市伝説の女の子たちが次々とやってきて驚かしたり、怖がされたり、少し恐ろしくも愛らしい姿に和みました。
 何も考えず気軽にサクサク読める感じのちょっとオカルト風味なラブコメディでした。

 噂が途絶えれば消滅してしまう曖昧な存在である都市伝鬼たちにとって、自分たちを本にして広めてくれる編纂者である出雲は救世主にも等しい存在で、ムラサキカガミのサキ、コトリバコのコトリ、ベッドの下の殺人鬼のベド子など、そんな彼を頼りに集まってくる都市伝鬼の女の子たちがそれぞれタイプの異なる美少女揃いで可愛かった。彼の手助けをしつつ同居生活を繰り広げる様子が賑やかで楽しい。

 端から見ていると、世にも羨ましいハーレム状態なんだけれど、人を驚かせるのが彼女たちのライフワークであるから、毎日のように怪奇現象に襲われて寿命が縮む思いを味わう出雲の狼狽えぶりが可笑しい。
 都市伝鬼たちにとってはありがたい行為であっても、昔から巷間に根付いていた妖怪や怪異たちにとっては、自分たちの縄張りを荒らすようなもので、あちらを立てればこちらが立たずな状況がもどかしい。

 どちらか一方だけに肩入れすることなく両者の折り合いをつけていくスタンスがよかった。
 都市伝鬼や妖怪だからと言って、偏見を持たず、あるがままの彼女らの有り様をそのまま受け入れる出雲の博愛主義的な接し方に好かれる理由があるのでしょうね。ただ優柔不断は困るぞ。
 それなりに楽しめた方だけど、設定としてはありがちかなぁ。もう少し独創性が欲しかったかも。
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2012年02月11日

エスケヱプ・スピヰド/九岡望

4048863436エスケヱプ・スピヰド (電撃文庫)
九岡 望 吟
アスキーメディアワークス 2012-02-10

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昭和一〇一年夏、廃墟の町“尽天”。暴走した戦闘兵器に襲われた叶葉は、棺で眠る不思議な少年に出会う。命令無しに動けないという少年に、叶葉は自分を助けるよう頼む。それは、少女と少年が“主従の契約”を結んだ瞬間だった。少年は、軍最強の兵器“鬼虫”の“蜂”九曜と名乗った。

 蜂の一刺岩をも通す

 閉じられた町を舞台に、戦闘兵器の少年とその主となった少女が繰り広げるノンストップアクション。

 久しぶりに大賞に相応しい風格を備えた大作を読んだ気がする! これは受賞納得。
 戦後の生き残りである少女・叶葉が、戦時中、皇国最強の兵器『鬼虫』の"蜂"・九曜を蘇らせ、戦闘機械である彼が次第に人間の温もりを知り、最後の戦いに赴いて行く姿に心を揺さぶられました。
 最強兵器『鬼虫』同士の激突する空中戦が圧巻でした。SFですがどこかレトロな雰囲気がツボです。

 戦時に九体しか建造されなかった最強兵器『鬼虫』の一匹、"蜂"の本体である九曜は、機械化兵士らしく高い戦闘力と冷静な判断力を備えているが無愛想で融通が利かない性格によって、シェルター内で生き残った人々との関係がギクシャクしてしまうんだけれど、そんな彼を廃墟から蘇らせた叶葉があれこれと世話を焼くうちに冷徹な戦闘機械だった彼に人情味が生まれていくところが微笑ましかった。

 同じ『鬼虫』の仲間でありながら九曜を裏切り、叶葉たち生き残った人間の街からの脱出を阻む"蜻蛉"の竜胆に惨敗し、折角、得た人間性を失って戦闘機械へ戻ろうとする九曜の決断は悲しかった。
 敵わない敵を前に最善の判断を下すのは論理的な思考だと思う。しかし、守るべきものために踏ん張って、敵わない敵にも立ち向い勝機を見出すことができるのが人間と機械の違いなんじゃないかな。

 皇国の軍人としてではなく、戦闘機械の『鬼虫』としてでもなく、ましてや誰かの命令でもなく、己の意思で竜胆との決着に挑む九曜の姿はまさしく人間で、叶葉や仲間のために捨て身でぶつかっていく九曜の生き様に目頭が熱くなった。戦いを終えて戦闘兵器としての九曜は死に、これからは人間としての九曜の人生がやっと始まるんだと思うと感慨無量。登場人物の意志力、物語としての度量の大きさを感じる大作でした。
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2012年02月10日

ソードアート・オンライン 9/川原礫

4048862715ソードアート・オンライン〈9〉 (電撃文庫)
川原 礫 abec
アスキーメディアワークス 2012-02-10

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目を覚ますと、キリトは巨木が連なる森の中―ファンタジーの“仮想世界”に入り込んでいた。手がかりを求めて辺りを彷徨う彼は、一人の少年と出会う。この仮想世界の住人―つまり“NPC”である少年は、なんら人間と変わらない感情の豊かさを持ち合わせていた。

 世界の理を打ち破れ

 現実に限りなく近い仮想世界《アンダーワールド》に閉じ込められた黒の剣士のVRファンタジー。

 最初のプロローグが始まったときは、なんだこれはと戸惑いましたが、これまでのVRMMO世界とはまた違うゲームシステムで綴られるストーリーと世界観に次第にのめり込みました。
 現実と遜色ないリアリティで作られた仮想世界《アンダーワールド》で目覚めたキリトと彼と出会ったNPCの少年ユージオが同じ目的を抱き、共に助け合い、強くなるために旅立つ光景に胸が高鳴りました。

 またもや怪しげなバイトに関わっているキリトさんですが、『フラクトライト』関連のシステムは、同作家の作品『アクセル・ワールド』へ繋がるキーになっているらしいので、システムの概要を読み込むと興味深い。いや、私は『アクセル・ワールド』は好きじゃないんで1巻以降まったく読んでないのですがね。
 しかし、彼氏のバイタルデータを眺めてにやける彼女とか、ちょっと引くわ。キリトさん愛されすぎ。

 《アンダーワールド》に飛ばされ、わけもわからぬまま手探りで仮想世界を探索していくキリトさんだけれど、始めに出会った少年ユージオとは、どこか根っこの部分が似て、運命的な繋がりを感じるな。
 レベル1に戻ってしまい、さらに現実と変わらない痛覚を再現された戦闘に恐怖したキリトさんですが、身体の痛みよりも大切な人を失う苦悩を思い出し、奮い立つ姿がよかった。やはりキリトさんは剣士だ。

 定められたゲームのシステムに囚われないキリトさんの意思がユージオにも伝わって、眠っていた彼の才能を芽吹かせて、もう一人の主人公として成長していくのが読み取れて素晴らしかった。
 今回は中綴じのカラーページが凄かった。いきなりだったからインパクト十分な演出でした。
 謎めく《アンダーワールド》の真相を求めて旅立った二人のこれからの冒険に期待。

 ところで公開されているアニメ版のビジュアルはアレどうなんですかね? ワーキン……

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2012年01月15日

乙女ゲーの攻略対象になりました…。/秋目人

4048708805乙女ゲーの攻略対象になりました…。 (電撃文庫)
秋目 人 森沢 晴行
アスキー・メディアワークス 2012-01-07

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なぜか乙女ゲームの世界に放り込まれた、俺。しかも攻略対象になってしまったようだ。てことは、もしや美少女たちにアタックされまくり!?ウヒョ。と喜んでいたのもつかのま、そうそう都合のいい話はないようで。どうやら攻略されると、俺の死亡ルートに突入するかもしれず…。

 恋愛関係を強いられてるんだ!

 乙女ゲームの世界に放り込まれた主人公と美少女だらけのちょっぴり変わったデスゲーム・ラブコメ。

 美少女の誘いにホイホイのってルート確定すると死亡フラグとか、これなんてクソゲーw
 気がつくと乙女ゲームの世界に入り込んでいた主人公・武尊湊が、ヒロインからの誘惑に耐えつつ、シナリオによって運命づけられた死亡イベントを回避するために奔走する姿が面白かった。
 イケメンと美少女の集団に一人だけ紛れ込んだフツメンの居心地の悪さが生々しくてワロタ。

 乙女ゲーの攻略対象キャラとしてメインヒロイン・宮河乙女から様々なお誘いを受けるものの、ゲームの前情報で自分ルートに入ると高確率で死んでしまうのを知っているせいで、彼女を避けつつライバルキャラの女の子たちとフラグを立てていくという奇妙な駆け引きをみせる展開がユニークだった。
 乙女は純粋に親しくなろうとしているのにそれを無下に裏切る度に罪悪感を感じていくのが少し辛い。

 乙女ゲー信者で湊を同士と誤解して懐いてくる美琴ちゃんが妹系キャラで可愛いのう。
 声フェチの湊いわく美声レベル5の法条さんもちょっと不思議系でなかなかに楽しい子だった。
 だが、高飛車な高埜倉、テメーはダメだ。ツンデレやドSならまだしも、ただワガママだけではこの業界ではイタい子要員でしかないぞ! まあイタい子はイタい子で美味しいポジですけどね。

 不条理シナリオで何故か正規ルートにハマり込みつつも、死亡フラグを打開していくのがよかった。
 しかし、メインヒロインの乙女とは極力接触を避けながらストーリーが進むので、他のヒロインと比べるとキャラが薄くなって見劣りしてしまうな。それなのにエピローグで乙女ルート入ってもなぁ。
 そして『乙女ゲー』要素は、あんまりなかった!普通の学園ラブコメでよかったんじゃないかと……。
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2012年01月14日

VS!! 正義の味方を倒すには/和泉弐式

4048861603VS!!―正義の味方を倒すには (電撃文庫)
和泉 弐式 白羽 奈尾
アスキー・メディアワークス 2012-01-07

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俺は21号。悪の組織の下っ端戦闘員だ。キーって叫びながら、変身ヒーローにアッサリ倒されちゃう、全身黒タイツのアレだよ、アレ。毎度毎度、新たな怪人に率いられ、懲りもせずにヒーローへと挑み、敗北ばかりの日々。そんなある日、史上最強の怪人“ジャバウォック”が誕生したという噂が流れたのだが

 下っ端戦闘員はダテじゃない

 怪人ですら敵わない無敵のヒーローに挑む、悪の秘密組織の雑魚戦闘員の熱血ストーリー。

 完全無敵のヒーローに真正面から挑むとか、下っ端のくせにムチャしやがって……。
 悪の秘密結社アルスマグナの下っ端戦闘員である主人公・21号が、史上最強の怪人ジャバウォックとの共同生活を通じて、それまで失っていたヒーローへの闘志を漲らせていく姿に胸が熱くなりました。
 名も無いやられ役の下っ端戦闘員でも必死に生きている。報われない弱者の哀愁が切なかった。

 組織の捨て駒として倒されるだけの存在でありながら、戦闘意欲が薄く、毎度ヒーローとの戦闘を強かに生き延びている変わり者の戦闘員21号のひょうきんで開き直ったキャラがユルくて人間臭い。
 最強の怪人として作り出されながら、同じくヒーローと戦う意義を見出せないジャバウォックと、共同生活を過ごしていくうちに初めて人間らしい暮らしの喜びや楽しさを知っていく光景に和みました。

 本来なら正義のヒーロー戦隊と悪の組織との戦争なんか知ったこっちゃないんだけど、窮地に陥った仲間を助けるために、敵わないとわかっているヒーローの前に立ち上がる姿には感動した。
 心優しい大切な仲間を失い、これまでは戦う前から勝利を諦めていた21号にヒーローへの闘争心が芽生え、戦闘員とヒーローの力の差を覆す奇策を編み出し、強敵に一矢報いる激闘に震えました。

 ヒーローに勝つだけなら戦闘服を着る前に暗殺なり、人質をとるなりすればいいのですが、あくまでも戦闘員らしく、いやらしくも泥臭い戦いでヒーローに勝つという下っ端の美学を感じました。
 一般市民の安全や平和をたった5人で背負っているヒーローたちにも負けられない決意があり、そうした意地と誇りのぶつかり合いも血が騒ぐ。正義と悪。どちらの側のキャラも格好よくて骨のある作品でした。
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2012年01月13日

金は彼女の回りもの/時田唯

4048861662金は彼女の回りもの (電撃文庫)
時田 唯 ひいろ
アスキー・メディアワークス 2012-01-07

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突如、母の残した借金2千万円を背負うことになった高校生・中村透。そんなピンチを救ったのは、同じ学園に通う美人お嬢様・家宝茜だった。透は恩人である茜に「僕を担保に、いや下僕にしてください!!」と恩返し大作戦を敢行するが、ある事件のせいで人間不信に陥っていた茜は透を信じることができず。

 お嬢様と下僕の約束

 借金男子の真心がお嬢様の冷えた心を温めるほんわか主従ラブコメ。

 主人公、ピュアすぎる! この男、聖人君子か! 非の打ち所が無いぞ! ( ;∀;)イイヤツダナー
 借金を肩代わりする代わりに大富豪のお嬢様・家宝茜の下僕として仕えることになった主人公・中村透が、持ち前の誠実さと真心で人間不信に陥った彼女の心を開いていく光景に和みました。
 最初はお金で始まった繋がりが、やがてかけがえのない主従の絆に変わっていくのが素敵でした。

 借金から自分と妹を助けてもらった恩を返すため、毎朝家まで迎えに行ったり、真心を込めてお弁当を作ったり、誠心誠意仕える覚悟を決めた中村透の徹底したご奉仕ぶりに好感を抱きました。
 莫大な遺産を相続し、お金目当てで近づいてくる汚い人間ばかりを見てきたために人間不信になってしまった家宝茜も、彼の行為を勘ぐりつつ、次第に一緒にいることで癒されていく姿が微笑ましい。

 急接近する中村透と家宝茜の関係を、かねてから中村透に片思いしていた幼馴染の吉田さんや義妹の知香が危ぶんで妨害を仕掛けるも、逆に二人の仲を進展させるばかりというのも可笑しかった。
 お互いにライバル視しながらも女同士の友情も芽生えていき、パーティで親戚連中から孤立する家宝茜と中村透のサポートをしたりと、中村透に負けず劣らず正々堂々としたいい娘さんだったなぁ。

 中村透がどんな大金を積まれても決してお金ではなびかないのも、お金では買えない大切なものをすでに心に持っているからでしょうね。家宝茜も彼と一緒にいることでそれが得られるといいのですが。
 正直、作品の設定からして某人気漫画のアレですが、こちらの主人公はなんのスーパー使用人能力も持ち合わせていない普通の人間で、そんな普通の人間が必死に頑張るから燃えました。続編期待。
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2012年01月11日

レトロゲームマスター渋沢 2/周防ツカサ

4048862421レトロゲームマスター渋沢 2 (電撃文庫 す)
周防 ツカサ 彩季 なお
アスキー・メディアワークス 2012-01-07

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レトロゲーム依存症の天然堅物委員長・早坂ちひろ。マゾゲーマーにして自身も真性ドMの変態少女・秋葉瑞穂と、委員長とは別のベクトルの堅物で、言うことははっきり言う西園寺奏恵の二人がメンバーとして増えたことにより、微妙なトラブルが次から次へと勃発。

 ゲームはみんなで仲良く遊びましょう

 優等生のヒロインと問題児の少年のゆるゆる青春ゲームラブコメ。

 ファミコン世代の名作といえばやはりドラクエV。懐かしいなぁ。よく使ったよなフィンガーフレアボムズ。
 放課後の秘密のゲームライフを共に過ごす新たな仲間も加わり、さらにマニアックなレトロゲームネタを引き合いにしたヒロインたちとの騒がしくも賑やかな掛け合いが楽しい。
 生真面目で素直な委員長と意地悪で天邪鬼な渋沢のもどかしいやり取りに悶えました。

 委員長の無自覚なエロ可愛さがいろいろな意味でヤバイ。そして積極的にエロを狙っていく渋沢さんマジ紳士。真っ直ぐすぎる性格から些細なことにつまずく委員長をヘソ曲がりな渋沢が助けるように見せかけてその実は全力で彼女をからかいにかかってと、そんな二人のイチャイチャぶりにニヤケる。
 次第に渋沢に影響されて堕落していく姿が微笑ましい。少しぐらい肩の力を抜いた方が可愛いよ。

 なにかと委員長につっかかっていた西園寺さんのデレっぷりも微笑ましいなあ。常日頃、委員長に勝ちたいと言っていたのに、いざレトロゲームで勝ってしまって、負けて落ち込む委員長を前にしての狼狽えぶりが可笑しい。秋葉瑞穂の持ち込むゲームもいやに古くて思い出深い。バーコードバトラーとか、RPGツクールとか、あったあった。っていうか、やっぱりお前ら絶対平成生まれじゃねぇだろ!

 ゲームの他にお互いの学業や進路の悩みも考えていくのが学生らしくていいですね。
 しかし、後半のエピソードの渋沢は素直じゃないにしても限度があるだろ……好きな女子を虐める男子小学生か。いや、元からそんな感じか、渋沢って。ふざけても許される場合と許されない場合とをわきまえてる奴だと思ってたんだけどな。まあ気が動転するほど可愛かったということなんでしょう。お互いに意識し合っているようで、今後の恋愛模様が気になって仕方がない。

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2012年01月10日

ようこそ、フェアリーズ・インへ!/小河正岳

4048862502ようこそ、フェアリーズ・インへ! (電撃文庫 お)
小河 正岳 得能 正太郎
アスキー・メディアワークス 2012-01-07

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さえない駆け出し冒険者のラウル。彼が居候している宿屋の女将が病気で倒れてしまう。ツケをためても許してくれていた女将がいなくなり不安だった彼だが、新しくやってきた女将はびっくりするぐらい純粋で美しい少女だった。

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 駆け出し冒険者と宿屋の美少女の魔王も倒さず世界も救わないほんわか冒険ファンタジー。

 主人公がクズい! ヘタレなのも冒険者として素人なのも別にいいんだけれど、弱いし機転も働かないしなんのスキルも持っていないクセして身の程知らずでうぬぼれ屋というキャラが気に食わない。
 内実が伴わない見栄っ張りでも少しは意地を張るくらいの気概は見せて欲しいのだけれど、負けるとみるやすぐに逃げる臆病ぶり、役立たずな上に毎度ヘマこいて騒動を起こす姿がイライラしてくる。

 お世話になっている宿屋の女将さんが倒れてしまい、危篤状態を告げるために女将さんの孫を探しに地下ダンジョンに潜っていくまでは完全に善意だったからヘッポコ冒険者でも好ましく見ていられたんだけど、帰ってきてからは老いた女将さんに代わって宿屋を切り盛りし始めた美少女・ミリーが自分を偉大な冒険者と誤解しているのをいいことに格好つけて自分を大きく見せることしか考えていないのが腹が立つ。

 冒険者は自分を偽っちゃいけねェよ。ファンタジーにおける冒険者がヒーローであるのは、モンスターが徘徊する危険な世界を己の身ひとつで踏破し、支配者におもねず我を張って、好奇心の赴くままに新天地を目指す、その強かで逞しく自由な生き様にロマンと美学を感じるんだろ。
 それなのにこんな嘘と虚飾にまみれた思い上がったガキにいったい誰が憧れるんだよ!

 仮に嘘でもそれを真実にする努力を一欠片でも見せてくれればなぁ。クズは最後までクズだった。
 そもそもどうしてそんな臆病で冒険者やってるのかが謎だよ。宿屋の従業員の方が向いてるじゃん。
 ゆるい感じの日常系ファンタジーを目指したコンセプトは面白いと思うんですが、「ゆるい」が「ゆとり」になってしまってるのが残念なんですよね。ミリー、エル、ルネの三人娘はよかったと思う。

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2011年11月14日

桜色の春をこえて/直井章

4048860828桜色の春をこえて (電撃文庫)
直井 章 ふゆの 春秋
アスキーメディアワークス 2011-11-10

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高校入学とともに一人暮らしをはじめるはずが、手違いにより部屋を失った真世杏花に救いの手が差し伸べられる。救い主の名は澄多有住。杏花の同級生でもある彼女は、かわいい名前に反してぱっと見は不良、停学歴アリ。無愛想でわがままで生活能力もない。杏花は折り合いをつけるのに難儀するが

 女子高校生の日常

 お互いに複雑な家庭事情を抱えた二人の少女の同居生活を描いた青春ストーリー。

 現代の複雑な親子の関係をテーマにしたガール・ミーツ・ガール。
 親との関係に問題を抱えて育った二人の少女・杏花と有住が、とある事情で一緒の部屋に住む事になり、お互いに衝突しながら自分の気持ちと向き合い、過去を乗り越えていく姿が心を打ちました。
 女の子二人の同居生活というワードから想像されるような甘々したものはなく、むしろシビアだ……。

 料理上手で家庭的な杏花とわがままでどこか抜けている有住の擬似家族のような空気が素敵です。
 見るからに不良で無愛想な有住と暮らすようになり、悪い噂話もあって最初は近寄りがたかった杏花ですが、次第に有住の粗暴な態度の裏にある不器用な優しさに気づき、親からの虐待でコミュニケーション不全に陥っている有住の苦しみを受け入れ、彼女の頑な心を解きほぐしていくのがよかった。

 杏花もまた両親から捨てられたことで他人との繋がりに飢えていたんじゃないのかと思います。
 大人しそうでいて有住の窮地には我が身を張るところがすごく凛々しかった。すっかりオカンやなぁ。
 お世話焼きな杏花と甘えたがりな有住で、バランスはいいんだけれど、やはり似た者同士の傷の舐め合いなのかなと思ってしまう物憂げなシーンがところどころあって、胸に詰まりました。

 児童虐待をするような親は、つまりは幼稚なんですよ。それに振り回される子供はいい迷惑だなぁ。
 親を選べない子供は可哀想だが、そうした子供たち取り巻く周囲の無理解がもっと悲しくて虚しい。
 それまで立ち止まっていた二人が支えあって前に進もうとする最後には、子供から大人へと変わっていく成長を感じさせますね。読み始めは重い話かと危惧しましたが結末は軽快で清々しかったです。
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2011年11月13日

ヘヴィーオブジェクト 死の祭典/鎌池和馬

4048709976ヘヴィーオブジェクト 死の祭典 (電撃文庫)
鎌池 和馬 凪良
アスキーメディアワークス 2011-11-10

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全世界が待ちに待ったスポーツの祭典、テクノピック。世界的勢力の代理戦争であるこの一大イベントに、とある少女が参加した。全てを金で解決する『資本企業』航空PMC所属の一二歳の少女。課せられたのは、スポンサーが売り出す新型ライフルを使用してテクノピックで好成績を上げること。

 スポーツという名の戦争

 スポーツによる代理戦争『テクノピック』の渦巻く陰謀と戦う12歳の少女兵士の近未来アクション。

 フラグブレイカーな学徒兵と色ボケた貴族のお坊ちゃまなんていなかったんや!オブジェクトも空気w
 兵士同士の泥沼の消耗戦を続ける「北欧禁猟区」からやってきた12歳の少女兵士・マリーディが、ドーピング、妨害なんでもありのスポーツの祭典『テクノピック』に仕掛けられた謀略を暴き、『テクノピック』を守り、果ては世界を守るために最前線での銃撃戦、空中戦を繰り広げるアクションに燃えました。

 北欧系美少女マジ天使。コンバットスーツにライフルを構えた幼女が嫌いな男子なんかいません!
 幼いながらもプロの兵士として激戦区で戦い抜いてきただけあり、知識、技術、体力のパラメータゲージが振り切れていて、本来彼女を守るべき護衛の男よりも勇ましくて格好いいダンデレだった。
 彼女を勝たせるために取り揃えたサポートスタッフたちもひとクセあって愉快でした。

 スポーツの精神を無くした死の祭典と化した『テクノピック』では、競技時間外では当たり前のようにライバル選手の命を狙った敵勢力の襲撃が横行して、誇りも名誉も何もあったもんじゃないが、そうした襲撃を次々と撃退していくマリーディさんパネェっす。肝心の護衛が役立たず過ぎるな……。
 そんな戦闘を繰り返し金メダルを手にしたかと思えば、それまでを吹き飛ばす事態の急変に慄いた。

 平和なスポーツマンシップを取り戻すために戦争を起こすという、矛盾した論理が成り立ってるのが怖い世界観ですね。もし始まればその影響が世界へ波及してしまうというところがまた恐ろしい。
 マリーディが今回の依頼に応じたのも、殺し合いでは得られない生産性を求めていたのかな。その期待は果たして叶えられたのか。いつものバカ二人組よりも、美少女がドンパチする方が華があったな。

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2011年11月12日

煉獄姫 四幕/藤原祐

4048860879煉獄姫〈4幕〉 (電撃文庫)
藤原 祐 kaya8
アスキーメディアワークス 2011-11-10

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正統丁字教の総本山である法王庁の特務組織、【奇跡認定局】がついに瑩国転覆のため動きだした。彼らが目論むのは議員や貴族を標的とした無差別暗殺計画であり、瑩国は抗う術なく徐々に国力を削られていく。

 神へ捧げる断末魔

 生まれつき異界の毒気を纏う王女と彼女に付き従う少年が戦いに身を投じていく異世界ファンタジー。

 いつも通り、血みどろで情け容赦無いグロい展開が素敵。今回もいろいろと抉られました。
 ユヴィオールとの戦いで力不足を痛感し鍛錬を重ねるアルトとフォグの元に、休む間もなく法王庁からの刺客やキリエが襲いかかり、国家のみならず自分たちの宿敵として立ち向かう姿が凛々しかった。
 いくつもの勢力の思惑と陰謀が錯綜し、それぞれが二人を狙って蠢く様が不気味でゾクゾクする。

 王都で多発する貴族失踪事件に加担して、禁術の素材として人間狩りを行なうユヴィオールとゆかいな仲間たちの人間性やモラルの欠如した悪逆非道っぷりには、相変わらずヘドがでますね。
 法王庁の暗殺者集団の狂った信仰心も眉をひそめるし、そんな奴らと行動を共にしてまでアルトとフォグとの決着を求めるキリエも正直理解し難いなぁ。頭のおかしな連中だらけで、こっちまで気が狂いそう。

 そしてこの作品の貴重な癒し系キャラのイオさんがうわああああああああああああ!!!(; ・`д・´)
 あれだけのことがあったのに、何事もなかったかのようにアルトの世話を続けるイオは芯が強いなぁ。
 アルトもフォグ以外のことに徐々に関心を持つようになって少しずつ成長の兆しを見せてきましたね。
 特訓で編み出した二人の新しい連携技は……あかん、それはチートや。

 一冊かけて敵陣営の整理とアルトたちのパワーアップに費やして次巻へ繋いだ中継ぎ回でしたね。
 きれいなアイリスの目覚めや、トリエラのカムバックは大きな変化でしたけれど、ますます状況が混沌としていくなぁ。敵は際限なく増えれども、味方は増えず。ますます苦しい戦いを強いられますね。
 この戦いの先に救いはあるのか、次回も殺伐とした展開、お待ちしています。

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2011年11月11日

妹ホーム/柏葉空十郎

4048708813妹(マイ)ホーム (電撃文庫)
柏葉 空十郎 有河 サトル
アスキーメディアワークス 2011-11-10

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昭和の薄幸兄妹ノリの相葉佑と真伊。だが、妹に癒され、佑はささやかな幸せをかみしめていた。二人が奨学生制度で入学したのは、場違いなくらいのセレブご用達の名門校。そこで、佑は幼馴染みの舞衣に出会う。ある日、舞衣が佑の実の妹である疑惑が発覚して

 妹は幼なじみ

 高校で再会した幼なじみと一緒に暮らすことになった薄幸の貧乏兄妹のアットホームラブコメディ。

 久しぶりに美談というものを読んだ。イマドキいないよこんな理想的な兄妹。イイハナシダナー(´;ω;)
 親に捨てられ貧乏でも妹の真伊と幸せに暮らしていた主人公・佑が、高校で再会した幼なじみ・舞衣こそが本当の妹だと知り、崩れかけた兄妹の絆を修復するために奔走する姿が涙を誘いました。
 幼なじみと妹、主人公にとってどちらも大切な存在で、どちらかだけを選べないのがもどかしかった。

 一見、頼りないけれど妹を何より大切に思う兄・佑と、そんな兄を一途に慕う妹・真伊のシスコン&ブラコン兄妹の日常風景の暮らしぶりが貧しいながらも小さな幸せに満ちていて素敵でした。
 性根の腐った大人のひどい仕打ちにもめげず、度重なる不幸の嵐にも腐ることなく、兄は妹を想い、妹は兄を想い、二人で身を寄せ合って逆境に立ち向かっていく心意気に胸を打たれました。

 高校で再会した幼なじみ・舞衣が、実は生き別れの妹だと発覚し、同じアパートで暮らし始めたことで真伊との絆に亀裂が入ることになってしまうのですが、舞衣はちょっと空気読めてなくてウザかった。
 いや、彼女が真伊を押しのけるようにして佑に依存してしまう理由もわからなくはないのですが、相手の事情や気持ちを考えずに自分の理想を相手に押し付けることに悪気を感じてないのがイタい。

 もう一人のセレブ美少女の美唯の佑へのバッシングも不条理すぎてどうも好きになれない。父親や義兄がクズだから、男性嫌いになっても仕方がないけれど、佑は違うじゃん、本質を見てやってよ……。
 う〜ん、ダブル妹ラブコメというか、真伊が理想的妹キャラすぎて、他のヒロインがかすんでしまう。
 共同生活に入ってからがメインなので、そこまでをもっと早く展開して欲しかったかな。後半駆け足気味なのが残念でした。
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2011年11月10日

魔法科高校の劣等生 3 九校戦編 上/佐島勤

4048709984魔法科高校の劣等生〈3〉九校戦編〈上〉 (電撃文庫)
佐島 勤 石田 可奈
アスキーメディアワークス 2011-11-10

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『九校戦』。そこでは毎年、全国から魔法科高校生たちが集い、熾烈な魔法勝負を繰り広げていた。七月中旬。第一高校でも、将来の魔法師候補たちによる優れた選手団が組織されていた。遠征メンバーには、『新人戦』に参加する司波深雪と、その兄・達也の姿もあった。

 栄光と挫折の大舞台

 現代のエリート校である魔法科高校に入学した兄妹が繰り広げるマジカルバトルアクション。

 達也のチート性能をどこまで引き上げる気だ。もうなんでこいつ高校生なんてやってるのよ……。
 日本全国に九つある魔法科高校の生徒が一同に会し、魔法の腕を競い合う競技大会『九校戦』に選手として出場することになった深雪と、おまけの技術スタッフとして同行することになった達也ですが、水面下ではその本領を余すところなく発揮していて、改めて彼の本当の実力を見せつけられました。

 一年生でさらに二科生でありながら技術スタッフに選ばれたことで周囲からの嫉妬に晒される達也ですが、達也と対峙した者たちは彼の実力を陰ながら認めているのが印象的でした。
 ストイックでお世辞を言いそうにない達也のキャラが、競技を控えた選手たちの緊張をほぐしている姿に和んだ。能力主義者な一科生たちとも同じ高校の仲間として打ち解ける日が来るんだろうか。

 ただ達也の素顔が明らかになってくると、選手たちがやっている競技が子供の遊びに思えてくるな。
 本来なら競技にも高度な駆け引きもあるんだろうけれど、パワーバランス偏ってて、一高強すぎ。
 会長の真由美を始めとして華々しい活躍をみせる女性陣に比べ、男性陣の見せ場オールスルーw
 登場シーンといえば、女性陣に色目を使っている場面ばかりとあまりにも地味すぎて哀れである。

 他の高校にも生徒会メンバーと同程度の強敵ライバルキャラを登場させれば、ああも試合展開が一方的にならずにもっと盛り上がったんじゃないかな。せいぜい達也とまともに戦えそうなのは一条? ムリダナ!
 まあ『九校戦』の長い日程や試合数を上下巻でまとめなければいけないから、話をスムーズに進めるために仕方がないのかもしれないが、主人公補正のご都合主義はそろそろ終わりにして欲しいなぁ。
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2011年10月15日

アイドライジング! 3/広沢サカキ

4048709658アイドライジング!〈3〉 (電撃文庫)
広沢 サカキ CUTEG
アスキーメディアワークス 2011-10-08

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モモたちの通う鳴谷鴬高校の学園祭が始まった。張り切るモモだったが、先輩アイドルのタキ・ユウエンがやってきて、ウキウキは一転。前回の『貸し』を盾に迫る彼女に押し切られ、モモは学祭期間中ずっとタキとデートしなければならないことに。さらに学祭のイベントでトラブルが発生し!?

 みんなの笑顔のために

 企業の技術の粋を凝らしたバトルドレスを着て戦う新人アイドルのサクセスストーリー。

 メイド姿のアイドルが女の子同士でイチャイチャしてる光景がご馳走様すぎて身悶えるわ。
 学園祭のイベント参加中、怪我をしてしまったタキ・ユウエンの代わりに、覆面アイドルとしてエリザベス予選に出場することになり、アイドルとして最初の壁にぶつかるモモの姿に胸がしめつけられる。
 自分は何のためにアイドルをして、何を目指しているのか、モモの見出した答えが素晴らしかった。

 前回の『貸し』から、学園祭の間タキとデートをしなくてはならなくなったモモが、ガチ百合なタキに振り回され、水着姿で組んずほぐれつするところまではほのぼとして、一転して不慮の事故から怪我をしたタキの代役として、新型バトルドレスを着てトップランカーとバトる急展開には燃えた。
 結果は完全な惨敗を喫してしまいましたが、実力と経験の差があるし仕方ないんじゃないかな。

 しかし、多くの人々の期待に応えられなかったことで、さすがにいつもの快活さや脳天気さも陰り、失意に打ちひしがれるモモですが、そんな彼女の背中を蹴飛ばして励ますオリンさんマジイケメン!
 いやぁ、もうオリンさんはすっかりこの作品の裏主人公というか、モモを主人公とした場合のメインヒロインというか、ライバルを越えた本妻っぷりがパネェ。相変わらず、美味しすぎるポジションですね。

 それまで勝つだけで必死だったモモにアイドルとしてのプロ意識や明確な指針が生まれましたかね。
 アイドルたちだけでなく、彼女たちを見守るクラスメイトたちの温かい気遣いが印象的でした。
 トップアイドルたちのなかで、徐々に評価を上げていくモモですが、彼女のキャラに誰かの姿を重ねているのかなというのがちょっと語られて、今後の伏線になっていきそう? はやく続きが読みたい。
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2011年10月13日

ラッキーチャンス! 10/有沢まみず

4048709593ラッキーチャンス!〈10〉 (電撃文庫)
有沢 まみず QP:flapper
アスキーメディアワークス 2011-10-08

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霊能力者を喰らうために暴走を始めた砂入道。鏡を自在に操り最上階を目指すトリックスター、ムガル。そして、圧倒的な力を持つ天草家の陰の支配者、ザ・レディ。雅人とキチ、天草沙代は、それぞれの想いを胸に、彼らへ最後の戦いを挑む!天草家の次期当主をかけた大バトル大会“奉り”が、ついに終結。

吼えよ神狼!!

 福の神キチと、運に見放された最強の“ごえん”使い雅人の学園ハッピーラブコメディ。

 うおおおおおおおおおおお!!マサトかっけえええええええええええええええええええええ!!
 魑魅魍魎が跋扈する天草家のバトルロイヤルもついにクライマックス。圧倒的な力を持つザ・レディの前に身も心も踏みにじられた沙代を救うべく、本気モードのマサトが放つ怒りの鉄拳に燃えました。
 長きに続いた天草編のここまでのフラストレーションをすべて払拭してくれたのが痛快だったわー。

 他の参加者を出し抜いて最上階まで到達した沙代ですが、やっぱり一緒にいたアイツは裏切ったかー。まあ最初っから立ち位置的にすごく怪しいじゃないとは思っていたけど、吐き気がするほどゲスだな!
 反対に敵方にいた彼女の立ち回りは意外や意外でびっくり。そういえばマサトを助けてたなと納得。
 そうとは知らずに騙されていた真実がいくつも明らかになり、沙代の受けた絶望を思うと辛かった。

 そんな不条理が平然とまかり通る天草家に、珍しくも本気の怒りを覚えたマサトの怒涛の快進撃がスカっとした。キチや塔子、犬神たちのサポートを受けつつ、砂入道を正面から打ち破り、ムガルを一撃のもとに叩き潰し、最後に待ち構えるザ・レディにはタイマン勝負でぶちのめす! 心ない力はただ誰かを傷つける暴力だけど、心ある力は誰かを守る愛になる。それをマサトは証明してくれたと思う。

 それにしても決着までたどり着くまで長かったですが、それだけ待たされた甲斐はありました。
 何つっても、沙代さんのデレっぷりがたまらない。男にここまでされたら惚れるしかないですよね。
 バトルロイヤルの優勝者となって天草家と沙代の身柄を手に入れることになってしまったマサトにも幸運が巡ってきたかな。今後もまだラスボスが控えているし、彼らの恋模様が見逃せない。次回は懐かしのアイツの再登場クルー?

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