ダフロン

2012年11月12日

スクリューマン&フェアリーロリポップス 2/物草純平

4048910965スクリューマン&フェアリーロリポップス2 (電撃文庫)
物草純平 皆村春樹
アスキー・メディアワークス 2012-11-09

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玖堂卓巳の学校に転入した、“翅族”の姫ロロット。卓巳の妹・優乃や、ややズレ気味な美少女・佐伯ネアラと早々に問題を起こしつつも、ロロットは持ち前の破天荒さとキュートさとを生かして、一躍時の人に!しかし楽しい日々も長くは続かない。様々な思惑を持つ危険人物たちが街に集いはじめる。

 悪には悪の美学がある

 キュートな妖精姫と"妖精使い"の少年が巻き起こす、異世界改革系ファンタジック・アクション

 どこまでも自分の信じる悪の道を突き進むヒロインのロロットが清々しいまでの悪党で惚れちゃうぜ。
 タクミの通う学校に転校してきて騒動を巻き起こす妖精姫ロロットを狙って、またしても妖精郷から刺客が送り込まれ、無関係な友人たちを狙う敵の手から守りつつ己の信念を貫く姿に魅せられました。
 様々な勢力、幾多の組織の思惑が錯綜し始めて、スケールを増していく物語が興味深い。

 抜き打ち的にタクミの学校の中等部に転校してきたロロットと、たまたま隣席になったタクミの妹・優乃の掛け合いが微笑ましかった。タクミにベタ惚れなロロットと、ブラコンの優乃の嫁姑戦争が始まるかと思いきや、破天荒でパワフルなロロットに圧倒されて一方的に振り回される光景が可笑しかった。
 それでもガチでぶつかり合ううちにお互いを認め合って、次第に芽生えていく女の友情が素敵でした。

 一方、ロロットの失脚を狙って、"妖精使い"たちが送り込まれてきて、妖精郷とは無関係な人々を人質にロロットを脅すという暴挙に出るんだけれども、敵の策略を上回るタクミの作戦で自分たちの家族親戚友人知人を全員守ったうえで、さらに正々堂々と正面から打ち破ってみせるから胸がスカッとする。
 壮大な野望を持つロロットたちに比べれば小悪党で、悪人としての格の違いを見せてくれました。

 今回は、妖精郷から派遣された市長のネアラや、重要人物のアノマリーであるラステル、タクミの妹の優乃を含め、ロロットがこれから起こすであろう世界の変革のための地盤固めをした回でしたかね。
 タクミの妖精も進化して、ここまで活用度の幅が広いともはやチート。実に意外性があって面白い。
 ロロットの出生の一端が明かされましたが、次回もさらに掘り下げてくるのかな。ラブコメにも期待。
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2012年11月10日

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン U/宇野朴人

4048869884ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンII (電撃文庫)
宇野朴人 さんば挿
アスキー・メディアワークス 2012-11-09

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実戦経験を積むため、北域へと遠征することになる帝国騎士イクタたち。目指すは、大アラファトラ山脈に守られた軍事拠点、北域鎮台。野盗の相手と山岳民族「シナーク族」の監視以外は総じて暇だと噂される、帝国最北の基地だった。しかし訓練気分の彼らを待ち受けていたものは、本物の戦場だった。

 戦争は破壊の科学である

 のちに名将と呼ばれる怠け者な少年の激動の半生を描く壮大な架空戦記。

 味方の軍に無能な指揮官がいるだけで、こうも甚大な害悪を撒き散らすものかと憤激を隠せない。
 遠征訓練として北の要衝・北域鎮台へやってきたイクタたちが、原住民族シナーク族の民族蜂起に巻き込まれ、仲間とともに無用な争いの最前線に立たされ危険や苦渋を味合わされる姿がやるせない。
 無能な指揮官の無思慮と無策で次々と散っていく犠牲者たちの命の重みに胸が苦しくなる。

 シャミーユに見込まれ栄達を望まれるイクタだけれど、出世欲のない彼はいつもののように詭弁を弄して逃げ回って、そんな彼が馬鹿にしていた権力によって振り回されるハメになるとは皮肉だった。
 イクタたちが派遣された北域鎮台の司令官が最高にクズで胸糞悪い。シナーク族の武装蜂起も彼による民族迫害が原因で、起きなくていい戦争を起こしやがってこの指揮官早く死ね!と何度思ったか。

 無能な指揮官によって一万以上の軍隊が山脈の各地で苦戦を強いられて、イクタたちも無謀な命令を強いられるんだけれど、その度に神算鬼謀と連携プレーによって切り抜けていくから痛快なんだ。
 しかしイクタの手の届かないところでは、敵味方ともにおびただしい数の戦死者が発生して、それが相手への憎悪と怒りとなってますます戦況を過熱させる負の連鎖に陥っていく光景が辛くて痛ましい。

 戦場では優秀な人材から死んでいく、帝国にとってそれこそが本当の損失なのに、効果的な作戦ひとつ提案できない指揮官連中は責任回避や自己保身にばかり走るのだから噴飯ものですよ。
 いや、ホント今回は怒りしかわかなかった。これはイクタに早く出世して偉くなってもらわないと。しかし運命は彼の覚悟を待ってはくれないようで一難去ってまた一難とは、この作者ドSすぎるわぁ(褒め言葉)
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2012年10月16日

アニメアライブ/秋傘水稀

4048868918アニメアライブ (電撃文庫)
秋傘水稀 わだぺん。
アスキー・メディアワークス 2012-10-10

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姉に頼まれ、自主制作アニメの企画・脚本を担当することになる大学生・真田慶介。緊張しながら秋葉原にある制作室を訪ねてみると…他の制作メンバーは、作画担当も音楽担当も声優担当も、みんな可愛い女子高生だった…!?

 夢のために、いまできること

 可愛い女子高生たちとアニメ制作に向かって突き進む、きらきらと輝く青春ストーリー

 可愛い女の子に囲まれたら、男は誰だって120%の本気の一つや二つひねり出しますよ!
 所属していたサークルの解散により行き場を失った主人公・慶介が、それぞれに夢を目指して頑張る女子高生三人と共にアニメ制作に打ち込むうちに創作意欲を燃え上がらせていく姿が眩しかった。
 どんな過酷な道だとしても、楽しい気持ちは止められない。夢見る少女たちの若さが弾けてました。

 アニメ好きが昂じてドイツからやってきた作画担当アンネ、声優志望でツンデレだけれど努力家の観前、引っ込み思案だが音響には積極的な奈菜。熱意と情熱はあれど、それぞれ周囲から浮いてしまっていた彼女らが創作を通じてチームとして、夢を持つ同士として絆を深めていくところが愛らしい。
 シナリオ書きの慶介を加え、女子高生たちとの和気藹々としたアニメ制作風景が微笑ましかった。

 本気で夢を目指して努力している女の子たちと接し、アニメ制作に中途半端な覚悟しかなかった自分を恥じて、彼女たちの得意分野や能力を活かす脚本作りに動き始める慶介の姿は、創作者としての喜びとやり甲斐に満ちて活き活きとして見違えるようでした。アニメーター業の厳しい現実や苦悩を突きつけられても、どんな失敗にぶつかっても、それを乗り越えていく慶介とアンネの決意のパワーに圧倒されました。

 アニメと言えば日本のお家芸だというのに、アニメーターの労働環境がお世辞にも良いものとは言えない現状には、何か疑問を感じますね。人々に夢を与える職業だというのに、その職業の実態は夢とは程遠いというのはどう考えても間違ってると思うのですが。それでも大人たちから夢を与えられた慶介とアンネが、これからも夢を引き継いでもっと多くの子供たちに夢を与えていって欲しいと願ってやまない。
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2012年10月15日

S.I.A. 生徒会秘密情報部/長月渋一

4048868853S.I.A. ―生徒会秘密情報部― (電撃文庫)
長月渋一 NOCO
アスキー・メディアワークス 2012-10-10

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引きこもってネット三昧だった麻波守貴。受験合格を機に、過去を払拭し高校デビューだ!…と試みた刹那。謎の美少女率いる『生徒会情報部』に連行された。そして彼の眼前に、生徒会会長閣下・遊氏茉絢が現れる。恐怖のあまり取り乱す守貴に、彼女が下した『極秘指令』とは―。

 消されるな、この想い 忘れるな、我が痛み

 エリート校に『学生諜報員』として潜り込んだ元引きこもり少年の潜入スパイアクション。

 ライバル校と水面下の情報戦を繰り広げる学園闘争ものかと思いきや、これは予想外にSFだった!
 とある秘密をタテに脅され『学生諜報員』となった元引きこもり少年・守貴が、州内一位のエリート校、丸洲学園の教育システムの秘密を探るために学園に潜入し、隠された真実と囚われのヒロインを救い出し、それまでの弱い自分から脱却して成長していく姿が凛々しくて格好よかったです。

 いじめられっ子でウジウジとした根暗キャラの守貴が、最初は癪に障って仕方がなかったのですが、『学生諜報員』として潜入した丸洲学園で虐げられていたところをヒロイン・瑞穂に救われ一目惚れし、それ以降、彼女を狙う魔の手から救うために奮闘し始める姿はなかなかに男らしく、怯えながらも危険に立ち向かう勇気と、悪を許さぬ強い正義感を次第に目覚めさせていくから見直しました。

 特進クラスとそれ以外のクラスとで絶対的な学力格差、人間差別を作り出す丸洲学園の教育システムの秘密を探るうちに、学園長が企む思わぬ陰謀が明らかになってきて、単なる秀才を生み出す学習法を盗み出すというスケールを越えて、ストーリーが超展開を見せていくのには驚愕させられました。
 地球の変革とか、人間の進化とかよりも、一人の女の子を大切に思う守貴の愛に胸を揺さぶられた。

 なんかこういうのSF映画で見たことある! 守貴がメッチャ身体を張って活躍してるのはいいんですが、ヒロイン勢は、瑞穂はほとんど監禁状態、遊氏は影で守貴を操って表に出てこないしで、ぶっちゃけ存在地味なような気がするんですが……。出番の量では亜子の方がよっぽどメインヒロインしてたなぁ。
 コンセプトに直球で熱い作風は嫌いじゃないです。綺麗に完結してると思うけれど、これ続くのか?
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2012年10月14日

ストライク・ザ・ブラッド 5/三雲岳斗

4048868993ストライク・ザ・ブラッド 5 観測者たちの宴 (電撃文庫)
三雲岳斗 マニャ子
アスキー・メディアワークス 2012-10-10

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監獄結界からの脱出を果たした、仙都木阿夜と六人の魔導犯罪者たち。彼らの目的は“空隙の魔女”南宮那月の抹殺だった。阿夜の奸計によって魔力と記憶を奪われた那月は、幼児化した姿でなぜか浅葱に保護されることに。脱獄囚たちの襲撃で窮地に陥る浅葱の運命は?

 夢は朝日に泡と散る

 世界最強の吸血鬼を継いだ男子高校生と見目麗しき乙女たちの学園アクションファンタジー。

 サナちゃんかわいい( ^ω^)ペロペロ おじさんがお菓子あげるよハロウィンだから犯罪じゃないもん。
 監獄結界が破られ、脱獄した魔女・仙都木阿夜を始めとする悪名高い魔導犯罪者たちから、幼くなってしまった那月を守りつつ、反撃に応じる古城とヒロインたちの激戦に手に汗握りました。
 次々と凶悪な刺客に追い詰められながらも、起死回生への一手に繋げていく展開が素晴らしかった

 裏の世界でも恐れられる極悪犯が目の前で脱獄してしまったというのに、古城は重傷を負い、那月ちゃんは記憶と魔力を奪われてと、頼れる主力が満身創痍で逃げることしかできない姿がやるせない。
 脱獄犯を再び投獄するには那月ちゃんの存在が不可欠で、那月ちゃんを巡って、お祭りで沸く島内の各地で繰り広げられる脱獄犯と古城たちの息もつかせぬラン&バトルの連続が実にエキサイティン!

 戦いの合間の休息には、やっぱりお約束のヒロインたちとのイチャイチャタイムもあって、姫柊だけでなく藍羽や煌坂の乙女らしくて可愛いところをバッチリ堪能できたのも美味しかったです。
 敵である優麻を助けたことや、新たな眷獣の目覚めなど、甘いと言われる古城の行動が仙都木阿夜にも読み切れない予想外のイレギュラーとなって逆転のきっかけになっていくのは痛快でした。

 完全に後手後手に回って切羽詰まった状況から、一人一人ができる限りの活躍をして、チームとしての勝利を掴んでいくってのは、やっぱり燃えますね。いくら強くても一人だけじゃあダメなんだ。理解者がいて初めて自分の限界を越えることができる。仙都木阿夜も、那月ちゃんと分かり合えた別の道があったかもしれない。古城の存在に加え、姫柊の身にも謎が浮かび上がってきたが、さて次回どうなる?

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2012年10月13日

ロウきゅーぶ! 11/蒼山サグ

4048869876ロウきゅーぶ! (11) (電撃文庫)
蒼山サグ てぃんくる
アスキー・メディアワークス 2012-10-10

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小さいながらも初めての大会に参加する慧心女バスの五人。気合い十分の彼女たちの前に立ちはだかるのは、五年生と昴の誕生日!?感謝を込めた誕生日会を過ぎれば、あとは一気に初大会へ向けて試合モード全開!バスケ部存続+お手伝いをかけた五年生との再戦に、五人の想いと友情が炸裂っ!?

 ロリコンの秋、到来

 女子バスケ部のコーチになってしまった男子高校生と5人の女子小学生たちのスポ根コメディ。

 ロリコンリミッター開放! ロリコーチ・すばるんの名言も次々と炸裂。ノー小学生・ノーライフ!
 昴の誕生日に慧心女バスの五人がパーティをして、心のこもったプレゼントにほんわかしつつ、葵率いる5年生チームとの再戦、そして因縁深い硯谷女子バスケ部の再登場と熱い展開もてんこもりでした。
 非公式なれど初めての大会に参加することになった女の子たちの興奮ぶりが微笑ましかったです。

 いつものロリ5人組と親しくなりすぎて、常識を忘れかけてきた昴の言語野がいろいろヤバい。
 小学生の汗を高級料亭のお吸い物の味といい、小学生の足で踏まれたうどんを七色の宝玉といい、成長期の少女の根源に迫った挙句に「うどんは小学生に限る」。お前は、一体何を言ってるんだwww
 ナチュラルに小学生女子に侵されまくった脳内表現が破壊力抜群で、お腹イタイwww

 ロリじゃないけれど久井奈さんのバニーガール姿が神々しすぎて拝みたくなるレベル。真帆父GJ!
 5年生チームとの再戦は、まさかの6年生チームが追い詰められたり、すばるんの機転で挽回したりで、両方のチームのプレイヤーたちの活躍が光る一進一退の攻防で読み応えがありました。
 硯谷女バスの参戦は、新しいキャラ見せの意味がありましたかね。宿命のライバル展開燃えますな。

 オール親御さん公認のハーレム構築を果たした昴のロリ充度がさらに上がっていく。
 5年生組も合流し、ついにメンバー10人が揃った完全究極体慧心女バス部の一体感がいいね。
 これで公式大会にも参加できるし、使える戦略の幅も広がって昴としては万々歳だろうけれど、ずっと5人でやってきた6年生組のチームワークについてこれるかが不安だな。もう11月だが間に合うのか?

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2012年10月11日

ソードアート・オンライン プログレッシブ 1/川原礫

4048869779ソードアート・オンライン プログレッシブ1 (電撃文庫)
川原礫 abec
アスキー・メディアワークス 2012-10-10

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“第一層フロアボス攻略会議”当日。自身の強化のみを行うと決め“ソロ”として戦うキリトは、会議場に向かう中途で、最前線では珍しい女性プレイヤーと出会う。強力なモンスター相手にレイピア一本で戦い続ける彼女は、あたかも夜空を切り裂く“流星”のようで―。

 黒き深夜と輝く流星

 アインクラッドでのキリトやアスナたちの冒険を第1層から描き直すプログレッシブ編

◆星なき夜のアリア
 現状に絶望しきっている頃のアスナは、今の強気な態度と比べると、いかにも弱々しくてギャップが萌えですね。自暴自棄になっている彼女を見過ごせず、あれこれとMMOのハウツーを教えるキリトですが、初心者にアドバイスするのって意外と楽しいんだよなぁ。助言を吸収して見違えるように強くなっていくアスナの潜在能力の高さに驚きです。持ち前の向学心の高さがいい方向に働いたんでしょうかね。

 アニメ版でも見たけど、やはりキバオウのクレクレ厨っぷりは、苦笑いがこみ上げてくるな。MMO経験者とは思えない持論展開は、攻略wikiばかり見てプレイしてたんだろ。その独善的思考が、後々のアインクラッド解放軍の暴走に繋がるとしたら、この辺りの下層で犠牲になってくれてた方が、よかったのかも。ディアベルもキリトを警戒するくらいなら頭を下げて仲間に勧誘してれば、無駄死は避けられたのに。

◆幕間 ヒゲの理由
 サツバツとしたアトモスフィアのSAOにもニンジャヘッズがいたとはニンジャリアリティ・ショック!
 アルゴのヒゲペイントは嫌いじゃないのですが、猫じゃなくて鼠なのか、ミスラっぽいけどなー。

◆儚き剣のロンド
 合成職人の強化詐欺、素材詐欺は初期のMMOにはよくありました。SAOでの装備品は文字通り自分の命を守る生命線なわけで、自分の命を預ける相棒を奪われてはたまったもんじゃない。
 どうして未来の最新鋭MMOが、その程度の違法対策をしてないのか疑問ですが、茅場彰彦が作ったものですしね、あえてプレイヤーたちの自由意志を試す形で故意に放置していたとも考えられる。

 始終一緒に行動しているアスナとキリトのイチャイチャっぷりは……お前らもうコンビ組んじゃえよ。
 一層のときはキリトと同じくぼっちだったアスナが、二層にしてあっという間に交流関係を作っていったのは、やはり女子校育ち故の対人スキルだろうか。あーそればかりはなー廃人ゲーマーでも習得できないシステム外スキルですからなー。対人スキルマイナス値のキリトにも優しいエギルさんがいい人すぎて惚れる。クラインもはよ。

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2012年09月17日

楽聖少女 2/杉井光

4048868969楽聖少女2 (電撃文庫)
杉井光 岸田メル
アスキー・メディアワークス 2012-09-07

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ルゥはスランプに陥っていた。新作の曲が革新的すぎて既存のピアノでは弾けず、新楽器の開発も行き詰まっていたからだ。そんな折、フランス軍がウィーンへ進攻。僕はついに魔王ナポレオンと相まみえる。そこで知るのは、魔王のあまりにも意外な素顔と、この歪んだ十九世紀世界の秘密の一端。

 これは、あなたたちの物語

 二百年前のウィーンへ時間移動した少年の魔術と音楽が入り乱れるめくるめく絢爛ゴシックファンタジー

 この時代にもヤクザっているんだなぁ……。えっ、楽団員? どう見ても平坂組のバカどもじゃないか。
 フランス軍の進攻が迫るウィーンで、逃げもせず作曲活動に励むルドヴィカを見守る主人公ユキが、音楽家と革命家のガチンコバトルに巻き込まれ、悩み苦しみながらも関わっていく姿に心がざわめいた。
 魔術によって歪められた歴史を正しき方向へと改変する、創作者たちの熱情に鳥肌が立ちました。

 現時点で発明されているピアノの性能を越える新譜を閃いてしまう、その既存の枠に囚われない発想力こそ天才と呼ばれるベートーヴェンなんでしょうね。彼女の頭の中ではどんな音が流れているのか。
 ルゥの望む音を出せるピアノを求めて職人たちも頭を悩ませて、外国の新技術をピアノ作りに取り入れたりと様々な工夫を凝らして、こうして楽器とは、音楽とは精錬されていくのだと気付かされました。

 ナポレオンに怯えた皇帝が、ついに和睦交渉に入り、戦争が回避されたかと思いきや、ナポレオンとユキとの初対面では穏やかじゃない雰囲気が漂い、一方でナポレオンと因縁深い人物とも知り合って、さらにはメフィが勝手に他の人間と魔術の契約を結んでしまったりと、どんどん引くに引けないドツボに嵌っていくユキですが、振り回されっぱなしではあっても、自分のなすべきことを見出してからの行動は逞しかった。

 それまで目を背けていたファウストとしての自分と向き合い、救われぬ者たちを軛から解き放つことができたのも、ルドヴィカの音楽こそきっかけではあったけれど、ユキにも眠れる熱情があったなればこそ。
 自分を見失いかけていたユキが、創作を通して自分探しをしていく姿は、前向きな成長を感じました。
 ナポレオンとの決着は持ち越しですが、彼も悪魔の被害者だし、救ってあげて欲しいなぁ。

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2012年09月15日

魔法科高校の劣等生 7 横浜騒乱編 下/佐島勤

4048867016魔法科高校の劣等生(7) 横浜騒乱編<下> (電撃文庫)
佐島勤 石田可奈
アスキー・メディアワークス 2012-09-07

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横浜で催される『全国高校生魔法学論文コンペティション』。この魔法科高校生徒達の晴れ舞台に、突如謎の武装集団が侵入した。彼らの正体は、『大陸』からやってきた大亜連合軍の魔法師とその機動兵器群によって大混乱に陥る中、司馬達也は生徒会メンバーと共に窮地からの脱出を模索する。

 戦火に解き放たれた修羅

 現代のエリート校である魔法科高校に入学した兄妹が繰り広げるマジカルバトルアクション。

 いやもう、なんというか、常識外れここに極まりといった怒涛の展開の連続で驚愕されっぱなしです。
 魔法学論文コンペに集まった高校生らを狙うかのように、大陸からやってきた武装軍が戦争を始め、達也たち生徒会メンバーが力を合わせて戦場を脱出する命がけの逃走劇に息を呑みました。
 毎度ながら、学生なのに兵士顔負けの戦闘力を持った一高生のパワーバランスおかしいよなぁ。

 コンペ発表までどんな妨害やスパイ活動があるかのと期待していたのに、いままでの暗躍は何だったのかと聞きたくなるほど大胆な襲撃を仕掛けてきた大陸の人たちの単純さに頭を抱えますね。
 それでも戦車や特殊部隊を展開しての武装侵攻は予想外で、十分に警戒していたコンペの警備班でも参加者を避難させるのが精一杯で、幾度となく危険に晒される生徒たちの姿にやきもきしました。

 混乱の中で合流を果たした新入生組と生徒会組が、襲ってくる敵たちに応戦しつつ、脱出に転じるんですが、メンバーの一人一人がチートクラスの魔法師なだけに武装兵では相手にもならないですね。
 学校では普通の高校生らしい彼らも、本来、魔法師は軍人として育成される故なのか、必要とあれば殺人にも躊躇がない殺伐とした戦いぶりは頼もしい反面、ちょっと異質に感じなくもないですね。

 最後に見せた達也の能力は、ちょっとした核兵器の威力を超えてるし、あんな手持ちの小さなデバイスでホイホイ撃てるんなら、それこそ国際社会の常識がおかしくなっても当然でしょうね。
 そして達也は深雪の護衛のはずなのに、あんな危険地帯で離れてしまっていいのだろうかなぁ。
 次巻はweb掲載時一番人気のエピソードだということなので、コミック版共々期待してます。

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2012年09月14日

ヴァルトラウテさんの婚活事情/鎌池和馬

4048868861ヴァルトラウテさんの婚活事情 (電撃文庫)
鎌池和馬 凪良
アスキー・メディアワークス 2012-09-07

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神々しき美貌をもつ、金髪碧眼な戦乙女お姉さん・ヴァルトラウテと、そんな彼女に一目惚れしてしまった人間の少年。相思相愛らしいが、片方は変な方向に頭が硬すぎる、超『奥手』な少女で、もう片方は後先考えてないけどなぜか結果的には良い感じに落ち着いていく『天然』な少年というカップルだった。

 戦姫の新婚生活

 天界に住む戦乙女に恋をした人間の少年が繰り広げるラグナロクだってぶっ飛ばす北欧コメディ

 かっるーめちゃんこかっるー。ギャグオンリーの世界観だと、いつもの鎌地文体もすごく読みやすい。
 戦乙女・ヴァルトラウテに一目惚れした人間の少年が、二人でラブラブするために、神族や巨人族を巻き込んだ大騒動を起こしつつ、ラグナロクをギリギリで回避していくドタバタっぷりが楽しめた。
 中二病大好き北欧神話をベースにしたギャグコメディものですが、これは気軽に読めて面白かった。

 幼いがために純粋で素直な心根を持った少年の無邪気な行動に振り回される神々が可笑しい。
 ヴァルトラウテへの求婚を始まりとして、思いつきで突っ走る少年の予測不能な言動が驚かせる。
 戦いを司る戦乙女であるヴァルトラウテとしては、挑まれた勝負を受けずにはいられず、でも、無茶をする少年につい手助けして自滅していってしまう、そんな彼女の生真面目で優しいところが素敵でした。

 危険を危険と認識せず一人で突き進んで行ってしまう少年の無謀な挑戦を、天界から見守って一喜一憂して大騒ぎしているヴァルトラウテや北欧神話の神々が、やたらと人間臭くて笑えます。
 ときには少年の行動がラグナロク発動のきっかけに繋がったり、あるいはそのフラグを回避したりして、非力な人間の身でありながら神や巨人にも怯まず立ち向かっていく姿は英雄の資質を感じました。

 少年に毎度ペースを狂わされっぱなしのヴァルトラウテですが、かといって嫌なわけでもなく、特別ショタが好きということもないが、真正面から求婚してきてくれた相手だし、危なっかしくていろいろ放っておけないわで、なにかと理由や言い訳をしつつも少年に惹かれていく奥手なところが面倒くさい可愛い。
 年の離れた姉と弟のような、初々しいカップルの甘々ムードがよかった。僕にも戦乙女一人ください。

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2012年09月12日

やがて魔剱のアリスベル/赤松中学

4048868985やがて魔剱のアリスベル (電撃文庫)
赤松中学 閏月戈
アスキー・メディアワークス 2012-09-07

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超能力者、魔法少女、先端科学を操る天才児―異能の少年少女を集め、秘密裡に隔離教育する高校、『居鳳高』。そこに自分の能力すら知らずに入学させられた静刃は、魔女クラスの優等生・黒髪ツインテールの美少女アリスベルと出会う。

 愛が奇跡を起こす夜

 異能を持つ少年少女たちが、それぞれの願いをかけて戦い合う学園異能バトル・ラブコメ。

 巨乳ヒロイン多し! 赤松中学の作品で、ここまで巨乳率が高いだと!? そんなバカな!
 異能を持つ少年少女が集められた学校で、すべて揃えればどんな願いを叶えてくれるという"鳳の欠片"を巡って主人公・静刃がヒロインたちと力を合わせ激戦をくぐり抜けていく姿に胸が高鳴りました。
 MF文庫の『緋弾のアリア』と同じ世界観、同じスタイルの展開で物語に入りやすかったです。

 異能者たちの争いに巻き込まれた静刃が、その戦い中で魔女狩りの魔女アリスベルの危機を命がけで助けたことから、事なかれ主義の彼の平凡な日常が刺激的に変化していく展開が盛り上がりますね。
 望まずと自らに宿っていた異能に戸惑い、アリスベルに助けられながら、"欠片"と異能を狙って襲ってくる敵と戦っていくんですが、周囲に出てくるのが魔法少女だったり、超能力者だったりするから面白い。

 世間知らずなお嬢様なんだけれど壮絶な過去を持ったアリスベルや他のヒロインたちもそれぞれ悲しい境遇を秘めていて、絶望から抜け出すために"鳳の欠片"を求めている切実な思いがやり切れない。
 ルール無用の殺し合いサバイバルである"欠片"争奪戦に参戦しながらも、敵である少女を殺さず、傷つけず、不利な状況でも『女は大切にしなければならない』という信念を貫く静刃が格好良いんだ。

 主人公のキャラクターとか、ヒロインの配置とか、全体的に『緋弾のアリア』リメイクって感じがするな。
 欠片を巡って、倒したヒロインたちに次々フラグを立てて味方にしていく流れとか、まんまですやん。
 いや、フラグを立ててヒロインたちの恋心を燃え上がらせることで、巡り巡って自分の力になるシステムは新しいけれど、肝心の獏さんが……。まあ赤松中学だから、次巻でさらっと復活してる……よね?

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2012年09月11日

デュアル・イレイザー U/折口良乃

4048869248デュアル・イレイザーII (電撃文庫)
折口良乃 黒銀
アスキー・メディアワークス 2012-09-07

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『デュアル・イレイザー』のパートナーとして正式に認められた刀雅は、紀沙羅からゲーム中に乱入するという幽霊イレイザーの噂を聞く。一方その頃、刀雅の親友・桐也とその相棒・アレンは、噂のイレイザーに襲われているところだった。

 勝利の鍵は無敵の友情

 天才で華麗な少女と、凡人で脳筋な少年によるアーケード・デュアル・バトルアクション。

 痴話喧嘩というか、もうこれ夫婦喧嘩じゃないですかやだーイチャイチャしやがってリア充どもめ!
 敵の新たな刺客と思われる正体不明の幽霊イレイザーを捕まえるため、作戦を練る刀雅&紀沙羅、岬&あずなたちWコンビの間で、些細な誤解から気持ちがすれ違っていってしまう姿がもどかしかった。
 相棒との絆、仲間とのチームワークが試される展開で登場人物のキャラを掘り下げてました。

 お互いの機体を一時交換することで、敵の目を標的である紀沙羅からそらすという作戦で、いつもと異なる機体を操作するWペアですが、本来の乗り手の機動や戦いぶりとの違いが興味深かった。
 それぞれの個性が出ていてよかったですが、それでも新造チームでは敵の分離型イレイザーのトリッキーな動きに翻弄される一方で、これ愚策なのでは?と違和感を抱かずにはいられませんでしたね。

 隠し事をしていたのがバレてギクシャクしてしまった岬とあずなの仲をなんとか元に戻そうと奔走する刀雅も、紀沙羅と口論になってしまい、なおさらチームワークがこじれていくところが焦れったい。
 4人ともプライドが高いだけに、自分が先に折れるっていうのが難しいんですよね。本来の作戦を忘れて敵そっちのけでガチンコバトルしている彼らが可笑しかった。なんだかんだお前ら全員馬鹿だよ。

 喧嘩を忘れて戦いに夢中になって、いつの間にか仲直りしてるんだから、ゲーマーって単純だよなー。
 しかし、ジト目、ツリ目、タレ目の美少女トリオは仲良いな! そして当然のごとくハブられてる刀雅……いや、そもそもはじめからこのシリーズに男なんていらんかったんや! とくにイケメン、ホビロン!
 新ヒロインもメンバー入りしたところで、次回は水着回か、よろしく頼んます。

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2012年09月10日

僕と彼女のゲーム戦争 4/師走トオル

4048868896僕と彼女のゲーム戦争4 (電撃文庫)
師走トオル 八宝備仁
アスキー・メディアワークス 2012-09-07

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前回の雪辱を果たそうと、ライバルの駿河坂学園電子遊戯研究部から挑戦状が届く。部長・天道をはじめとした現代遊戯部の面々は、その挑戦を喜んで受け、決戦へ向けて動き出す。岸嶺も猛特訓を始めるのだが、思うように上達しないことに不安を覚え、ある決心をする。

 俺より強い奴に会いに行く

 名門女子校のゲーム部に入部した少年がチームメイトと共に世界大会を目指すゲームライフラブコメ

 やたらとスパW話が濃いな! これ、もう本屋でゲーム攻略本の棚に並べてもいいんじゃなイカ?
 ライバルの駿河坂学園から格闘ゲームでの挑戦を持ちかけられ、格ゲー初心者の主人公・健吾が猛特訓を開始して、格闘ゲームのディープな世界に次第にのめり込んでいく熱意に共鳴しました。
 プロの格闘ゲーマー監修してるだけあって、解説がすげえ細か……いくらなんでも細かすぎるって!

 これまでのゲームとは違い、チームワークやセンスよりも経験と鍛錬が求められる格闘ゲームに悪戦苦闘し、未熟な自分がたった2週間で経験者に追いつけるのかと焦燥にかられる姿がもどかしい。
 練習のつもりでトライしたゲーセンでの野良試合でライバル校の一員に完膚なきまでに叩き潰された健吾ですが、その敗北が草食系男子の彼の闘争本能に火をつけて、リベンジに燃えるから熱いんだ。

 勝つために、プロの格闘ゲーマーに個人レッスンを受けるんだけれど、このプロがまた可愛ええ!!
 ゲームが好きな女の子って、どうしてみんなこう素敵に見えるんだろうか。これがゲーマー補正か。
 付け焼刃の特訓でも、初心者が上級者相手にも立ち向かえる方法があることを知った健吾が、さらなる練習を重ねて、一か八かの駆け引きで自分より強い相手に一矢報いていく展開が痛快だった。

 一冊丸々、スパWのエピソードでしたね。やっぱり格闘ゲームくらいのビックジャンルには、これくらいの分量を割かなければいけないということなんだろうけれど、それにしても驚くほど内容が濃かった。
 今回の健吾は大きな壁を乗り越えてゲーマーとして成長していた。自分より強い相手に挑む、そして勝つために知恵を絞る。そういう上向きの姿勢が大切なんだ。次回は水着回か、期待してます。

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2012年08月13日

ブラック・ブレット 4 復讐するは我にあり/神崎紫電

4048867970ブラック・ブレット4 復讐するは我にあり (電撃文庫)
神崎紫電 鵜飼沙樹
アスキー・メディアワークス 2012-08-10

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東京エリアを、怪物ガストレアの侵入から守っている巨大モノリス。その一部が、ついに崩壊してしまった。予想どおり、ステージ4・アルデバランに率いられた無数のガストレアが東京エリアに侵入。それを、最前線に配備された自衛隊の精鋭部隊と民警たちが迎え撃つ。

 命の灯火が照らす希望

 人類を脅かす怪物と戦う少年少女の近未来ヒロイック・アクション。

 ロリが無残に死んでいく姿が最高に鬱に浸れる。これぞ愉悦! ワインうめえええええええええ!!
 モノリスの突然の倒壊によって、襲い来るガストレアの大攻勢を前に、蓮太郎たち民警が東京エリアで生きる人々の最後の防衛線となって、文字通り己の命を削って立ち向かう勇姿に心が揺さぶられました。
 仲間の死に悲嘆にくれることさえ許されない、生きるも死ぬも苦痛な地獄の光景に背筋が凍ります。

 プライドの高さから援軍を求めずに全滅する自衛隊やら、現場指揮官が無能で統率力のない民警軍やら、エリアの存亡を左右する危機的状況にあって面子を気にする大人たちの不手際が本当に許し難い。
 そしてその負け戦のツケを蓮太郎一人に被せて挽回しようというのだから、さらに腹立つなぁ。
 小隊を巻き添えにしないために、延殊にも黙って自分だけで死地に赴く蓮太郎の姿がやるせない。

 思わぬ援軍を得て困難なミッションを成功させたはいいけれど、戦場はますます悪化してしまっていて、多くの犠牲と悲しみが生きて帰ってきた彼をさらなる絶望に突き落とすのだからやり切れないよ。
 それでも仲間の死を無駄にしないため、生き残った者としての責任を果たすために微かな戦力を纏めあげて最終決戦に挑む蓮太郎は、自分のなすべきことをする延殊が誇れる立派な大人だったと思う。

 一方、ドス黒くて真っ暗な闇へ堕ちていく木更さんが気がかりですね……。蓮太郎に正義を訴えていた彼女が悪に染まっていく。正しくはないが彼女の強い信念を止める手立てもなくどうすればいいのか戸惑いだけが残った。蓮太郎たちの知らないところで進んでいる企みもあり、心配の種は尽きない。
 蓮太郎や木更、延殊たちに救いは訪れるのか。ただ普通の幸せを彼らが得られることだけを祈る。

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2012年08月12日

輪環の魔導師 10 輪る神々の物語/渡瀬草一郎

4048868578輪環の魔導師10 輪る神々の物語 (電撃文庫 わ 4-34)
渡瀬草一郎 碧風羽
アスキー・メディアワークス 2012-08-10

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神界の門より現れた異形の神、ボルアルバとその眷属を退けたセロ達。しかしその直後、世界各地に謎の光の帯が現れ、人々を襲いはじめる。聖教会の本拠、聖都ハルマニオスにその原因があると推測したセロ達は、英雄達の遺産を手に現地へと向かうが、そこには既に魔族の影が

 終わりなき旅路の果てに

 伝説の魔導具を身に宿す少年と、彼を導く仲間たちの冒険を描く異世界ファンタジー。

 ついに完結したかと安堵する思いと、まだ終わって欲しくないと焦燥に駆られる気持ちでいっぱい。
 聖神イスカの暴走により、世界各地で起こり始めた異変を止めるため、聖都に向かったセロ達が復活した神とウィスカたち魔族を相手に世界の趨勢を巡る戦いを繰り広げる壮大さに呻らされました。
 これまでの長い旅の終わり、そしてまた旅が始まり、やがて伝説になっていく。これが歴史の重みか。

 あくまで人間の願望を叶える存在でありながらも、人間の常識とは大きくかけ離れ、災害としか言いようがない事態を引き起こす、まさしく人知を越えた存在である聖神イスカの異様に慄きますね。
 かつての英雄たちが人間には余る力として対抗する魔道具を用いて撃退したのが人間の賢さであるならば、戦いの後に残った力を巡ってお互いが争い合う結末を迎えてしまったのは人間の愚かさか。

 そんな異形の神でさえ恐怖を抱かせたフィノのセロへの情愛の深さが相変わらず半端ねぇなぁ。
 ウィスカとエスハールの狙いはこの世界や人間を本当に憂いたものだったのかもしれないけれど、だからといって取り返しの付かない方法で周囲を無視して強引に変えてしまおうとするのは独善だよ。
 セロを愛するあまりに道を踏み外しかけたフィノを現世に掴み返すセロの愛が素晴らしかった。

 物事の変化には責任が伴う。何をするにも神の力にばかり頼っていては、それでは大人に甘える子供と同然。神と対等になるためには、まず神から自立した世界を創りあげなければならないと思う。
 セロたちの冒険の旅が、神話として語られる遠い未来がそうした世界であることを願ってやまない。
 けど、このシリーズは続けようと思えばもっと続けられるよなぁ。ここで終わらせてしまうのは惜しい。

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2012年08月11日

ご主人様は山猫姫10 北域王雄飛編/鷹見一幸

4048867091ご主人様は山猫姫10 北域王雄飛編 (電撃文庫)
鷹見一幸 春日歩
アスキー・メディアワークス 2012-08-10

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北域行幸に仕掛けられた周到な罠。菰野一派は邪魔者である皇帝を排し、その罪を晴凛に着せようというのだ。だが、悪巧みに関しては天才的な伏龍が、その悪事に気付かぬはずがない。さらに裏をかく皇帝救出計画を立てるのだった。

 龍旗我と共にあり

 帝国人でありながら遊牧民の姫君に仕え、戦いの中で英雄へと駆け上がるヒロイックストーリー。

 子供に未来を与えるのが大人の役目。自分の責務をまっとうする大人たちの活躍にシビレる!
 賊臣による皇帝陛下暗殺計画を察知した晴凛たち北域軍が、皇帝陛下を救出すると共に、ついに南域の反乱に介入して、帝国とシムールの新しい未来を作るために奔走する姿に燃えました。
 主人公の晴凛だけでなく、それぞれ味のある多くの脇役たちと織り成す群像劇が見事でした。

 権威はあっても権力から切り離され、欲にまみれた大人たちに嘘と偽りばかりを吹きこまれて傀儡にされて、やっと宮殿から出れたと思えば、まだ子供なのに殺されかかる長嶺帝が哀れでいたましい。
 晴凛に助けられ北域に来て、ようやく歳相応の少年の素顔を取り戻し、本当の安らぎを得られたのに、状況がそれを許さなくて、それでも皇帝として皆の上に立つ勇気と気概を見せたのは立派だった。

 南域軍の軍師として収まった沢樹による悪辣無比な作戦によって、帝都ギリギリにまで追い詰められる帝国軍ですが、どんな不利な状況でも一矢報いる聡凛の戦いぶりは鬼気迫るものがありますね。
 目前に迫り来る敵と、権力争いに明け暮れて補充人員も物資も送らない帝都の政治家に失望し厭戦ムードが漂う兵士たちの前に、颯爽と援軍に駆けつける晴凛たち北域軍の光景が眩しくて身震いした。

 伏龍の用意した作戦よりもなによりも、長嶺帝の存在が兵士たちの戦う理由、心の支えになっているのだから、無力な子供と言えど、それだけで彼が成した功績は計り知れない。
 先の見えなかった絶望の後に輝ける希望を得て再び闘志が漲る兵士たちの思いに胸が熱くなる。
 帝国の歴史の行末を左右する大決戦に晴凛と仲間たちがどのような結末を迎えるのか見届けたい。

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2012年07月13日

スクリューマン&フェアリーロリポップス/物草純平

4048867318スクリューマン&フェアリーロリポップス (電撃文庫)
物草 純平 皆村 春樹
アスキーメディアワークス 2012-07-10

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不可思議な幻聴『ネジの悲鳴』に悩まされている工藤卓巳に突然の口づけを与えたのは、旧態依然とした異世界“妖精郷”を改革しようという野望を抱く“翅族”の美しき王女・ロロットだった。“改革派”の急先鋒として尖りすぎなロロットは向かうところ敵だらけ。そして、卓巳もまた“保守派”の人々に狙われ…

 楽園から舞い降りた翼

 キュートな妖精姫と"妖精使い"の少年が巻き起こす、異世界改革系ファンタジック・アクション

 メルヘンチックな雰囲気なのにやってることが人間と妖精の国際情勢というのがオモシロ!
 妖精姫・ロロットの口づけを受け、"妖精使い"として目覚めた主人公・卓巳が、同じ妖精卿の政敵から狙われる彼女に振り回されつつ、二人で世界に新たな変革をもたらしていく光景がワクワクしました。
 人間と妖精の壁を超えた二人の愛がすべてを巻き込んで作り変えていくぶっ飛んだパワーがあった。

 妖精郷の第一王女・ロロットの異端者にして問題児にして怖いもの知らずなお転婆っぷりが愉快ですね。
 最初は、ただ無邪気で幼稚なだけの女の子と思いきや、古い因習と選民思想に凝り固まった妖精郷の現状について不満を抱き、変革を望む強い信念と熱い激情を秘めた革命家であって、パートナーとして卓巳を巻き込む際には蠱惑的で婀娜っぽい一面も垣間見せて、この子は実はとんでもない悪女! いや、悪幼女だー!

 人間と妖精が対等に向き合える世界を目指すロロットに対し、妖精郷の大半は批判的で、政治的に彼女を追い落とすために"妖精使い"の刺客が送り込まれて、力を与えられた卓巳が戦っていくんだけれども、彼の操る小人の万能工作能力がユニークで、いくらでも応用が効きそうで、いろいろ夢が広がりんぐ!
 敵サイドにも一風変わった個性的なキャラや、それぞれにドラマがあり魅力的でした。

 なにより相思相愛の仲のロロットと卓巳のイチャラブっぷりがお似合いすぎてすっかり惚気られた。
 人間と妖精の世界を大混乱に導く(予定)の大悪人なのに、幸せオーラ全開のバカップルをやってるのがたまらなく可笑しくて、そんな二人に"妖精の誇りを守るお偉い貴族様"がコテンパンにされるのが痛快です。
 まだスタートラインに立ったところだけれど、これからどうやって世界を変えていくのかが楽しみ。
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2012年07月12日

妹ホーム 2/柏葉空十郎

4048867083妹(マイ)ホーム〈2〉 (電撃文庫)
柏葉 空十郎 有河 サトル
アスキーメディアワークス 2012-07-10

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再び戻ってきた妹との平和な日常をかみしめる佑。だが、幸せボケのせいか遅刻しそうになった佑に、登校中に衝突をかますというお約束をした少女がひとり。背は小学生並だが、正義感と気の強さは人一倍の生徒会副会長、妹原愛だった。佑の境遇を聞いて愛が放っておくわけがなくて……

 妹と恋しよ

 高校で再会した幼なじみと一緒に暮らすことになった薄幸の貧乏兄妹のアットホームラブコメディ。

 スウェーデンでは義理の兄妹の結婚は合法…だと……!? スウェーデン始まったな!
 夏を目前にして、クーラーの必要性を感じ始めた主人公・佑が、購入費を稼ぐために泊まりがけで旧校舎の警備をすることになり、二人の妹たちも一緒についてきて、いつも賑やかな光景が微笑ましい。
 どんなときでも愛する妹が誇れるヒーローでありたい。己の信念を貫く佑の兄貴魂が格好良かった。

 前回の騒動を経て、それまで妹として普通に接してきた真伊を急に女の子として意識してしまうようになった佑が、相変わらず無邪気に懐いてくる真伊を前にして挙動不審になってしまう様が初々しい。
 いつもの貧乏ぶりに人情家な副会長・妹原愛の同情を引いて、仕事の斡旋を受けることになったまではいいが、お人好しの彼女の好感度まで稼いでしまって、知らずフラグを立てちゃうから面白い。

 真伊と舞衣まで佑の仕事に強引についてきてしまい、可愛い女の子に囲まれる佑にヤキモチを焼く愛が、イタズラを仕掛けて兄妹たちにちょっかいを出そうとするのは少しやり過ぎな気もする。
 それでも戸惑いの三角関係の中にある真伊、舞衣、佑にはいい刺激になったり、愛が三人の複雑な家庭事情を知るきっかけになったりと、人間関係が揺れ動いていく恋愛模様が甘酸っぱくて胸が高鳴りました。

 男としてはやや頼りない佑ですが、貧乏であっても理由のない施しは受けない、好意に甘えることあっても善意に甘えっきりにはならない、妹に恥じない兄であろうとする潔癖さには感心しました。
 しかし、真伊はスーパー健気でピュア可愛いくてド本命なのに、舞衣はどうしてこんなにもイロモノで残念なんだろうなぁ。ダメだこいつはやくなんとかしないと……。今回も広島弁が最萌えでした。
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2012年07月11日

魔法科高校の劣等生 6 横浜騒乱編/佐島勤

4048867008魔法科高校の劣等生〈6〉横浜騒乱編〈上〉 (電撃文庫)
佐島 勤 石田 可奈
アスキーメディアワークス 2012-07-10

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秋。『全国高校生魔法学論文コンペティション』の季節がやってきた。日頃の研究成果を魔法装置を使った『実演』でプレゼンテーションするこの催し物は、魔法学、魔法技能、先端魔法技術を披露する最高の舞台だった。達也の類い希なる頭脳と能力と、その『成果』を狙い、暗躍する組織の影があった。

 研究者の憂鬱

 現代のエリート校である魔法科高校に入学した兄妹が繰り広げるマジカルバトルアクション。

 横浜で開催される論文コンペのための論文作成の助っ人として駆り出された達也が上級生たちを支える傍ら、大陸からの産業スパイが研究成果を狙って様々な妨害や襲撃を仕掛けてきて、争いごととは無念のはずの発表会までもが次第に波乱に満ちていく張り詰めた情勢に息を呑みました。
 級友たちの恋愛模様も進展を見せ始め、季節とともに人間関係の移り変わりを感じさせました。

 価値の高い研究に携わる立場になれば、その成果を狙う者が現れるのは当然なんだけれど、その刺客が同じ高校に通う生徒というのは、普段どれだけ達也が無意識に敵を作ってしまってるかが窺える。
 達也の主張は正論なんだけれど、世の中にはその正論を押し通すほどの力や才能がない人の方がたくさん溢れていて、ときとして達也の正論は持てる者の傲慢とも聞こえてしまうのが悩ましいなぁ。

 しかし、第一高校の生徒というだけで、一般人よりも優れた知性を備えているのに、どうしてこう立て続けにテロリストだの、スパイだのに利用されるんだろうかと内部スパイたちの不甲斐なさには呆れる。
 達也たち発表者の護衛チームに任命され奮い立つ幹比古や、友人のために戦う力を得るためにエリカと特訓を開始するレオンハルトなど、達也と深雪を取り巻く周囲の人々の動きも興味深かった。

 論文コンペの前に一番の波が過ぎたと達也ならずとも一息つく展開でしたが、遠からず訪れるであろう二番目の波はさらに大きそう。学生の論文大会ひとつとっても、形を変えた国家間のパワーバランス、技術競争と結びついているのがこの作品の世界観のすごいところですね。大人たち仕事してください。
 さて、次回は舞台をようやく横浜に移動しての論文コンペとなるわけですが、発表そっちのけでバリバリ戦闘シーン満載なんだろうなぁ。

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2012年07月10日

ソードアート・オンライン 10 アリシゼーション・ランニング/川原礫

4048866974ソードアート・オンライン 10 アリシゼーション・ランニング (電撃文庫 か 16-21)
川原 礫 abec
アスキー・メディアワークス 2012-07-10

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謎のファンタジー世界に入り込んでしまったキリト。VRMMOチックなその空間で最初に出会った少年・ユージオ。≪NPC≫とは思えないほど感情が豊かなその少年と共に、キリトは央都≪セントリア≫に向かい、そして、二年が過ぎた──。

 駆け抜ける、剣閃の如く

 現実に限りなく近い仮想世界《アンダーワールド》に閉じ込められた黒の剣士のVRファンタジー。

 現実で心配する恋人や妹たちをよそにまた美少女とお近づきになっている! キリトさんパネェっす!
 衛士となるべく旅立ったキリトと相棒のユージオが、ついに央都≪セントリア≫へとたどり着き、剣士たちが集う修剣学院へと入学して、それぞれの目標のために駆け出していく姿に心が浮き立ちました。
 アンダーワールドで生きるNPCたちとの触れ合いや交流にもドラマがあって感情を揺さぶられます。

 重症を負ったキリトさんがアンダーワールドに閉じ込められた事情が明かされ、それと同時に密かに進められていたアリシゼーション計画の詳細が判明するにつれて、その内容に怖気が走った。
 しかし、脳神経にダメージを負ったキリトさんを回復させるためには、その手段にすがるしかなくて、現実世界で見守るだけのアスナが可哀想。でも、彼女のことだから仮想世界まで追いかけていきそう。

 一方、アンダーワールド内では一年以上もの歳月が過ぎて、地方都市の剣術大会を経て、首都の修剣学院へと堅実な道のりを歩んで目標に近づていくキリトとユージオの姿にリアリティがありました。
 アンダーワールド内では当人のレベル以上に魂の力、意志の力がものをいう世界で、キリトさんのソードスキルを持ってしても五分五分という苦戦を強いられるという展開も緊張感があって手に汗握った。

 キリトさんに着いている妖精さん(?)は、現実世界の管理者たちが着けた護衛役なのかな。
 ゲームとしては奇妙な出来のアンダーワールドですが、そこに生きる人々に必要のない情報を与えず、違和感を抱かせないためにもあえてそうしているんだろうなぁ。徐々に築かれていくキリトさんとアンダーワールドの人々との絆もまたかけがえのない人と人との大切な思い出でした。

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