氷の国のアマリリス (電撃文庫) 松山剛 パセリ アスキー・メディアワークス 2013-04-10 by G-Tools |
氷河期が訪れ、全ては氷の下に閉ざされた世界。人類は『白雪姫』という冷凍睡眠施設で眠り続け、そして、それを守るロボットたちが小さな村を形成し、細々と地下での生活を続けていた。副村長の少女ロボット・アマリリスは『白雪姫』の損傷や、村人たちのケアに心を砕く日々を送っていた。
ひとつの命をわけあう方法
人間と共に歩む未来を夢見て地下シェルターで暮らすロボットたちの感動の物語。
これは泣ける。冬にできた氷が春になってゆっくりと溶けていくように、ホロリと涙がこぼれる。
氷河期が訪れた未来の地球で、地下シェルターで暮らすロボットの少女・アマリリスと村人たちが、人工冬眠ポットに入った人間を生き残らせるために次々に犠牲となっていく姿に心を揺さぶられました。
人間よりも思いやりと優しさに溢れたロボットたちの生き様と精神性が素晴らしかったです。
氷に覆われた地表から地下深いシェルターで、生き残った人間の眠る冬眠ポッドを百年以上維持しながら、人間とほとんど変わりない感情を持つアマリリスたち、ロボットの村の暮らしぶりが微笑ましい。
平和だけれど物資不足で大人も子供も故障や異常が絶えず、不安を抱えて過ごす日々にも限界がやってきて、人類を存続させるか、それとも自分たちを犠牲にするか選択を迫られる場面が辛かった。
ご主人様と暮らしていた氷河期前の記憶を呼び起こして、もう一度、その幸福な時間を取り戻すために、氷が溶け始めた地上を目指して村人一丸で動き始めるシーンは胸に熱いものがこみ上げた。
地上に行くまでも様々なアクシデントで多くの仲間が脱落して、それでも諦めずに仲間の遺志を継いで、バッテリーを人間の眠る冬眠ポッドに使って笑顔で倒れていくロボットたちの献身に魅せられました。
しっかり者のアマリリスとお調子者のアイスバーンの恋愛の結末は、ただただ美しいですね。
アマリリスたちの決死の行動によって、生き残った人類が地上で再び生活を取り戻していく未来の光景は、亡くなった者たちの願いがまさに実現していて、それだけでも救われた気持ちになりました。
分け合うことの大切さ、命の重みが心に染み入りました。ああ、なんて清々しい、いい話だった。