ダフロン

2014年05月11日

やがて魔剱のアリスベル 4 緋色の挑戦者/赤松中学

4048665669やがて魔剱のアリスベル (4) 緋色の挑戦者 (電撃文庫)
赤松中学 閏月戈
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-05-10

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未来への帰還を果たすために、静刃とアリスベルは最高位の妖・『龍』の欠片を奪取する新たな戦いへと向かう。アリスベルとの関係に思い悩む静刃の前には、美しき剣士『白い妖刀』が立ちはだかり……。一方で、ビビたちも静刃たちを現代に戻すため、魔力集めの黒ミサをアイドルライブ形式で開催しようとする。

 妖刀は折れず曲がらず恋をする

 異能を持つ少年少女たちが、それぞれの願いをかけて戦い合う学園異能バトル・ラブコメ。

 アリスベルがブレザーだー! てっきり、セーラー服原理主義の人なのかと思ってたよ作者。
 未来の世界へ帰るため、日本を守護する最高位の妖・『龍』の欠片を集めることになった静刃とアリスベルが、『白い妖刀使い』早乙女刹那とチームを組み、中国の魔法少女・殲と繰り広げる激闘に燃えました。
 もう一人の妖刀・刹那と出会ったことで、妖刀使いとして進化していく静刃の成長が印象的でした。

 静刃とアリスベルを完全に封殺して制圧してしまうアリアがやたら強いんですけど、こんな強いんなら緋弾本編でのあの無能っぷりは何なん……。静刃なんてキンジに圧勝してたじゃんかよ。実力差がわからなくなる。
 未来に帰るため、最強の妖『龍』の力を頼りに、再び欠片集めに奔走する二人ですが、依頼主から紹介された刹那は、静刃と同類の妖刀使いの少女で、赤松先生にしては珍しく凛々しくてカッコ良いヒロインだった。

 初めは刃を向け合っていた二人が、次第に剣士同士としての共感や理解を得ていって、戦いを通じて仄かな恋心へと変わって、アリスベル含め愛情と嫉妬が渦巻く三角関係を築いていくところが美味しい。鵺さんGJ!
 現代ではビビや瑠姫や矢子たちが二人を引き戻すために『黒ミサ』代わりのアイドルライブを計画して、毎日一生懸命に特訓を重ねる姿に、懐疑的だった他の生徒たちも協力的になってくる光景が微笑ましかった。

 静刃を守るため、敵と刺し違える覚悟で捨て身で斬りかかる刹那は中学1年生女子のメンタルじゃないな。
 正直、刹那はアリスベルシリーズで一番好きなヒロインでしたね。再び過去の世界へと飛んだ静刃とアリスベルがきっと彼女も生き残る世界線を見つけてくれるでしょ。これ現代に戻ったら転校してくるパティーンや。
 しかし、時間軸の流れが本格的にわからなくなっていくんだけれど、これどうやってまとめる気なのか。

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2014年04月18日

大正空想魔術夜話 墜落乙女ジヱノサヰド/岬鷺宮

4048664026大正空想魔術夜話 墜落乙女ジヱノサヰド (電撃文庫)
岬鷺宮 NOCO
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-04-10

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時は大正、帝都・東京。今般、帝都民に悪夢を齎すのは、螺子巻き仕掛けの異形の化物「活キ人形」と、謎の魔術によってそれを悉く凄惨に屠る、異端の少女・墜落乙女―。彼女を追う少年記者・乱歩が追跡の先に見るのは、誰をも寄せ付けない少女がその裏に隠した真実か、それとも…。

 正義と悪は紙一重

 大正時代の帝都東京で「活キ人形」と戦う墜落乙女の実像を追った新聞記者が体験する不可思議幻想夜話。

 大正ロマンいいですね!和装と洋装が混じる人々、煉瓦造りの町並み、ガス灯の下で起こる血塗れの惨劇!
 帝都に住む人々を襲う怪物「活キ人形」に一人立ち向かう謎の少女「墜落乙女」の正体を知ってしまった新聞記者の乱歩が、命がけの取材を繰り返して次第に絆を育み、やがて見えてくる彼女の素顔に見惚れます。
 レトロな時代感のなかで繰り広げられる少女と人形の殺し合い。怪しく淫美な世界観に引き込まれました。

 「墜落乙女」こと華族の令嬢サヱカの人を人と思わない毒舌ぶり、ドSっぷりがゾクゾクします。
 街に出現して人々を無差別に襲う「活キ人形」を颯爽と現れては倒していくヒーローでありながら、容赦無い凄惨な壊し(殺し)方から都民に怖れられていて、サヱカ自身も悪人であることを認めて悪びれない傲岸不遜な態度に眉を顰めるものの、妙に堂に入っていて気品すら感じてしまう艶姿に思わず魅了されそうになる。

 唯一、正体を知る乱歩を通じて警視庁の婦人警官・桔梗と同盟を組み、「活キ人形」との交戦を繰り返すうちに乱歩や桔梗たちと打ち解けて、僅かながらも年頃の女の子らしさを垣間見せるサヱカがかわいい。
 罪を被せられ、捏造の証拠を鵜呑みにする無能な官憲の強引で過酷な取り調べを受ける乱歩の姿に真犯人への憤りを感じるが、サヱカが暴いた事件の黒幕は信じがたくて、間違いであってくれとさえ思いました。

 それまで信じていた正義と悪が一瞬で入れ替わるどんでん返しの結末には驚愕を禁じ得ない。
 魔法少女ものやヒーローものでは勧善懲悪が基本なのだけれど、客観的に見るとどっちが正義で、悪かなんて立場の違いで入れ替わったり確かに曖昧ですよね。そういう落とし穴に堕ちないように気をつけないと。
 レトロでクラシカル、それでいて華やかな雰囲気がとても好きなので、是非シリーズ化して続編希望。
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2014年04月15日

ブラック・ブレット 7 世界変革の銃弾/神崎紫電

4048664727ブラック・ブレット (7) 世界変革の銃弾 (電撃文庫)
神崎紫電 鵜飼沙樹
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-04-10

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日本の主要五エリアによる首脳会合が開催され、議長国の東京エリア国家元首・聖天子は、四エリアの首相たちを迎えることになる。五エリアの融和を説く聖天子に対し、のらりくらりと同調を示さない彼ら。各エリアの思惑が交錯し、成果も出ないまま会談が終わろうとしたとき、仙台エリア首相・稲生紫麿が爆弾発言をする。

 変わる世界、変わらない光景

 人類を脅かす超生命体ガストレアと戦う少年少女の近未来ヒロイック・アクション。

 やはり幼女たちが仲睦まじく殺し合う光景はいいな。実に可愛らしくて癒やされるわー。
 ゾディアックガストレアの天秤座(リブラ)が仙台エリア近郊に現れ、東京エリアがガストレアを操っているとの嫌疑をかけられ、エリア間の緊張が高まるなか、事態の収拾に奔走する蓮太郎の姿に手に汗握る。
 アニメも始まって、波に乗っているところに出版したかったんだろうが、薄いな! まな板にもできんぞ!

 日本統一を目指した聖天子の呼びかけで開催された各エリアの首脳会議ですが、集まった者たちは誰も彼も一筋縄ではいかない政治家ばかりで、お互いに猜疑心と警戒心を抱え、融和とは程遠い話し合いがもどかしい。
 一方、小学校に編入した延珠は、『呪われた子供たち』への偏見が色濃い教師やクラスメイトに馴染めなくて不登校に陥ってしまう姿が哀れでならない。傷つくくらいなら学校なんかいかなくていいよ!

 リブラの出現に勝手な憶測や疑惑で東京エリアに丸投げする仙台エリアの対応も腹立たしい。聖天子の主張は、相手も同じくらい心が綺麗でなければ通じない、ただ舐められるだけってことにそろそろ気づいて欲しい。
 事態を招いた本当の首謀者リトヴィンツェフは、あと一歩のところで刑務所から脱獄して姿をくらませてしまって、タイムリミットが迫るなか、解決の糸口を探して焦燥感にかられる蓮太郎と聖天子の姿が歯痒かった。

 凶悪なガストレアが目の前にいるのに、人間同士で醜い政治闘争なんかしている場合なのか、どうして汚い大人たちのために罪のない幼女たちが苦しまなければならないのか、まったく苛立たしくなります。
 そういえば、木更さんがようやくデレたというのに、出番すくないっすね! ああでも、意識しまくってる木更さんかわええ。相変わらずヒロインとしては役立たずだけれど、そのポンコツぶりにも期待してます。

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2014年04月14日

ソードアート・オンライン 14 アリシゼーション・ユナイティング/川原礫

4048665057ソードアート・オンライン (14) アリシゼーション・ユナイティング (電撃文庫)
川原礫 abec
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-04-10

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“公理教会”の象徴である白亜の塔“セントラル・カセドラル”。最高司祭“アドミニストレータ”の待つカセドラル最上階、一〇〇階を目指す。そして到達した九十九階。キリトとアリスの前に現れたのは、整合騎士の鎧に身を包み、瞳に冷たい光を浮かべたユージオだった。

 小さな世界に流れる星光

 現実に限りなく近い仮想世界《アンダーワールド》に閉じ込められた黒の剣士のVRファンタジー。

 おいおい、お涙頂戴のキャラクター殺しは嫌いなんじゃなかったんですか川原さん、ボロボロ泣いたわ。
 アドミニストレータによって記憶を奪われ整合騎士としてキリトの前に立ちはだかったユージオ、そして最上階で待ち受けていた最高司祭アドミニストレータ、元老長チュデルキンとの世界の存亡と魂の尊厳をかけた死闘に魅せられました。一冊まるごとラストバトルで緊張と興奮と感動で脳内麻薬ドバドバ。まさに神回!

 キリトとユージオの師弟対決はいつかやると思っていたけれど、こんな剣士としての誇りも名誉もない無意味な戦いを本人たちも読者も望んでいたわけじゃなく、お互いに剣を向け合っている姿がひたすらに辛かった。
 <シンセサイズの秘儀>から元に戻ることができたユージオ、アリスと共に最上階まで辿りついたものの、待ち構えていたラスボス二名の精神が心底腐っていて、この世界のナンバー1、2がこれかとゾッとする。

 チュデルキンやアドミニストレータの欲望という心意に、キリトとユージオ、アリス、カーディナルたちが正義と愛という心意の力で立ち向かう光景は、人間の本質が善か、悪かを試されているようにも思いました。
 キリトが主人公補正で障害を打ち破る度に奥の手を繰り出してくるアドミニストレータ、さすがラスボス。その度に人としての心の醜さが透けて見えて、だからこそ、それと戦うキリトたちの姿が眩しく映りました。

 カーディナルの献身、ユージオの覚悟には、彼らの心の美しさ、愛の素晴らしさに胸を打たれました。
 怒りと悲しみを乗り越えて、友の遺志を継いで二刀流を振るうキリトの意地と根性にも魂が震えました。
 人界編はこれにて完結と思いきや、現実世界では何やってんだ菊岡ァ! まだ続くようなので見守りたい。
 web掲載の別シリーズも準備中らしいのですが、プログレッシブ編はよ。そっちの方が好きなんですよ実は。

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2014年04月12日

魔法科高校の劣等生 13 スティープルチェース編/佐島勤

4048665073魔法科高校の劣等生 (13) スティープルチェース編 (電撃文庫)
佐島勤 石田可奈
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-04-10

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今年も、魔法科高校生にとって夏最大のイベントである全国魔法科高校親善魔法競技大会、通称『九校戦』が開催される。しかし今年の『九校戦』はひと味違っていた。競技種目及びルール改定。本番まで残すところ一ヶ月の段階でもたらされた何の前触れもない大幅変更に、魔法科高校各校は慌ただしい対応を迫られる。

 魔法師は兵器なりや

 近未来のエリート校である魔法科高校に入学した兄妹が繰り広げるマジカルバトルアクション。

 真由美先輩、卒業したのにちょくちょく登場するが、もはや扱いがエロ要員である……。美味しいポジだな
 土壇場になって競技の変更が行われた『九校戦』への準備で生徒会や達也たちが慌ただしくするなか、『九校戦』の裏で進められる兵器実験の情報を知り、阻止に動き出す達也や黒羽姉弟の暗躍が見物でした。
 2年生編はさくさく展開が進むなぁ。1年生編で設定やキャラ紹介をあらかた消化してるからこそですが。

 精神生命体パラサイトを用いた戦闘用ドールを開発し、『九校戦』での性能試験を企む九島烈ですが、それもすべて若き魔法師たちを戦争の道具という宿命から解き放つための行為で、善悪の判定が難しいですね。
 さる筋からその情報をリークされた達也と九重八雲と共に調査を進めるのですが、同時に学校では生徒会メンバーとして『九校戦』への準備も進めなくてはいけなくて、二重生活の大変さを改めて実感しますね。

 いざ、始まった『九校戦』は、1年生編と比べると試合中の描写、ページ数が少ないからか、特に奇抜なトリックプレイや新技術のお披露目のようなものもなし、消化試合のように淡々と進んで、ちょっと物足りない。
 パラサイドールとの戦いにしても、達也さん無双すぎて、最初から結果がみえてましたしね。表も裏も、もうちょっと苦戦したり、予想外の展開を読者に見せてくれてもよかったんじゃないかと思います。

 いつもは複数の問題や出来事を同時期にいっぺんに起こさせ、ストーリーを複雑化させることで、このシリーズ独特の読み応えを演出しているのですが、今回は、ストーリーが単調で読者が展開を読みやすすぎた。
 1年生編の時のように、話のスケールと密度を上げていって欲しい気もするけれど、嵐の前の静けさだとでも言うのか。そういえば7月に新シリーズを出すみたいですね。前々から別作品も読んでみたかった!期待

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2014年03月17日

男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。 (2) ―Time to Play― (上)/時雨沢恵一

4048663844男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。 (2) ―Time to Play― (下) (電撃文庫)
時雨沢恵一 黒星紅白
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-03-08

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高校生にして電撃文庫で作家デビューを果たした“僕”と、クラスメイトで声優の似鳥絵里が、週一回、アニメのアフレコに向かう特急列車で交わす作家業についての会話。―それは、二度と引き返せない終着点へと進んでいく…。

 楽しい演技の時間です

 高校生ライトノベル作家と女子高生声優の交流を描いた奇妙な物語

 何故首を絞められているのか、読んでいる途中で、あっ……(察し) これは激おこですわー。
 男子高校生でライトノベル作家をしている主人公・"僕"と、声優をしているクラスメイトの女子・似鳥絵里が、ラノベ作家と言う職業についての話を掘り下げていくうちに築かれていく絆が微笑ましかったです。
 仕事関係での付き合いだった二人が、一冊の作品を通して出会い、惹かれあっていく姿がときめきました。

 今回は、作家デビューして出版されてからの発行部数はや重版、印税や確定申告についての解説。
 最近のラノベは初版の発行部数をもうちょっと多めに刷って欲しいですね。発行部数が少ないと、欲しくても変えない難民現象が発生するのはよくあることだからです。まあ重版かかればそれがニュースになって販促になるので、よいという考えもあります。まあ私は発売日に揃えるので、持っているのはほとんど初版ですが。

 ライトノベルのアニメ化は、ファンとしては本当に一喜一憂で、戦々恐々としていますね。最初から大失敗が見えているのにアニメ化して自爆しちゃったり、大ヒット間違いなしと思っていた作品が、「どうしてこんなにつまらなくなってるんだ!」と愕然とするのも数え切きれなく、逆に成功と思えるラノベアニメはすごく少ない。クールの問題もありますが、脚本家がラノベに対応しきれてないんじゃないかと。それか大人の事情。

 タイトルの『Time to Play』の意味がようやく? 演技者にはお約束のフレーズなのでしょうか。
 ヤンデレ似鳥さんイイですね。面倒くさくて重い女の子だけれど、ラノベのキャラに憧れて声優にまでなっちゃうその作品愛は、同じラノベ読者として賞賛の声を送りたいほどのファン魂で素敵ですよ。
 作家と声優の男女の物語は、これにて終了。そろそろ長めの新シリーズがまた読みたいなぁ。

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2014年03月15日

銀光騎士団 フロストナイツ/スズキヒサシ

404866378X銀光騎士団 ―フロストナイツ― (電撃文庫)
スズキヒサシ 卵の黄身
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-03-08

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流れ者の青年アスペルはもめ事に巻き込まれた際に、ひとりの少年と知り合う。リュシアンと名乗る彼は、少年とは思えないほどの愛らしさの中に、ただ者ではない気品を感じさせた。汚い奇妙な風体とは裏腹に、時おり油断ならない身のこなしを見せるアスペル。その腕を見込まれてか、リュシアンにつきまとわれることに、

 冬の大地が人を育てる

 元剣闘士の少年が王族の生き残りと遭遇し祖国の再興に立ち上がる中世ファンタジー。

 祖国を奪われた悲劇の王女と最強の称号を持つ奴隷剣闘士のロマンスとか、めちゃんこかっけーやんけ。
 帝国に滅ぼされた祖国アジェルダンへと帰郷した元剣闘士アスペルが、ひょんなことで王族の生き残りリュシアンと出会い、奇妙な縁を巡るうちに絆が芽生え、忠誠を誓う関係になっていく姿が胸に詰まりました。
 スズキヒサシさんの好きそうな貴種流離譚、あるいは低層階級からの成り上がりものでした。

 若くして奴隷となり辛酸を嘗めたアスペルが、ようやく故郷に帰ってきたというのに、侵略者である帝国の持ち込んだ奴隷制のせいで身分の偏見が蔓延していて、感動の帰郷に水を差された気分になりますね。
 偏見に囚われず対等に接してきたのはリュシアンだけだが、彼は彼で奴隷制を嫌いつつも、綺麗事しか見えていない理想主義者で、世間知らずがアスペルを苛立たせるのも仕方がないなぁと思って読んでました。

 リュシアンに剣の腕を買われたものの、彼に付き従うアイザック、ベルノフ、ルーガンの三従士も、気位は高いくせに揃いも揃って無能っぽくて、小言はうるさいし、アスペルじゃなくても誰だってこんな職場嫌だよ。
 己の甘さから囚われの身になったリュシアン達は、いってみれば自業自得なんだけれど、助けに行くお人好しなアスペルのツンデレぶりが可愛らしく、偶然リュシアンの秘密を知ってときめく姿が初々しい。

 機転の効かない三銃士を合わせたよりも新参者のジェニス一人のほうが信用も信頼できそうだし、キャラクターとしても好感持てるので、ようやく職場環境が整えられたかな。騎士が頼りないこの騎士団大丈夫か。
 魔法も神秘もない、リアル重視の骨太設定かと思っていたら、最後の最後で世界観破壊が来たなぁ……。味方もいない、たった7人の騎士団が、ここからどうやって国を蘇らせるのか、今後の展開に期待。
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2014年02月18日

思春期ボーイズ×ガールズ戦争/亜紀坂圭春

4048663070思春期ボーイズ×ガールズ戦争 (電撃文庫)
亜紀坂圭春 ぎん太郎
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-02-08

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正しく生きるのを止め、“男であり続ける”ことを誓った三人の少年がいた。彼らは女の子を知るためには、大きな力にも屈することなく立ち向かっていこうと誓ったのだった。覗きすら辞さない―つまり、どうしようもなく思春期だった。そんな男子に武力行使で物事を解決するのが、女子が牛耳る男子矯正委員と生徒会。

 男は負けるとわかっていても挑まねばならぬ時がある

 思春期をこじらせてしまった少年たちとエロス排除を掲げる女子との戦いを描く学園騒動記。

 男としてとてもいたたまれない気持ちに陥って胸が苦しい。これ以上はやめてください死んでしまいます。
 思春期まっさかりのバカ男子三人組・マサミチ、リュウジ、ジュンが、高ぶったエロスを持て余し、学園の女子生徒たちにセクハラを繰り広げ、バッシングの中で男の友情を築いていくドタバタ騒動が可笑しかった。
 実に下らない。下らないが思春期の男女関係という悩みに真っ向からぶつかっていく勢いに飲まれる。

 女子の裸が見たいというストレートな動機で女子更衣室に忍び込んだり、下着を見たい一心で女装してスカートを覗こうとしたり、洗濯物ウォッチングに出かけたりと、それもうアウトだよ!という犯罪行為を、特に悪意もなく自然な流れでやってしまう思春期の男子特有の行動力に思わず称賛を贈る。勇者だよお前らは。
 当然、女子にバレてキツいお仕置きを食らうのだけれど、諦めることを知らないおバカさ加減が笑える。

 彼らがエロスを発散できないのは、男子制限法という法律でエロ本やAVといった猥褻物が社会から排除されて、世間でも行き過ぎた女尊男卑の考えが横行して、男にとってはひたすら肩身の狭い思いを強いられている背景があって、女子の無理解から行き場を失ったエロスを胸に抱えるしかない彼らの境遇が読んでて辛かった。
 そこから女子と男子との対立が描かれるのだけれど、どこの秘密警察かという女子の所業が目に余るなぁ。

 これは確かに戦争でした。エロスの革命闘士となった男子と猥褻物弾圧を敷く女子の戦争だわ。
 うん、正直、すげーバカバカしい話だと自分でも思いますが、登場人物がものすごくシリアスに真剣になってやってるから勢いに流れさて、騙されてはいけないとわかっていてもイイ話を読んだ気になるんですよ。
 そして読んでいる間ずっと思っていたのは『この世界、BLが流行りそう』ってことである。私だけかね?
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2014年02月14日

王手桂香取り!/青葉優一

4048663178王手桂香取り! (電撃文庫)
青葉優一 ヤス
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-02-08

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上条歩。中学一年。三度の飯より将棋好き。ひそかに憧れる人は将棋クラブの主将、大橋桂香先輩。そんな歩のもとに突如駒の化身を名乗る美少女たちが現れる。人知を超えた将棋の強さをそなえる彼女たちの指導のもと、歩は棋力をめきめき上げていく。歩は桂香先輩とともに団体戦の大会で頂点を目指すべく奮闘する。

 将棋の女神は、恋の女神

 片思いの先輩のために強くなることを目指した少年の恋と将棋にかける青春ストーリー。

 将棋クラブの先輩・大橋桂香に憧れる主人公・歩が、祖父から譲られた将棋の駒が変化した「駒娘」たちの指導のもと、団体戦の大会でライバル打倒を目指して、努力を積み重ねて腕を上げていく姿が燃えます。
 ルールは誰でも知っているけれど、どこまでも奥の深い、勝負の世界に引き込まれました。

 将棋は大好きだけれど実力はそれなりという歩が、将棋の駒の付喪神・「駒娘」たちと出会い、プロ顔負けの腕前を持つ彼女らに罵られ、尻を叩かれ、慰められつつも平身低頭教えを請う素直な姿勢が応援したくなる。
 少しづつ現れてきた努力の成果を桂香先輩に認められ、家に招かれてマンツーマンの特訓をしたり、アマチュア大会に二人で参加したりと、ひたすら将棋漬けだけれども急接近していく二人の関係が初々しい。

 将棋に強い人は桂香先輩のようにいい人ばかりでなく、性格や態度の悪い相手もいて、勝てば相手に罵詈雑言を浴びせかけたり、負けても認めずに開き直ったり、将棋への愛情が感じられない姿には苛立ちますね。
 強くなるため、桂香先輩のため、強敵の傲慢を正すため。いくつもの理由を胸に抱き、必殺の戦法を磨いて臨んだ試合は、単に棋力だけではない、どれだけ勝利に食らいつけるかの精神力の勝負で手に汗握りました。

 精神攻撃は基本。ですが、駒娘たちが試合前にやった挑発はあんまり褒められたことじゃなかったかな。ゴリ押しで強引な気がしてもにょった。もうちょっと読んでてすっきりする方法があったんじゃないかと思う。
 こういう部活ものだと作者の実力がどの程度か議論になるものですが、メインは登場人物のドラマだと思うので、そこをちゃんと認めて欲しいですね。次回は桂香先輩のキャラがもっと掘り下げられますように。
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2014年02月13日

韻が織り成す召喚魔法 バスタ・リリッカーズ/真代屋秀晃

4048663194韻が織り成す召喚魔法 ―バスタ・リリッカーズ― (電撃文庫)
真代屋秀晃 x6suke
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-02-08

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カタブツ生徒会長・音川真一の前に現れた、クソ迷惑な美少女悪魔・マミラダ。彼女と無理矢理契約を結ばされてしまった真一は、とある能力を手に入れた。それは相手を強制的にラップバトルに引きずり込んで、敗者を支配する魔法。心の内に秘めた暗黒面を吐き出す真一のラップは、学院の不良たちに襲いかかる!

 カタブツラップで念仏凡夫

 カタブツ生徒会長と迷惑悪魔の織り成すマジカル×ヒップホップコメディー

 なんだこの闇のゲー……ヒップホップ。優等生と不良たちのカオスな召喚バトルをチェケラッチョ!
 校則の守護神と呼ばれるほどの真面目生徒会長・音川真一が、ひょんなことから美少女悪魔・マミラダと契約してしまい、敗者を支配できる魔法のラップバトルに挑んでいくドタバタ過程が楽しげで和みました。
 どうしてよりによってラップを題材にしたのか。こういうバカバカしい作品が読みたかったところです。

 自他ともに品行方正、清廉潔白を重んじる生真面目すぎる生徒会長・真一が、空気を読まないフリーダムなラップ好きの美少女悪魔・マミラダに振り回され、嫌々ながらもラップの世界に踏み込んでいく姿が可笑しい。
 マミラダの所為で、ことあるごとに騒動に巻き込まれ、大嫌いなラップに頼らざるをえない状況に陥り、普段から心の奥に溜めていた悪態や鬱屈をラップで吐き出して自我を押し通していく光景がぶっ飛んでて痛快!

 不良の溜まり場ヒップホップ研究部を潰そうと、ラップバトルを挑んで勝利したものの、条件に解散ライブの開催を約束させられ、主催者になってと、ラップと離れるつもりが泥沼にハマっていく義理堅さが笑える。
 水と油だった両者の間に次第に仲間意識や奇妙な友情が生まれて、それでも素直にマミラダや不良たちを受け入れられない真一の面倒なカタブツぶりがもどかしくもあり、真っ直ぐな若さが眩しかった。

 カタブツであるあまりに他人と衝突を起こしてばかりだった真一が、ラップバトルを通じて他人と本音でぶつかり合うことで角がとれて丸くなり、態度や考え方に柔軟性を得ていく成長が熱く、爽やかでよかったです。
 音楽ものというと、その旋律を小説などの文字媒体で表現するのは難しいと言われていますが、ラップだと脳内再生が簡単なので気軽に読めますね。よくそこに気づけたなぁと思います。発想力がヒップホップでした。
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2014年02月12日

ゼロから始める魔法の書/虎走かける

4048663127ゼロから始める魔法の書 (電撃文庫)
虎走かける しずまよしのり
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-02-08

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世界には魔女がいて『魔術』が存在していた。人々に“獣堕ち”と蔑まれる半人半獣の傭兵がいた。日々、人間になることを夢見る彼が出会ったゼロと名乗る魔女は、世界を滅ぼしかねない魔法書を何者かに盗まれ、それを探す旅の途中だという。傭兵は、人間にしてもらうことを条件に、魔女の護衛を引き受けるのだが

bashingtag.jpg

 禁断の魔法書を巡る魔女と獣人の傭兵の異世界ファンタジー

 面白い……かなぁ? つまらないとは言いませんが、個人的にはあまり興味をそそられなかった。
 一人で旅を続ける半獣半人の傭兵が世間知らずの魔女・ゼロと出会い、魔法の使い方を記した"ゼロの書"を巡って、一国で起きている魔女狩り騒動に関わっていくうちに芽生えていく絆が微笑ましかったです。
 しかし、一言で言うと、世界観にも魔法設定にも目新しさ、オリジナリティが足りない。

 魔女といえば、街外れの小屋や人里はなれた洞窟に住む老婆だったり、怪しい美貌の美女だったり。それで魔法陣を描いて悪魔と契約して魔法を使う。そんな魔女と聞いたら誰しも連想する、パブリックイメージから一歩も出ていないのはどうなんだろうか。ラノベ読者がファンタジーに期待してるのってそこじゃない?
 王道やお約束が悪いとはいいませんが、普通はさらにその上にオリジナティを加えるものでしょう。

 ゼロと獣の傭兵の心の交流はいいです。お互いに一般人から迫害される対象である魔女と獣堕ちが出会って、最初は打算から相棒となったものの、旅を続けるうちに友情が芽生えていく過程は微笑ましかったです。
 絡まり合った人間関係のすれ違いを少しずつ解いて、ぶつかり合い、喧嘩し合いながらも誰もが幸せになれる未来の妥協点を探っていくストーリーも、都合主義の綺麗事だが嫌いじゃない。でも、地味なのが残念。

 児童向けファンタジーならいいですが、ライトノベルのファンタジーだとしたらちょっと古臭すぎる。
 私自身が読書量の多いラノベ読者だからかも知れませんが、新しいもの、現代の作品を読んだ気がしない。
 この作品でしか味わえないもの、この作者にしか書けないものがアピールしきれていないように思います。
 電撃大賞の大賞作は一般大衆に広くウケるものが選ばれるからこれでいいのかも知れませんが、物足りない。
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2014年01月17日

白銀のソードブレイカー 聖剣破壊の少女/松山剛

4048662872白銀のソードブレイカー ―聖剣破壊の少女― (電撃文庫)
松山剛 ファルまろ
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-01-10

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世界を護る7本の聖剣の使い手。その一人が、大剣を振るう銀髪の少女によって討たれた。一夜にして《世界の敵》となった少女と剣を交えた際、一瞬かいま見えた“映像”に家族の仇の姿を見たレベンスは、その白銀の髪を持つ少女を追うが―!?

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 世界の敵となった少女と共に7本の聖剣の破壊を目指して旅をする異世界ファンタジー。

 松山剛さんの作品は好きなんだけれど、今回はなんか方向性を変えすぎて期待してたんと違った。
 世界の守護者であり人々から崇拝される剣聖が持つ聖剣を狙う少女・エリザと家族の仇を追う傭兵・レベンスが出会い、世界の敵として周囲から追われつつ残った剣聖を倒す旅を続ける物語なのだけれど、ストーリーに不毛感というか、無力感が漂い。なんでこの二人こんなことしてるんだろ?と素直に世界観に引き込まれない。

 世間知らずで人間関係に疎いエリザが可愛らしくもあり、ついつい世話を焼いてしまうレベンスのお人好しぶりが微笑ましくもあり、キャラとしてはすごく好感を抱けるのだけれど、それでも彼らの行動を全肯定できないのが話の流れを濁している。なまじっか剣聖の人たちのキャラが良すぎるせいか、戦っていても応援できないし、勝った後も達成感より罪悪感の方が強くて、勝っても負けてもいずれにせよ辛いだけの話になっている。

 そもそも聖剣とは、魔剣とはなんなのか、どうしてエリザはそこまでして聖剣の破壊を目指すのかという動機付けの掘り下げが曖昧なので、どうしてそこまで決意を持って戦ってるのか理解が難しく、剣聖たちも聖剣を使うことにリスクがあることを知っているみたいだから、部外者は口出さずに放っておけよと思わずにはいられない。原発が危険だから発電所で働いてる労働者を殺して止めようってのと発想に違いはないんじゃないかな。

 エリザとレベンスを支持できないのは、自分たちの起こした行動によって、これから起こる悲劇に一切の責任を負っていないところなんですよね。それよりも強大な悲劇を未然に防いでるのだからいいだろうじゃなくて、何事も起こらずに済ませるような方法を模索したほうが話も面白くできるんじゃないだろうか。例えば、帝国と王国の戦争に武力介入して和平に導いた後に平和の世に用済みになった聖剣を譲ってもらうとか。そちらのほうが面白そうだし読んでみたいんだけれど。

 ぶっちゃけ、何も考えず強敵と正面から戦って勝つなんて単純な話はワナビでも書けるので、松山さんには他人に書けない話を書いて欲しいな。
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2014年01月14日

男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。 (1) ―Time to Play― (上)/時雨沢恵一

4048662732男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。 (1) ―Time to Play― (上) (電撃文庫)
時雨沢恵一 黒星紅白
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-01-10

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僕は高校生にして電撃文庫で作家デビューを果たした。執筆のため1年間休学した後、転入した高校で出会った彼女・似鳥絵里は新人声優で―僕の作品のアニメの出演者だった。そんな僕らが会話を交わす唯一のチャンスは毎週木曜日、アニメのアフレコに向かう特急列車で

 走馬燈はめくるめく

 高校生ライトノベル作家と女子高生声優の交流を描いた奇妙な物語

 タイトルがめちゃめちゃ長いので勝手に『れどいる』と略しているぜ、これは流行る(*´ω`*)
 男子高校生でライトノベル作家をしている主人公・"僕"と、声優をしているクラスメイトの女子・似鳥絵里が、アニメのアフレコに向かう特急電車内で、いかにして"僕"がライトノベル作家になれたのかを語っていく物語なのだけれど、一般人とは違う思い出話をしていくうちに掘り下げられていくキャラクターが興味深かった。

 先生と呼びつつも声優ならではの演技力で"僕"を翻弄する絵里さんが悪女っぽくて素敵です。
 幼い頃から本好きだった少年の"僕"が、一念発起して小説を書き始め、七転八倒しながらラノベを書き上げて受賞に漕ぎ着け、ラノベ作家としてデビューし苦労を味わっていくお話が初々しくて微笑ましかった。
 転章するといつも首を絞められてスタートというのが気になるが、どうしてそうなったのか、下巻に期待。

 本の登場人物を動かして様々なストーリーを妄想する遊びは私もやりましたね。というか、今でもやっている。このキャラはこういう言動が相応しいとか、このイベントではこういう選択肢を選んだ方が楽しいとか、どうすれば作品がより面白くなるかをいろいろ考えますね。そして自分ごときの想像力では、これ以上にはどうやっても面白くできないと確信した作品が傑作だと思っています。ラノベ読者はみんなやってるんじゃないかな。

 この話は、ほぼ主人公の過去エピソードばかりで、アクションもテーマも(いまのところは)薄いですけれど、キャラクターの掘り下げとしては何より大切なことをいつも時雨沢恵一は自然にやっています。
 私も下読みして作家志望の書いた原稿読むことありますけれど、キャラが浅い。なんでかというと個性的なキャラを描こうとしているんだけれど、どうしてそういう性格に育ったのか、過去と過程が抜け落ちている。

 生きた人間なら絶対にそれまで成長してきた思い出や過去があるはずなんですよ。過去によって現在の性格が定まるんです。それがない主人公は設定上は高校生でも、生まれたばかりの赤ん坊と同じです。異能が使えるとか、女子にモテモテだとか、それは後天的な後付けですよ。そんなものでキャラを描いたとはいいません。キャラを描く時は、そのキャラの人生を描きなさいと言いたい。それなら読者もキャラを掴みやすいから。

 しかし、作家志望向けのためになる話のようで全然ためにならんな。ハウツー本を期待しないほうがいいですね

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2014年01月13日

城ヶ崎奈央と電撃文庫作家になるための10のメソッド/五十嵐雄策

4048662929城ヶ崎奈央と電撃文庫作家になるための10のメソッド
五十嵐雄策 翠燕
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-01-10

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「ライトノベル作家になりたいの…っ」それが、明るく前向きで何事にも一生懸命な女子高生・城ヶ崎奈央の夢だった。一ノ瀬渉が奈央の秘密を知った時、電撃文庫作家を目指す闘いの日々が始まる。渉が同居している従姉の編集者(通称・トメ姉)から学び、短編や長編を書く上で大事なポイントを知っていく奈央たち。

 城ヶ崎奈央の秘密

 ラノベ作家に憧れるヒロインを応援する少年の青春ラブストーリー

 電撃文庫作家になるための公式ハウツー本、に見せかけたバカップルの激甘ラブコメディだった。
 クラスのアイドル的存在・城ヶ崎奈央の秘密を偶然知ってしまった主人公・渉が、ライトノベル作家を目指す彼女の手助けや応援をしつつ絆を深め、夢に向かって全力疾走している姿が活き活きと爽やかで楽しかった。
 ワナビには今更ですが、小説の執筆に興味のある学生さんは読んでおいたらいいんじゃないでしょうか。

 実はガチのラノベ読者で、ラノベのことになると我を忘れて夢中になってしまう奈央の熱意が微笑ましく、本気でラノベ作家に憧れる純粋な気持ちが可愛らしかった。ラノベ読者からしてみれば理想の女の子ですよ!
 比べると渉は、編集者の従姉のコネを持っているだけでラノベに詳しくないのに、取材や調査で奈央の執筆活動をサポートしているうちにデートにいったり、部屋に入り浸ったり、親しくなっていく様子が美味しいな。

 電撃文庫作家になるためのメソッドですが、これはネットでちょっとググれば出てくるような基本情報なので、創作論や実践的なテクニックを期待していると肩透かしに遭うかな。三木さん和田さんの創作論やアドバイスはためになる教訓ばかりなので、そこだけは注目の価値ありです。まあTwitterの呟きをチェックしていると、創作論っぽいことはよく話しておられるので、作家志望者はそちらも参考にして欲しいですね。

 ただこれを読んだ中高生が小説を書いていきなり電撃大賞に応募してくるのは無謀の極みだと思いますね。
 まずネット小説の投稿から初めて、読者の反応を見つつ、自分の実力を磨いてから挑戦したらいいんじゃないかな。他人に読んでもらうというのは大切ですよ。誰だって料理を作ったら味見ぐらいするでしょう。
 作家を目指し、第一歩を踏み出した奈央と渉の今後が気になりますが、イチャイチャも注目したいところ。

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2014年01月12日

ロストウィッチ・ブライドマジカル 2/藤原祐

4048662236ロストウィッチ・ブライドマジカル 2 (電撃文庫)
藤原祐 椋本夏夜
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-01-10

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雉子野中学で密かに噂となっているおまじないがあった。呪いたい相手の名前を書いた紙と硝子玉を一緒に桜の木の下に埋めておくと『硝子玉の魔女』がそいつを不幸にしてくれる、というものだ。噂を知った水奈たちはそこに『魔女』の影を見、調査を決意する。

 不幸を呼ぶ魔女たち

 魔法の国の女王を決める戦争に巻き込まれた少女たちが繰り広げるマジカルサスペンス

 いやぁ、相変わらず頭と心をぐちゃぐちゃにされるこの醜悪さと美しさの入り混じった読感がタマラン。
 中学校で噂になっている『硝子玉の魔女』に関わってしまった主人公・水奈が、狂信者の魔女集団『バーバ・ヤーガの小屋』と因縁を持ってしまい、他責的に騒動に巻き込まれていく展開と結果に打ちのめされます。
 魔法の力は不幸しか生み出さない。それでもその力にすがるしかできない少女たちの苦悩が痛ましい。

 病気の妹を救うため、『硝子玉の魔女』として魔法の力を使っていたはぐれ魔女・庵子ですが、魔女たちが行っている戦争への常識に疎く、彼女の不注意と無警戒が招いてしまう失敗から始まる失敗の連続が口惜しい。
 水奈の仲間・耶麻音が保護がしたときにはすでに遅く、『バーバ・ヤーガの小屋』の魔女たちに目をつけられて、恨みを抱いた魔女の暴走を阻止したことで、次第に他人事でない状況にハマっていく姿がもどかしい。

 穏便に年長者同士の納得づくの決闘で手打ちにしようと努力しても、寸前のところで余計な横槍が入り、さらに事態がこじれて、お互いの猜疑心、敵対心ばかりが募っていく様子が不毛で虚しくて目も当てられない。
 誰が勝っても負けても失ったものは戻らず、傷つくだけで何も得るもののない泥沼化した戦いでも、引くに引けなく戦うしかなくなって、災いを呼ぶ魔法の力を得てしまった少女たちに憐憫と哀悼の思いが湧き上がる。

 前回、ほとんど出番のなかった耶麻音と栞の姉妹がメインのストーリーでしたが、お姉ちゃんふざけてるけど頑張るし、妹ちゃんはツンデレで他人思いだし、両者とも知略と度胸あふれるキャラでえがったえがった。
 庵子はこのまま水奈の仲間入りなんですかね。最後に登場した人魚ちゃんもラスボスの貫禄を魅せつけて、背筋が凍るような迫力に痺れました。というか、いまさらだが女子中学生のメンタルこっわ!

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2013年12月16日

エロマンガ先生 妹と開かずの間/伏見つかさ

4048660810エロマンガ先生 妹と開かずの間 (電撃文庫)
伏見つかさ かんざきひろ
アスキー・メディアワークス 2013-12-10

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高校生兼ラノベ作家の俺・和泉マサムネには、引きこもりの妹がいる。和泉紗霧。一年前に妹になったあいつは、まったく部屋から出てこない。今日も床をドンドンして、俺に食事を用意させやがる。こんな関係『兄妹』じゃないぜ。なんとか自発的に部屋から出てきてもらいたい。俺たちは二人きりの『家族』なんだから―。

 作家が絵師に恋をした

 ラノベ作家の兄とイラストレーターの妹が繰り広げる兄妹ラブコメディ。

 俺の妹がこんなにエロかわいい。妹が好きすぎるお兄ちゃんの妹愛が弾けてこっ恥ずかしいわー。
 高校生で現役ラノベ作家の主人公・正宗と、彼のラノベのイラストを担当している血の繋がらない義妹・紗霧が、プロとして創作活動を通じたドタバタを繰り広げながら新しい絆を結んでいく姿が心温まりました。
 ラノベ小説家という職業特有のあるあるネタが満載で、業界の裏事情を垣間見れるかもしれない(?)

 正宗が作家と絵師として長年コンビを組んでラノベを作ってきた人気イラストレーターのエロマンガ先生が、実は引きこもりの紗霧だということを偶然に知って、義兄妹の隔たれていた距離が次第に埋まっていくのですが、描く画風がエロかわいいだけでなく、紗霧たん本人もとんでもなくエロ可愛いくて、儚げな銀髪美少女なのに引きこもりでコミュ障、感情の起伏が激しくて考えがすぐに顔に出るところが、なにこの可愛い生き物。

 売れっ子作家の山田エルフとエロマンガ先生に挿絵を描いてもらう権利を巡って戦いになるのですが、編集者や絵師本人を置いておいて、作家二人だけでライバル心がヒートアップしていく光景が可笑しい。
 作家としてのスタンスの違いで口喧嘩はするけれども、同業者として認め合っていくところが微笑ましく、しかし、それが誤解を産んで紗霧に避けられ、あちらを立てればこちらが立たずなジレンマがもどかしかった。

 「兄は妹に恋なんてしない」といいつつ、誰がどうみても紗霧に激甘な正宗の振る舞いが恥ずかしすぎて読んでいるこちらが耐え切れない。可愛い妹への想いと、エロマンガ先生へのリスペクトが入り混じっておかしなハイテンションになってしまってる正宗が痛すぎてむず痒いんだけれど、一途で真摯な姿に応援したくなりました。見事にフラれてしまった正宗だけれど、好きな人が実は正宗だったという展開なんだろうなと裏読み。

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2013年12月14日

滅葬のエルフリーデ/茜屋まつり

4048661620滅葬のエルフリーデ (電撃文庫)
茜屋まつり mamuru
アスキー・メディアワークス 2013-12-10

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首都圏を含む地域が、ある日突然“海”になった。この災害によってできた海、江戸海に浮かぶ軍艦学園に通う吉岡峰介は、かつてはオンライン対戦ゲーム、シュラフトの名プレイヤーとして名を馳せていた。彼はクラスメイトのエルフリーデと共に、学園で開催される海戦バトルトーナメントに参加することになり

 心と生きて今を戦え

 艦隊となる少女たちを指揮して戦い世界を滅亡から救う青春学園バトルストーリー

 絶対命令権とかもらっても、同人誌みたいなことにしか使い道がないと思うのは私だけですかそうですか。
 オンライン海戦ゲームの名プレイヤーでありながら、相棒を亡くしたことで戦いから遠ざかっていた主人公・吉岡峰介が、世界を滅亡から救うため、ヒロインたちの司令官となって再び立ち上がる姿が燃えました。
 やってることは艦なんとか。いま流行の艦なんとか。鎮守府にお勤めの提督が兼業の方、必見です。

 勝利のためには犠牲を厭わない『理路整然の悪魔』と恐れられた怜悧な頭脳の持ち主・峰介と、ハイスペックな未来艦に変身できるが脳天気でアホの子のエルフリーデの凸凹カップルの掛け合いが可笑しかったです。
 強引な押しに負けてエルフのコマンダーとなったものの、無駄使いで時代遅れの改装をしている役立たずのゴミシップで、頼りない味方と少ない資金をやりくりして戦略を練る峰介の手腕が興味深かったです。

 トーナメント第一戦から優勝候補かつ、かつてのゲームで共に戦った仲間である天才少女・茜子で、過去の峰介自身を写しているかのような、勝利のためになりふり構わぬ戦い方をする彼女の姿が痛々しく思いました。
 道を誤ったままの彼女と過去の自分に向き合い、『今を大切に生き、心を大事にしろ』という亡き相棒アルマの遺言を果たすために戦場に舞い戻る峰介の決意が胸に迫る。クールな顔の下の熱い思いが伝わってきた。

 まあ難点と言えば全体的にストーリーが駆け足気味だったのが残念といえば残念か。帯の売り文句には「絶対命令権」がいかにも物語の根幹、メインの目的っぽく書かれているのに、それほど重要でもないもんなぁ。
 それと人類と神の対決が、やけにゲームっぽい仕様なのはなんなのだぜ……。いや、ゲーム脳の私にとっては分かりやすくていいんですけどね。しかし、あまり某ゲームっぽくしすぎるとパクリガー勢が黙ってないぞ。
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2013年12月13日

ソードアート・オンライン プログレッシブ 2/川原礫

4048661639ソードアート・オンライン プログレッシブ (2) (電撃文庫)
川原礫 abec
アスキー・メディアワークス 2013-12-10

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第三層。そこで二人を待ち構えていたのは、フロア全体を深く包み込む大森林と、初めての大型キャンペーン・クエストだった。森の中で戦う二種族のエルフの騎士たち。そのどちらかに加勢することで、クエストは開始される。キリトたちはベータ時との違いに戸惑いながらも、NPCであるキズメルと交流を深める

 愛と友情のための協奏曲

 アインクラッドでのキリトやアスナたちの冒険を第1層から描き直すプログレッシブ編

 アスナさんがしずかちゃん状態。どんだけお風呂好きなんですか。早く入浴現場に転送しなよキリトくん。
 三層から始まる連続クエストをスタートしたキリトとアスナが、黒エルフのNPC・キズメルと行動を共にし、クエスト依頼を進める過程で見え隠れする攻略組に潜む怪しげな影の正体に興味が掻き立てられます。
 三層に来て、戦闘アクションよりもストーリーに焦点を当て、世界観やキャラを魅せてきました。

 キリトとアスナの仲睦まじいイチャイチャぶりが目の毒ですね。アスナさんは最初の頃の張り詰めた悲壮感が和らいで、それはいいことなのですが、キリトが横に居ることがもはや当たり前のように慣れきっていて、もうお前らゲーム攻略を新婚旅行か何かと間違えてるだろ。毒グモの棲むダンジョン探索やら、森エルフのキャンプに潜入やら、物騒な旅行コースですが、技術と機転を駆使して立ち回る姿が妙に楽しそうなんですよねぇ。

 コンビを組む二人ですが、ソロプレイでの絶対的限界についての覚悟がアスナにはわかってない様子で、ギルドへの嫌悪感を抱くものの、本来ならキバオウやリンドみたいなギルマスはまず存在しないからなぁ。というか、あの二人は絶対にMMORPGやったことないやろ。どう考えても態度が横柄すぎてメンバーに嫌われるタイプ。ダンジョン攻略もゴリ押しだったり、マナーやセオリーもなってないし、いかにもな素人臭さが香ばしい。

 アインクラッドのゲームシステムについての説明や解説が多めでしたか。MMORPG経験者ならシステムやゲーム専門用語などもサラッと流してくれても通じるのですが、MMO初心者のためにあえて一から入門講座を開いたといった感。それでも今まで「こういうものだよな」と思っていたゲームシステムの具体的な設定を詰めてくれてたのでよかったです。しかし、それでも分からないのは、倫理コードの基準はいったいどうなってるんや!

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2013年12月12日

ミス・ファーブルの蟲ノ荒園 2/物草純平

4048661752ミス・ファーブルの蟲ノ荒園 (2) (電撃文庫)
物草純平 藤ちょこ
アスキー・メディアワークス 2013-12-10

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日本から遠く離れた欧羅巴の地で、その左目に奇妙な“蟲”の力を宿すことになった少年・秋津慧太郎。彼がある日、街で遭遇した「死神」―かの者が狙う「魔本」をめぐり、蟲愛づる魔女アンリ・ファーブルと女騎士クロエ、謎多き少女マルティナまでも巻き込んで、長い長い一日が幕を開ける。

 救いの道は楽園へ通ず

 蟲と呼ばれる謎の巨大生物により変貌したもう一つの近代の世界で蒸気と蟲と恋が彩るファンタジー

 おっぱいさん強い! ぺちゃぱいちゃんも強い! 中くらいの子は……うん、もっと頑張りましょう。
 クラスメイトの少女・クロエと街へと出かけた主人公・慧太郎が、巷を騒がす殺人鬼・死神とバチカンの聖騎士の争いに遭遇し、魔本を巡って繰り広げられる三つ巴の戦ぶりが、読み終えても未だ興奮が冷めやらない。
 "裸蟲"の誕生や"蟲"の起源に迫り、より世界観が掘り下げられてリアリティを帯びてきました。

 おっぱいさんマジおっぱい。朝練に押しかけたり、入浴に誘ったり、デートに連れ出したり、慧太郎への好感度がわかりやすすぎて、ちょろ可愛い。巨乳で脳筋なキャラとはあざといなぁ。守りたいこのおっぱい。
 かねてからの約束通り、デートに出かける慧太郎とクロエをアレコレ理由をつけて追いかけるアンリのツンデレぶりにもニヤけますね。毒舌家のマルティナとの掛け合いもいつの間にか笑ってしまう。いいコンビです。

 人間を変容させる魔本を巡って争う、手前勝手な救済を掲げる死神ベノワと自分たちの非を棚に上げた聖騎士ヴァレリオのどちらも一方的な言い分は、慧太郎でなくともふざけるなと言いたくもなりますね。
 お互いに暴力でもって己の主張を通そうとする両者に対して、例え綺麗事と言われようとも、過去や感情に囚われず、自分の正しいと思う信念を貫き通す慧太郎とクロエの不器用で真っ直ぐな若さが眩しかったです。

 いやぁ、喧嘩するほど仲が良いクロエとアンリの友情が微笑ましい。クロエさん、自分で否定しておいてキマシロードを突き進んでるけれど自覚がないのかしら。本命は慧太郎だからセーフなのかもしれないが。
 それにしても素晴らしい混浴回でしたね。これから学園シーンはすべて大浴場でやればいいんじゃねって。
 重要なキーワードが明かされましたが、世界に終末を呼ぶ三蟲士……一体何者なんだ(; ・`д・´)
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2013年11月16日

妖怪青春白書 雪雄くんと薫子さん/沖田雅

4048661094妖怪青春白書 ―雪雄くんと薫子さん― (電撃文庫)
沖田雅 ぬこマス
アスキー・メディアワークス 2013-11-09

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人間が思春期頃になると妖怪化するという現代、元は完全無欠なイケメン→でも、今はモフモフな雪男になってしまった雪雄くん。そして、元は品行方正な清純派美少女→でも、今は下ネタ大好きなビッチ可愛い蛇女になってしまった薫子さん。雪雄くんのことが本当に大好きな彼女は、雪雄くんをいじることが生き甲斐なんです。

 下ネタ好きの美女と野獣

 おかしな二人による微笑ましい下ネタ&ラブラブな日常をつづった、純で不純な妖怪同棲ラブコメディ

 雪男と蛇女のラブコメディとか、電撃文庫は時代を先取りしすぎィ! レベル高すぎんよ。
 人間がすべて妖怪とのハーフとして妖怪化した外見が当たり前となった世界で、主人公の雪雄と幼馴染で恋人の薫子のバカップル二人が下ネタを繰り広げ始終イチャイチャと惚気っぱなしで、お腹いっぱいです。
 妖怪同士のバトルとか、ありそうでまったくない。シリアスな事件も起こらない。なんだこれぇ。

 初体験の次の朝から始まる話って、なんなんだよ! フリでも偽装でもなく、この二人、ヤッてます。
 ただ雪男と蛇女という人間離れした外見なので、思春期の男女特有の甘酸っぱい雰囲気がギャグになるしかねぇ。毛むくじゃらでもっさもさの見た目ムックの雪男の雪雄が、「いい男とは〜」とか真剣に語っちゃってるのは、確かにシュールで面白いですけれど。恋人がエロに積極的で下ネタ大好きな清純派ビッチっていいよね!

 いやいや、いくらなんでも設定が挑戦的すぎんだろ……読まされた読者の思考処理が右往左往してるわ!
 雪雄と薫子の仲は、両家の家族公認で、同棲生活の支援して、結婚まですでに予定を組んで準備してて、やたらとノリノリなのは、ちょっと展開が進み過ぎだろう雪雄くんだけじゃなく読者の理解が追いつけないよ。
 ただ薫子を悩ませるお家事情を理解した上で現状を受け入れる雪雄がいい男でした。これは格好良いムック。

 いや、多少シリアスな裏事情があったけれど、イベントらしいイベントは結局起きてない! ただバカップルが延々下ネタ話でイチャイチャしてただけや! それが本当に正しいラブコメディだけれど! だけれど!
 前作『オオカミさん』シリーズの別の世界線の様で、亮士くんや涼子さんのその後の姿が微笑ましかった。なんとも奇妙で可怪しい世界観だけれど、まああまりネタを真剣に捉えずギャグとして適当に見ていようか。

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