ダフロン

2014年10月16日

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン 6/宇野朴人

4048690116ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン (6) (電撃文庫)
宇野朴人 竜徹
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-10-10

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軍事クーデターが起こり、カトヴァーナ帝国内でイグセム派とレミオン派が激突する。イグセム家のヤトリは父のもとに戻るべく、騎士団を離脱。またレミオン家のトルウェイは、父と対峙することを決意。そしてイクタは、父バダ・サンクレイの残した独立部隊「旭日連隊」を率いて、内戦を収めようと立ち上がる。

 未来を決める天下三分の計

 のちに名将と呼ばれる怠け者な少年の激動の半生を描く壮大な架空戦記ファンタジー。

 玉音放送……、やはり精霊はオーバーテクノロジーで作られたロボットなんじゃないかなと思います。
 クーデターを実行した改革派のレミオン派、保守派のイグゼム派に割れた帝国の内乱を治めるべく、第三勢力として立ち上がったイクタ率いる「旭日連隊」が両者相手に繰り広げる駆け引きに思わず唸りました。
 本来であれば同じ帝国軍の味方を敵として戦わなくてはいけない将兵たちの思いや葛藤が切なかった。

 相変わらずのヤトリ無双。イクタと別れたら力押ししかできないのではと思ったが、そんなことはなかった。あっという間に砦を落として父親の軍と合流して体勢を盤石にするその手腕は出世も当然ですね。
 一介の尉官の身でレミオンとイグゼムの両将を相手に一歩も引かず、言葉巧みに正面対決を避けさせたイクタの交渉術も流石というべきですが、なにより父親に叱責されるトルウェイを庇う言葉が胸を打ちましたね。

 交渉カードを得るため、三勢力が総力を上げての皇帝捜索レースの狂騒ぶりが盛り上がる。別勢力の部隊と衝突することもあるんですが、パワーバランスを保つために協力することもあって、その読み合いが興味深い。
 レミオンパパはあんな堅物なのに、トルウェイの兄貴たちはどうしてあんなに不良軍人なのかと思っていたのですが、思わぬところで兄弟愛が垣間見えて、兄貴ツンデレかよぉ!とシリアス場面でニヤニヤが止まらんw

 マシューに続いてトルウェイのメンタル面の成長ぶりも見れて満足です。才能だけなら現在のレミオン家では一番なんだろうな。ヤトリも早くイクタの元に戻ってきて欲しいものです。このままだとラスボスじゃね。
 レミオン派とイグゼム派がお互いに痛み分けで、イクタ達がリードというところか。トリスナイは出番そのものが少ないので、あんまり悪役感ないんですよね。次回どのようなキャラを見せてくれるか楽しみです。

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2014年09月16日

佳麗なるソードマスターと最強なる不肖の弟子/蝉川タカマル

4048668595佳麗なるソードマスターと最強なる不肖の弟子 (電撃文庫)
蝉川タカマル 日鳥
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-09-10

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地図にもない島からきた少年。暴漢に襲われている少女を助けようとするが逆に助けられてしまう。彼女こそ剣神と謳われた武人の娘ハルカだった。ハルカは大陸でも有数の大流派、武王流の宗主争いに巻き込まれていた。当然助力を申し出るシロガネだったが、その結果はハルカにまず弟子入りすることになり!?

 零から始める最強への道

 剣神と謳われた武人の娘と、その弟子になった少年が繰り広げる武侠ファンタジー。

 ここまで血沸き肉踊るアクションものは久しぶりでした。古き良き武侠ものの王道ですね。
 海の彼方の小島から大陸にやってきた主人公シロガネが、剣神と謳われた武人の娘ハルカと出会い、武王流の次期宗主争いに巻き込まれていき、現れる刺客との力と技のぶつかり合う武侠バトルが熱かった。
 主人公もヒロインも、どちらも脳筋キャラなのでツッコミ不在で暴走しまくりで読んでて楽しい。

 大陸に住む武人たちは皆『心』という気功術で肉体を強化してるのですが、そうとは知らない田舎者のシロガネが雑魚キャラに威勢よく啖呵を切って争いに介入したかと思えば綺麗に返り討ちにあう姿が可笑しい。
 武人の娘ハルカの弟子となったものの、幼い頃より天才だったハルカは凡人に教えることが不器用で、けれど単純なシロガネは言う通りに従ってという、ズレているのか合っているのかわからない師弟関係が愉快。

 武王流の次期宗主の座を巡り、ハルカの父カナタが命を狙われ、戦う力を失った彼の代わりにハルカとシロガネが刺客に立ち向かうのですが、相手も相当な凄腕で苦戦を強いられる展開は手に汗握りました。
 刺客を倒すために修行を積み直し、リベンジを果たすハルカとシロガネの泥臭いまでの戦いぶりと瀬戸際の勝利は本当のアクションの魅力とはこういうものだと、思い出させてくれました。最近ないよこういうの。

 ただ作者はファンタジーを目指して書き始めたらしいですが、結果的に武侠ものにジャンルの方向性が偏っていると思います。まあ、いいんですけど、ありがちなファンタジーよりこっちの方が面白いし個性的だし。
 前作でも感じましたが今作は特に文章の文字運びが秀逸ですね。文章に詰まるところなくスムーズで違和感なくハイスピードなアクションに集中できて1時間で読み終わってしまいました。改めて才能を感じますわー。
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2014年09月10日

僕と彼女のゲーム戦争 7/師走トオル

4048668668僕と彼女のゲーム戦争 (7) (電撃文庫)
師走トオル 八宝備仁
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-09-10

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ゲーマーたちが最も熱くなる季節、夏。岸嶺たち現代遊戯部のメンバーは、ゲーム大会への参加を繰り返していた。そんな中、みずからの実力不足を感じていた岸嶺は、デバックのアルバイトを通じて知り合ったプロゲーマーのもとへ教えを乞いに行くことを決意する。

 勝利の道を見通す瞳

 名門女子校のゲーム部に入部した少年がチームメイトと共に世界大会を目指すゲームライフラブコメ

 まさにゲーム大会の中継を見ているかのようなライブ感が楽しい。やって楽しい、見て楽しい、ゲーム最高!
 度重なる敗北に己の力不足を痛感した岸嶺がプロゲーマーの教えを請い、現代遊戯部の実績を残すため大規模FPSのゲーム大会へと挑戦し、またひと回り成長して、因縁の相手にリベンジを果たしていく姿が熱かった。
 お互いにチームを率いての読み合いと駆け引きがリアルタイムで交錯する躍動感溢れる展開がたまらない。

 新作ゲームのデバッガーのアルバイトを引き受け、初めての労働に勤しむ岸嶺が初々しくていいです。デバック経験者からするとテスト項目表作ってないのか!と思いますが、ゲーム業界ならないのかしらん?
 岸嶺のアルバイトが現代遊戯部の活動に思わぬ危機を招いてしまって、天童の焦りを煽ることになり、勝って実績を残すためにゲームを楽しむという本質が忘れられてしまうのは虚しく思えて悲しかった。

 汚名返上のために再びプロゲーマーに教えを乞う岸嶺ですが、この熟練者に教えを乞う行為は初心者が強くなるために一番手っ取り早い方法ではあるのですが、学ぶ側にもアドバイスを受け入れる姿勢がなってないと、いくら教える側がうまくて、まともな助言をしても意味が無いんですよね。岸嶺のゲームのうまさって、あの集中力もあるけれど、素直だから他人の意見を謙虚に受け入れて学習効率が良いというのもあるんじゃないかと。

 対人戦でのコツは、経験や技術よりも読み合いと駆け引きというのも納得がいく。そして熟練者が一番怖れるのは素人の予測不可能な悪手だと、まったくその通り。相手の思考を読み切った岸嶺の策略は見事でした。
 岸嶺のプレイこそ超能力じみて見えるのだけれど、誰でも努力と判断でやってやれないことはない範疇でのスーパープレイをやっているから、読み終えた後で自分もゲームをプレイしたくなる気持ちにさせてくれます。

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2014年08月16日

青春ブタ野郎はプチデビル後輩の夢を見ない/鴨志田一

4048668080青春ブタ野郎はプチデビル後輩の夢を見ない (電撃文庫)
鴨志田一 溝口ケージ
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-08-09

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麻衣先輩と、念願の彼氏彼女になり浮かれる咲太。――のはずが、翌朝起きたら付き合う前に戻っていた!? これは僕がブタ野郎だからなのか? 青春のバカ野郎! 原因は"思春期症候群"だと考えた咲太は、事象を起こしている人物を探すことに。

 青春とは、空回りするもの

 困っている美少女を放っておけない、青春ブタ野郎が女の子ために奔走する青春学園ラブストーリー。

 この女たらしのブタ野郎が!(褒め言葉) いちいちイケメンすぎるぞ! これは惚れてまうやろー!
 時間のループを起こす奇妙な現象に遭遇してしまった主人公・咲太が、その張本人である後輩・朋絵の抱える人間関係の悩みを解決するために偽の恋人となり、次第に恋心が芽生えていく彼女の姿にきゅんときました。
 孤独になったり、他人の目を恐れない、咲太の真っ直ぐな生き方が男らしくてカッコ良かったです。

 『友達の機嫌を損ねてハブられたくない』という女子の社会にありがちでくだらない、しかし、本人にとっては切実な悩みを抱える朋絵が、ワガママを押し付けてきて、最初は正直鬱陶しいなと思っていたんですけれども、咲太とデートするのにおめかししてきたり、ドキドキしたり可愛らしい一面も見え隠れして、普段は周りに合わせているだけで本当は素直で一途な女の子なんだろうなぁとわかってくると微笑ましく見ていられました。

 偽の恋人関係といっても、咲太に告白攻勢を受けている麻衣先輩にしてみれば、噴飯ものの事態なのですが、仕事で忙しそうにしながらもエサを与えに咲太の元にちょくちょく現れる姿がツンデレいじらしいですね。
 咲太と朋絵の関係が全生徒の知るところとなり、様々な陰口やデマが飛び交うようになってしまうのですが、黙って泣き寝入りせず、正面から堂々とやり返す咲太の威勢のいい態度が痛快で胸がスカッとしました。

 自分を守るために、あそこまで男気を見せられたら、好きにならずにはいられないよなぁ。咲太が格好つけすぎたせいで、最初から実るはずのない恋をして、失恋してしまう朋絵が可哀想でした。この女泣かせめ!
 時間のループは、ああ、やっぱりブレイン・バーストしてたかー。度重なる障害を乗り越えて、ようやく麻衣先輩とカップルになれた咲太は、幸せに爆発しろ! 先輩、後輩ときて、次回は同輩かね。語呂悪いな!

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2014年07月13日

電子魔法使いのトロニカ。/ハセガワケイスケ

4048667742電子魔法使いのトロニカ。 (電撃文庫)
ハセガワケイスケ 堀泉インコ
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-07-10

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魔法学校に通う少女のニカ。彼女は落ちこぼれとして知られていたが、それには理由があった。現代の魔法の花形である電子魔法系にめっぽう弱く、触れるだけでデバイスを壊してしまう。そんなニカが、エリート男子生徒の爽やか金髪少年ユリアンと、無口クールな黒髪少年リドと魔法騎士の模擬実戦でチームを組むことになる。

 オタク趣味の魔法騎士

 エリート美男子二人組と魔道具オタク少女のマジカルスクールライフストーリー

 ほのぼの可愛くて、これは癒される。あ^〜心がぴょんぴょんするんじゃ^〜
 魔法学校に通い、電子魔法を操るエリート魔法騎士候補生、通称"赫服"であるにも関わらず、魔法の使えない少女トロニカが、イケメン男子二人を振り回しながら騒動を解決に導いていく姿がゆるふわで楽しかった。
 ぼっちで変わり者の女の子が、イケメンハーレムを作っていくという感じか、理解した。

 周囲の生徒から"落ちこぼれ"、英雄である兄の七光りと馬鹿にされながらも、まったく意に介さないどころか、のほほんとしてマイペースで、大好きな古魔道具趣味に暴走する天然少女なトロニカが愛らしかった。
 女子に絶大な人気を誇るクールな魔剣士リドと爽やか少年ユリアンのイケメン男子とチームメイトになり、選りすぐりのエリートであるはずの彼らも、いつの間にかトロニカのテンポに巻き込まれていく姿が可笑しい。

 なにかと学園から特別扱いされているトロニカに反感を覚えつつも、家名や大人たちの対応を見て、遠巻きにしているだけの他の生徒に比べ、トロニカに興味を持って次第に意識していくリドとユリアンが微笑ましい。
 電子端末を介した電子魔法が全盛期の現代で、電子魔法と相性が悪いトロニカは魔法騎士としては致命的なんだけれど、特別扱いされているには理由があって、本気モードのトロニカは颯爽として素敵でした。

 雰囲気は好みではあるんですが、イベント少ないなと思う。一巻だから人物紹介と心理描写にページを割きすぎてしまったから仕方なくはあるが、もうちょっと彼らの学校生活でのシーン描写が欲しかったかったかな。
 犯人探しもダイジェスト感が否めないし、犯人もあっさりと自白からの豹変で盛り上がりがイマイチ。
 世界観を広げていけばもっと魅力的な作品になると思うのですが、今回だけでは伝えきれてないなぁ。

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2014年07月10日

ミス・ファーブルの蟲ノ荒園 3/物草純平

4048666401ミス・ファーブルの蟲ノ荒園 (3) (電撃文庫)
物草純平 藤ちょこ
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-07-10

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巨大生物〈蟲〉によって変貌した近代。その右目に〈蟲〉の力を宿し秋津慧太郎は、蟲愛づる魔女アンリ・ファーブルたちとともに訪れたパリの地で、自らの秘密を探り始める。しかしその道行で彼らが出会うのは、逃げ切れぬ過去。クロエの、マルティナの前に訪れるそれは、花の都に絶望的な崩壊を呼ぶ歌へと至り

 雷鳴の鳴り響く都

 蟲と呼ばれる謎の巨大生物により変貌したもう一つの近代の世界で蒸気と蟲と恋が彩るスチームパンク

 女の子同士でも問題ないと思うよ! むしろおっぱいさんは、いくとこまでいっちゃえよ!(強制)
 花の都パリにやってきた慧太郎とアンリ、クロエがそれぞれ小旅行を楽しんでいるところに、テロ組織<ブリュム・ドゥ・シャール>の幹部総出でのテロ計画に巻き込まれ、事態に翻弄されていく姿が痛ましかった。
 役者が続々と舞台に上がってきて、物語が終焉に向かって加速し始めたこの盛り上がり感イイネ!

 慧太郎の目に埋まった<蟲天の瞳>の謎解きにお手上げのアンリがパリで訪ねたお方は、いい感じにイッちゃってますね。けどあの時代の天才、偉人たちって、みんなあんなヒャッハー!なイメージだよね。音楽家とか。
 女凶手・雪蘭と慧太郎のバトルは、読み応えあったな。これまで<裸蟲>との戦闘シーンって、身体能力頼りの力押しばかりだったけれど、今回はお互いに戦闘技術を持った者同士のいいスタントアクションでした。

 そして慧太郎にフラグ立ちまくりのクロエのときめきが可愛らしい。突然、現れた理想の許嫁の存在に心を揺らされて、しかし、理屈や常識では馬鹿げているとわかっていながらも慧太郎に想いを募らせていて、いまだに女の子だと誤解したままなのだれど、いっそ同性でも構わない!とまでの結論に達してしまう思い切りの良さがいいよ、最高だよ。こういう応援したくなるサブヒロイン好き。アンリを交えての三角関係が実に美味しい。

 脇役といえば、相変わらずヴィドックは渋い味だしてるし、ボーメスニルの脳筋具合も楽しくて面白いですね、というか、キャラクターが我がなんちゃら家に伝わりし芸術的錬金術使いのあの人まんまじゃないですか。
 みずからの上位互換であるラスボスと対峙した慧太郎ですが、まあこれは負けてもしゃーないよね。
 今回は物の見事にやられてしまった慧太郎とアンリ、クロエのリベンジに期待しましょう。
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2014年06月16日

天使の3P!×3/蒼山サグ

4048666460天使の3P!×3 (電撃文庫)
蒼山サグ てぃんくる
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-06-10

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小学生三人娘と迎える初めての夏休み。響たちの許に届いたのは南の島での島おこしイベントの出演依頼だった。だが実はそれは、響が以前よりチャットでやりとりを続けていた『霧夢』が発案したオファーであり……。演奏はもちろん頑張るつもりだが、まずは何より海遊びに興味津々な三人を連れて入り江にやってきたものの

 自由の翼に夢を描き

 動画サイトでボカロPとして活動する男子高校生とバンド少女たちのロックンロール・ラブコメディ

 小学生女子は百薬の長! 何をいってるのかわからないが、鬱病には効きそうですね、癒やし(*´ω`*)
 主人公・響のネット上でのパートナー・霧夢の招待で、離島の島おこしイベントに呼ばれた小学生バンドトリオが、夏の島で大騒動を繰り広げ、一人の幼女を古き風習から解き放つ光景に感動しました。
 天使の3Pかと思ったら、6人に増えたじゃないか、一体どうなって……あれ、誰かヒロイン忘れてるような?

 よからぬ企みを含んだ霧夢の誘いに乗って離島・双龍島に来てしまった響と小学生トリオに待ち構えていたのは、都会では味わえない大自然バカンスで、海では水着姿の小学生女子が泳いでて、ここが天国だったか。
 僕もいつか生まれ変わったらこの島で小学生女子の服を主食にする無邪気な動物になりたい。
 それにしても桜花さん、女子力の低さを小学生女子に指摘されるって、どこまで残念美人なん……。

 ひょんなことで霧夢の意外な正体と、島に隠された真実を知ってしまい、突然の絶交を突きつけられてしまう響でしたが、狼狽する彼を焚きつける希美の啖呵がキレキレで痛快でした。姉御と呼ばせて下さい。
 大人びているようで年相応なわがままぶりをみせる霧夢のキャラがギャップ萌えで、意固地に引きこもってしまった彼女を頭ごなしの説得や説教ではなく、ライブの音楽で引っ張りだす姿が彼ららしくてよかったです。

 ときに小学生女子は、神社に納めて手を合わせて崇めるものですよね。ああ、何もおかしなところはない。
 むしろ全国の寺社仏閣は、インドからきたパンチパーマのおっさんを拝むより幼女を崇拝すればいいだろ!
 幼女にお小遣いをあげると思えば、いくらでもお賽銭を弾むお兄ちゃんが世の中にいっぱいるよ! むしろそんな神社が実在すればド田舎でも、離島でも観光客がいくらでも集まるだろ! 大人はわかってないよ!

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2014年06月14日

男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。 (3) ―Time to Pray―/時雨沢恵一

4048666479男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。 (3) ―Time to Pray― (電撃文庫)
時雨沢恵一 黒星紅白
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-06-10

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女子高校生で新人声優をしていますが、年上のクラスメイトで売れっ子ライトノベル作家の男子の首を締めています。それが、今の私です。男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。それが今の僕だ。

 自分らしさを抱きしめて

 高校生ライトノベル作家と女子高生声優の交流を描いた奇妙な物語

 また首絞めスタートか。タイトル回収するために毎回してると、バカップルの変態プレイに思えてくる。
 男子高校生でライトノベル作家をしている主人公・"僕"と、女子高生で新人声優をしているヒロイン・似鳥が、首絞め殺人未遂事件を乗り越え、徐々に関係を深めていく姿が微笑ましくて甘酸っぱかったです。
 綺麗に終わった物語の後日談というか、二人のキャラをさらに掘り下げて新しい方向性に変えたみたいな。

 今回になって、似鳥視点の心理描写が交じるようになって、"僕"に憧れている本心を隠して、嫌われないように必死に演技している似鳥さんの乙女な姿がいじらしくて萌える。やっぱりこの娘ヤンデレで愛が重いな。
 クラスメイトの佐竹さんに『ヴァイス・ヴァーサ』の話をさせないよう、似鳥と「恋人である」と嘘を言ってしまったせいで、関係がぎゃくしゃくして"僕"は後悔するんですが、似鳥さん大喜びで、なにこの人可愛い。

 学校では話さないと決めているせいで、なかなか和解の機会が得られずにやきもきして、"僕"の部屋に遊びに行った時も母親の乱入で有耶無耶になって、新幹線の会話も"僕"の急病でお休みになって、実にじれったい。
 ホテルの"僕"の部屋にまで押しかけて、ようやく聞き出した彼の話は、薄々は想像してましたがショッキングでしたね。地雷を踏んだ似鳥が落ち込んでるのに、重い話を暴露してスッキリしてる"僕"は大物だなぁ。

 似鳥が自分の見た目を受け入れる前向きなキッカケになってよかったです。演技してない性格は、結構難しそうで繊細なカンジだけど、のほほんとしている"僕"とは似合いかな。カミシロさんのキャラも以外にざっくばらんな姉御肌で小気味よかった。"僕"に憧れるお嬢様の気持ちを快く思わないまでも、なにかと二人の関係をフォローする素振りを見せたりして、味があった。さすがに続きはもうないですよね。次回作はさて何になるのか

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2014年06月12日

王手桂香取り! 2/青葉優一

4048666231王手桂香取り! (2) (電撃文庫)
青葉優一 ヤス
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-06-10

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中学校将棋団体戦の東日本代表の座を勝ち取った歩の前に、最も偉大な駒、王の駒娘が現れる。来るべき決勝大会に向け、歩を鍛えてくれるという。そのスパルタンな指導を受け、さらに棋力をあげていく歩。一方では桂香と息抜きのお出かけをして、少しづつ距離を縮めていく。

 歩のように一歩ずつ

 片思いの先輩のために強くなることを目指した少年の恋と将棋にかける青春ストーリー。

 将棋の知識がないと、さっぱりわけがわからないが、それでも登場人物の気迫が伝わって十分に面白い。
 王の駒娘・女王の指導を受けることになった主人公・歩が、日本一を決める中学校将棋団体戦で、憧れの桂香先輩と共にチーム優勝を目指し、中学生最強の棋士を倒すべく成長していく姿が胸を揺さぶられました。
 駒の一手に全力を込め、優勢と劣勢が瞬時に入れ替わる勝負師たちの鬼気迫る駆け引きが熱かった。

 駒娘たちの頂点に君臨する女王のまさに唯我独尊といった高飛車なキャラながら、ケーキが好きで、歩のご先祖に恋をしていたという実は乙女なギャップが萌えますね。女王には頭が上がらない他の駒娘たちですが、スパルタ指導に青息吐息な歩のためにあれこれと助け舟を出してくれて、香車さんなんか小物感すら漂わせてキャラ崩壊してるけど、これまでよりもフリーダムに活動するようになった駒娘たちが人間臭くて可笑しかった。

 歩たちが日本一になるための最大の壁、中学生最強と言われる西日本代表選手・西本を警戒するのですが、将棋の実力だけでなく性格まで完璧なイイ奴で、ぶっちゃけ歩より将棋に一途でカッコイイじゃないかよおい。
 高橋名人もフランクなおじさんだったし、準決勝で戦った相手チームも爽やかだった。将棋が好きな人たちは本当はこういう人ばかりなんでしょうが、前巻のイメージが強かっただけに、勝負が清々しくて素晴らしい。

 歩の成長ぶりがぱないの。しかし、メンタル面ではまだあと一歩というところでしょうか。
 桂香先輩との恋路は、将棋ほど思うように進歩はしませんが、あの娘はあの娘で歩以上の将棋バカなので、イマドキの女の子を相手にするように小細工を弄するよりは、将棋の腕を磨いたほうがよっぽどアピールになるのではと思ったり。次回ペアマッチ将棋大会か、夏だから水着回……はこの作品に限っては必要ないと思うぜ!
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2014年06月11日

絶対ナル孤独者 1 咀嚼者 The Biter/川原礫

4048665103絶対ナル孤独者 (1) ―咀嚼者 The Biter― (電撃文庫)
川原礫 シメジ
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-06-10

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二〇一九年八月。地球上の、いくつかの都市部に、人類が初めて接触する地球外有機生命体が複数落下した。のちに“サードアイ”と呼ばれるその球体は、接触した人間たちに、現代科学では解明できない“力”を与えた。十七歳の少年、空木ミノルもその中の一人だった。

 黒い孤独は砕けない

 異星生命体サードアイによって異能を得た者達が繰り広げる異能バトルサスペンス。

 表紙を飾っているメインヒロイン(?)の出番があまりなく、えらいモブだったんですがこれは……。
 宇宙から飛来した寄生体"サードアイ"の宿主となり異能を発現させた主人公・ミノルが、同じく"サードアイ"に寄生され身近な人々を捕食する怪物"バイター"と遭遇し、お互いの存在証明やアイデンティティを賭けた生存競争に挑む姿が切なく胸を揺さぶりました。寝る前に歯はちゃんと磨こうと思いました。デンタル!

 周囲から目立たず、関わらずで孤独を貫くミノルの拗ねた生き方は正直どうなの?と、いろいろ言いたいこともあるのだけれど、彼が拒否して嫌がろうとも中学時代の同級生・箕輪や義姉・典江の方は放っておかなくて、コミュニケーションを取ろうとしてきて、ミノルを悩ませるから愉快なんですよね。ミノルも、彼は彼で一匹狼を気取るには、ちょっと甘くてお人好しなところもあり、ぼっちを貫けない性根なら改善の可能性アリか。

 "サードアイ"によって何者をも阻む無敵の殻を手に入れたミノルは、何物も噛み砕く牙を手に入れた"バイター"にとって誇りを傷つける許しがたい存在として目をつけられ、戦いを強いられる展開は不毛でもどかしい。
 "サードアイ"に精神を狂わされた"バイター"の過去の境遇も胸糞でしたが、あんまり同情の余地はないかな。一戦目も二戦目も、ほとんど勝負が終わってからやってきて役に立たない"サードアイ"退治の専門家ェ……。

 "サードアイ"の異能が、願望を反映したものだとすれば、ミノルの"殻"は孤独癖が要因でないですよね。
 本心で孤独になりたいのであれば、誰にも認識されない透明人間になるとか、周囲に忘れられる能力になっているはずなので、彼はただ人間関係の摩擦で傷つくのを恐れているだけではと邪推してしまうのだけれど。
 いまのところありがちな学園異能のシナリオの域を出ていないので、お試しだったとして次回に期待かな。

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2014年06月10日

ストレンジムーン 3 夢達が眠る宝石箱/渡瀬草一郎

4048666487ストレンジムーン (3) 夢達が眠る宝石箱 (電撃文庫)
渡瀬草一郎 桑島黎音
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-06-10

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"金の記憶の彫金師"リコルドリクと記録者を巡って、対立するキャラバンと皇帝一派――その狭間で戸惑いつつも、月代玲音と仲間達は事態の収拾を目指し奔走する。騒動の中、"女王"の香恋により囚われた玲音は、皇帝一派の拠点において遂にリコルドリクと遭遇するが、不可視のその神は既にモニカの掌中にあった。

 いつか金色の思い出に

 異世界より来たりて超常の力を持つ異形の神と、その力を宿した異能者達が紡ぐ騒乱劇

 えー! 完結しちゃったよ。もっと続けてくれても良かったのに! 3巻で終わりなんて短いよ!
 皇帝一派に捕らえられた主人公・玲音が、敵陣で知恵と機転を駆使して立ち回り、片思いのクレアや妹の香恋、石を宿した友人たちを不毛な争いから救い出すべく、キャラバンとの狭間で奔走する姿が格好良かった。
 マジ天使な幼馴染とヤンデレ妹の三角関係を嗜むリア充ですが、確かにこいつはモテても仕方がないな…。

 迷宮神群リコルドリクを確保し、巫女としてその力を操るモニカに記録者の石を奪われかけた玲音でしたが、皓月に取引を持ちかけ、出し抜くチャンスを窺うところは、彼にしては冴えていて感心しました。
 戦闘力は無いに等しいものの、戦況をひっくり返すキーマンとしての重要性を理解して立ち回る玲音と、皇帝一派、キャラバン派の優勢劣勢が場面ごとに入れ替わり、思惑が絡み合う群像劇となっていくから面白い。

 脱出に成功し、夢路の元へ身を寄せた玲音が仲間と力を合わせて、油断している皇帝一派の裏をかいて不意打ちを仕掛ける急展開は燃えますね。いやそれよりクレアと香恋の修羅場の方が燃えるか。美味しいですね。
 三つ巴の乱戦の中、暴走した皇帝の異能を抑えこむために、命の危険を冒して死地に飛び込む玲音。事態に翻弄されるばかりで戸惑っていた少年が、いつの間にか男気のあるイケメンに成長していたのがよかったです。

 平穏な日常生活を暮らしてるだけではわからないだけで、元から玲音に備わっていた素質なのかもしれませんが、そんな彼の良さをちゃんと見抜いて惚れているクレアと香恋は男を見る目があるなと思いました。
 皓月は惜しかったですね。でもウィスカさんいるから絶対に生きてるでしょあれ。キャラクターの中でも一番哀れな存在だったので、敵でもいいから生きてて欲しい。続編を、この世界観での続編を下さい!

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2014年05月14日

エロマンガ先生 2 妹と世界で一番面白い小説/伏見つかさ

4048665316エロマンガ先生 (2) 妹と世界で一番面白い小説 (電撃文庫)
伏見つかさ かんざきひろ
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-05-10

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『兄妹の夢』を叶えるため『妹小説(仮)』の出版を目指す俺とエロマンガ先生―和泉紗霧。担当編集を説得するべく、和泉兄妹は協力して企画書を作り始める。どうしても今年中に新作を発表したいマサムネは、優勝者に出版枠が提供される『ラノベ天下一武闘会』に挑む!

 ノーパンツ・ノーラノベ

 ラノベ作家の兄とイラストレーターの妹が繰り広げる兄妹ラブコメディ。

 俺の妹がこんなにパンツ好きなわけが……あった。だめだこの妹はやくなんとかしないと。
 兄弟の愛の結晶『妹小説(仮)』を出版化すべく、兄・正宗と絵師・紗霧が担当編集を説き伏せるための企画書作りに取り掛かり、新旧ヒロインたちを巻き込んで繰り広げるドタバタコメディが面白可笑しかった。
 フライゴンは先制技とんぼ返りあるし、大文字とソラビ覚えて岩地面耐性あるから晴れパだと強いフリャ!

 告白小説事件以降、正宗を意識するようになった紗霧の仕草や反応がいちいちエロ可愛いくてニヤニヤ。
 本音と衝動全開で生きているような山田エルフが、空気を読まずに兄妹の間にぐいぐい入ってきて二人の仲をかき回してくれるから楽しくて、少しくらい生意気で厚かましいキャラでも許せちゃうんですよね。
 パンツ見たさで暴走する紗霧は、中学生女子じゃなかったら捕まってるわ。ハッ! つまり中学生女子は正義。

 リア充中学生めぐみを、ラノベにハマらせてラノベ中毒の沼に引きずりこんでしまう智恵さんよくやった!
 そうだラノベ読者は面白い本の続きが読めなくて欠乏症で死にたくなるけれど、読むまでは死ねないという生き地獄を、修羅の道をあえて選んでいるのだ! なんてマゾだよ。よくよく考えたら引くわ。出版できないのであれば、web上でいいので書いてください! 諸先生方! おねがいします! 読者の精神死を防げます!

 出版枠を賭けて上位互換の人気作家・千寿ムラマサと争うことになった正宗たちですが、両者のスタンスの違いは、やはり山田エルフ戦の時同様、どちらが正しいとも言えないですね。そうしたセオリーがなく、作家が独自の主義思想を持っているからこそ多彩な物語がラノベには生まれてくるし、そのほうが燃えます。
 さて三巻はどうなるのか。お約束の水着回はあるのか。エロマンガ先生外でないじゃんどうすんの……。

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2014年05月13日

アナザー・ビート 戦場の音語り/佐原菜月

4048665561アナザー・ビート 戦場の音語り (電撃文庫)
佐原菜月 尾谷おさむ
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-05-10

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“旋律士”生まれながらにして旋律器官と呼ばれる特殊な紋様を身体に刻み、その器官から“音楽”を生み出すことのできる特別な存在。類まれなる才能を秘めながらも上手に音を操れない落第音学生の少女コハクと、貴族ご用達の有名作曲家・ヂェス。出会った二人の運命は、やがて大国が争う新たな戦乱へと巻き込まれていく。

 戦場に響く天使と悪魔の合唱歌

 音楽を奏でる旋律士の少女と作曲家の青年が繰り広げる音楽と歴史のファンタジー。

 絵師効果もあってか、読んでいてなんだか懐かしい気持ちにひたれる素朴な雰囲気のファンタジーでした。
 旋律士の落ちこぼれの少女・コハクと作曲家の青年・ヂェスが出会い、二つの大国の思惑に巻き込まれ引き離された二人が戦争を止めるため、音楽の力で戦場に集まった人々の心を動かす光景に胸を揺さぶられました。
 人々に想いを伝え、心を動かす音楽の力をテーマにした、久しぶりに読み応えのある作品でした。

 ヒロインのコハクは、良く言えば自由奔放な女の子、悪く言えば無作法な問題児なんですが、楽団に合わせる貴族音楽よりも、町中の平民に混じって即興演奏している姿のほうが親しみやすくて魅力に思えました。
 一般的な旋律士としては落ちこぼれのコハクの才能をヂェスだけは見抜いて、ヂェスとの出会いから少しづつ変わり始めたコハクですが、馬鹿な貴族のせいで事態が徐々に悪い方へと転がっていくのがもどかしい。

 貴族音楽も旋律士もいない外国に来て、ようやく本来の自分の音楽を奏でて人々に認められるようになったコハクの姿が喜ばしく、けれど彼女を利用して私利私欲の戦争のきっかけとする悪しき王の企みが許せない。
 自由気ままな青年かと思いきや実は一枚もニ枚も裏の顔を持っているヂェスのキャラが意外で、コハクを捕らえた神国の思惑を読んで彼とともに王国の秘密部隊として動く旋律士たちの姿に一杯食わされました。

 歴史の謎を紐解いて、王国と神国に隠された伝説の真実を解き明かす歴史ロマンとしても読めましたね。
 ただ作中の音楽描写は、文章だけだとわかりづらかったな。いや、あまり専門用語を使われてもわからんのだけれど、こうした音楽ものは実際にある曲を元ネタにしないとイメージしにくいから難しいですね。またこれだけ音楽が重要視された世界なのに楽器が発達してないのが不思議すぎる……イッツファンタジーですわ。
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2014年05月11日

やがて魔剱のアリスベル 4 緋色の挑戦者/赤松中学

4048665669やがて魔剱のアリスベル (4) 緋色の挑戦者 (電撃文庫)
赤松中学 閏月戈
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-05-10

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未来への帰還を果たすために、静刃とアリスベルは最高位の妖・『龍』の欠片を奪取する新たな戦いへと向かう。アリスベルとの関係に思い悩む静刃の前には、美しき剣士『白い妖刀』が立ちはだかり……。一方で、ビビたちも静刃たちを現代に戻すため、魔力集めの黒ミサをアイドルライブ形式で開催しようとする。

 妖刀は折れず曲がらず恋をする

 異能を持つ少年少女たちが、それぞれの願いをかけて戦い合う学園異能バトル・ラブコメ。

 アリスベルがブレザーだー! てっきり、セーラー服原理主義の人なのかと思ってたよ作者。
 未来の世界へ帰るため、日本を守護する最高位の妖・『龍』の欠片を集めることになった静刃とアリスベルが、『白い妖刀使い』早乙女刹那とチームを組み、中国の魔法少女・殲と繰り広げる激闘に燃えました。
 もう一人の妖刀・刹那と出会ったことで、妖刀使いとして進化していく静刃の成長が印象的でした。

 静刃とアリスベルを完全に封殺して制圧してしまうアリアがやたら強いんですけど、こんな強いんなら緋弾本編でのあの無能っぷりは何なん……。静刃なんてキンジに圧勝してたじゃんかよ。実力差がわからなくなる。
 未来に帰るため、最強の妖『龍』の力を頼りに、再び欠片集めに奔走する二人ですが、依頼主から紹介された刹那は、静刃と同類の妖刀使いの少女で、赤松先生にしては珍しく凛々しくてカッコ良いヒロインだった。

 初めは刃を向け合っていた二人が、次第に剣士同士としての共感や理解を得ていって、戦いを通じて仄かな恋心へと変わって、アリスベル含め愛情と嫉妬が渦巻く三角関係を築いていくところが美味しい。鵺さんGJ!
 現代ではビビや瑠姫や矢子たちが二人を引き戻すために『黒ミサ』代わりのアイドルライブを計画して、毎日一生懸命に特訓を重ねる姿に、懐疑的だった他の生徒たちも協力的になってくる光景が微笑ましかった。

 静刃を守るため、敵と刺し違える覚悟で捨て身で斬りかかる刹那は中学1年生女子のメンタルじゃないな。
 正直、刹那はアリスベルシリーズで一番好きなヒロインでしたね。再び過去の世界へと飛んだ静刃とアリスベルがきっと彼女も生き残る世界線を見つけてくれるでしょ。これ現代に戻ったら転校してくるパティーンや。
 しかし、時間軸の流れが本格的にわからなくなっていくんだけれど、これどうやってまとめる気なのか。

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2014年04月18日

大正空想魔術夜話 墜落乙女ジヱノサヰド/岬鷺宮

4048664026大正空想魔術夜話 墜落乙女ジヱノサヰド (電撃文庫)
岬鷺宮 NOCO
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時は大正、帝都・東京。今般、帝都民に悪夢を齎すのは、螺子巻き仕掛けの異形の化物「活キ人形」と、謎の魔術によってそれを悉く凄惨に屠る、異端の少女・墜落乙女―。彼女を追う少年記者・乱歩が追跡の先に見るのは、誰をも寄せ付けない少女がその裏に隠した真実か、それとも…。

 正義と悪は紙一重

 大正時代の帝都東京で「活キ人形」と戦う墜落乙女の実像を追った新聞記者が体験する不可思議幻想夜話。

 大正ロマンいいですね!和装と洋装が混じる人々、煉瓦造りの町並み、ガス灯の下で起こる血塗れの惨劇!
 帝都に住む人々を襲う怪物「活キ人形」に一人立ち向かう謎の少女「墜落乙女」の正体を知ってしまった新聞記者の乱歩が、命がけの取材を繰り返して次第に絆を育み、やがて見えてくる彼女の素顔に見惚れます。
 レトロな時代感のなかで繰り広げられる少女と人形の殺し合い。怪しく淫美な世界観に引き込まれました。

 「墜落乙女」こと華族の令嬢サヱカの人を人と思わない毒舌ぶり、ドSっぷりがゾクゾクします。
 街に出現して人々を無差別に襲う「活キ人形」を颯爽と現れては倒していくヒーローでありながら、容赦無い凄惨な壊し(殺し)方から都民に怖れられていて、サヱカ自身も悪人であることを認めて悪びれない傲岸不遜な態度に眉を顰めるものの、妙に堂に入っていて気品すら感じてしまう艶姿に思わず魅了されそうになる。

 唯一、正体を知る乱歩を通じて警視庁の婦人警官・桔梗と同盟を組み、「活キ人形」との交戦を繰り返すうちに乱歩や桔梗たちと打ち解けて、僅かながらも年頃の女の子らしさを垣間見せるサヱカがかわいい。
 罪を被せられ、捏造の証拠を鵜呑みにする無能な官憲の強引で過酷な取り調べを受ける乱歩の姿に真犯人への憤りを感じるが、サヱカが暴いた事件の黒幕は信じがたくて、間違いであってくれとさえ思いました。

 それまで信じていた正義と悪が一瞬で入れ替わるどんでん返しの結末には驚愕を禁じ得ない。
 魔法少女ものやヒーローものでは勧善懲悪が基本なのだけれど、客観的に見るとどっちが正義で、悪かなんて立場の違いで入れ替わったり確かに曖昧ですよね。そういう落とし穴に堕ちないように気をつけないと。
 レトロでクラシカル、それでいて華やかな雰囲気がとても好きなので、是非シリーズ化して続編希望。
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2014年04月15日

ブラック・ブレット 7 世界変革の銃弾/神崎紫電

4048664727ブラック・ブレット (7) 世界変革の銃弾 (電撃文庫)
神崎紫電 鵜飼沙樹
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日本の主要五エリアによる首脳会合が開催され、議長国の東京エリア国家元首・聖天子は、四エリアの首相たちを迎えることになる。五エリアの融和を説く聖天子に対し、のらりくらりと同調を示さない彼ら。各エリアの思惑が交錯し、成果も出ないまま会談が終わろうとしたとき、仙台エリア首相・稲生紫麿が爆弾発言をする。

 変わる世界、変わらない光景

 人類を脅かす超生命体ガストレアと戦う少年少女の近未来ヒロイック・アクション。

 やはり幼女たちが仲睦まじく殺し合う光景はいいな。実に可愛らしくて癒やされるわー。
 ゾディアックガストレアの天秤座(リブラ)が仙台エリア近郊に現れ、東京エリアがガストレアを操っているとの嫌疑をかけられ、エリア間の緊張が高まるなか、事態の収拾に奔走する蓮太郎の姿に手に汗握る。
 アニメも始まって、波に乗っているところに出版したかったんだろうが、薄いな! まな板にもできんぞ!

 日本統一を目指した聖天子の呼びかけで開催された各エリアの首脳会議ですが、集まった者たちは誰も彼も一筋縄ではいかない政治家ばかりで、お互いに猜疑心と警戒心を抱え、融和とは程遠い話し合いがもどかしい。
 一方、小学校に編入した延珠は、『呪われた子供たち』への偏見が色濃い教師やクラスメイトに馴染めなくて不登校に陥ってしまう姿が哀れでならない。傷つくくらいなら学校なんかいかなくていいよ!

 リブラの出現に勝手な憶測や疑惑で東京エリアに丸投げする仙台エリアの対応も腹立たしい。聖天子の主張は、相手も同じくらい心が綺麗でなければ通じない、ただ舐められるだけってことにそろそろ気づいて欲しい。
 事態を招いた本当の首謀者リトヴィンツェフは、あと一歩のところで刑務所から脱獄して姿をくらませてしまって、タイムリミットが迫るなか、解決の糸口を探して焦燥感にかられる蓮太郎と聖天子の姿が歯痒かった。

 凶悪なガストレアが目の前にいるのに、人間同士で醜い政治闘争なんかしている場合なのか、どうして汚い大人たちのために罪のない幼女たちが苦しまなければならないのか、まったく苛立たしくなります。
 そういえば、木更さんがようやくデレたというのに、出番すくないっすね! ああでも、意識しまくってる木更さんかわええ。相変わらずヒロインとしては役立たずだけれど、そのポンコツぶりにも期待してます。

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2014年04月14日

ソードアート・オンライン 14 アリシゼーション・ユナイティング/川原礫

4048665057ソードアート・オンライン (14) アリシゼーション・ユナイティング (電撃文庫)
川原礫 abec
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“公理教会”の象徴である白亜の塔“セントラル・カセドラル”。最高司祭“アドミニストレータ”の待つカセドラル最上階、一〇〇階を目指す。そして到達した九十九階。キリトとアリスの前に現れたのは、整合騎士の鎧に身を包み、瞳に冷たい光を浮かべたユージオだった。

 小さな世界に流れる星光

 現実に限りなく近い仮想世界《アンダーワールド》に閉じ込められた黒の剣士のVRファンタジー。

 おいおい、お涙頂戴のキャラクター殺しは嫌いなんじゃなかったんですか川原さん、ボロボロ泣いたわ。
 アドミニストレータによって記憶を奪われ整合騎士としてキリトの前に立ちはだかったユージオ、そして最上階で待ち受けていた最高司祭アドミニストレータ、元老長チュデルキンとの世界の存亡と魂の尊厳をかけた死闘に魅せられました。一冊まるごとラストバトルで緊張と興奮と感動で脳内麻薬ドバドバ。まさに神回!

 キリトとユージオの師弟対決はいつかやると思っていたけれど、こんな剣士としての誇りも名誉もない無意味な戦いを本人たちも読者も望んでいたわけじゃなく、お互いに剣を向け合っている姿がひたすらに辛かった。
 <シンセサイズの秘儀>から元に戻ることができたユージオ、アリスと共に最上階まで辿りついたものの、待ち構えていたラスボス二名の精神が心底腐っていて、この世界のナンバー1、2がこれかとゾッとする。

 チュデルキンやアドミニストレータの欲望という心意に、キリトとユージオ、アリス、カーディナルたちが正義と愛という心意の力で立ち向かう光景は、人間の本質が善か、悪かを試されているようにも思いました。
 キリトが主人公補正で障害を打ち破る度に奥の手を繰り出してくるアドミニストレータ、さすがラスボス。その度に人としての心の醜さが透けて見えて、だからこそ、それと戦うキリトたちの姿が眩しく映りました。

 カーディナルの献身、ユージオの覚悟には、彼らの心の美しさ、愛の素晴らしさに胸を打たれました。
 怒りと悲しみを乗り越えて、友の遺志を継いで二刀流を振るうキリトの意地と根性にも魂が震えました。
 人界編はこれにて完結と思いきや、現実世界では何やってんだ菊岡ァ! まだ続くようなので見守りたい。
 web掲載の別シリーズも準備中らしいのですが、プログレッシブ編はよ。そっちの方が好きなんですよ実は。

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2014年04月12日

魔法科高校の劣等生 13 スティープルチェース編/佐島勤

4048665073魔法科高校の劣等生 (13) スティープルチェース編 (電撃文庫)
佐島勤 石田可奈
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-04-10

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今年も、魔法科高校生にとって夏最大のイベントである全国魔法科高校親善魔法競技大会、通称『九校戦』が開催される。しかし今年の『九校戦』はひと味違っていた。競技種目及びルール改定。本番まで残すところ一ヶ月の段階でもたらされた何の前触れもない大幅変更に、魔法科高校各校は慌ただしい対応を迫られる。

 魔法師は兵器なりや

 近未来のエリート校である魔法科高校に入学した兄妹が繰り広げるマジカルバトルアクション。

 真由美先輩、卒業したのにちょくちょく登場するが、もはや扱いがエロ要員である……。美味しいポジだな
 土壇場になって競技の変更が行われた『九校戦』への準備で生徒会や達也たちが慌ただしくするなか、『九校戦』の裏で進められる兵器実験の情報を知り、阻止に動き出す達也や黒羽姉弟の暗躍が見物でした。
 2年生編はさくさく展開が進むなぁ。1年生編で設定やキャラ紹介をあらかた消化してるからこそですが。

 精神生命体パラサイトを用いた戦闘用ドールを開発し、『九校戦』での性能試験を企む九島烈ですが、それもすべて若き魔法師たちを戦争の道具という宿命から解き放つための行為で、善悪の判定が難しいですね。
 さる筋からその情報をリークされた達也と九重八雲と共に調査を進めるのですが、同時に学校では生徒会メンバーとして『九校戦』への準備も進めなくてはいけなくて、二重生活の大変さを改めて実感しますね。

 いざ、始まった『九校戦』は、1年生編と比べると試合中の描写、ページ数が少ないからか、特に奇抜なトリックプレイや新技術のお披露目のようなものもなし、消化試合のように淡々と進んで、ちょっと物足りない。
 パラサイドールとの戦いにしても、達也さん無双すぎて、最初から結果がみえてましたしね。表も裏も、もうちょっと苦戦したり、予想外の展開を読者に見せてくれてもよかったんじゃないかと思います。

 いつもは複数の問題や出来事を同時期にいっぺんに起こさせ、ストーリーを複雑化させることで、このシリーズ独特の読み応えを演出しているのですが、今回は、ストーリーが単調で読者が展開を読みやすすぎた。
 1年生編の時のように、話のスケールと密度を上げていって欲しい気もするけれど、嵐の前の静けさだとでも言うのか。そういえば7月に新シリーズを出すみたいですね。前々から別作品も読んでみたかった!期待

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2014年03月17日

男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。 (2) ―Time to Play― (上)/時雨沢恵一

4048663844男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。 (2) ―Time to Play― (下) (電撃文庫)
時雨沢恵一 黒星紅白
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-03-08

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高校生にして電撃文庫で作家デビューを果たした“僕”と、クラスメイトで声優の似鳥絵里が、週一回、アニメのアフレコに向かう特急列車で交わす作家業についての会話。―それは、二度と引き返せない終着点へと進んでいく…。

 楽しい演技の時間です

 高校生ライトノベル作家と女子高生声優の交流を描いた奇妙な物語

 何故首を絞められているのか、読んでいる途中で、あっ……(察し) これは激おこですわー。
 男子高校生でライトノベル作家をしている主人公・"僕"と、声優をしているクラスメイトの女子・似鳥絵里が、ラノベ作家と言う職業についての話を掘り下げていくうちに築かれていく絆が微笑ましかったです。
 仕事関係での付き合いだった二人が、一冊の作品を通して出会い、惹かれあっていく姿がときめきました。

 今回は、作家デビューして出版されてからの発行部数はや重版、印税や確定申告についての解説。
 最近のラノベは初版の発行部数をもうちょっと多めに刷って欲しいですね。発行部数が少ないと、欲しくても変えない難民現象が発生するのはよくあることだからです。まあ重版かかればそれがニュースになって販促になるので、よいという考えもあります。まあ私は発売日に揃えるので、持っているのはほとんど初版ですが。

 ライトノベルのアニメ化は、ファンとしては本当に一喜一憂で、戦々恐々としていますね。最初から大失敗が見えているのにアニメ化して自爆しちゃったり、大ヒット間違いなしと思っていた作品が、「どうしてこんなにつまらなくなってるんだ!」と愕然とするのも数え切きれなく、逆に成功と思えるラノベアニメはすごく少ない。クールの問題もありますが、脚本家がラノベに対応しきれてないんじゃないかと。それか大人の事情。

 タイトルの『Time to Play』の意味がようやく? 演技者にはお約束のフレーズなのでしょうか。
 ヤンデレ似鳥さんイイですね。面倒くさくて重い女の子だけれど、ラノベのキャラに憧れて声優にまでなっちゃうその作品愛は、同じラノベ読者として賞賛の声を送りたいほどのファン魂で素敵ですよ。
 作家と声優の男女の物語は、これにて終了。そろそろ長めの新シリーズがまた読みたいなぁ。

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2014年03月15日

銀光騎士団 フロストナイツ/スズキヒサシ

404866378X銀光騎士団 ―フロストナイツ― (電撃文庫)
スズキヒサシ 卵の黄身
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-03-08

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流れ者の青年アスペルはもめ事に巻き込まれた際に、ひとりの少年と知り合う。リュシアンと名乗る彼は、少年とは思えないほどの愛らしさの中に、ただ者ではない気品を感じさせた。汚い奇妙な風体とは裏腹に、時おり油断ならない身のこなしを見せるアスペル。その腕を見込まれてか、リュシアンにつきまとわれることに、

 冬の大地が人を育てる

 元剣闘士の少年が王族の生き残りと遭遇し祖国の再興に立ち上がる中世ファンタジー。

 祖国を奪われた悲劇の王女と最強の称号を持つ奴隷剣闘士のロマンスとか、めちゃんこかっけーやんけ。
 帝国に滅ぼされた祖国アジェルダンへと帰郷した元剣闘士アスペルが、ひょんなことで王族の生き残りリュシアンと出会い、奇妙な縁を巡るうちに絆が芽生え、忠誠を誓う関係になっていく姿が胸に詰まりました。
 スズキヒサシさんの好きそうな貴種流離譚、あるいは低層階級からの成り上がりものでした。

 若くして奴隷となり辛酸を嘗めたアスペルが、ようやく故郷に帰ってきたというのに、侵略者である帝国の持ち込んだ奴隷制のせいで身分の偏見が蔓延していて、感動の帰郷に水を差された気分になりますね。
 偏見に囚われず対等に接してきたのはリュシアンだけだが、彼は彼で奴隷制を嫌いつつも、綺麗事しか見えていない理想主義者で、世間知らずがアスペルを苛立たせるのも仕方がないなぁと思って読んでました。

 リュシアンに剣の腕を買われたものの、彼に付き従うアイザック、ベルノフ、ルーガンの三従士も、気位は高いくせに揃いも揃って無能っぽくて、小言はうるさいし、アスペルじゃなくても誰だってこんな職場嫌だよ。
 己の甘さから囚われの身になったリュシアン達は、いってみれば自業自得なんだけれど、助けに行くお人好しなアスペルのツンデレぶりが可愛らしく、偶然リュシアンの秘密を知ってときめく姿が初々しい。

 機転の効かない三銃士を合わせたよりも新参者のジェニス一人のほうが信用も信頼できそうだし、キャラクターとしても好感持てるので、ようやく職場環境が整えられたかな。騎士が頼りないこの騎士団大丈夫か。
 魔法も神秘もない、リアル重視の骨太設定かと思っていたら、最後の最後で世界観破壊が来たなぁ……。味方もいない、たった7人の騎士団が、ここからどうやって国を蘇らせるのか、今後の展開に期待。
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