ダフロン

2014年12月27日

フレイム王国興亡記 3/疎陀陽

4865540210フレイム王国興亡記 3 (オーバーラップ文庫)
疎陀陽 ゆーげん
オーバーラップ 2014-12-23

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テラ港湾事業に弾みをつけるため奔走するコータとエミリ。一方、ソニアはコータの手法ではテラを幸せにできないと信じ一計を講じる。テラをより良くするため――目的は同じなのに空回りする想いと生じる隙。テラを狙う狡猾な"悪魔"たちがその隙を見逃すはずがなかった――。

 金貨の微笑

 財政難を抱える異世界の王国に召喚された『銀行員』が経済を救うために立ち上がる異世界ファンタジー。

 汚いなさすが商人きたない。お金に汚いのは商人として正しいが、女を泣かせる奴は男としてダメだろう。
 テラに港を作るため、資金集めに奔走するコータたちの弱みを悪辣な商人たちに嗅ぎつけられ、罠にハマったエミリを助け出すべく一計を案じて反撃を仕掛ける駆け引きにハラハラドキドキさせてくれました。
 小説版完全オリジナルでweb版既読済の方でも新鮮な気持ちで読めます。まあ私は初見なんですがねw

 テラ港湾事業への株式の購入の呼びかけを行うも商会からの資金繰りがうまく行かず、けれども一致団結して交渉に出回るエリカとコータ、エミリ、マリアの主従関係や身分の垣根を超えた結束に胸が熱くなる。
 けれどコータに失望しテラの行く末を憂いたソニアが反対活動に動き出して、それが経験豊富な大人たちの間で話がひとり歩きして膨らんでいって、公館の人々を巻き込む騒動に繋がっていく光景が目も当てられない。

 ソルトグラスは生成して塩にすれば大儲けできるのでは?と読んでいてずっと思っていた。でも、こういう中世の時代だと塩に税金がかかったり、生成や売買に国の許可が必要だったりするから難しいんでしょうかね。
 大量の在庫を抱えるエミリの弱味につけこみ詐欺まがいの取引を持ちかけるレインは、エミリの身柄を要求しなければいいキャラだったんだが……、正直、商売敵にはしても憎まれ役の恋敵にはして欲しくなかった。

 しかし、コータを取り巻く恋愛模様を加速させるにはいい刺激でした。エリカ様ってばポンコツなのにヒロイン力は強いですねぇ。みんな幸せになるためにハーレムエンドにしましょう。どっちも美味しいです(俺得
 ついに資金が集まったかと思いきや、最後の最後でどんでん返しをぶっこんでくるこのオーバースロー! キライじゃないわ! そうそう、こういう敵ならカモーン!なんですよ。も り あ が っ て き た!!
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2014年12月04日

セントレイン戦記 1 七戦姫と禁忌の魔剣士/森田季節

4865540164セントレイン戦記 1 ~七戦姫と禁忌の魔剣士~ (オーバーラップ文庫)
森田 季節 nauribon
オーバーラップ 2014-11-21

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“北境の麒麟児”と呼ばれる王族の少年領主、ジルス・セントレイン。彼のもとに従妹の王女、クランベルが逃げ込んできた。彼らの暮らすセントレイン王国では、有力な領主たちが群雄割拠し、王にとってかわろうと争っていた。ジルスも、クランベルとともに、国土統一を懸けた戦いに参加することを決断する。

 姫騎士は麒麟を駆りて乱世に躍り出る

 有能すぎるが故に北方に追いやられた少年と王女が乱世を鎮める世直しに立ち上がる戦記ファンタジー。

 王国各地の領主が王位を狙って兵を挙げる乱世の時代。王族でありながら戦争とは無縁の北境州に左遷された少年太守・ジルスのもとに、従妹である王女・クランベルが助けを求めてやってきたことで、ジルスと北境も戦乱に巻き込まれていき、辺境で眠っていたジルスの才覚が表舞台で発揮されていく展開がワクワクしました。
 あっ、これ、戦争ごとに敵の美少女総大将をデレさせてハーレム作って勝ってくタイプの戦記モノだな?

 毎朝寝坊してはメイドを困らせる脳天気な少年領主ジルスですが、食事中も書類仕事をこなし、自ら現場に出向き、民からの信頼も厚く慕われていて、無理して格好つけずともキレ者ぶりが窺える様子が格好いい。
 幼馴染の縁を頼りジルスに助けを求めたクランベルは、騎士として剣を振るうお転婆娘だけれど、気品に溢れてお姫様らしくもあり、逞しく成長したジルスに次第に惹かれていく女の子らしさも初々しくて可愛かった。

 戦禍で乱れる故国の行く末を真に憂うクランベルの想いに応じ、兵を挙げると決めたものの兵の数に乏しく、おりしも近隣の州からの侵略軍が攻め上がってきていて、後手後手に回ってしまうのですが、量で圧倒する敵軍の慢心を突いて守勢からの逆転に転じる奇襲攻撃が燃えます。本人は戦わず兵士に指示するだけの軍師タイプもいいのですが、指揮官みずから敵軍へ斬り込んでいく殺陣シーンは戦記ファンタジーの華ですよねぇ。

 クランベルもジルスもスーパーモード持ちの無双キャラなのがズルいといえばズルいですが、敵軍の指揮官とのタイマン決闘に辿り着くまでが見所です。いや、たった二人で斥候から交渉役から作戦立案から前線指揮官から何から何まで独力でやってることがまずスゴイんですよ! 働き過ぎワロタ。ハーレム要員のヒロインよりも有能な部下が欲しい。いくらジルスが有能でもオーバーワークで倒れそうな気がする。次回に期待。
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2014年05月03日

フレイム王国興亡記 1/疎陀陽

490686676Xフレイム王国興亡記 1 (オーバーラップ文庫)
疎陀陽 ゆーげん
オーバーラップ 2014-04-24

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『勇者』として召喚されたはずなのに、そこは魔王は不在、悪の帝国も開店休業中、ごくごく平和な国。しかも、召喚後早々に王宮から放逐されド田舎『テラ』に左遷されてしまう。だが、テラで穏やかな生活が始まるかと思っていたら、モンスターなんかより、シビアで恐ろしい魔の手が襲いかかる――それは『赤字国債』!

 経済成長の鍵は、勇者召喚

 財政難を抱える異世界の王国に召喚された『銀行員』が経済を救うために立ち上がる異世界ファンタジー。

 うん、面白かった。剣と魔法で戦うファンタジーではなく、取引と契約のファンタジー。
 若き女王エリザベートの治めるフレイム王国へ手違いで召喚された銀行員・松代浩太が、王姉エリカの収める地方都市テラに派遣され、そこで逼迫した地方財政を活性化させるため金融改革に乗り出す展開が胸躍る。
 『勇者』として召喚された主人公が、経済を支配する『魔王』を演じていく姿が皮肉めいててニヤリ。

 隣国と小競り合いがある程度の平穏なフレイム王国に『勇者』として召喚された浩太は、なんの変哲もない普通の銀行員なのだけれど、実は曲者で、業務で培った交渉テクを駆使して皆を説得していく姿が小気味良い。
 平凡な田舎町テラが陥っている財政難を知るや、銀行家として経営指導を行い、領主であるエリカを焚き付け復興支援事業を立ち上げて、街や王宮を巻き込んだ一大開発プロジェクトへと広げていくスケール感が壮大。

 再開発のためには、新しく作る商業区のために、昔から住んでいる住民に立ち退き要求をしなければいけないのだけれど、巧みに交渉を進めて土地を確保していく手腕が悪どいと呆れると同時に感心した。
 都市の発展のため、住民たちのより良い幸福のために、苦渋の選択を取られなければならないときも、ヒロインたちに怒りの矛先が向かないよう、必要悪として憎まれ役を演じる浩太の彼なりの誠実さもどかしかった。

 内政スキーにはたまらない。戦うばかりじゃなくてこういう内政ものが流行ってもいいと思うのよ。
 各地から商会を誘致して商業都市としての地盤作りは完成か、証券取引の文化も根付かせることに成功したし、次は金融業か信託投資か、トントン拍子にうまく行きすぎているので次回は何かピンチに陥って欲しい。
 ラブ寄せも期待したいところですが、本命はエミリ√ですかね。王族姉妹も頑張ってくださいよ……。
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2014年04月02日

灰と幻想のグリムガル level.3 思い通りに行かないのが世の中だと割り切るしかなくても/十文字青

B00J7KAA8G灰と幻想のグリムガル level.3 思い通りに行かないのが世の中だと割り切るしかなくても (オーバーラップ文庫)
十文字青 白井鋭利
オーバーラップ 2014-03-25

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思わぬ活躍で有名になったハルヒロと仲間たち。自信を付けた仲間たちと、悩み続けるハルヒロのもとに後輩となる義勇兵達が現れる。そこにはハルヒロの記憶に残る名前を持った少女もいた。そんななか、オルタナの街はオークたちの居座るデッドヘッド監視砦の奪還に向けて動き出していた。

 勝利の流れを掴みとれ

 記憶喪失のまま異世界に飛ばされた少年少女たちが生き残るための冒険を始めるファンタジー

 この戦いが終わったら自分の店を開くんだとか、フラグすぎて釣りだろと思ってたらまさかきたー!
 人類の生存圏を脅かすオーク砦への大規模侵攻作戦が告知され、報酬に釣られてチーム・ハルヒロも参戦することになり、チーム・レンジや熟練の義勇兵たちが入り乱れての死闘が手に汗握りました。
 どんなに強くなっても一寸先は闇。一瞬たりとも気を抜けない戦いのスリルと興奮が病みつきになる。

 デットスポットを倒し、新しくスキルを得て、着実に強くなってきているチーム・ハルヒロの面々が頼もしく、リーダーとしても仲間のこと、先々のことを考えられるようになったきたハルヒロの成長が誇らしい。
 元の世界で幼馴染であった少女チョコと再会し、記憶がなくともお互いに感覚でそれとなく意識し合う姿が切なく目に映りました。この異世界に連れてきて記憶を消し去った神だか、システムだかの存在が憎い。

 周囲に仲間の義勇兵が溢れかえっているとはいえ、初対戦のオークにも対応できて後輩のフォローまでできるようになってるのは、チームワークやお互いの信頼があってこそだと思いますね。周囲の勢いに流されたとはいえ、敵地に乗り込んで立派に戦力として渡り合えてていて、もう一人前の義勇兵と言っても過言ではない。
 弱い弱いと言われながらも、即死攻撃を身につけつつあるハルヒロって、とんでもなくチートなのでは?

 ハルヒロだけでなくモグゾーやランタ、ユメ、シホル、メリィも奮戦して大健闘を見せて満足していたのに、最後の最後で落とし穴が待ち構えていて、リアルで「うわあああああ!!!」と叫んでしまいましたよ。
 戦争じゃ、いい奴から死んでいくんだ(いっそ、ランタが死ねばよかったのに)、もうすでに十分な悲哀は味わいましたし、これは勘弁してくださいよ……。悲しみのどん底からしばらく立ち直れそうにない。

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2014年03月30日

烈風の魔札使と召喚戦争 3/森田季節

4906866670烈風の魔札使(マージ)と召喚戦争 3 (オーバーラップ文庫)
森田季節 クロサワテツ
オーバーラップ 2014-03-22

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新王アルティア率いるサクラッド王国は北方のタシュク帝国とぶつかった。だが、敵国も日本出身のトップランカー、愛甲漣雅が控えていた。エイジは漣雅の強烈なコンボデッキに敗れて死んでしまい、戦争も大敗を喫してしまう。しかし、死んだはずのエイジはなぜか日本で無傷のまま、目覚めることになった。

 風と炎の英雄戦争

 異世界に召喚されたTCGプレイヤーが戦乱のなかで英雄へと駆け上がる戦記ファンタジー。

 この帯のネタバレっぷりである。あかんて。例によって、いつまでもネタにされ続けるんだろうなぁ。
 タシェク帝国の宣戦布告を受けたサクラッド王国ですが、帝国の秘密兵器・愛甲漣雅に主人公・エイジが敗れ、追い詰められていく戦況のなかで、エイジの復活を信じて耐え忍ぶ少女たちの姿が健気でいじらしかった。
 ついに自分よりも強い相手と遭遇したエイジ、果たして目の前に立ちはだかる壁を越えられるのか。

 サクラッド王国を一つにまとめ上げた英雄として名が鳴り響き、縁談の誘いが後を絶たないエイジのモテっぷりが天井知らずですが、タシュク帝国との会談が物別れに終わり、一転して殺伐とした戦争へと陥っていく急展開には、唖然とさせられます。戦場で遭遇した第7位のトップランカー・愛甲漣雅のコンボに為す術もなくやられてしまったのは実力の差というよりも、あれは一種の初見殺しなので仕方ないと思えましたね。

 精神の欠片の残りを依代に地球で目覚め、幼馴染・高坂ひたきに匿われたエイジですが、こんな子に想われていたのに、なんの未練もなく異世界行きを決めたのかと思うとバカなの死ぬの……死んでたなそういや。
 異世界ではエイジの復活を信じて、リッカやアルティアたちが帝国軍と愛甲漣雅の猛攻撃に多くの犠牲を払いながらも負けない戦いを強いられて、どっちの世界でも女の子を泣かせてて、つくづくクズだなぁ。

 今回の無限点コンボのようなハメプレイは現実のTCGでも稀によくあります。でも、すぐに大会で禁止カードになったり、対抗カードが出て、実戦では机上の空論で使えなかったりするんですけれどね。ルール無用のネオアルカディアでは現役か。しかし、どんなに強いコンボも手の内のバレているデッキでは勝てないのがTCG。
 次回、地球で新しいカード知識を得て帰ってきたエイジのリベンジマッチに期待しましょう。

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2013年12月28日

きんいろカルテット! 1/遊歩新夢

4906866522きんいろカルテット! 1 (オーバーラップ文庫)
遊歩新夢 DSマイル
オーバーラップ 2013-12-21

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ユーフォニアムという楽器の演奏者である摩周英司は、恩師の紹介で中学生の少女たち4人の楽器コーチをすることになる。清楚で真面目な菜珠沙、元気な性格の貴ノ恵、しっかりものの美夏、上品でおとなしい涼葉。日本では馴染みのない楽器を演奏する少女たちに英司は、彼女たちが最高の四重奏を奏でられるように奔走する。

 小さな音楽家たちの奇跡

 ブリティッシュ・カルテットを目指す女子中学生たちとコーチになった青年の心に響く青春音楽ストーリー

 天使や……、天使たちが喇叭を吹いとる。ラノベの音楽ものは傑作という法則に外れなし!
 ユーフォニアム奏者の音大生・英司が、四人の女子中学生カルテットを指導することになり、技術は未熟だが才能あふれる彼女たちに寄り添いながら、音楽の素晴らしさを伝えていく光景が心温まりました。
 これは納得の大賞。久しぶりに読後に清々しい気持ちに浸れる作品と出会えました。このまま昇天しそう。

 「ブリティッシュ・カルテット」と呼ばれるバンド形式にこだわったせいで、吹奏楽部を追い出された菜珠沙、貴ノ恵、美夏、涼葉の四人の美少女と、コーチ役として抜擢された英司との師弟の交流が微笑ましい。
 お互いにマイナーな金管楽器を好むことからすぐに意気投合するのですが、音楽に関してはスバ抜けた才能を持つくせに、それ以外は抜けている音楽バカな英司とロリっ子たちとのイチャイチャがニヤニヤしまくり!

 コンクールに出場して実力を示そうとしたものの、吹奏楽部の顧問が妨害を仕掛けてきて、不当に貶められる姿が読んでいて辛かったけれど、汚い大人に負けじとより結束を強め、練習に打ち込む情熱に魅せられた。
 英司と菜珠沙には同じユーフォニアム奏者というだけでなく、とある人物を介した繋がりがあって、今は亡きその人の遺志を音楽で継いでいこうと誓う二人が素敵でした。これは中1女子を口説いても許されるケース。

 音楽は勝ち負けじゃない。勝利よりも大切な、人々に感動を呼び覚ます、もっともっと素晴らしい何かだ。
 音楽家としての第一歩を踏み出した少女たちと英司の心のアンサンブルに胸がいっぱいになりました。
 吹奏楽の世界を少しだけ理解できました。この話の顧問は流石に誇張し過ぎだと思うけれど、現実社会でも試合に勝つのが目的になって肝心の教育を忘れている部活顧問って、世の中に星の数ほどいるでしょうね。

 "教える"ということは、一体どういことなのかいま一度考えて欲しい、教育者にも読んでもらいたい一冊。
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2013年12月27日

秋葉原ダンジョン冒険奇譚 1/中野くみん

4906866530秋葉原ダンジョン冒険奇譚 1 (オーバーラップ文庫)
中野くみん 桑島黎音
オーバーラップ 2013-12-21

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秋葉原ダンジョン―それはラジ館跡地に突如出現した新興ダンジョンである。ダンジョン内部はマナに満ち、銃火器、精密機器が作動せず、魔法が存在する魔訶不思議な空間。そのダンジョンに新たな発見とスリルを求める“冒険者”たちは、日がな探索に明け暮れていた―。

 ダンジョンへ、お帰りなさいませ冒険者様

 秋葉原にあるダンジョンを舞台に、日常とファンタジーの交錯する新感覚ヒロイックサーガ。

 男ならダンジョンに行け。冒険者が不人気職とか、この世界の男どもは夢やロマンが欠けている……。
 秋葉原に出現したダンジョンに潜り、一攫千金を夢見る新米冒険者・祥真が、ダンジョンに眠る秘薬を求めて外国からやってきた王女・アーシェラと出会い、仲間たちと成長していく光景が微笑ましかったです。
 ゲーム要素は薄め。レベル制・スキル制ではなく装備制のゲームシステムか。これなんてモン○ン。

 天然で無自覚に女ったらしな祥真と親分肌で面倒見の良い莉央、そして仲間に加わった純真一途な王女アーシェラ、真面目で不器用な女騎士クリストールと、好感が持てるキャラたちの掛け合いが楽しかったです。
 身体能力に優れる他のメンバーの足手まといにならないよう、魔法使いになる選択をしたアーシェラの、自分を犠牲にしてでも魔法習得にかける決意が胸を打ちましたね。俺の使いなって腕一本差し出す祥真、軽いな!

 パーティとして息が合い始め、ハイスピードでダンジョンの階層を攻略していく祥真たちだけれど、順調に回り始めた矢先にアーシェラたちの真の望みを知って、パーティ解散を迫られてしまうのは物寂しかった。
 異常事態発生中のダンジョンに迷い込んだクラスメイトを助け出すため、躊躇いもせず命がけの無謀なダンジョンアタックに挑む4人の姿に胸が熱くなった。無茶苦茶だけれどお互いを信じた戦いぶりに興奮しました。

 まあでも、これ秋葉原である意味あんのかなって。読者も馴染み深い場所だからわかりやすいって理由もあるけれど、話の場面はほぼ異世界のダンジョン内だし、秋葉原である設定を活かしきれてないのが勿体ない。
 祥真の特異性も、曰くありげな書き方をしておいて最後まで明かされねーし、アーシェラやクリストールともフラグだけ立ってるのにイベントが進まず中途半端な感。キャラ紹介の一巻目としては十分な出来か?
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2013年12月04日

烈風の魔札使と召喚戦争 2/森田季節

490686645X烈風の魔札使と召喚戦争 2 (オーバーラップ文庫)
森田季節 クロサワテツ
オーバーラップ 2013-11-22

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リカール侯国はついにサクラッド王国の首都コーティアを攻めるための最終段階に入った。エイジは身の危険を伴う奇襲作戦を提案し、エイジをこの世界に呼び出したリッカは、運命を共にして戦うことを決意する。一方、サクラッド王国の王女アルティアは侯国打倒のために単身、動き出していた。

 戦場を駆ける英雄

 異世界に召喚されたTCGプレイヤーが戦乱のなかで英雄へと駆け上がる戦記ファンタジー。

 うわ、幼女つよい。マユとアルティアの幼女キャラ大活躍回でした。このまま幼女のターンでいいのよ!
 サクラッド王国の首都コーティアを攻め入る主人公エイジの戦いの裏で暗躍し、魔札使ではない普通の少女の身で各国の情勢を動かし、リカール侯国を窮地に追い詰める王女アルティアの政治手腕と覚悟が見事でした。
 てっきりリッカとばかりバカップルするかのと思ってたが、ハーレム化か……主人公補正欲しいですね。

 エイジはナチュラルに口説き文句が出てくるオラオラ系なのに女心に疎いって、なんて惜しい奴。
 サクラッド王国を攻める作戦行動中もリッカはエイジに秋波を送っているのに、エイジときたらどう相手を攻め落とすか、戦いのことしか頭にないのだから呆れますね。平和になったらどうするのか、侯国を出て傭兵として戦いに明け暮れるのか、それよりも側に居て欲しいと美少女にこれだけ引き止められるなんて羨ましい。

 侯国に恨みを持つエルフや欲に釣られた大公国の魔札使を引っ張り出して、手薄になった侯国に攻め入る王女アルティアの外交交渉術、祖国のために命を賭ける捨て身の覚悟は敵ながら惚れ惚れしますね。
 自軍の倍以上の大軍、それもこれまでとは違いリソースの概念を理解した相手を前に、切り札に切り札を重ねたエイジの作戦が、これまた大胆不敵な挑戦で、戦場すべてを手玉に取った戦いぶりが痛快でした。

 大型クリーチャーやリセットカードは、数多あるTCGの中でも定番の切り札で、強力な分、対策のための妨害カードを仕込んでおくものなのですが、この異世界だとその手のカードは存在しないのか、もしくは近接距離でないと効果を発動できないんでしょうかね。しかし、戦場全体に効果を及ぼすフィールド魔法カードみたいなカードも出てきましたし、今後、どんな新しいメタカードが出てくるか楽しみです。次回ライバル登場か?

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2013年12月01日

灰と幻想のグリムガル level.2 大切じゃないものなんか、ない/十文字青

4906866476灰と幻想のグリムガル level.2 大切じゃないものなんか、ない。 (オーバーラップ文庫)
十文字 青 白井 鋭利
オーバーラップ 2013-11-22

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見知らぬ世界「グリムガル」へと連れて来られたハルヒロたちは経験を積んでようやく半人前から抜けだそうとしていた。ステップアップのために新たなダンジョン「サイリン鉱山」へと挑む。順調にいくかと思われたが、予期せぬ仲間との別行動を強いられ、更に『死の斑』という異名を持つ巨大なコボルドが襲いかかる。

 命を背負う重み

 記憶喪失のまま異世界に飛ばされた少年少女たちが生き残るための冒険を始めるファンタジー

 MMORPGなどでも、問題起こすプレイヤーは必ず一定数いるんだよなぁ。人間関係リアルで生々しい。
 次なるダンジョン「サイリン鉱山」へと挑む事になったハルヒロたちが、強敵との戦いの中で仲間との関係、チームワークを見つめ直し、リーダーとして、義勇兵としてちょっぴり成長していく姿に胸が詰まる。
 ラブ寄せはどうしたんですか。もっとエロや恋愛をハッスルハッスル、キャッキャウフフしましょうよ!

 ゴブリン退治にも慣れ、生活も安定してきたけれど、同期のレイジの壮絶な戦いぶりを目にして、ずっとこのままの自分でいいのか、後輩に追い抜かれるのではと、次の狩場を求めるハルヒロの焦燥感がもどかしい。
 メリィが以前の仲間を失った「サイリン鉱山」に挑むことになったものの、慣れない初めての狩場で仲間たちが緊張している時に、空気を読まないランタの一言一句がチームの和を乱すところは流石に気に障りますね。

 ランタ自身も身勝手な自覚はあるのに意地を張って改善しようとしないもんだから、本当に面倒臭い。このままランタをパーティに居させるべきか、追い出すべきか、リーダーとして悩むハルヒロに同情しますよ。
 それでも仲間の囮となってダンジョン内で取り残されたランタを見殺しにしないというハルヒロの選択は支持する。仲間を見捨てるリーダーに人はついてこない。みんなも本当は助けに行きたかったんだと思います。

 スケルトンや『死の斑』といった強敵の連戦をくぐり抜けて、ハルヒロの成長ぶりが目ざましい。
 新しいスキルを覚えたからというだけでなく、仲間たちの連携もレベルアップしてましたし、ハルヒロが時折見ている光の線は、クリティカルなのか、即死攻撃なのかわかりませんが、身につけられたらチートやな。
 最後、暁連隊のメンバーと顔を合わせることになってたけれど、次はソウマさん絡んでくるのかね。

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2013年08月27日

烈風の魔札使と召喚戦争 1/森田季節

490686631X烈風の魔札使と召喚戦争 1 (オーバーラップ文庫)
森田 季節 クロサワ テツ
オーバーラップ 2013-08-22

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大人気カードゲーム「ネオアルカディア」の実力派プレイヤーとして頭角をあらわしていたエイジは、正体不明の少女芹香との出会いをきっかけに、ゲームと同じ名前を持った異世界へと召喚される。その世界ではゲームのようにカードから精霊を召喚する魔札使(マージ)達の戦争が繰り広げられていた。

 神風を吹かせる男

 異世界に召喚されたTCGプレイヤーが戦乱のなかで英雄へと駆け上がる戦記ファンタジー。

 TCGプレイヤー必見! 俺らが夢見た物語がこの中にある! 俺たちのターンが来たぞおおおおお!
 異世界ネオアルカディアに召喚された主人公・エイジが、得意とするカードゲームに酷似した魔札使たちの召喚戦争に参加し、窮地に陥っていた侯国軍を蘇らせ、数で勝る侵略軍の劣勢を覆していく光景に胸が躍った。
 四属性の作風を持つ森田季節さんでも、熱血と情愛を司る森田サマーさん系統のド直球な作品でした。

 カードゲームに自分を捧げているエイジのTCG脳っぷりが印象的でした。遊びではない、未知の異世界に行くというのに嬉々としてゲートに飛び込んで、「そのほうが面白い」と言い放つ狂いっぷりが小気味いい!
 あっという間に異世界に適応して、凄腕の助っ人として知識と経験と活かして騎士団を再編成して、次々と連勝を重ねていく戦いぶりも、カードゲームのプレイングと戦略戦術の定石が組み合わさっていて面白い。

 魔札使たちの戦争は、地球のカードゲームめいているけれど詳細なゲームシステムはブラックボックス化していて、それも多人数VS多人数での集団戦なのでエイジ一人が局地戦で勝ってもダメというところが難しい。
 それでもどんな時もポーカーフィスで自信満々なエイジの存在によって味方の軍が勢いづいて、彼に負けじと奮起する仲間たちの姿も凛々しくて、お互いを補うエイジとリッカのラブラブタッグが素晴らしかったw

 主人公がビートダウン系のデッキで、黒幕がメタコントロール系のデッキという、相反するライバル関係の使い手とか熱いな! 原型はそのまんまMtGですね。エイジが緑単のストンピィで、芹香先輩が青単コントロールですねわかります。カードゲームを知っているとより面白味が見つけられる。読んでいる間中、TCG熱が沸き上がってきてヤバい。こんな感想なんか書いてるよりもデュエルしたくなりますね。誰か遊戯王adsやろうず!

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2013年07月26日

蒼天のサムライ 第一部 端琉島脱出戦/田代裕彦

4906866247蒼天のサムライ 第一部 端琉島脱出戦 (オーバーラップ文庫)
田代 裕彦 naji
オーバーラップ 2013-07-24

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煌国の下士官竜士である竜洞マスミは赴任先の端琉島で親友の竜部シンヤとその妹、アユネと再会を果たす。敵国であるグロース帝国が端琉島へ奇襲攻撃を行い、部隊は甚大な被害を被ってしまう。かろうじて難を逃れたマスミとシンヤは、住人を脱出させるため、絶望的な戦力差のなか、敵国の戦闘機部隊との戦いに赴く。

 その名を知らぬ者なし

 天津国の歴史に名を残す二人の傑物の軌跡を描く戦記ファンタジー

 傑作じゃないですか(断言)竜と戦闘機が空戦を繰り広げる世界観イイネ! ロマン溢れて脳汁ドバドバ!
 天津国最南端の端琉島へ赴任した主人公・マスミが、グロース帝国の侵略によって占領された島から住民を助け出すため、戦友たちを犠牲にしながらも軍人としての矜持を貫き、戦い抜く様に胸が熱くなりました。
 戦争の中で次々に大切なものを失いながらも、与えられた任務を最後まで全うする男の姿に惚れました。

 竜に乗って空を駆る竜騎兵の師範として任地に就いた竜士のマスミですが、そこでは軍隊での階級よりも家格や家同士の対立といった悪しき風習である封建制が蔓延っていて、内憂に悩まされるのだけれど、祖国の敵であるグロース帝国が奇襲攻撃を仕掛けてきて、突如発生した実戦の中で自分の力を周囲に認めさせ、反目し合っていた部下たちとも信頼を築いて、落ちこぼれという風評を覆しエースとなっていく光景に心が晴れました。

 占領された島から非戦闘員を脱出させる時間を稼ぐため、敵基地からやってくる戦闘機の迎撃にあたるも、自分の指揮下で部下たちを次々と失い、果たして自分の判断が正しかったのか、無力感に苦しむ姿が辛かった。
 犠牲を強いられながらも己の誇りを貫くため、最後に敵基地への決死の救出作戦を敢行するのだけれど、任務の成功と引き換えにかけがえのない大切な人を失って、それでも戦場の常と泣くに泣けない彼に泣けました。

 部下を生き残らせようと、必死に敵指揮官の思考を探ろうとするのだけれど、相手が考えられないほど無能で、過大評価をするあまり無駄に振り回されてきたことに気づいた脱力感、疲労感ときたらたまりませんね。
 今回は歴史に名を残す傑人・マスミの壮絶で殺伐とした初陣劇が描かれたわけですが、マスミの影に隠れがちになっていたもう一人の偉人であるシンヤの活躍は、次回に期待しましょうか。二人の友情がどうなるのか?

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2013年07月25日

ろりひめさまの建国日誌 1/箕崎准

4906866263ろりひめさまの建国日誌 1 (オーバーラップ文庫)
箕崎 准 しゅがすく
オーバーラップ 2013-07-24

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座礁した艦【フネ】から救出した女の子は、小さな独立国のお姫様だった? しかも善意で泊めたはずがいつのまにか自宅が領土認定されてしまった! そこへ「お友達」としてまさかの皇女様がやってきたり、某国大統領の娘が侵攻してきたりと、なにがなにやら上を下への大騒ぎ。

 皇帝陛下はスク水ロリータ

 ロリ姫さまと過ごすやんごとない日常系ラブコメディ

 ロリなお姫様が皇帝やってる帝国とか、なにそれ臣民になりたい。何処に税金払えばいいのですか。
 嵐の夜に座礁していた船に乗っていた少女・メリッサを助けたことで、婚約者候補となった主人公・和樹の元に、彼女を始め次々とロリっ子が押しかけてきてハーレムを形成していく光景にニヤニヤが止まりません。
 サムネにつられて!なロリコン紳士がホイホイ釣られていそうな良いロリロリ具合でした。

 未だ国として国際的に認められていない海洋国家ガーランド帝国の皇帝メリッサ(10歳)の婚約者候補となってしまった和樹だけれど、ロリに興味はなく巨乳好きを公言するわりに可憐なメリッサに見惚れてるあたりロリコンの素質ありそう。自宅や学校にまでメリッサや、その友人の舞子内親王が押しかけてきて、妹の芽衣を含めて気がつけばロリっ子だらけ(+メイドさん、幼馴染アリ)という生活も毎日が賑やかで楽しげで夢のよう。

 メリッサの目指す国作り事業に巻き込まれてしまう和樹の特技や特徴といえば、せいぜいオンラインRPGで大規模ギルドの団長をしている程度だけれど、それがどう活かされるのか、いまのところは疑問ですね。
 メリッサのライバルである大統領の娘チェルシーが挑戦をふっかけてきて、毎度子供のじゃれあいのような喧嘩が微笑ましくて、敵でありながら家庭の事情で行き場を無くしたチェルシーを助ける姿にも心温まった。

 毎日遊びながら過ごしてるだけに見えて、なんだかんだ領土や臣民をゲットしているあたり順調なのか。
 巻末に早くも新キャラが登場しているが、この作品の世界観はどうなってるんだ、いきなりファンタジー展開突入なのか、ああ、そうか邪気眼ですねわかります。和樹がロリっ子に二股、三股かけて振り回されているロリコンにしか見えないので、次回はもうちょっと主人公らしい活躍を見せて欲しいところ。

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2013年06月24日

灰と幻想のグリムガル level.1 ささやき、詠唱、祈り、目覚めよ/十文字青

4906866220灰と幻想のグリムガル level.1 ささやき、詠唱、祈り、目覚めよ (オーバーラップ文庫)
十文字 青 白井 鋭利
オーバーラップ 2013-06-22

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ハルヒロは気がつくと暗闇の中にいた。何故こんなところにいるのか、ここがどこなのか、わからないまま。 周囲には同じように名前しか覚えていない男女、そして地下から出た先に待ち受けていた世界。生きるため、ハルヒロは同じ境遇の仲間たちと義勇兵見習いとして「グリムガル」への一歩を踏み出していく。

 明日へと託された思い

 記憶喪失のまま異世界に飛ばされた少年少女たちが生き残るための冒険を始めるファンタジー

 Wizardryだ!まごうことなきWizardryの世界だ。こういう作品を読むと本当に異世界に行きたくなります。
 記憶を失い異世界グリムガルへとやってきた主人公ハルヒロが、同じ境遇の少年少女とパーティを組み、義勇兵見習いとしてモンスター退治を続ける日々の中で築く信頼と絆、避けられない出会いと別れに涙しました。
 ゲームのような世界観でありながら、死んだらそこで終わりというシビアなリアルが恐ろしい。

 やや消極的で頼りない少年のハルヒロですが、運良く出会って共に行動するようになるパーティの仲間たちがイイ奴らばかりで、そんな彼らのために気を配り、他人の気持ちを察する思いやり溢れる姿がよかったです。
 それまでの記憶も経験も失ったレベル1状態で異世界に放り出されたものだから、RPGのセオリーとかまったく無視で、ヒーラーが前衛とか危なっかしいことばかりして、案の定、大惨事に繋がって目も当てられない。

 パーティの要とも言える仲間を失い、深い悲しみに暮れる面々に対し、仲間を託されたハルヒロは代わりのリーダーにならなくてはならず、必死にもがきながら前に進んでいこうとする決意に心が揺さぶられた。
 新しくスカウトした神官のメリイとそれまでの仲間との関係や連携を試行錯誤で取り持ちつつ、装備を整え、スキルを磨き、苦労に苦労を重ね、やっとの思いで仲間の仇討ちを果たす光景に胸がいっぱいになりました。

 何もかもが足りていない落ちこぼれプレイヤーが失敗と挫折を繰り返して、少しずつ経験値を稼いで成長していくストーリーに親近感と共感を得ます。元からステータスの高いルーキーやベテランにしてみれば取るに足らない僅かな経験値でも、努力を必要とする彼らには大切な仲間との思い出、ドラマが詰まっていました。
 見習いからようやく一人前の義勇兵になった彼らの今後の行く末と世界観の秘密に興味が高まる。

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2013年05月28日

浮遊学園のアリス&シャーリー 1/むらさきゆきや

4906866182浮遊学園のアリス&シャーリー 1 (オーバーラップ文庫)
むらさき ゆきや しらび
オーバーラップ 2013-05-23

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特有幻想という異能力に覚醒してしまった者たちは、一般社会から隔絶された空中学園都市《楽園》に集められていた。平和な高校生だった柾貴は再会した幼馴染みのシャーリーと、物静かで不思議な少女アリスに出会う。ふたりは、幻想悪用の校則違反者を取り締まる《規律委員》の最強ペアだったが

 妖精の女王と星屑の女神

 天空に浮かぶ学園都市で異能を操る少年少女が繰り広げる紅茶とお菓子の学園異能バトル

 学園異能とメルヘンが融合したような世界観が可愛らしくて、描かれる未来観に夢がありました。
 特有幻想と呼ばれる異能を持つ人間たちが集められる空中都市<楽園>に転校してきた主人公・柾貴が、学園の問題児であるヒロイン二人組と、異能を悪用する生徒の取り締まりに奔走する光景が愉快痛快でした。
 どちらがメインでもサブでもないらしいヒロインの、いったいどっちを応援すればいいのか。私は両方で。

 天真爛漫な幼馴染のシャーリーと、唯我独尊なお嬢様のアリスが好対照でどちらも魅力的でした。二人とも学園最強のレベル7として、生徒を取り締まる風紀委員コンビでありながら、備わった異能が超強力で手加減できずに毎回校舎を破壊してしまうことから問題児扱いされていて、そんな二人と親しい柾貴まで危険人物と思われて転校早々一目置かれる存在になってしまう姿が可笑しいです。柾貴本人も随分と変わっていますけどね。

 シャーリーとのコンビを解消したアリスの新たなパートナーとして委員会に登録されてしまい、納得いかないシャーリーと我侭なアリスの二人のヒロインの間で板挟みにあうラブコメ要素も美味しかったです。
 風紀委員の仕事として異能を強化する違法なアプリの出処を探っていくうちに、黒幕へと行き着いて戦いになってしまうなかで、戦闘向きではないながらも彼女たちをアシストする柾貴の異能の活かし方がよかった。

 キャラは可愛いし、世界観も興味深いものの、この作品のテーマというか、目標というか、やりたいことの方向性がイマイチ見えてこないのが残念ですねぇ。学園異能でラブコメとたまにバトルありますよくらいか。
 私的には空中都市ってところに個性を感じるので、次回はこの世界観の実際の暮らしぶりや舞台背景をもっと広げていって欲しいかな。作中の言葉を裏読みすると他の国の<楽園>との交流とかもあるんでしょうかね。

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2013年05月26日

温泉ドラゴン王国 1 ユの国よいとこ、一度はおいで/山川進

4906866174温泉ドラゴン王国 1 ~ユの国よいとこ、一度はおいで~ (オーバーラップ文庫)
山川 進 児玉 酉
オーバーラップ 2013-05-23

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山ばかりの貧乏国家「ユ国」の王子アリマは国の財政難について悩んでいた。そんな彼の元にある日、隣国の研究員が訪れる。研究者である少女ハナは、ユ国唯一の特色である「温泉」には特殊な効能を発揮する性質があることを明らかにする。アリマは温泉旅館での財政再建を目指すが

 平和を愛する温泉の魔法

 温泉旅館を作って王国を救おうとする王子と少女とドラゴンのドタバタ&ほのぼの温泉ファンタジー。

 風呂に入るシーンのたびに混浴するヒロインの数が増えていってるじゃねーか……。この温泉、入りたい。
 財政破綻寸前の小国ユ国に湧き出る唯一の資源「温泉」で観光客を呼ぼうと王子である主人公・アリマと、温泉研究員のハナが伝説に伝わる「温泉旅館」の復活を目指して繰り広げるドタバタがほのぼのと和みました。
 温泉を目当てにやってくる珍客を相手に毎度騒動が巻き起こっていくやり取りも可笑しかったです。

 貧しい祖国と国民と憂う生真面目な王子アリマと引っ込み思案だけれど温泉の研究には人一倍熱心なハナが出会って、お互いに想いを寄せていく姿が初々しくて、微笑ましかった。当たり前のようにあるものだから特別だとは思っていなかった「温泉」の価値に気づかせてくれたハナに感謝するアリマと、周囲にバカにされていた自分の研究を初めて認めてくれて信頼と居場所を与えてくれたアリマに尽くすハナの姿がいじらしかった。

 古代人の建てた「温泉旅館」を蘇らせようとする二人の話を聞いて、温泉目当てにドラゴンやら、勇者やらがやってきて王国に騒動をもたらすのですが、散々、大騒ぎして最後にはオチがつく展開が笑いを誘います。
 しかし、ユ国の温泉を狙って、帝国の軍隊までやってきてしまって、降参するのかそれとも戦うのか、王子として重要な判断を迫られるアリマの決断が、温泉への愛と平和への思いに満ちていて心が温かくなりました。

 帝国軍を撃退する策は、あからさまの上に強引すぎる気もしましたが、まあライトファンタジーだし……。温泉の効能をなんでもアリにしちゃうと、それはそれでリアリティが崩れて読者を離れさせるんじゃないかと。
 ユ国ののどかな国民性の登場人物たちやドラゴンに好感が持てました。キャラ名が全員温泉地の地名になってますが、ミササの元ネタの美笹の湯のマスコットキャラが「温泉に入った恐竜」だと思うとニヤリきます。
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2013年04月29日

ロンリー・マイセルフ・サーガ 1/深山ユーキ

4906866131ロンリー・マイセルフ・サーガ 1 (オーバーラップ文庫)
深山ユーキ 一葉モカ
オーバーラップ 2013-04-24

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“神成りの儀"を無事成功させた八坂信輝は念願の神の力を手に入れたはずだった――だが、よくよく聞くと神は人々から信仰されないと、この世から消滅してしまうらしい。信仰を得るには地道に人の願いを叶え続けなければならない。しかも、十年ぶりに再会した妹・八坂命が神殺しになっていて

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 "神"になった少年と"神殺し"になった少女のこの国で最も新しい神話。

 ラノベネタのパロディやメタ発言の嵐は止めてよー。もう流行らないですから。一発ギャグがウケるのは最初の1、2年だけなんですって、それも超有名作が何作も出た後ではな。例えば、主人公がラノベ作家を目指しているとか、サブカル産業に関連したストーリーであるとかで、流れとしてネタを差し込んでくるならいいんだけど、この作品、別にそっち方面のストーリーじゃないでしょ。場違い感が痛々しいんですよ。

 中二病の主人公の信輝と、彼にべた惚れな幼馴染の鈴や、ブラコン気味な従妹の命の三角関係なんかは、どこのギャルゲかって思うけれど、そこはいいよ。そういうベタな王道アタイ嫌いじゃないわ!
 鈴に毎日朝飯作ってもらってて、命が寝床に忍び込んでくるのもニヤニヤが止まらないよ。ただしテメーはダメだ!なヒロインが一人いるけれど、ウザカワキャラってのはそういうものだし文句はない。

 しかし、この作品の肝である、神と神殺しの対決が結局先送りってのがまったく読者を失望させるよ。神として人々の願いを叶えなくては消滅してしまう主人公と、神を殺さなければ消滅してしまうヒロインという、両極端で相反するジレンマを作り出し、さてどう落としドコロをつけるのかと期待してたのに、この結末はないわー。こんなの夢オチと変わらないですよ。問題の解決方法としては「下の下」です。

 神殺しにしてもなー、神様に人間味を与えちゃダメだったんじゃないか。命のキャラが神様であれば誰でも斬殺するサイコさんみたいだし、せめて悪神や邪神オンリーとか、霊力を奪うくらいにしておくとか。
 もしくは神様を自然崇拝や偶像崇拝により神格を得た人格意識を持たない無機質で無慈悲なシステムかモンスターみたいな設定にしておけば、命の側にも情状酌量の余地が生まれたかもしれん。

 私が予想していた結末は、信輝が神の力で命の神殺しに手を貸して、「すべての神を殺し尽くしたら、最後にお前の手で殺されてやるよ」ってなれば、それなりにハッピーエンドかなと思ってたんだが。
 問題あるとすれば、この作品、悪役がいないのがな。わかりやすい敵役の神でもいればいいんだけれど、淡々と続いてしまいメリハリがない。なんだろなープロットの段階でもうちょい工夫できるでしょ。
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2013年04月28日

よろず屋退魔士の返済計画 1 100億の契約書/SOW

490686614Xよろず屋退魔士の返済計画 1 100億の契約書 (オーバーラップ文庫)
SOW 蔓木 鋼音
オーバーラップ 2013-04-24

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退魔の名門「神堂家」から破門され、かつて住んだ家に戻った追儺狗朗を待っていたのは幼馴染の九十九みぎりと100億円という莫大な借金だった。破門された身のため、退魔士として依頼を受けることができない狗朗だったが、みぎりの発案により「死者専門の何でも屋」を開業することに。

 この世の未練よろず承ります

 100億円の借金を背負った天才退魔士の少年と暴君少女が始める借金返済コメディ

 いまラノベ業界で最もアンタッチャブルな作品と言われている今作でしたが、普通に面白かった。
 ちゃらんぽらんな父親のせいで百億の借金を背負った主人公・狗朗が、借金の返済のために幼馴染・みぎりと幽霊専門の便利屋を始めるのですが、持ち込まれる依頼内容が一筋縄ではいかず、死んでるのにやたらとアグレッシブな幽霊やツンデレなヒロインたちに振り回される姿が可笑しかったです。

 ヒロインとしてはあまりに外道すぎて作者も手直しに苦労したという幼馴染みぎりでしたが、借金の取り立て人として横暴に振る舞いつつも狗朗に執着している一面が見え隠れしていて可愛かった。
 二人が受ける依頼は、悪い男に騙された女の幽霊のお悩み相談だの、ライバル漫画家の幽霊たちの喧嘩だの、ぶっちゃけしょうもない出来事ばかりなのですが、陰鬱にならない気楽さが笑いを誘います。

 むしろ腐ったエゴと歪んだプライドから狗朗を追い出した本家神堂家の親族たちに怒りを覚えますね。死者である幽霊たちより、生きている者たちのほうがよっぽどドロドロとして醜くて胸クソ悪かった。
 本人には何の罪もないのに哀れな境遇で虐げられて育ち、現世に執着が薄い狗朗を黄泉から呼び戻す生きる理由となる、みぎりとの絆や思い出が心温まった。淡白で地味な狗朗のキャラが少し理解できました。

 ツッコミどころがあるといえば、みぎりも狗朗も高校行ってないのかね。やっぱラノベのキャラは学園生活を描かないと、今ひとつしっくりこないし、とくに幽霊や退魔ものは時代観も垢抜けないような。
 とはいえ、天才退魔士である主人公がスーパー霊能力を発揮して力づくで解決するみたいな、ありふれてつまらない結末にならなかったところだけは本当によかった。あとハーレム展開だけは止めてください。
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2013年04月27日

IS インフィニット・ストラトス 8/弓弦イズル

4906866123IS〈インフィニット・ストラトス〉 8 (オーバーラップ文庫)
弓弦イズル CHOCO
オーバーラップ 2013-04-24

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対IS用IS『ゴーレムIII』による襲撃事件のダメージがまだ癒えぬIS学園では、それぞれの専用機がメンテナンスを余儀なくされ、一夏は『白式』と共にその開発元である倉持技研に向かう…。再び学園に忍び寄る黒い陰謀。そしてヒロインたちの一夏への想いはいよいよ高まっていく!

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 ISと呼ばれる近未来兵器で武装した少女たちが「強さ」を問うハイスピード学園バトルラブコメ。

 あ、あれ? 作者劣化した? こんな文章だっけ? なんか推敲がゼンゼン足りてないカンジするよ?
 襲撃事件によってダメージを負った専用機たちがメンテナンス中の最中、またしても学園が武装集団に襲われるんですが、襲撃の後にまた襲撃って、IS学園の警備はどんだけザルなの。同じ展開の繰り返しで引き伸ばし感がパないです。それと電脳ダイブとか、後付け感バリバリの設定付け加えないでよぅ!

 いまさら一夏にデレデレの5人が暴走気味なのは構わないのですが、ごく自然に男子の計測係なんぞを受け入れてくる一般女生徒が謎だったり、やたらとサービスシーンばかりで甘ったるくて胸焼けする。
 そういうエピを期待している読者がいたとしても、微エロ微萌えくらいでいいんじゃないかなぁ。妄想の余地があったほうがオタクってのは盛り上がりますし、逆に原作があからさますぎると萎えるんですよ。

 作者としてはラブコメがやりたかったんでしょうが、もしそういうラブコメがやりたければ、外伝か短編集でやってくれないかなぁ。まったく不要では無いのだけれど本編はシリアスメインでやって欲しい。
 話は一応進んではいましたが一夏たちを関わらせなさいよ。メイン登場人物である一夏とヒロインたちがラブコメばかりでストーリー進行にはほぼ空気なのが問題です。恋愛関係も変化あればまだしもね。

 襲撃に立ち向かう織斑先生だけはマジ格好良かった。お姉ちゃんに比べたら箒やセシリアたちは未熟なひよっこもいいところで、普段「小娘ども」と言ってるだけはあります。真耶ちゃんも珍しく活躍したし。
 再起動と銘打つなら、新章として先の期待を膨らませて欲しかったなぁ。例えば箒以外のメンバーの専用機のパワーアップとか必要だしやれば盛り上がるでしょ。どうにもいい加減で内容が薄いですよ。

 そして前巻から休止期間長かったのに、なんで編集部で書かされるほどギリギリなんですかねぇ?

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