ビブリア古書堂の事件手帖 (6) ~栞子さんと巡るさだめ~ (メディアワークス文庫) 三上 延 KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-12-25 by G-Tools |
太宰治の『晩年』を奪うため、美しき女店主に危害を加えた青年。ビブリア古書堂の二人の前に、彼が再び現れる。今度は依頼者として。違う『晩年』を捜しているという奇妙な依頼。署名ではないのに、太宰自筆と分かる珍しい書きこみがあるらしい。本を追ううちに、二人は驚くべき事実に辿り着く。
人は誰もが罪深き弱さを抱えて
美しき女店主と無骨な青年店員が古書にまつわる謎を解いていくビブリオミステリ。
栞子さん奥手かわいい! 付き合い始めた大輔と栞子さんの初々しいイチャつきぶりがたまらない。
太宰治の『晩年』を狙って栞子を傷つけた因縁の相手・田中敏雄の依頼を受け、特殊な稀覯本を探すことになった二人が、過去にあった盗難事件を掘り返すことになり、明らかになっていく人間模様が興味深かった。
古書を通じて過去と現在を繋げ、失われかけた記憶と感情を呼び覚ます物語に心を揺さぶられました。
苦労の末に晴れて恋人になったものの、お互いに奥手で普段と変わらず過ごしているようで、それでもふとした折に過剰に意識して赤面する思春期の中学生カップルみたいなラブコメの波動を当てられて惚気けられた。
二人が付き合い始めたことを周囲に言いふらす文香ちゃんの口の軽さは困ったものだけれど、恋愛下手な姉のために外堀から埋めようとしているんじゃないかな。出先で事あるごとにからかわれる二人の姿が可笑しい。
太宰直筆の書き込みある稀覯本の持ち主を探すうちにとある盗難事件の謎に遭遇し、そこに大輔の祖母や栞子の祖父までもが関係してきて、にわかに他人事とは思えなくなっていく二人の事件調査に引きこまれました。
古書好きの人の中にも純粋に作者や物語を愛する人々もいれば、価値や利益にしか興味のない者、さらに歪んだ感情を持っている者など様々な人々がいて、人を狂わせる古書の妖しい魅力に惑わされそうになります。
今回の事件は『ビブリア古書堂』のルーツを探る物語でした。過去は決して終わったことではなく、現在とも地続きで密接に繋がっていて、死んだ人や遠く離れてしまった人の思いに触れることは、ときに良いことばかりでなく人の醜い本性を見せつけられはするけれども、真実への好奇心を刺激して、心をざわめかせる。それも人の業なんだろうなぁ。作者的には結末が見え始めてきたそうですが、もっと続けてもいいんやで……。