ダフロン

2015年01月06日

ビブリア古書堂の事件手帖 6 栞子さんと巡るさだめ/三上延

4048691899ビブリア古書堂の事件手帖 (6) ~栞子さんと巡るさだめ~ (メディアワークス文庫)
三上 延
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-12-25

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太宰治の『晩年』を奪うため、美しき女店主に危害を加えた青年。ビブリア古書堂の二人の前に、彼が再び現れる。今度は依頼者として。違う『晩年』を捜しているという奇妙な依頼。署名ではないのに、太宰自筆と分かる珍しい書きこみがあるらしい。本を追ううちに、二人は驚くべき事実に辿り着く。

 人は誰もが罪深き弱さを抱えて

 美しき女店主と無骨な青年店員が古書にまつわる謎を解いていくビブリオミステリ。

 栞子さん奥手かわいい! 付き合い始めた大輔と栞子さんの初々しいイチャつきぶりがたまらない。
 太宰治の『晩年』を狙って栞子を傷つけた因縁の相手・田中敏雄の依頼を受け、特殊な稀覯本を探すことになった二人が、過去にあった盗難事件を掘り返すことになり、明らかになっていく人間模様が興味深かった。
 古書を通じて過去と現在を繋げ、失われかけた記憶と感情を呼び覚ます物語に心を揺さぶられました。

 苦労の末に晴れて恋人になったものの、お互いに奥手で普段と変わらず過ごしているようで、それでもふとした折に過剰に意識して赤面する思春期の中学生カップルみたいなラブコメの波動を当てられて惚気けられた。
 二人が付き合い始めたことを周囲に言いふらす文香ちゃんの口の軽さは困ったものだけれど、恋愛下手な姉のために外堀から埋めようとしているんじゃないかな。出先で事あるごとにからかわれる二人の姿が可笑しい。

 太宰直筆の書き込みある稀覯本の持ち主を探すうちにとある盗難事件の謎に遭遇し、そこに大輔の祖母や栞子の祖父までもが関係してきて、にわかに他人事とは思えなくなっていく二人の事件調査に引きこまれました。
 古書好きの人の中にも純粋に作者や物語を愛する人々もいれば、価値や利益にしか興味のない者、さらに歪んだ感情を持っている者など様々な人々がいて、人を狂わせる古書の妖しい魅力に惑わされそうになります。

 今回の事件は『ビブリア古書堂』のルーツを探る物語でした。過去は決して終わったことではなく、現在とも地続きで密接に繋がっていて、死んだ人や遠く離れてしまった人の思いに触れることは、ときに良いことばかりでなく人の醜い本性を見せつけられはするけれども、真実への好奇心を刺激して、心をざわめかせる。それも人の業なんだろうなぁ。作者的には結末が見え始めてきたそうですが、もっと続けてもいいんやで……。

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2014年02月01日

ビブリア古書堂の事件手帖 5 栞子さんと繋がりの時/三上延

4048662260ビブリア古書堂の事件手帖 (5) ~栞子さんと繋がりの時~ (メディアワークス文庫)
三上延
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-01-24

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無骨な青年店員の告白は美しき女店主との関係に波紋を投じる。彼女の答えは―今はただ待ってほしい、だった。ぎこちない二人を結びつけたのは、またしても古書だった。謎めいたいわくに秘められていたのは、過去と今、人と人、思わぬ繋がり。脆いようで強固な人の想いに触れ、何かが変わる気がした。

 本だけが恋人たちを見守っていた

 美しき女店主と無骨な青年店員が古書にまつわる謎を解いていくビブリオミステリ。

 栞子さんピュアかわいい! 大輔と栞子さんの初心な二人の恋愛模様に悶え転がります。
 交際の返事を保留中の栞子さんと大輔が、古書店に持ち込まれる謎を解き明かしていく過程で見えてくる、男女の愛の物語が切なく胸を締め付けました。栞子さんの恋心を認めない母・智恵子の影が気になります。
 大輔の影響で少しづつ本の世界の外へ興味が向き始めた栞子さんの変化が微笑ましいです。

 告白の返事を一ヶ月も待たされ、さらに栞子さんから帰還を引き伸ばされ、しかし、望まない返答が返ってくるのが怖くて強引に踏み込めず、気もそぞろで余裕のない大輔の複雑な胸中は察してあまりあります。
 お互いにぎこちない関係が続き、気まずい空気が漂うものの、古書の謎解きに向き合っている間だけは、いつものような関係に戻って話せる二人が不器用やら、奥手すぎるやら。こっちまで恥ずかしくなってきます。

 ビブリア古書店を訪れる奇妙な依頼人からの説明や調査の初見では一見してそうとは分からないものの、推論を積み重ねていくうちに、古書の持ち主が繰り広げた愛のドラマが見えてきて、心を揺さぶられました。
 他人からはただの古びた本にしか見えない古書でも、それらを愛好していた持ち主たちの思い出、愛の証明となることで、古書価以上の特別な価値を持ち、それらの辿ってきた時間が、なんともロマンチックでした。

 母・智恵子の与えた謎を解き、再び対面を果たした栞子さんが発した問いかけは、母親との離別を告げるためでもあるけれど、母親と父親のことを知りたかった、本当は母親を理解したかっただけだと思うんですよね。
 いつか智恵子を許し、また家族になれる日はくるのか。それこそ大輔の存在が親子関係を変えてくれると信じたいが、それはさておき、何だろうかこの唐突すぎる次回への引きは。続きはよ……はよぉ……。

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2013年06月17日

からくさ図書館来客簿 冥官・小野篁と優しい道なしたち/仲町六絵

4048917048からくさ図書館来客簿 ~冥官・小野篁と優しい道なしたち~ (メディアワークス文庫)
仲町 六絵
アスキー・メディアワークス 2013-05-25

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京都の一角に佇む「からくさ図書館」は、優しげな図書館長の青年と可憐な少女とが二人きりで切り盛りする、小さな私立図書館。紅茶か珈琲を味わいながら読書を楽しめる、アットホームなこの図書館には、その雰囲気に惹かれて奇妙な悩みと出会ったお客様が訪れる。

 あなたの好きな本はなんですか

 現世に彷徨う「道なし」を導く黄泉の冥官と図書館に訪れる様々な来客たちを巡るゴーストファンタジー。

 小じんまりとして温もりあふれる佇まいの「からくさ図書館」の雰囲気に本読みとしては憧れますね。
 閻魔庁の役人である小野篁と時子が、自分たちの営む私設図書館「からくさ図書館」を訪れるお客に憑く彷徨える幽霊「道なし」の未練を無くし、あの世へ導く過程で描かれる生者と死者の交流が心温まりました。
 あらすじからするとミステリのようですが、謎解き成分は0ですので思い違えないように。私は間違えた。

 かつて平安貴族として生きて、死んでからは閻魔庁の役人として現世に舞い戻った小野篁と時子様の暮らしぶりが不思議に満ちていて、彷徨える霊「道なし」を取り憑かせたお客が図書館にやってきては、一般人に正体を明かして相手を驚かせる小野篁の悪ふざけが可笑しいです。ふざけているようで冥官の仕事はキッチリとこなすのだから、部下の時子様はやりづらいでしょうね。生前のイメージとのギャップに嘆く気持ちもわかります。

 二人が導く「道なし」たちは、生前あるいは死後に善行を積んで天国行きが確定している善人で、何かを守ったり、誰かを救ったり、社会に貢献したり、生きて何かを成す、死して尚何かを成し遂げるそうした人々の生き様が胸に迫ります。「道なし」に取り憑かれた者も、死者の思いを汲んで心からの供養をしたり、故人に今後の人生に大切な何かを学んだり、死んだその先に繋がる未来の希望の種を感じさせてくれるのが素敵でした。

 一つ一つの短編はとてもいいエピソードなのに、図書館や平安貴族やらの濃い要素を混ぜてしまったがために、ゴチャゴチャ感が悪目立ちして味を濁しているのが勿体無い。いっそ開き直って、もっとギャグに突き抜けていれば笑い所として捉えられたかもしれないですが、篁の変態性もネタとしてはイマイチ微妙だったかも。
 設定で際立たせたい話の焦点がブレていて、もうちょい全体の調和に気を使って欲しかったです。
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2013年02月28日

ビブリア古書堂の事件手帖 4 栞子さんと二つの顔/三上延

4048914278ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~ (メディアワークス文庫)
三上延
アスキー・メディアワークス 2013-02-22

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珍しい古書に関係する、特別な相談――謎めいた依頼に、ビブリア古書堂の二人は鎌倉の雪ノ下へ向かう。その古い家には驚くべきものが待っていた。稀代の探偵、推理小説作家江戸川乱歩の膨大なコレクション。それを譲る代わりに、ある人物が残した精巧な金庫を開けてほしいと持ち主は言う。

 最も愛された探偵小説

 美しき女店主と無骨な青年店員が古書にまつわる謎を解いていくビブリオミステリ。

 黒髪ロングで巨乳の栞子さんの存在に、安定感を感じる。やはり本物は深みが違うんだよねぇ。
 本絡みの相談を持ちかけられた栞子と大輔が、江戸川乱歩に纏わるその依頼を受けていく過程で、栞子の母親・智恵子と遭遇し、因縁の親子の推理勝負へとシフトしていく展開に引きこまれました。
 娘と母親が出会っただけなのに、うん、なんだろうね……この鳥肌が立つような緊迫感!

 大輔がビブリア古書堂に勤め始めてもうすぐで一年を迎え、栞子さんに自分の気持ちが伝わっているのではないかと考える大輔ですが、恋愛事に鈍感な栞子さん相手に空回りする姿が初々しいなぁ。
 古書関連の知識や頭脳面は栞子さんが受け持ち、彼女に足りない対人スキルや肉体面を大輔が補って、二人で助け合って仕事している姿はとても相性のいい、お似合いのカップルだと思うんですよねぇ。

 江戸川乱歩を愛していた故人の足跡を調べていく内に、実の家族も知らなかった素顔を明らかにして、家族の絆や、幼馴染の人間関係を修復していく栞子さんの謎解きがとても素敵でした。
 栞子さんと比べると、母親の智恵子の推理は、自分の利益や興味本位でしかなくて、不吉な結果がまざまざと予想できるだけに、なんとか母親より先に謎を解いて欲しいと願わずにはいられなかったなぁ。

 ただ先に謎を解けばいいという単純な推理勝負ではなく、相手の考えを読んで、先手先手を打って重要なヒントを奪い合う親子の駆け引きは、優勢劣勢が二転三転して読んでいるこちらも翻弄されたなぁ。
 ほんのタッチの差で真実に辿りつけた栞子さんですが、母親との確執は拗れたままだし、騒動を振りまくだけ振りまいて去っていったなぁ。と、思いきや最後の最後で告白キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

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2011年11月03日

ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常/三上延

4048708244ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常 (メディアワークス文庫)
三上 延
アスキー・メディアワークス 2011-10-25

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鎌倉の片隅にひっそりと佇むビブリア古書堂。その美しい女店主が帰ってきた。だが、入院以前とは勝手が違うよう。店内で古書と悪戦苦闘する無骨な青年の存在に、戸惑いつつもひそかに目を細めるのだった。変わらないことも一つある―それは持ち主の秘密を抱えて持ち込まれる本。

 本に託された親子の想い

 美しき女店主と無骨な青年店員がおりなすビブリオミステリ。

 古書のことなら万能でも、それ以外では世間知らずで不器用な栞子さんが可愛いすぎる。
 栞子とも和解し、再びビブリア古書堂の店員として働きはじめた五浦の元へ舞い込む古書の謎とそれにまつわる人々の人間関係、そこから解き明かされる予想外な真実が読者の興味をかきたてる。
 徐々に栞子さんの過去も明らかになりつつ、五浦との恋愛模様も見逃せない。

 顔なじみの客・小菅奈緒の妹が書いたという「読書感想文」を発端とする第一話『時計じかけのオレンジ』での騒動では、青少年の健全育成に関する例の規制を頭に思い浮かべてしまったけれど、確かに年齢に相応しくない本ばかり興味を持って読んでいる子供は、親としてはちょっと心配ですよね。
 でも、そうした心配っていうのも、我が子を思いやっての愛情からこそなんじゃないかな。

 第二話の『名言随筆 サラリーマン』では、まさに己の本音が口に出せずにすれ違ってしまう親子を描いているけれども、同じ事は男女の関係や他のどんな関係にも言えますね。
 本を通して親から子へと、受け継がれる思いを第三話『UTOPIA 最後の世界大戦』では取り上げ、一見ほのぼのとした昔話のようで、栞子さんと母親との確執が垣間見えてくるのには辛かった。

 栞子さんの母親は相当に厄介な人だったみたいだけど、母親のしたことが悪いことだと自覚しているなら、同じようにはならないんじゃないかなぁ。もし万が一、間違いを犯しそうになっても、側に自分を止めてくれる人がいればいい。五浦には栞子さんにとってのそういう存在になって欲しいな。
 なんだかんだ栞子さんも満更でもないように見えるんだけれど、今後の行方はどうなるのか。
posted by 愛咲優詩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(1) | メディアワークス文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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