2007年12月24日

ライトノベル2.0(下)

6.単一分野の枠を超えたライトノベル
ライトノベルの特徴のひとつは、固定のプラットフォームに限定されない、無節操なまでのジャンルの幅広さにある。
その強みを活かして、ライトノベル作家でありながら、一般文芸の場で活躍している桜庭一樹、橋本紡らのことを「越境作家」と呼び始めたのは、すでにかなり以前の話である。

レーベルも一般層にむけてイラストを入れないハードカバー作品、有川浩の「図書館戦争」、うえお久光の「シフト ―世界はクリアを待っている」といったタイトルを出版するようになったし、中には「十二国記」や「氷菓」、「EDGE」、「おいしいコーヒーのいれ方」など、当初はライトノベルレーベルから刊行されたものを一般文芸として売り出している例もある。また雪乃紗衣の「彩雲国物語」は高齢女性の間でブームである。

また2007年6月に集英社から出版された「人間失格」の新装版では、表紙を小畑健が担当したことで、中高生を中心に話題を呼び、発売から1か月半で75,000部という古典文学としては異例の販売数となっている。これもライトノベルの特徴であるイラスト効果を利用した好例といえるだろう。

また出版氷河期といわれる一般文芸から、中高生に売り上げを伸ばしているライトノベルでの出版を試みる作家もいる。
73歳でライトノベル作家としては最高齢となるSF作家の筒井康隆である。

一般文芸からライトノベルへと移ってくる作家のことを、「越境作家」の対義語として「離島作家」と(勝手に)呼んでいるが、一般文芸とライトノベルの融合がこの勢いで加速して行けば近い将来、そんな呼び名はどちらも死語となるだろう。

今後、ライトノベルを出筆する際には、ライトノベル専門の読者層だけではなく、一般文芸の読者層も視野にいれ、ユニバーサルな作品を提供していくべきである。

7.リッチな読者経験
ライトノベルの電子書籍化は、早くもケータイ向け電子書籍サイト「ちょく読み」によって配信サービスが開始されている。
デバイスは携帯電話オンリーだが、現在、市販されているブックリーダーの性能からいえば、携帯電話で十分である。

ライトノベルの電子書籍化は様々な可能性を提示する。
まず電子出版による大幅な出版コストの削減により、これまで資金面の問題で参入できなかった小さな出版社でもライトノベル業界への新規参入を可能とする。
それにより作家需要が高まり、新人作家にも活躍の場が広がるし、作家デビューのチャンスも増加する。したがって、ライトノベルの出版サイクルは、これまで以上に加速する。

また作品単価が下がったため、メイン読者層となる中高生にも購入し易くなり、ライトノベル読者の増加も見込まれる。
「ちょく読み」では、100円から大抵の作品が読めるが、利用するユーザーがさらに増えれば、いずれ100円均一で好きなライトノベルを読み漁れる日がくるかもしれない。

ライトノベルを購入するスタイルも、ウェブ上ならば、カラオケやケーキバイキングのように、時間制限で「ライトノベル読み放題サービス」なんてもありうるし、たとえば図書館に行かずとも「ライトノベルレンタルサービス」なんかも可能だ。
短編集なら、気になる話だけ細かく一話だけ買ってもいい。
読みたいと思ったら、発売日当日でも売り切れを気にせずに、すぐに読むことが出来るというメリットは大きい。

現在、紙媒体での売り上げは、上昇傾向にあるが、あくまでこれは一過性のものであり、電子媒体への移行が進むにつれて売り上げ低下を余儀なくされるだろう。
そのため紙媒体は限定版、特典版など、電子媒体にはない付加価値をつけての商品展開を図る必要がある。

しかし、ウェブ上でライトノベルを読むという考えが広く受け入れられるようになるまでには、まだまだ問題は山積みで、文庫本に馴れ親しんできた読者ほど理解を隔てる壁は分厚い。
そうした読者を、いかに納得させるサービスを提供できるかが、いまネット書店に求められている。

00.おわりに
ライトノベルがある種の転換期を迎えているのは確かだ。
しかし、これまで語ってきたことは、その変化のごく一部でしかない。そもそもなにをもってライトノベル2.0とし、どこからどこまでがライトノベル1.0だったのかと訊かれると正確には答えられない。

けれども上記の7つの原則を踏まえ、敢えてライトノベル2.0における「ライトノベル」を定義するとすれば、

『小説をプラットフォームとして位置づけ、エンターテイメント志向・キャラクター重視・表現の自在性といったライトノベル本来の特性を活かす思想に則って提供されるコンテンツの次世代フレームワーク』

というところになるだろうか。

これまで「作者⇒レーベル⇒読者」と一方通行だった流れが、「作者⇔レーベル⇔読者」と双方向にインタラクティブな流動性を見せはじめ、そこから何が生み出されるかは未知数である。「静的なライトノベル」から、「動的なライトノベル」へ。「ライトノベル」から「ライブノベル」へ、略して「ラノベ」である。

ライトノベルに終わりはない。
つまり、ライトノベルは、永久にベータ版である。

参考資料:Wikiとか
posted by 愛咲優詩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(2) | ラノベ評論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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