人形剣士ブレイスにはある疑いが掛けられている。人形のリネットが、実は人間なのではないか、という疑いだ。本物の少女を操っているのなら、それは洗脳魔法とされ重大な犯罪行為に値する。悪行の証拠を掴むためにガルノー審問官は監視任務に当たっていた。そんな中、世間を騒がせている幻術使いのバーズ捜索に同行することに。
憎悪の鎖を絶ち切る絆
攻撃魔法が禁止された世界で人形を操り、剣を振るう人形剣士が繰り広げる異世界ファンタジー。
登場人物がみんな狂信者と紙一重じゃないですかやだー。やはり宗教は悪なんだ……。
攻撃魔法が禁止された世界で魔獣退治を生業とする人形剣士ブレイスと、彼に違法使用の容疑をかける審問官ガルノーが、魔導審問会により断罪される違法魔導士たちと関わっていくなかで魅せる信念と絆が尊かった。正義とは悪とはなんなのか、善悪の価値観が散れ散れになってわからなくなります。
魔獣から人を守るためでも、悪人の仇討ちでも、どんな理由があっても攻撃魔法を使えば、情状酌量もなく死罪という魔導審問会の独善的な正義の押し付けに反吐が出ますね。新米審問官に罪人を処刑させる「最初の正義」とか、罪の意識を共有させて議論から目を逸らせてるんでしょう。カルト宗教と手口が同じなんだけど、ヒロインのガルノーや大衆たちが疑いもなく盲信してるから気持ち悪いんだ。
犯罪者として魔導審問官に裁かれる魔導士たちも、過去に大切な人を審問会に殺された遺族だったりで、義憤に燃えるのも共感できてしまって、騒動の真相に迫っていくほどやるせなくなります。
それで主人公のブレイスがマトモであればいいんだけれど、彼は彼で自分の人形のことしか頭にないし、犯罪者を叱責こそすれガルノーたちの主張を咎めることもないから収拾がつかないんだよなぁ……。
ブレイスが犯罪者を改心させて、審問会の正義に疑問を投げかけるみたいな展開を期待したんだけど、結局、悪は悪のままだし、ガルノーの歪んた正義には振れず仕舞いなのでちょっと肩透かしな感じ。
リネットのスーパーモードとか、正直それはいいんですよ。世界観や設定も興味深いんですけど、読者のフラストレーションを溜めに溜めておいて発散に失敗してるのが、勿体無い作品だなぁと思いました。