「錆喰い」由来の特殊体質を治すべく、大宗教国家・島根を訪れたビスコたち。しかし―そんな一行の前に野望の不死僧正・ケルシンハが立ちはだかる。不意打ちで胃を盗まれたビスコの余命は、僅か―五日!?宗教ひしめく島根の中枢“出雲六塔”に潜入した彼らは、はたして無事、元の身体を取り戻せるのか。
人食いキノコ、神を破る
まさに圧巻! 熱血マンガか映画を見ているかのような爽快感。脳内で快楽物質ドバドバでてすごい。
錆喰いによるビスコの特異体質を治す手がかりを得て、宗教国家・島根の総本山「出雲六塔」にやってきた二人が、信仰によって世界を牛耳ろうと企む怪僧ケルシンハに立ち向かう大活劇に手に汗握る。
文明が荒廃して人心も荒んだ殺伐とした世界で、どこまでもまっすぐで純粋な二人の姿が愛おしい。
改めてミロの成長ぶりが目覚ましいですね。ビスコに女の子が近づくと不機嫌になる嫉妬ぶりにニヤニヤ。ビスコは相変わらずバカで乱暴なんだけれど、ミロを相棒として命を預けていて、いざとなれば心中する覚悟まで決めてるんだから、もうお前ら付き合っちゃえよ! お互いに足りないところを支えって、信頼しているけれど頼り切りにはならず、相棒に相応しくあるように高めあっている姿が眩しい。
前巻の舞台だった忌浜がSFの世界なら、今回の出雲六塔は宗教と精神の世界。信仰を強調しながらも都市に住む人々の根底には人間の欲望や煩悩が渦巻いていて、弱者を踏みにじる特権者たちの歪んだ支配や不条理を、ビスコとミロの若いキノコ守りの二人が真正面からぶち壊していくところが痛快なんだ。
悪役ケルシンハも狂ってはいるけれど、世紀末覇者の如き強烈な個性と迫力に魅せられました。
すでに超大作クラスだった前巻からのスケールダウンを危惧していますがまったくの杞憂でした。引き続いて物語世界観を広げつつ、また別の切り口でストーリーを展開していったところがすごい。まったくの別物といっていいテーマをとり上げながら、新しい事実や謎を提示して想像を膨らませて、さらに勢いが加速していくんだから、こちとら乗り遅れないように必死ですよ。みんな『錆喰いビスコ』はいいぞ!