SHI-NO―呪いは五つの穴にある 上月 雨音 富士見書房 2007-06 by G-Tools |
【入院している僕が志乃ちゃんと和んでいると、キララ先輩がかつて僕ら三人が解決した「リゼィエの日記」の話を語りだした。なんでもその本に関してまた殺人事件が起きたというのだが・・・】
「教えて、志乃ちゃん。君の心が、知りたい」
志乃ちゃん可愛さに俺が死ぬ。
大学生の"僕"と小学5年生の暗黒幼女の純愛ミステリ。
入院中の"僕"とシノちゃんの元に持ち込まれた、呪われた本を巡る二つの事件を描いた中編ニ話の構成です。
ともあれシノちゃんが、無口無表情で画面の隅に鎮座ましましていればそれでいい。それがこのシリーズの魅力なんです!
またも垣間見せるシノちゃんの暗黒面に主人公ガクブル。
しかし、これまでそうした彼女の嗜好を矯正しようと奮闘してきた主人公の"僕"が、そうした嗜好を否定せずに受け入れるようになってきたのが大きな変化でしょうか。
シノちゃんは決して人間らしい感情がないわけではなくて、
"僕"の些細な言葉にも傷ついてしまう感性があるということ。
確かにシノちゃんは周囲と比べると異常かもしれない。
でも、それを一概に悪いと決めつけることはエゴであり、
エゴを押し付けて、シノちゃんを傷つけてまで矯正するよりは、ずっと側にいて見守っていこうという余裕が生まれました。
この二人の間に流れるまったりとした空気が好きです。
嗚呼シノちゃんのあの絶対零度の視線で睨みつけられたい。
それにしても「エターナルフォースブリザード」。
なんでそんな言葉を知っているんだい、真白ちゃん。
二人の関係に比べると二の次、三の次のミステリ要素ですが
今回は安楽椅子探偵をやっていたので、凶悪事件の渦中にいるいつもよりかは、落ち着いて事件の詳細を追えましたね。
中途半端な優しさや善意は、かえって人を傷つけてしまう。
善意も過ぎれば異常であるというのは納得できることです。
あとがきでもタイトルを挙げていますが、『名探偵に薔薇を』。
今回のストーリーは、まさにその本のオマージュみたいな話でした。そういえばキャラもちょっと影響を受けているのかな。
この本は私もお気に入りなので絶賛オススメです。
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エターナルフォースブリザード。相手は死ぬ。
名探偵に薔薇を 城平 京 by G-Tools |