 | 嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん―幸せの背景は不幸 入間 人間 メディアワークス 2007-6 by G-Tools |
【平穏な街で発生した誘拐事件と連続殺人事件。８年前、同じように誘拐事件に遭った"僕"は、高校で同じ被害者だった"まーちゃん"と再会する。しかし彼女は過去の事件で精神が壊れていて･･･】
「まーちゃん。世界で一番キミを××してる。嘘だけど」
このバカップルの異常者ども！
嘘つきの少年と異常者の少女とのサイコサスペンス。
小学生の頃に誘拐事件に遭った"まーちゃん"と"みーくん"。
高校生になって８年ぶりに再会した二人は、そのときのトラウマで男の子は嘘つきになり、女の子は自分のマンションの部屋に小学生を監禁している立派な異常者になっていた。
そして誘拐犯と被害者の奇妙な同居生活が描かれます。
物語は主人公"みーくん"の一人称で語られるのですが、
「嘘つき」と頭にあるように、言ってることの全部が嘘です。
過去の独白や、物思いに耽る心理描写が綴られたかと思えば、その後で「嘘だけど。」と続いて引っくり返される。
どこまでが真実で、どこまでが嘘なのか分からない。
"まーちゃん"の精神の壊れっぷりが、突き抜けててやヴぁい。
"みーくん"の前では普段の学校でのクールビューティな姿とはかけ離れ、童女のように幼く素直で無邪気な彼女ですが、
"みーくん"対しての重度の依存と、ときおり見せる残酷な一面に背筋がゾッとさせられます。これはいいヤンデレ。
トリックそのものは見事でした。
"みーくん"の嘘にまみれた言葉の中から、本当のヒントを見抜かなければ、正解にはたどり着けないでしょう。
まあ私の場合、直感でネタが読めてしまったんですが･･･。
脇役の金子ですらロクな出番はないのに、一回だけ無意味な登場の仕方をされると逆に印象に残ってしまうんだよね。
それまでの物語運び、キャラ回しは、球体のように綺麗に整っていたために無駄が目立ってました。
"まーちゃん"と"みーくん"のバカップルな会話に加え、
"みーくん"と上社のふざけた掛け合いがかなり楽しい。
恋日先生の「異常者は本当に悪いのか、無理をしてまで治すほどのことか」という言葉には、こちらも考えさせられました。
問題作と聞いていた割には、そんな地雷でもないような。
もっと酷い児童虐待とかしちゃっても無問題でしたよ？
主人公は二人とも異常者といって過言ではない人間ですが、
性欲だの、自己顕示欲だの、読者が読んで見苦しい欲求に取り付かれてるわけではなく。感情を削ぎ落とすように、実にあっさりと狂っているので、嫌悪感は抱きませんでした。
でも、メフィストやそっち系の作品が嫌いな方には難かな。
はっきり言えば、個人的には大好きですこういうの。
でも、『マージナル』は泥臭くて大嫌いというワガママな私。
