![]() | 世界平和は一家団欒のあとに 2 橋本 和也 メディアワークス 2007-6 by G-Tools |
【星弓家の長男、軋人はかつて自分が倒した悪の組織一家と再会する。家庭の崩壊の危機に瀕しているその光景に後ろめたさを感じた軋人は、彼らの絆を取り戻そうとするが・・・】
「これが、組織の首領としての最後の仕事だ。
今度は自爆などせんよ。待っている家族がおるのでな」
野望破れて家族有り
家族全員がなにかしらの特殊能力を持ち、「正義の味方」の宿命を背負った星弓一家の人々が繰り広げるご近所物語。
過去に自分が壊滅させたせいで、家庭崩壊を招いてしまった悪の組織一家を、軋人はなんとか元に戻そうと奔走する。
悪の組織のその後と正義の味方のアフターケアを描きます。
星弓家の真逆というべき悪の組織の鶴見家。
しかし今では、長女は家出し、次男は学校でイジメられ、かつては世界征服を目論んだ悪の首領も、妻にバカにされ公園のブランコでワンカップ片手にうらぶれてるリストラ親父。
野望半ばにして夢破れた敗者とはいえ、悲惨だ・・・。
今回の軋人はどちらかというと脇役です。
主人公は鶴見家の面々というか、正志と銀子でしょう。
それにしても軋人は口先だけで、全然弱いじゃないか。
初対面で銀子にボコボコにされてた印象が強いのだけれど。
でも、他人のために一生懸命なところはやはり正義の味方。
正志と歳の離れた男の友情を築いてくところが好きです。
正義に正義のロマンがあるように、悪にも悪の美学がある。
つまり目的はなんであれ、自分のスタイルを持って、それを貫いているバカは輝いてて眩しいZE☆ってことです。
元首領親父にしても、負けたことは認めてても、最後に悪党として誇れる散り様というものが欲しかったんでしょう。
やはりいくらダサくとも、演出は大事ということだよ、諸君。
銀子も世界征服を夢見て、悪の首領を目指して悪党ぶってはいるんだけれど、まったく悪人に見えないのがいいですね。
泣いて引き止める正志に、悪である鶴見家の心構えを諭す彼女は、言ってることはちょっとアレですが、"お姉ちゃん"してて家族っていいなぁと思います。
相変わらず女性陣の軋人の扱いはぞんざいです。
お兄ちゃんに拳銃を突きつけちゃう美智乃が美味しい。
軋人が一番大切にしている正ヒロインは美智乃であることは間違いないが、柚島さんもすっかり軋人を尻にひいて・・・。
この二人には勝てる気がしない。
夕陽を背負って現れた親父と軋人の最後の闘いが熱い。
ダサいとは言うが、この軋人、ノリノリである。
途中の親父の豹変ぶりが唐突で、さては長男が洗脳でも使ったんじゃないかとガクブルしてましたが、エピローグで親父の本心からきたものと分かったので安心しました。
最後には家族の気持ちが向き合った素敵なハッピーエンド。
荒んだ気分も爽快な、とても気持ちの良い読後感でした。
今期の電撃新人の中では、最も期待をかけています。
変にシリアスにならんよう、このままのノリで突っ走ってー。
にしても「ナナミンガー」のセンスには脱帽だ。七姉ぇ最高。