![]() | 奏でる少女の道行きは 細音 啓 富士見書房 2007-05 by G-Tools |
【夏の移動教室へきたクルーエルとネイトたち。クルーエルは、ウキウキする反面、名詠式への悩みを抱えて複雑な気持ちだった。そんな中、移動教室の近くの研究所で人が石化する事件が起きて】
「さあ、あなたの道行きを教えて」
踏み出す一歩が、道となる
若くして天才の称号を冠された祓名民の少女エイダ・ユン。
しかし彼女は、父親への反発から名詠士を目指すことに。
だが、その身に沁みついた生き方までは拭い去れず、
彼女は名詠士と祓名民、二つの道の狭間に迷い込みます。
今回は、ネイトとクルーエルの同級生エイダが主役です。
名詠を学びながらも、祓名民としての自分を捨てられず、
そんな自分一人だけが周囲から仲間外れのように感じ、
それでも明るく振る舞うエイダの姿が実に切ない。
葛藤を隠した笑顔から彼女の苦悩が伝わってきます。
ふと立ち止って自分の道に疑問を持つことは大切ですが、
そこで停滞してしまわないことが重要です。
ネイトと出会い、前進する勇気を得たクルーエルのように、
停滞から歩き出すためには、どんな道を歩むことになっても、
その自分を認めてくれる存在が人には必要なのでしょう。
祓名民としての自分が守るべきものを理解し、ようやく和解できた父と娘の会話に家族の温かさを感じました。
一方、強すぎる自分の力を持てあましていたクルーエルは、
一生懸命なネイトの励ましに、胸がきゅんきゅん鳴ってます。
あの恥ずかしいセリフを無自覚で言えるとは、末恐ろしい。
ネイトとクルーエルの関係は、今のところ「姉と弟」ですが、
彼女がショタの道に踏み出すのもそう遠くないでしょう。
前巻と比べてしまうとストーリーとしては地味めですが、
その分、伏線も絡めて物語の本筋がまとまってきました。
作中で奏でられる讃来歌は繊細で優美でやはり素敵です。
無事シリーズとして走り出したようで、今後も応援したい。
自分の進むべき道に迷っている人に、是非読んで欲しい。
愛咲が今期一番にオススメするシリーズです。