ダフロン

2016年06月12日

筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。 鎌倉の猫は手紙を運ぶ/谷春慶

4800256305筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。 ~鎌倉の猫は手紙を運ぶ (宝島社文庫)
谷 春慶
宝島社 2016-06-07

by G-Tools

大学一の有名人かつアンタッチャブルな存在―東雲清一郎。黒猫を通して、飼い主との間ではじまった文通。徐々に育まれる恋心。が突然、途絶える返事。宙ぶらりんな思いにケリをつけようと、猫の手紙を手かがりに、美咲と清一郎の人探しがはじまる

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 文字は人の思いを伝える

 古都鎌倉を舞台に、文字と書、人の想いにまつわる事件を描く筆跡鑑定ミステリー。

 清一郎がペーシを重ねるごとに気難しい芸術家から、ただの面倒くさいダメ人間に見えてくる。
 書道コンクールに出品する作品の制作を控えてスランプに陥ってしまった清一郎の気分を変えようと、外に連れ出す美咲ですが、またもやおかしな事件に遭遇して筆跡鑑定から展開する謎解きが興味深かったです。
 今回も筆跡から人と人との想いが綴られるエピソードにじんわりと心温まり、書にふれてみたくなります。

 綺麗な字を書くにはまず筆記用具からという、清一郎のペン習字入門講座。ためになる。私も仕事で3色ペン使っていますが字が汚いのはペンのせいだったのかと、ペンを買ってきて字を書いてみたくなる。
 猫しか友人がいない清一郎の社会性が心配になってくるな。方向音痴だし、酒クズだし、書にのめり込むと寝食忘れるし、病気でもしたらそのまま孤独死するんじゃないだろうか。ひとり暮らしが心配すぎる。

 スランプに陥って壊れていく清一郎は繊細な天才肌といえば聞こえはいいけど、独り善がりで甘えてると思いますね。どんなに納得がいかなくとも、それが自分に書ける精一杯の字なら、それが今の実力なんだよと。
 文字は誰かに思いを伝えるもの。清一郎がスランプで書けなくなってしまったのも、人間関係の少なさがあるんじゃないかな。伝えたい人がいなければ、そりゃあ、どんな綺麗な字を書いてもからっぽでしょう。

 そんな清一郎に喝を入れる美咲が、まさにオカン。美咲が絡むと清一郎が途端に子供っぽく思えて可笑しい。清一郎に欠けた常識や人間性を美咲が補って、強引にでももっと彼と他人と結びつけて欲しいですね。
 骨董品詐欺を見破った清一郎ですが、悪役に罰らしい罰が下されなかったのが不完全燃焼気味ですね。今後のストーリーで再登場するんだろうか。清一郎と母親の過去が徐々に明かされて、続きが気になります。
posted by 愛咲優詩 at 00:00 | TrackBack(0) | このライトノベルがすごい!文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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