封神演戯 (ダッシュエックス文庫) 森田 季節 むつみまさと 集英社 2015-05-22 by G-Tools |
並行世界の歴史を管理する組織「崑崙」に所属する仙人・太公望。だが太公望は有休を取り続けてまったく仕事をしない“ニート”の仙人だった。ある並行世界の「殷」という国の歴史が、妖しい仙女妲己によって歪められていると知った「崑崙」は、「殷」を正しい歴史に導くため太公望を派遣する。
太公望、美少女と戯れる
ニートな太公望と美少女だらけの仙人が国家と歴史を揺るがし戯れる仙道戦記ファンタジー
原作者が怒りそう。古典の『封神演義』をラノベ化してノリノリで遊んでいるのが伝わってきました。
並行世界の歴史監視者である主人公・太公望が、師・元始天尊の命により、ある世界の「殷」という国家に寄生した仙女・妲己を討伐すべく、仲間の美少女仙人たちと国家や歴史を動かしていく展開が愉快でした。
『封神演義』をラブコメ×戦記ファンタジーとして再構築した、まったく新しい『封神演義』でした。
「崑崙」というれっきとしたお役所に所属しながら、数十年間も有休を使って自宅でニート生活を過ごしていた太公望の筋金入りの「働いたら負け精神」が天晴でした。基本ダラダラと引きこもってサボっているだけに思えるのだけれど、未来の展開を予測して敵味方を周囲を動かして最後にはしっかりと結果を手にする策士ぶりがぐう有能。こういう人がリーダーになったら部下は楽ができそうだけれど、理解されないでしょうね。
熱血少女の四不象やツンデレ天才仙人の楊戩、宝貝人間の哪吒など、実力も可愛さもトップクラスの仙人を率いて歴史を変えていく壮大さにワクワクするのですが、妲己サイドの音楽による宇宙征服という突拍子もない構想にも惹かれるものを感じます。殷を滅ぼすために周の大師となって戦争を起すのですが、妲己討伐という目的のために人間の兵士を犠牲にする決断に常に疑問を抱く太公望の葛藤や苦悩が身にしみて感じました。
おおまかなストーリーは原典の『封神演義』と同じですが、太公望が元地球の高校生だったり、敵も味方も仙人は美少女だらけであったり、改変されています。とくに太上老君がかわいい、毎日一緒にゲームしたい。
太公望とは正反対にワーカーホリックで生真面目で不器用な聞仲も憎めなくて、ライバルとして今後の対決に期待できます。今回は登場してませんが『封神演義』のキャラでは申公豹が好きです。次回でオナシャス!
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