![]() | Only Sense Online (4) ―オンリーセンス・オンライン― (富士見ファンタジア文庫) アロハ 座長 ゆきさん KADOKAWA/富士見書房 2015-02-20 by G-Tools |
名前が売れてしまい、他のギルドからのしつこい勧誘に襲われる。対処しきれないユンは、ほとぼりが冷めるまで、各エリアを放浪し雲隠れしていた―。その道中で出会ったのは、レベルに見合わない無謀な冒険をしていた二人の新人プレイヤー。ユンは、彼らの先輩として指導教官を務めることに!?
世界は夢と未知で満ちている
不人気スキルを駆使して最強の生産職プレイヤーとして活躍するVRMMORPGファンタジー
汚い、さすが生産職汚いな。毒矢に弱点付与とますます戦い方が卑怯になっていくけど、それがいい。
度重なるギルド勧誘に嫌気が差し、店を飛び出して悠々自適なソロプレイを満喫しているユンが、ひょんなことから新人プレイヤーの育成したり、妹や親友たちと隠しクエストに挑んだり、スキルやアイテムの新しい使い道を発見したり、それぞれ自分のプレイスタイルでMMORPGの世界をやり込んでいる姿が微笑ましかったです。
有名人になってしまったことでギルド勧誘に悩まされるユンですが、まず有名人だから誘うというプレイヤーの下心がセコい。まず自分たちが有名になって相手から入団を願ってくるギルドになろうという気概もなければゲーマーじゃない。一方で新人プレイヤーが在野にあぶれているのがアレ。本来はこういう新人こそ率先してギルドに誘ってベテランが指導すべきなんですよね。まだまだこの世界は発展途上だというのが感じられる。
ただ発展途上だからこそ、ユンやエミリオたち生産系プレイヤーが新しいアイテムの生産ひとつで一喜一憂できて、ミュウやセイ姉たち戦闘系プレイヤーもクエストやダンジョン攻略といった未知への挑戦に意欲的で、みんな活き活きとしてこの世界での暮らしをエンジョイしている姿が、読んでいるこちらまで楽しくなってきます。
困難がより困難であればこそ燃えるのがゲーマー魂。敗北から立ち上がったミュウのリベンジに期待。
以下蛇足です。私、このシリーズは毎回地味だ地味だと言っていますが、先日知人から『あんまり地味とか言わないほうがいいよ、感想を読んだ訪問者に悪いイメージを与える』なんて言われました。でも、このユンたちの地道な生産活動こそリアルの「MMORPGあるある」で、他のVRMMOものとは作品の方向性やテーマそのものが違うので、デスゲームな仮想世界での主人公無双を期待して読んで、内容が違うからといって見当違いな批判をして欲しくないんですよね。強敵と戦ったりする華々しい戦闘プレイだけがMMORPGの楽しみ方ではないでしょう。生産職やエンジョイ勢も楽しみ方は人それぞれですよ。なのでそうした虚しい誤解を生まないために、これからも地味だと言い続けるスタンスです。地味だけれど、だからこそ面白くてこの作品が好きです。