ダフロン

2015年02月16日

ひとつ海のパラスアテナ/鳩見すた

404869247Xひとつ海のパラスアテナ (電撃文庫)
鳩見すた とろっち
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2015-02-10

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透き通る蒼い海と、紺碧の空。世界の全てを二つの青が覆う時代、「アフター」。セイラー服を着た14歳の少女アキは、両親の形見・愛船パラス号で大海を渡り荷物を届ける『メッセンジャー』として暮らしていた。ある日、アキは航行中に恐るべき『白い嵐』に遭遇、船を失って浮島に取り残されてしまう。

 運命という荒波を越えて

 海しかなくなった世界で船乗りの少女が苦難と挫折の嵐の中を旅する海洋冒険ファンタジー。

 これは実に卑怯な作品だ。こんなん読んだら嫌でも泣いてしまうに決まってるやん( ;∀;) イイハナシダナー
 すべての文明が海に沈んだ世界で、性別を偽ってメッセンジャーとして生きる船乗りの少女・アキが、過酷な運命に翻弄され、大切な人との出会いと別れを繰り返して世の中を知り成長していく姿が胸に迫りました。
 ただ平凡に生活することさえ困難な世界で、精一杯に懸命に生きる少女の生き様に心を揺さぶられました。

 海賊に両親を殺され天涯孤独となり、両親の形見の双胴船パラス号で細々と島から島へ物資を運ぶメッセンジャーとして生きているアキの悲惨な境遇が哀れで、もうそれだけで目尻に涙が浮かびそうになるのですが、嵐の中で大切なパラス号を失い無人の漂流ゴミ島へと漂着して、助けも呼べないサバイバル生活の中で唯一の友人だったキーちゃんを亡くしてと、次から次に災難が襲いかかってくるから読むのが辛くて耐えられない。

 そんな時にアキと同じく難破中の船に乗った少女タカと出会い、勇敢で聡明な彼女と二人で助けあって海域を脱出し、女二人旅が始まってかけがえの無い親友となっていく二人の関係がとても色めいていて甘酸っぱい。
 旅の途中、またしても海賊と遭遇してしまうのですが、今度こそ大切な人を守るために大人の集団相手に孤軍奮闘し、臆病な子供から勇敢な海の男(女の子だけど)へと大きな成長を遂げるアキの勇姿に感動しました。

 まあ世界観はSFとしては奇妙な部分が多々あって、食品の永劫腐敗処理が可能なほど発達した科学文明があったのに完全に断絶して失われていて、原始的な生活をしているのはさすがにやり過ぎじゃないですかね。
 普段、現代人が忙しさや便利さの裏で忘れている命の重みや生きることへ執念を感じさせてくれるいい作品だとは思うのですが、世界観の設定は大航海時代とか、異世界じゃダメだったんでしょうか。なんか非常に惜しい。
posted by 愛咲優詩 at 00:00 | TrackBack(0) | 電撃文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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