ダフロン

2015年01月28日

できそこないの魔獣錬磨師/見波タクミ

4040704789できそこないの魔獣錬磨師 (富士見ファンタジア文庫)
見波 タクミ 狐印
KADOKAWA/富士見書房 2015-01-20

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モンスターを従え闘わせる『魔獣錬磨師』の育成学園『ベギオム』に通うレインは学園唯一のスライムトレーナー。周囲の嘲笑も気にせず、相棒のペムペムを信じ、誰よりも努力を重ねていた。そんなレインにドラゴントレーナーの美少女エルニアから「億が一に貴様が勝ったら恋人になってやる!」と強引に決闘を申し込まれ!?

 最弱であることの楽しみ

 最弱モンスター使いが最強を目指すモンスター育成バトルファンタジー

 これは熱い。もはやスライムが主人公でヒロインだった。スライムかわいい! スライムかっこいい!
 生まれついて授かったモンスターの紋章で人生が決まってしまう世界で、最弱モンスターであるスライムの紋章を持ってしまった主人公レインが、周囲の蔑視や嘲笑をものともせず、がむしゃらに相棒のスライムを鍛え続けて絆を深め、最強のモンスターと互角以上に渡り合うバトルを繰り広げる熱血スポ根展開が血沸き肉踊る!

 スライムトレーナーであるレインと相棒ペムペムの絆が美しい。最弱といわれるスライムに愛情をそそぐレインと、毎日キツいトレーニングを一途に行うペムペムの姿にお互いに通じ合った絆が窺えて微笑ましくなる。
 そんなレインとペムペムに決闘で負けたドラゴントレーナーの美少女エルニアが、彼のことを意識しだすのですが、プライドが高くて不器用な彼女の言動もあって、意地を張り合ってお互いにすれ違う二人が可笑しい。

 どんなに鍛えてもスライムはスライムで、耐久力も攻撃力も低く、攻撃方法といえばシンプルで弱い『体当たり』ぐらいしか使えないのですが、そんなどうにも覆し難い不利を承知で無謀な戦いに挑むところが滾る。
 唯一の取り柄である逃げ足と、あとはスライムのように柔軟な思考で立ち回り、そしてモンスターだけに戦わせるだけでなくトレーナーも共に戦って、信頼の絆を武器に強者に食らいつく意地と根性が素晴らしかった。

 弱いモンスター、強いモンスターそんなの人の勝手、本当に強いトレーナーなら、自分の好きなモンスターで勝てるように頑張るべきですよね。強いモンスターを従えられたからといって、そのトレーナーが強かったり偉かったりするわけではない。この作品世界だけでなく現実の一部の業界でもそうした認識の誤りが未だに蔓延っているのは嘆かわしい限りです。最強だと思っている限り最弱に勝てない、そんな皮肉が私好みの作品でした。
posted by 愛咲優詩 at 00:00 | TrackBack(0) | 富士見ファンタジア文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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