災厄戦線のオーバーロード (富士見ファンタジア文庫) 日暮 晶 しらび KADOKAWA/富士見書房 2015-01-20 by G-Tools |
異次元の扉が開き、人間の想像力が生んだ怪物〈グラフ〉が現れる日本。その防衛組織で図抜けた戦闘異能を持つ笹宮銀は、自分の強すぎる能力に不満を持っていた。そして「弱者が強者を倒す」逆転劇に憧れる彼は、とある少女を見出す。それは「物を3センチだけ動かせる」というショボい能力の女の子で――
最強と最弱が出会う時、物語は始まる
異次元からの怪物と戦う組織の中で最強の少年が最弱の少女を導く現代異能アクション
弱者が創意工夫と努力で強者を倒すのがカッケー!という異能バトルのロマン、わかる。
弱い異能を授かってしまったせいで組織の中で落ちこぼれてしまった少女・口原琴音が、強すぎる異能に不満を持つ少年・笹宮銀と出会い、彼の独自の指導によって自信を得て、成長していく姿が微笑ましかったです。
いま流行りの教官もの。新人賞で続いてますが、本当に富士見ファンタジアは教官系に力をいれてるなぁ。
生まれつき不運、気弱ながらも努力で主席として訓練所を卒業したにも関わらず、得た異能は「物を3センチ動かすだけ」という琴音は、もし性別が男だったら典型的なラノベ主人公になれる、まさしく逸材ですよね。
弱い異能で努力することに憧れていたのに運悪く最強の異能を授かってしまった笹宮とはまさに正反対で、そんな二人が、周囲を見返すために弱い異能をどうにか使えないかと試行錯誤していく光景が楽しかった。
笹宮が協力するのは面白半分なところもありますが、『弱い能力者はいるが、弱い異能はない』という異能バトルのお約束を掲げて、琴音の異能の可能性を疑わずに信じ抜く姿勢はなかなかできないなと思いますね。
一方的でマイペースな笹宮に振り回されっぱなしになりながらも、その笹宮の期待に応えるために一途に特訓を続ける琴音の実直さも好感が持てました。自信を得て、心の奥にある芯の強さが見えてくるのがよかった。
しかし、惜しむらくは多分、キャラクター性を出すためなんだろうけど、「○○らしい」とか、「○○だと思う」とか、『仮定・推定』の言い回しを多用するせいで、描写に具体性が欠けている。「だ、である」で『断定・特定』してもまったく話の進行に問題ない。そして地の文のキャラの独白がやたらと読者の存在を意識した口語になっているのが奇妙。テレパシー能力者が脳内会話してるのかと思った。読んでいて文章を添削したい欲求にかられる。