ダフロン

2014年12月05日

文句の付けようがないラブコメ/鈴木大輔

408631004X文句の付けようがないラブコメ (ダッシュエックス文庫)
鈴木 大輔 肋兵器
集英社 2014-11-21

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“千年を生きる神”神鳴沢セカイは、銀髪赤眼の美少女。彼女の“生贄”として捧げられた高校生・桐島ユウキ。『生贄になる代わりに何でも言うことを聞いてやろう』と言われた彼はこう願い出た―「神鳴沢セカイさん。俺と結婚してください」。

 可笑しく悲しい恋人たちの悲喜劇

 千年を生きる神である少女と生贄に捧げられた少年のちょっと奇妙なラブコメストーリー

 安定の面白さ。ベタベタのラブコメでありながら読者の意表を尽く展開をぶっこんでくる意外性最高!
 神の生贄になるために生きてきた主人公・ユウキが、"千年を生きる神"・神鳴沢セカイに命を捧げる代わりに結婚を申し込んだことから奇妙な新婚生活が始まって、生まれていく愛の絆がときめきました。
 お気楽なラブコメディと報われない悲恋劇の融合で、二つの要素の矛盾がうまくまとまっていました。

 幼い頃から神の生贄として選ばれたせいで数々の苦難を経験したユウキは、そのせいか平凡そうに見えても、人生に達観した精神性を持っていて、神様であるセカイ相手にも媚びない丁々発止のやりとりが可笑しい。
 セカイも神様らしく尊大で横柄な人かと思えば、アドリブに弱くて世間知らずで、おまけに酒や葉巻に目がないダメ人間で、全知全能とは程遠い人間臭さが溢れていて、ハタで見ていて楽しい面白系ヒロインでした。

 セカイの暮らす洋館で逢引きを重ねるうちに、セカイの神としての威厳がボロボロ崩れて、年頃の女の子らしい可愛いさ、儚さ、弱さが見え隠れしてきて、人と神の壁を越えた関係を築いていく光景が微笑ましい。
 こんなユルユルなセカイが本当に神様なのかと、好奇心で覗いたユウキが知ってしまった世界の真実は残酷で、過酷な神の責務からセカイを解放するためにユウキの取った逃避行の結末は切なさが胸にこみ上げました。

 幾度と無く逃れられない運命に翻弄されながらも挫けずに必死に抗い、自分たちの愛を貫こうとする二人の姿が心に突き刺さる。作者のこれまでの作品と比べると、主人公とヒロインの救われなさが目立ちますね。
 今回は物語世界観の解説とユウキとセカイの周辺のキャラクターの顔をチラ見せした程度なので、深く掘り下げていくのは次回以降に期待しましょう。救われないからこそせめてもっとイチャイチャしてください。
posted by 愛咲優詩 at 00:00 | TrackBack(0) | ダッシュエックス文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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