終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? (角川スニーカー文庫) 枯野 瑛 ue KADOKAWA/角川書店 2014-10-31 by G-Tools |
“人間”は規格外の“獣”に蹂躙され、滅びた。たったひとり、数百年の眠りから覚めた青年ヴィレムを除いて。“人間”に代わり“獣”を倒しうるのは、“聖剣”と、それを扱う妖精兵のみ。戦いののち、“聖剣”は再利用されるが、力を使い果たした妖精兵たちは死んでゆく。
勇者の育児休暇
人類が滅びた後の世界で死にゆく定めの少女妖精たちと青年教官の交流を描いたハートフルファンタジー。
登場時とヒロインとの出会い後でまるでキャラが違うじゃないですか! ろ、ロリコンだー!(; ・`д・´)
地上から人類が滅亡し、亜人種族たちが浮遊大陸で細々と生きている世界で、主人公ヴィレムが生体兵器として扱われる少女たちと出会い、お互いに生き甲斐を見つけ出そうとする姿に心を揺さぶられました。
どこかで読んだような気がしないでもないのですが、それでも登場人物たちの献身的な姿に感動した。
数百年の眠りから目覚めたら、命をかけて守った世界が滅んでいたヴィレムの絶望と虚無感は想像し難く、漫然と惰性で生きていた彼が、少女たちの世話をするうちに昔の自分らしさを蘇らせていく光景が微笑ましい。
孤児院のような軍の施設で暮らしている少女たちは無邪気で可愛らしく、しかし、妖精として自然発生したために親からの愛情に疎く、努力の末に次第にヴィレムが『父親』として受け入れられていく過程が心温まる。
ヴィレムが生まれた時代の超兵器『聖剣(カリヨン)』を扱える適合者である少女たちは、使い捨ての生体兵器として扱われるのだけれど、妖精は生存本能が薄く、どこまでも献身的な彼女らが儚くて切なくなります。
しかし、数日後に始まる戦いで命を捨てる覚悟を決めているはずのクトリが、恋に夢見たり、いい思い出を欲しがるのは無意識に誰かに救って欲しかったんだろうなとわかってくると、さらにまた泣けてきました。
枯野瑛作品は『銀月のソルトレージュ』以来ですが、可愛らしくも物悲しく泣きそうになるのがいいなぁ。
活きる希望を失っていたヴィレムが守るべき存在を得て、そして生きることを諦めていたクトリが他人に大切にされていることを知って生きたいと願うようになって、お互いに支えあっている姿がまさに『家族』でした。
しかし、戦わなくてはいけない獣の正体はかつての……ああ、この続きの展開はハンカチ必須だわうん…。