ダフロン

2014年09月08日

Vermillion 朱き強弓のエトランジェ/只野新人

4800230586Vermillion 朱き強弓のエトランジェ (このライトノベルがすごい! 文庫)
只野 新人 フルーツパンチ
宝島社 2014-09-10

by G-Tools

硬派なゲームシステムで知られる海外産VRMMORPG【DEMONDAL】。騎射の達人にして廃プレイヤー・ケイと相棒のロシア人“NINJA"・アンドレイはゲームプレイ中、【DEMONDAL】そっくりの異世界に転移してしまった。不意に盗賊に襲われ、瀕死の状態になった相棒を救うため、ケイは単身、盗賊のアジトに乗り込む。

PRtag.jpg

 覚悟を決めねば生き残れない

 ハードコアMMORPGに似た異世界へやってきてしまった二人の異世界転移ファンタジー。

 うん、これはお世辞抜きで面白かったわ。なろう系ノベライズ作品では今年一番の掘り出し物でした。
 リアル志向のハードユーザー向け海外製MMORPG『DEMONDAL』で「死神日本人」の名で通った弓騎兵のケイと忍者スタイルのロシア美少女アイリーンが、ゲームにそっくりな異世界へと迷いこんでしまい、日常的に命がやりとりされる過酷な世界で生き抜いていく姿が胸に迫りました。このサツバツとしたアトモスフィアいい!

 ゲームのプレイ中に異世界へと迷いこんでしまったものの、高性能な装備や育成したキャラのスキルはそのままで無双するというのが、この手の話のお約束ですが、フィールドに出現する野盗相手でも攻撃が急所に当たれば一発で瀕死の重傷を負いかねないシビアなバランスの世界観が緊張感溢れる展開を生み出している。
 普通の村人ですら弱味を見せたら身ぐるみ剥がされそうで信用できなくてずっとヒヤヒヤしっぱなし。

 瀕死に陥ったアイリーンを救うため、野盗の住処へたった一人で奇襲をかけるのだけれど、完全な安全を得るためには己の手で他者の命を奪わなくてはいけなくて、敵を殺す覚悟を決めつつも自分が殺した命の重みを一人で静かに背負っていくケイの姿が痛ましかった。アイリーンの代わりに汚れ役を引き受けるつもりなのだろうけれど、いまは強い使命感で鈍化した罪悪感がいずれ噴出して壊れてしまわないかが心配で仕方がない。

 治安の悪い異世界に飛ばされてきたものの、ケイもアイリーンも現実世界では身体機能に重い障害があって、ときに生死の境をさ迷いながらも、現実よりも人間らしく生きている実感を得ていると思うと無性に切ない。
 アイリーンは今回、救われるばかりのお姫様の役柄でしたが、ケイに負けない活躍を期待したいですね。殺人への忌避感を乗り越えて非情になれるか、それも綺麗事を貫き困難を招くのか、どちらも今後が気になります。
posted by 愛咲優詩 at 00:00 | TrackBack(0) | このライトノベルがすごい!文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/405101901

この記事へのトラックバック