![]() | 絶対ナル孤独者 (1) ―咀嚼者 The Biter― (電撃文庫) 川原礫 シメジ KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-06-10 by G-Tools |
二〇一九年八月。地球上の、いくつかの都市部に、人類が初めて接触する地球外有機生命体が複数落下した。のちに“サードアイ”と呼ばれるその球体は、接触した人間たちに、現代科学では解明できない“力”を与えた。十七歳の少年、空木ミノルもその中の一人だった。
黒い孤独は砕けない
異星生命体サードアイによって異能を得た者達が繰り広げる異能バトルサスペンス。
表紙を飾っているメインヒロイン(?)の出番があまりなく、えらいモブだったんですがこれは……。
宇宙から飛来した寄生体"サードアイ"の宿主となり異能を発現させた主人公・ミノルが、同じく"サードアイ"に寄生され身近な人々を捕食する怪物"バイター"と遭遇し、お互いの存在証明やアイデンティティを賭けた生存競争に挑む姿が切なく胸を揺さぶりました。寝る前に歯はちゃんと磨こうと思いました。デンタル!
周囲から目立たず、関わらずで孤独を貫くミノルの拗ねた生き方は正直どうなの?と、いろいろ言いたいこともあるのだけれど、彼が拒否して嫌がろうとも中学時代の同級生・箕輪や義姉・典江の方は放っておかなくて、コミュニケーションを取ろうとしてきて、ミノルを悩ませるから愉快なんですよね。ミノルも、彼は彼で一匹狼を気取るには、ちょっと甘くてお人好しなところもあり、ぼっちを貫けない性根なら改善の可能性アリか。
"サードアイ"によって何者をも阻む無敵の殻を手に入れたミノルは、何物も噛み砕く牙を手に入れた"バイター"にとって誇りを傷つける許しがたい存在として目をつけられ、戦いを強いられる展開は不毛でもどかしい。
"サードアイ"に精神を狂わされた"バイター"の過去の境遇も胸糞でしたが、あんまり同情の余地はないかな。一戦目も二戦目も、ほとんど勝負が終わってからやってきて役に立たない"サードアイ"退治の専門家ェ……。
"サードアイ"の異能が、願望を反映したものだとすれば、ミノルの"殻"は孤独癖が要因でないですよね。
本心で孤独になりたいのであれば、誰にも認識されない透明人間になるとか、周囲に忘れられる能力になっているはずなので、彼はただ人間関係の摩擦で傷つくのを恐れているだけではと邪推してしまうのだけれど。
いまのところありがちな学園異能のシナリオの域を出ていないので、お試しだったとして次回に期待かな。