ダフロン

2014年05月06日

戦塵の魔弾少女/雨澄碧

4800226716戦塵の魔弾少女(バレット・ガールズ) (このライトノベルがすごい!文庫)
雨澄 碧 桜沢 いづみ
宝島社 2014-05-10

by G-Tools

独裁国家バラトルム聖帝国。廃工場に身を寄せ合い生きていた戦災孤児のリッカと仲間たちは、とある施設へと保護される。しかし、そこは洗脳と身体改造によって人知を超えた能力を有す魔法強化兵を生み出す悪魔の強制収容施設だった。魔法強化兵へと改造された少女たちは独裁者の兵として血みどろの戦場へ送られる。

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 少女たちの戦う理由

 独裁国家で人体改造を受け兵士として戦うことを強いられる少女たちの壮絶なウォーズ・アクション。

 ガールズミリタリーものと聞いて、どうせ萌えなんだろと思ったら、ガチでシリアスだったでござる。
 レジスタンスとの内戦が続く独裁国家に生まれ、戦災孤児となったリッカと幼い少女たちが、兵士としての洗脳と改造を施され、銃弾と怒号が飛び交う殺戮の場に送り込まれて、戦いを強いられる姿が胸を抉りました。
 狂った大人たちが支配する世界で、純粋にお互いを思い合う少女たちの絆が美しく切なかった。

 長引く内戦で家族を失い、街の片隅で支えあって生きているリッカ、クラリー、ラトナ、ルーベルが仲の良い姉妹のようで微笑ましく、そんなささやかな暮らしですらも許されない過酷な社会の無情がやるせない。
 児童福祉局に保護され衣食住を得たものの、彼女たちが送られたのは児童養護施設の名を借りた兵士訓練所で、教育と称した軍事訓練や洗脳、さらに裏では人体実験の道具として扱う大人たちの醜悪さに背筋がゾッとする。

 洗脳によって独裁者への忠誠心が植えこまれ、次第にルーベルから笑顔が無くなって、おかしいと思いながらも思考を奪われて過ごすうちに、ついに取り返しの付かない悲劇が起こって後悔するリッカの姿に心が痛む。
 魔法強化兵となってテロ組織の殲滅に向かった任務が、民間人を巻き込む大虐殺となって、それが周辺国からの平和維持軍を呼び寄せる原因になってと、徐々に追い詰められていく少女たちの境遇が哀れで辛かった。

 決して戦いたいわけではないのに、大切な姉妹を守るために罪悪感を抱えつつも敵軍の兵士を殺す命令を下す部隊長クラリーの葛藤と、スコープごしに母親の影を求めるルーベルの姿が涙なくしては語れない。
 死線に身を投じて、ひとり、またひとりと散っていく幼い少女たちの死に様が強烈な印象で残りました。
 哀しさと悲しさに咽び泣き、それでも最後には救いがあって、嬉しい涙がこみ上げてくるいい話でした。
posted by 愛咲優詩 at 00:00 | TrackBack(0) | このライトノベルがすごい!文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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