フレイム王国興亡記 1 (オーバーラップ文庫) 疎陀陽 ゆーげん オーバーラップ 2014-04-24 by G-Tools |
『勇者』として召喚されたはずなのに、そこは魔王は不在、悪の帝国も開店休業中、ごくごく平和な国。しかも、召喚後早々に王宮から放逐されド田舎『テラ』に左遷されてしまう。だが、テラで穏やかな生活が始まるかと思っていたら、モンスターなんかより、シビアで恐ろしい魔の手が襲いかかる――それは『赤字国債』!
経済成長の鍵は、勇者召喚
財政難を抱える異世界の王国に召喚された『銀行員』が経済を救うために立ち上がる異世界ファンタジー。
うん、面白かった。剣と魔法で戦うファンタジーではなく、取引と契約のファンタジー。
若き女王エリザベートの治めるフレイム王国へ手違いで召喚された銀行員・松代浩太が、王姉エリカの収める地方都市テラに派遣され、そこで逼迫した地方財政を活性化させるため金融改革に乗り出す展開が胸躍る。
『勇者』として召喚された主人公が、経済を支配する『魔王』を演じていく姿が皮肉めいててニヤリ。
隣国と小競り合いがある程度の平穏なフレイム王国に『勇者』として召喚された浩太は、なんの変哲もない普通の銀行員なのだけれど、実は曲者で、業務で培った交渉テクを駆使して皆を説得していく姿が小気味良い。
平凡な田舎町テラが陥っている財政難を知るや、銀行家として経営指導を行い、領主であるエリカを焚き付け復興支援事業を立ち上げて、街や王宮を巻き込んだ一大開発プロジェクトへと広げていくスケール感が壮大。
再開発のためには、新しく作る商業区のために、昔から住んでいる住民に立ち退き要求をしなければいけないのだけれど、巧みに交渉を進めて土地を確保していく手腕が悪どいと呆れると同時に感心した。
都市の発展のため、住民たちのより良い幸福のために、苦渋の選択を取られなければならないときも、ヒロインたちに怒りの矛先が向かないよう、必要悪として憎まれ役を演じる浩太の彼なりの誠実さもどかしかった。
内政スキーにはたまらない。戦うばかりじゃなくてこういう内政ものが流行ってもいいと思うのよ。
各地から商会を誘致して商業都市としての地盤作りは完成か、証券取引の文化も根付かせることに成功したし、次は金融業か信託投資か、トントン拍子にうまく行きすぎているので次回は何かピンチに陥って欲しい。
ラブ寄せも期待したいところですが、本命はエミリ√ですかね。王族姉妹も頑張ってくださいよ……。