ダフロン

2014年04月18日

大正空想魔術夜話 墜落乙女ジヱノサヰド/岬鷺宮

4048664026大正空想魔術夜話 墜落乙女ジヱノサヰド (電撃文庫)
岬鷺宮 NOCO
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-04-10

by G-Tools

時は大正、帝都・東京。今般、帝都民に悪夢を齎すのは、螺子巻き仕掛けの異形の化物「活キ人形」と、謎の魔術によってそれを悉く凄惨に屠る、異端の少女・墜落乙女―。彼女を追う少年記者・乱歩が追跡の先に見るのは、誰をも寄せ付けない少女がその裏に隠した真実か、それとも…。

 正義と悪は紙一重

 大正時代の帝都東京で「活キ人形」と戦う墜落乙女の実像を追った新聞記者が体験する不可思議幻想夜話。

 大正ロマンいいですね!和装と洋装が混じる人々、煉瓦造りの町並み、ガス灯の下で起こる血塗れの惨劇!
 帝都に住む人々を襲う怪物「活キ人形」に一人立ち向かう謎の少女「墜落乙女」の正体を知ってしまった新聞記者の乱歩が、命がけの取材を繰り返して次第に絆を育み、やがて見えてくる彼女の素顔に見惚れます。
 レトロな時代感のなかで繰り広げられる少女と人形の殺し合い。怪しく淫美な世界観に引き込まれました。

 「墜落乙女」こと華族の令嬢サヱカの人を人と思わない毒舌ぶり、ドSっぷりがゾクゾクします。
 街に出現して人々を無差別に襲う「活キ人形」を颯爽と現れては倒していくヒーローでありながら、容赦無い凄惨な壊し(殺し)方から都民に怖れられていて、サヱカ自身も悪人であることを認めて悪びれない傲岸不遜な態度に眉を顰めるものの、妙に堂に入っていて気品すら感じてしまう艶姿に思わず魅了されそうになる。

 唯一、正体を知る乱歩を通じて警視庁の婦人警官・桔梗と同盟を組み、「活キ人形」との交戦を繰り返すうちに乱歩や桔梗たちと打ち解けて、僅かながらも年頃の女の子らしさを垣間見せるサヱカがかわいい。
 罪を被せられ、捏造の証拠を鵜呑みにする無能な官憲の強引で過酷な取り調べを受ける乱歩の姿に真犯人への憤りを感じるが、サヱカが暴いた事件の黒幕は信じがたくて、間違いであってくれとさえ思いました。

 それまで信じていた正義と悪が一瞬で入れ替わるどんでん返しの結末には驚愕を禁じ得ない。
 魔法少女ものやヒーローものでは勧善懲悪が基本なのだけれど、客観的に見るとどっちが正義で、悪かなんて立場の違いで入れ替わったり確かに曖昧ですよね。そういう落とし穴に堕ちないように気をつけないと。
 レトロでクラシカル、それでいて華やかな雰囲気がとても好きなので、是非シリーズ化して続編希望。
posted by 愛咲優詩 at 00:00 | TrackBack(0) | 電撃文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。