ダフロン

2014年03月15日

銀光騎士団 フロストナイツ/スズキヒサシ

404866378X銀光騎士団 ―フロストナイツ― (電撃文庫)
スズキヒサシ 卵の黄身
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-03-08

by G-Tools

流れ者の青年アスペルはもめ事に巻き込まれた際に、ひとりの少年と知り合う。リュシアンと名乗る彼は、少年とは思えないほどの愛らしさの中に、ただ者ではない気品を感じさせた。汚い奇妙な風体とは裏腹に、時おり油断ならない身のこなしを見せるアスペル。その腕を見込まれてか、リュシアンにつきまとわれることに、

 冬の大地が人を育てる

 元剣闘士の少年が王族の生き残りと遭遇し祖国の再興に立ち上がる中世ファンタジー。

 祖国を奪われた悲劇の王女と最強の称号を持つ奴隷剣闘士のロマンスとか、めちゃんこかっけーやんけ。
 帝国に滅ぼされた祖国アジェルダンへと帰郷した元剣闘士アスペルが、ひょんなことで王族の生き残りリュシアンと出会い、奇妙な縁を巡るうちに絆が芽生え、忠誠を誓う関係になっていく姿が胸に詰まりました。
 スズキヒサシさんの好きそうな貴種流離譚、あるいは低層階級からの成り上がりものでした。

 若くして奴隷となり辛酸を嘗めたアスペルが、ようやく故郷に帰ってきたというのに、侵略者である帝国の持ち込んだ奴隷制のせいで身分の偏見が蔓延していて、感動の帰郷に水を差された気分になりますね。
 偏見に囚われず対等に接してきたのはリュシアンだけだが、彼は彼で奴隷制を嫌いつつも、綺麗事しか見えていない理想主義者で、世間知らずがアスペルを苛立たせるのも仕方がないなぁと思って読んでました。

 リュシアンに剣の腕を買われたものの、彼に付き従うアイザック、ベルノフ、ルーガンの三従士も、気位は高いくせに揃いも揃って無能っぽくて、小言はうるさいし、アスペルじゃなくても誰だってこんな職場嫌だよ。
 己の甘さから囚われの身になったリュシアン達は、いってみれば自業自得なんだけれど、助けに行くお人好しなアスペルのツンデレぶりが可愛らしく、偶然リュシアンの秘密を知ってときめく姿が初々しい。

 機転の効かない三銃士を合わせたよりも新参者のジェニス一人のほうが信用も信頼できそうだし、キャラクターとしても好感持てるので、ようやく職場環境が整えられたかな。騎士が頼りないこの騎士団大丈夫か。
 魔法も神秘もない、リアル重視の骨太設定かと思っていたら、最後の最後で世界観破壊が来たなぁ……。味方もいない、たった7人の騎士団が、ここからどうやって国を蘇らせるのか、今後の展開に期待。
posted by 愛咲優詩 at 00:00 | TrackBack(0) | 電撃文庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。