ビブリア古書堂の事件手帖 (5) ~栞子さんと繋がりの時~ (メディアワークス文庫) 三上延 KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-01-24 by G-Tools |
無骨な青年店員の告白は美しき女店主との関係に波紋を投じる。彼女の答えは―今はただ待ってほしい、だった。ぎこちない二人を結びつけたのは、またしても古書だった。謎めいたいわくに秘められていたのは、過去と今、人と人、思わぬ繋がり。脆いようで強固な人の想いに触れ、何かが変わる気がした。
本だけが恋人たちを見守っていた
美しき女店主と無骨な青年店員が古書にまつわる謎を解いていくビブリオミステリ。
栞子さんピュアかわいい! 大輔と栞子さんの初心な二人の恋愛模様に悶え転がります。
交際の返事を保留中の栞子さんと大輔が、古書店に持ち込まれる謎を解き明かしていく過程で見えてくる、男女の愛の物語が切なく胸を締め付けました。栞子さんの恋心を認めない母・智恵子の影が気になります。
大輔の影響で少しづつ本の世界の外へ興味が向き始めた栞子さんの変化が微笑ましいです。
告白の返事を一ヶ月も待たされ、さらに栞子さんから帰還を引き伸ばされ、しかし、望まない返答が返ってくるのが怖くて強引に踏み込めず、気もそぞろで余裕のない大輔の複雑な胸中は察してあまりあります。
お互いにぎこちない関係が続き、気まずい空気が漂うものの、古書の謎解きに向き合っている間だけは、いつものような関係に戻って話せる二人が不器用やら、奥手すぎるやら。こっちまで恥ずかしくなってきます。
ビブリア古書店を訪れる奇妙な依頼人からの説明や調査の初見では一見してそうとは分からないものの、推論を積み重ねていくうちに、古書の持ち主が繰り広げた愛のドラマが見えてきて、心を揺さぶられました。
他人からはただの古びた本にしか見えない古書でも、それらを愛好していた持ち主たちの思い出、愛の証明となることで、古書価以上の特別な価値を持ち、それらの辿ってきた時間が、なんともロマンチックでした。
母・智恵子の与えた謎を解き、再び対面を果たした栞子さんが発した問いかけは、母親との離別を告げるためでもあるけれど、母親と父親のことを知りたかった、本当は母親を理解したかっただけだと思うんですよね。
いつか智恵子を許し、また家族になれる日はくるのか。それこそ大輔の存在が親子関係を変えてくれると信じたいが、それはさておき、何だろうかこの唐突すぎる次回への引きは。続きはよ……はよぉ……。