![]() | 白銀のソードブレイカー ―聖剣破壊の少女― (電撃文庫) 松山剛 ファルまろ KADOKAWA/アスキー・メディアワークス 2014-01-10 by G-Tools |
世界を護る7本の聖剣の使い手。その一人が、大剣を振るう銀髪の少女によって討たれた。一夜にして《世界の敵》となった少女と剣を交えた際、一瞬かいま見えた“映像”に家族の仇の姿を見たレベンスは、その白銀の髪を持つ少女を追うが―!?

世界の敵となった少女と共に7本の聖剣の破壊を目指して旅をする異世界ファンタジー。
松山剛さんの作品は好きなんだけれど、今回はなんか方向性を変えすぎて期待してたんと違った。
世界の守護者であり人々から崇拝される剣聖が持つ聖剣を狙う少女・エリザと家族の仇を追う傭兵・レベンスが出会い、世界の敵として周囲から追われつつ残った剣聖を倒す旅を続ける物語なのだけれど、ストーリーに不毛感というか、無力感が漂い。なんでこの二人こんなことしてるんだろ?と素直に世界観に引き込まれない。
世間知らずで人間関係に疎いエリザが可愛らしくもあり、ついつい世話を焼いてしまうレベンスのお人好しぶりが微笑ましくもあり、キャラとしてはすごく好感を抱けるのだけれど、それでも彼らの行動を全肯定できないのが話の流れを濁している。なまじっか剣聖の人たちのキャラが良すぎるせいか、戦っていても応援できないし、勝った後も達成感より罪悪感の方が強くて、勝っても負けてもいずれにせよ辛いだけの話になっている。
そもそも聖剣とは、魔剣とはなんなのか、どうしてエリザはそこまでして聖剣の破壊を目指すのかという動機付けの掘り下げが曖昧なので、どうしてそこまで決意を持って戦ってるのか理解が難しく、剣聖たちも聖剣を使うことにリスクがあることを知っているみたいだから、部外者は口出さずに放っておけよと思わずにはいられない。原発が危険だから発電所で働いてる労働者を殺して止めようってのと発想に違いはないんじゃないかな。
エリザとレベンスを支持できないのは、自分たちの起こした行動によって、これから起こる悲劇に一切の責任を負っていないところなんですよね。それよりも強大な悲劇を未然に防いでるのだからいいだろうじゃなくて、何事も起こらずに済ませるような方法を模索したほうが話も面白くできるんじゃないだろうか。例えば、帝国と王国の戦争に武力介入して和平に導いた後に平和の世に用済みになった聖剣を譲ってもらうとか。そちらのほうが面白そうだし読んでみたいんだけれど。
ぶっちゃけ、何も考えず強敵と正面から戦って勝つなんて単純な話はワナビでも書けるので、松山さんには他人に書けない話を書いて欲しいな。