![]() | 神託学園の超越者<トランセンダー> (GA文庫) 秋堂 カオル NOCO SBクリエイティブ 2013-11-15 by G-Tools |
突然の【神託】により、美景原高校の生徒たちは《超越者》へと昇華する。それは超異能バトルの幕開けだったそんな熱狂の中、怠惰に過ごす渡良瀬文乃は、何の力も授からなかった《無能》天枷杏奈を助けることに。不戦敗と呼ばれる文乃の本当の力は小説として書かれたこの世界を読み、校正する力だった!
無能力者上等!
《無能》と《不戦敗》、最底辺の少女と少年が学園最強を目指す超絶学園異能バトル
学園異能バトルものの無駄を極力削って、シンプルに突き詰めた、ひとつの到達点だと思います。
ある日、神によって異能を与えられた生徒たちが最強目指して熾烈な争いを繰り広げる美景原高校で、主人公・文乃とヒロイン・杏奈の最底辺が最強を目指して成り上がる展開に胸を躍り、手に汗握りました。
能力に溺れて強さに胡座をかいている最強の異能者たちの鼻を次々にへし折っていく様がスカッとする!
主人公の文乃の能力『六行視』は、世界を小説として認識し、六行先の未来を読んで改変するという非常にメメタァな能力で、そのせいで妙に世の中を達観してしまうのですが、そんな文乃の心に火をつける杏奈のぶっ飛んだキャラクターが痛快でした。生徒の中で唯一、異能を与えられなかった無能力者にも関わらず、文乃を巻き込んで、最強を目指して次から次へと強敵に挑戦していく怖いもの知らずな姿が活き活きとして魅力的でした。
杏奈は、空気を読まない脳筋のアホの子かと思えば、鋭い観察眼や先を見据えた戦術眼を持ち合わせていて、学園異能におけるバトルセンスの塊ですね。もし異能があったらすぐに最強になっていたんじゃねーかな。
過去に傷つけた体験から、怖くて読むのを避けていた幼馴染の奏の本心を知って、お互いにすれ違っていた二人がようやく正面から向き合うシーンは、目頭がウルっと来たな。ヤンデレなおねーさんは好きです。
キャラの能力はどんなに無敵や最強に思えても、必ず弱点やデメリットが設定されていて、相手の長所を潰して短所を見抜き、能力の単純な強弱よりも頭を使って立ち回る駆け引きが練られていて面白かった。
小説のメタ描写って、結局は作者の自己満足で読者には呆れられたり、敬遠されたりすることが多いんですが、この作品は初めからメタ描写ありきで物語を構成していて、物語を面白くする仕掛けとしてアリでしたね。