グラウスタンディア皇国物語1 (HJ文庫) 内堀優一 鵜飼沙樹 ホビージャパン 2013-10-31 by G-Tools |
五年前、隣国リジアとの大戦を終結させた七人の英雄――《皇国七聖》。その一人である双剣使いの青年軍師クロムは、主たる姫君ユースティナとの誓いを守り、再び開戦が迫った皇国の切り札として戦場の最前線へ舞い戻る!
皇国の秘策、その男にあり
かつて皇国を救った一人の皇女と七人の英雄の活躍を描いた戦記ファンタジー。
天才軍師で、凄腕の双刀使いで、魔法使いで、ヒロインからもモテモテって、どんだけチートやねん!
かつての戦役で活躍した七人の英雄の一人・軍師クロムが、皇国を襲う新たな危機を前に、主である皇女ユースティナの元に呼びよせられ、敵国の仕掛けた策略を見抜き、裏をかいて大勝利を収める光景が爽快でした。
なんで最近になって戦記ファンタジーが増えてるのか、まさかブームか、ブームが再来してるのか。
山の民として山奥で隠遁していたわりには博覧強記で各地の文化にも造詣が深く、なにかと強気で交渉術に長けて戦っても強いクロムがとにかく完璧超人なんですが、ムッツリエロスだったり、理屈っぽくて皮肉屋で意地悪だったりと、相応の人間味もあって、格好良さと残念さのバランスの取れた愉快なキャラクターでした。
招集を受け、王都に向かう旅の途中の騒動で垣間見せる聡明さや常人とは違った視点が興味深い。
人間かどうかもわからない不思議な少女リュリュ、幼馴染の女騎士フィフニスや意地っ張りな皇女ユースティナといったヒロインに翻弄されたり、逆に彼女らを振り回したりと主従を越えた信頼が見えて微笑ましい。
隣国リジアからの密かな領海侵犯に対し、応じれば戦争となってしまう事態に、やたらと好戦的で領土拡張に強気な兄皇子はバカなの死ぬの。相手はずっと前から戦争の準備して兵の数でも負けてるって言ってるだろ!
国家のトップが脳筋と無能ばかりというのがわりとシャレにならないのですが、そうしたお偉方による、建設的な意見が出ずに先へ進まない軍議の場に、クロムが妙案を放り投げる姿がなんとも痛快でならない。
今回は勝って当然の戦いを上手に勝ったという程度でしたが、隣国の侵略はほんの小手調べといったところですし、敵のいかにも噛ませっぽい女軍師やリュリュの正体、残りの他の英雄たちの登場に期待してましょう。