絶名のドラクロア (このライトノベルがすごい! 文庫) 大間 九郎 十五日 宝島社 2013-09-10 by G-Tools |
平凡な日常、上手くいかない日常に飽きていた向井竜童は、奇妙な美少女ドラクロアと出会い、唐突に非日常にブチ込まれる! ――明かされる世界の真実の姿、迫られる究極の選択――ドラクロアの命か、世界の命運か。全てのことから逃げ続けていた竜童の選択とは? ドラクロアの秘密とは?
人生諦めから、人生が始まる
吸血鬼の少女と出会った少年が繰り広げる世界の命運を巡るオカルティックファンタジー
主人公とヒロインの出会いがスーパーの業務用冷蔵庫の中か……イマドキの若者だな。ネット炎上確定!
封印から解かれたヴァンパイアの美少女・"絶名"と出会った普通の少年・竜童が、魔道士とワーウルフから狙われている彼女の逃走劇に巻き込まれていき、面倒を与える厄介者と思いつつも、目の前の世界の危機と可哀想な女の子のために立ち上がる、意地っ張りで不器用な男らしさがツンデレで萌えました。
ヒロインは、「趣味:人間の串刺し」の歴史的に有名なあの吸血鬼ですが、「真名を呼ぶと死ぬ」ために人外の者たちは"絶名"と呼んでて、しかしそんな通称は知らない竜童が呼ぶ名前が『死体』って……酷い男だ。
見た目、年端もいかない美少女で、中身も長く生きている吸血鬼とは思えないほどアホアホで、無邪気に慕ってく彼女を、踏んづけたり、盾にしたり、窒息させたり鬼畜な扱いの竜童に小生ぶっちゃけドン引きである。
まあ、ごく普通の生活をしてて、魔道士やワーウルフに襲われて、突然人生がピンチなのに、その元凶である当人はハッピーっぽくヘラヘラしてんだから、その怒りをぶつけたがる竜童の気持ちはわからなくもない。
一旦はお互いに決別したものの、恐怖して逃げてしまった自分が許せなくて、彼女を傷つけた自分が許せなくて、彼女を救うために、命を捨てて舞い戻る竜童の意固地なまでの強情っぷりが男気溢れてて、滾りますね。
ずっとぞんざいに『死体』としか呼んでなかった竜童が、最後の最後に彼女の本当の名前を自然に呼び合えるようになるシーンは、それまでのわだかまりやすれ違いを乗り越えて得た絆が感じられて、グッと来ます。
相変わらず、文章センスにすごいクセを感じる奇才だけれど、今回の作品は全体的には読みやすく、ストーリーは王道に沿ったボーイミーツガールの吸血鬼もので、流行にあった出来になってると思います。