魔王殺しと偽りの勇者1 (ファミ通文庫) 田代裕彦 ぎん太 エンターブレイン 2013-08-30 by G-Tools |
十日前、百年に一度復活すると云われる大魔王が打倒され、アルブリオ王国は歓喜で満ち溢れていた。そんな中、国王に内密に呼び出されたエレインは四名もの人物が「自分こそが大魔王を倒した勇者である」と主張していることを知る。堅物な彼女に用意された協力者は王族でありながら魔族に寝返った青年、ユーサーだった。
魔王殺人事件
魔王を殺した真の勇者を見つけ出すため女騎士と魔族の王子が捜査に乗り出す謎解きファンタジー。
ファンタジー界の殺人ミステリー。ただし容疑者は全員自白済という推理小説のセオリー破りの怪作。
大魔王タラニスを倒したと主張する四人の勇者の中から本物の勇者を見つけ出せとの王命を受けた女騎士エレインが、魔族の青年ユーサーと捜査に奔走していくうちに見えてくるキャラや世界観の設定が興味深かった。
あの田代裕彦さんがミステリーが帰ってきた。富士見ミステリーからのファンとしては嬉しさで胸いっぱい
堅物で融通がきかないエレインを皮肉屋で天邪鬼なユーサーがやりこめる掛け合いが面白く、ユーサーに翻弄されながらも、常識や偏見に凝り固まったエレインの見識が徐々に開けていく姿が初々しかった。
人間の宿敵である魔族であるユーサーも性格は意地が悪いが、価値観の違い囚われず客観的に物事を判断できる柔軟な思考の持ち主で、容疑者の証言の嘘を次々に見破っていく推理力と観察力が惚れ惚れしますね。
容疑者たちは、世界一の占い師グエンドレナによって選ばれた名誉ある勇者だけあって、嘘の証言など言いそうにない高潔な人物ばかりなのですが、そんな彼らだからこそ嘘をつかねばならなかった悲しい事実が隠されていて、真実を偽ることへの罪悪感に苦しむ彼ら、彼女らの心中を察すると切ない思いが湧き上がります。
憧れを抱いてた人物への失望にショックを受けつつも、使命のために立ち上がるエレインが凛々しかった。
いくら謎解きがメインと入っても、ファンタジーなら戦闘シーンの一つくらいはあるだろうと思っていたが、アクション要素など、まったく無かった。嘘がバレた後、口封じに襲ってくるくらいは予想してたんだが、勇者たちやけに潔いな! 完全に謎解きしかないので、ファンタジーっぽさを期待してるとガッカリするかも。
まだまだ真犯人は見つかりませんが、長引かせず次巻でハッキリさせるそうなので、解決編が楽しみです。