![]() | 万能鑑定士Qの推理劇IV (角川文庫) 松岡 圭祐 角川書店 2013-08-24 by G-Tools |
「万能鑑定士Q」に不審者が侵入した。無残に荒らされた事務所に貼られた何百何千という物体。それは、かつて東京23区を覆った“因縁のシール”だった!さらに波照間島に帰郷を勧める父が現れ、『週刊角川』を揺るがす盗作問題が起きるなど、凛田莉子を公私ともに激震が襲う。
すべての始まり、すべての終わり
広範な専門知識と観察眼で万物の真贋を見破る「万能鑑定士」が難事件に挑む頭脳派ミステリ。
唐突に終わった。おいおい、コミック化されて、映画化決まったのに、原作終わっちゃっていいのか!
店が荒らされ、角川編集部が訴えられ、莉子やその知人の周囲で次々と起こる不自然な騒動の裏に隠された陰謀を暴き、黒幕を捕まえるために小笠原や絢奈、華蓮たちが総出で力を合わせる展開が手に汗握りました。
小笠原さんが最初から出ずっぱりで、メタ描写もいくつかあって、おかしいなと思ったら、完結とは。
凛田莉子へのこれまでの取材が評価され、昇進の道が開けた小笠原さんですが、莉子の方は親族から転職を強いられて、さらに店が荒らされ、それどころじゃなくなっていくところがやっぱりタイミング悪い人だなぁ。
イラストカードのトリックは、手品以下じゃないですかー。謝花兄弟の行方を探すシーンは、久しぶりに地道な推論を積み立てて痕跡を追っていく捜査で、なるほどと唸らされた。こういうのでいいんだよ。
商売を潰されたコピアの嫌がらせと判明したものの、贋作界の最大手にしてはやることが粘着で、キャラクターが小者すぎるでしょう……。煽りに弱い2ちゃんねらーか。華蓮のほうがよっぽどカリスマあるじゃやん。
絢奈や那沖たちも巻き込んで波照間島へと帰郷した莉子だけれど、そこにはコピアや暴力団が待ち構えていてと、戦々恐々としていたものの、猛獣が野放しになっているとか、それはさすがに胡散臭さMAXでしたわ。
シリーズ全体通して、執筆速度が早いのはいいんですけれど、その分、1冊あたりの濃度が薄くなってしまったというか、後半は明らかにネタ切れを起こしていて、執筆よりも調査や取材をして欲しかったですね。
小笠原悠斗と凛田莉子の恋模様の結末は理想といってもいいんだけれど、結ばれるまでには二人の仲が燃え上がるような劇的な展開がもう一山あってもというか予想してたんですけどね。映画には期待しています。